【相談事例62】婚活アプリでのトラブル②
【相談内容】
婚約に至っていなくても慰謝料請求できる場合があるのですね。
認められる可能性があるのであれば、是非、元交際相手に対して慰謝料請求を行いたいと考えています。
ですが、彼に慰謝料請求を行った場合、彼の奥さんにも知られてしまった場合、彼の奥さんから逆に慰謝料請求をされるのではないかと不安なのですが大丈夫でしょうか。
【弁護士からの回答】
前回は、既婚者であるにもかかわらず独身と嘘をつかれて交際継続していた場合には貞操権侵害を理由として慰謝料請求が認められる場合があることについて説明しました。
男性は、既婚者である以上、配偶者である奥さんがいるにもかかわらず他の女性と肉体間関係を行っているため、不貞行為に該当するようにも思えます。
交際相手の配偶者からの慰謝料請求が認められるかについてご説明させていただきます。
1 不貞行為を原因とする慰謝料請求の要件
不貞行為を原因とする慰謝料請求が認められるためには、①故意、または過失により②他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、③ ②の行為に損害が発生することが必要になります。
2 本件について
仮に、ご相談者様の元交際相手の夫婦間が円満であることを前提とすると、交際相手とご相談者様のとの間の交際関係(性的関係)を行ったことにより、元交際相手と配偶者との間の円満な夫婦関係が害されるという損害が発生しているため、上記②と③の要件については認められる可能性が高いです。
もっとも、ご相談者様は、交際相手に独身であると嘘をつかれて、交際相手方独身であると信じて交際を行っていたのであるため、①の要件のうち、 故意(既婚者であると知りながら交際関係に至った場合)の要件は満たさないことは明らかです。
では、過失があるか、すなわち、独身であると信じたことについて過失が認められるか(通常の人であれば既婚者であると認識すべきであるにも関わらず認識していなかった)と認められるかという点が問題になります。
この点については、交際中の具体的なやり取りなどを正確に把握しなければ判断できませんが、婚活アプリに登録しているという時点で、独身者が前提であること、自身の家族にも会っていることからすれば、独身者であると信じてもやむを得ないと認められると思いますので、過失についても認められない可能性が高いと思います。
3 最後に
このように、独身であるとだまされていた場合には、慰謝料請求が認められない可能性は高いですが、配偶者が感情的になり、認められなくても請求してくる可能性は否定できません。
貞操権侵害を理由とする慰謝料請求の場合には、認められるか否かという問題だけでなく複雑な問題が絡んでいるため、請求を考えられている方は是非一度弁護士にご相談ください。
掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
【相談事例61】婚活アプリでのトラブル①
【相談内容】
婚活アプリで知り合った男性と交際をしていました。
男性とは約2年程度交際しており、私の両親も挨拶しており、彼からは、「そのうち自分の両親にも相談する」と言われており、私も真剣に結婚を考えていました。
しかし、彼のSNSをたまたま見つけて中を見たところ、彼が既婚者であることが分かりました。
これまで2年もの間裏切られていたのかと思うと彼を許せないため、慰謝料請求を行いたいと思っています。
【弁護士からの回答】
婚活という言葉が一般的に知れ渡るようになり、最近では、ご相談者様のように婚活アプリを使って婚活を行う方も増えていると思います。
婚活アプリでは、知り合うまでに相手の情報を詳しく知ることができないケースも多く、既婚者であるにも関わらず独身を装って女性と会う男性も少なくないと聞きます。
そこで、今回は、既婚者であるにも関わらず独身と偽って交際をした男性に対する慰謝料請求等についてご説明いたします。
1 交際関係の解消は原則自由
まず、婚約状態になっている場合は別ですが(婚約破棄に関しては別の機会にご説明させていただきます。)、単に交際している状態を解消する場合には、原則として慰謝料は発生しません。
交際関係は、一般的に、婚約関係と違い、法的に保護される関係であるとは認められていないため、他に好きな人ができたという理由などで交際関係を解消した場合であっても、恋愛自体は自由であることから、原則として元交際相手に対して慰謝料の請求は認められません。
2 貞操権侵害を理由とする慰謝料請求
もっとも、ご相談者様の事例のように、既婚者であることを秘して交際関係(性的関係)に至った場合には、貞操権を侵害されたとして、慰謝料請求が認められる場合があります。
既婚者であることを秘している場合だけでなく、全く結婚する意思がないにもかかわらず、結婚をすることを約束し、交際関係を継続していた場合にも認められる場合があります。
この貞操権侵害に関する慰謝料請求に関しては、事案の具体的な内容を踏まえ、「貞操権を侵害された」と認められるような場合でなければ認められないものであり、その認定は非常に複雑であることに加え、認められる金額についても、交際期間、その間の交際内容、妊娠・中絶の有無などで大きく変化しうるものであるため、慰謝料請求を検討されている方は是非一度弁護士にご相談ください。
掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
【不動産】管理組合と管理会社の法律関係
Q. 私の住んでいるマンションで、管理費の長期滞納者に対する督促の文書を管理会社から送ってもらいました。しかしながら、管理費の支払いは無く、管理会社はそれ以上の対応をしてくれません。回収の対応まで管理会社でやってくれるのではないのでしょうか?
1 管理会社と管理組合の関係について
区分所有法3条
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律4条
1 管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう努めなければならない。
2 マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない。
上記の2つの条文を見ると、管理組合がマンション管理業務を担当することが想定されている、と考えられます。そして、管理会社がマンションの業務を行うことを要請するような文言はありません。あくまでも、管理組合が管理会社にマンション管理を委託することによって、管理会社によるマンション管理が可能となる、ということです。
つまり、管理組合と管理会社の関係は、管理委託契約を通じた委任・準委任関係となります。
2 トラブルはなぜ発生するのか
管理組合と管理会社の間で管理委託契約を締結した際、管理組合はその契約内容が「全部委託型」だと思っていたとしても、管理会社はあくまでも委託契約によって委託した業務に対してのみ責任を負うこととなります。
マンション標準管理委託契約書を見ると、管理会社が委託業務としてできることは助言等に留まる事項が少なくありません。管理組合が管理会社に対して、マンションの管理のすべてをやってもらえるものと期待する一方で、管理会社に対する委託内容はその期待のすべてに答える内容ではないために、双方の認識にずれが生じると、紛争に発生する可能性があるのです。
3 マンション設備に不備があった場合
事例①
私のマンションには排水設備に不備があり、排水状況が悪い状態です。管理会社に対して建物の点検業務を委託したのですが、全く補修が進んでいません。
建物に今回のような欠陥があった場合には、管理会社が、管理組合に代わって補修工事の依頼をしたり、施工業者と交渉したりといった対応をしてくれると思っていたのですが、どうして補修が進まないのでしょうか。
管理組合は、管理会社が主体となって完全な補修工事を行ってもらえるものと期待していたところ、実際の管理会社への委託業務の内容は、補修すべきことを指摘し、工事の発注等について管理組合へ助言する義務を負うにとどまっている、という、管理組合の期待と管理会社の委託業務内容が行き違っていないケースです。
判例では、マンション分譲時点からの欠陥の補修については、本来、販売会社・施工業者に対して主張すべきであり、管理会社については、直ちに販売会社等と同様の補修責任があるとはいえないと判示し、建物の補修に関する管理業者の義務としては、管理委託契約書上、
①補修工事、設備の保守点検等の外注に関する義務
②販売会社、施工会社等との業務折衝等
の項目があるとしても、その文言からは、販売会社あるいは施工業者に対し、
・管理組合の補修工事の要望を伝えることで行動を促す
・工事が実際に施工されているかどうかを確認する
・施工された工事内容に問題があった場合には追加で補修を求めるか、それとも他社に外注するか、等について、管理組合の意向に従い、決定された方針での事務を補助する
といった対応に留まるとして、管理委託契約上、管理会社には債務不履行は無いとしています。
4 管理費を滞納している区分所有者に対する請求
事例②
管理会社から、管理費を長期間滞納している区分所有者に対し、管理組合名義での内容証明郵便で管理費の支払いを求める通知を発送してもらいました。しかしその後、管理会社はそれ以上の対応は出来ないと言われています。管理会社が取り立て業務までやってくれると思っていたのに、通知の発送しかして貰えず、納得がいきません。
マンション標準管理委託契約書10条では、
乙(管理会社)は、・・・出納業務を行う場合において、甲(管理組合)の組合員 に対し別表第一1(2)②(下記参照)の督促を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、 その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は甲(管理組合)が行うものとする。
2 前項の場合において、甲(管理組合)が乙(管理会社)の協力を必要とするときは、甲(管理組合)及び乙(管理会社)は、その協力方法について協議するものとする。
別表第一1(2)② 管理費等滞納者に対する督促
一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。
二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、支払期限後○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。
と記載されています。
つまり、管理会社が管理委託契約に従って滞納者への督促をしたものの、結局未払のままであった場合、管理会社の業務としてはその時点で終了となり、その後の対応(督促を続けるか、それとも未払管理費回収のために法的手段をとるか)を検討するのは管理組合となります。
また、そもそもマンションの管理費は、管理組合の債権であるため、管理会社が債権回収をすることは出来ないため、管理会社に債権回収の結果まで責任を追及することが出来ないのは当然のことなのです。もし回収をする場合には、弁護士等に依頼する必要があります。
5 まとめ
「管理会社」という呼び名からも、マンションの管理について全て対応してもらえる、と誤って認識してしまうこともあるかもしれません。しかしながら、管理会社も契約に従って業務を行っているので、管理会社の対応に疑問を持った時には、まず先に管理委託契約書を確認して、どこまでの業務に対応してもらえるのかを確認することが、行き違いを起こさないためにも大切となるのです。
年俸制で企業が気を付けるリスク
国内の企業では年俸制を採用している企業は少ないですが、外資系の企業やベンチャー企業などでは、従業員に労働時間を意識せずに業務に取り組んで欲しいといった思いから、年俸制を採用している企業、若しくは導入を検討している企業が多く存在しています。
今回は企業にとって年俸制を採用することによる、月給制との相違点、リスクについてご説明します。
1.年俸制について
年俸制とは、支払われる給与が1年単位で固定されている給与体系の事を指します。金額については従業員との合意に基づき決定されますが、年俸金額の決定方法が不合理でなければ、特別に法的な制限は設けられていません。
一部の経営者の方は、年俸制を採用すれば従業員との間で合意した金額を年に1回支払うことで給与の支払いが済むという認識をお持ちの方もいらっしゃいますが、その考えは誤りです。
年俸制を採用しても、一般的には月給制と同じように年俸を12等分に分割して各月に1度は支払う必要があります。
万が一、従業員が傷病により働けないといった場合にも毎月年俸を12分割した金額を支払わなくてはなりません。
また、年俸制を採用したとしても、労働時間の管理、残業代の支払い、といった点は月給制と同様に対応する必要があるため、それらの手間を省くことを目的に年俸制を採用するといったことは出来ません。
よって、月給制と年俸制の違いは、給与の金額が月単位で変動するのか、もしくは年単位で変更するのかという部分のみになります。
それでは、年俸制を採用することによる企業のメリットとはどこにあるのでしょうか?メリットの1つとして人件費が年単位で固定されるため、長期的な経営計画が立てやすくなるという点があります。
月給制では営業手当等によって賃金が大きく変動することがあるため、当初の経営計画より人件費が大きく変わる可能性があります。
しかし、年俸制では基本的に残業代以外の賃金が変動する可能性は少ないため、経営計画通りの人件費で事業を進めることが可能となります。
もっとも、従業員にとっては、仕事の成果が賃金に反映されるのは最長で1年後となるため、モチベーションの維持することが難しいという問題点も存在します。
2. 年俸制における残業代
前述した通り、企業は年俸制を採用したとしても、法定労働時間を超えた労働時間について残業代を支払う義務を負っています。
企業としては毎月の残業代を算出する手間を省くために、年俸に固定残業代を含めて支払うケースがあります。なお、年俸に固定残業代を含めるという扱いをする場合には、雇用契約書において基本給と固定残業代を明確に区分して明示する必要があります。
これに加えて、固定残業代が何時間分の残業に対して支払われているのかを明確にしておく必要があります。
これらが雇用契約書に明示がされていない場合、従業員との間で残業代のトラブルに発展すると、裁判所等から、固定残業代は無効として年俸の全額が基本給であると判断されてしまい、年俸とは別に残業代を支払わなければならないリスクが生じます。
そのため、年俸制を取り入れる場合には、企業と従業員に認識のずれが生まれないように正確な雇用契約書を作成し、年俸制に適応した就業規則を整備してリスクを排除する必要があります。
3.年俸制で減額をする際のリスク
企業は年俸制の採用によって長期的な経営計画が立てやすくなる一方で、従業員との間で年単位の契約を結んでいるため、業績不振に陥ったとしても企業側の一方的な理由で減額を行う場合には、従業員にとっては明らかな不利益変更であって、従業員の個別同意がない限り、許されません。
したがって、年棒を減額する場合は、必ず従業員の合意を得るように注意が必要です。
また、従業員の同意を得るときに注意すべき点は、企業が従業員に同意を強要していないこと、つまり従業員の意思に基づいて合意がなされているという点が重要になります。年俸額の合意決定権は従業員が有していると考えておくことが相当です。
賃金規定等で年俸の増減の規定が定められている場合には、その規定を超える減額は認められません。
仮に、賃金規定等が整備されておらず企業側の判断によって翌年の年俸が決まる場合では、一般的に年俸額の減額に限度はありませんが、社会通念上認められない不合理な減額については権力の濫用と判断されるリスクもありますので注意が必要です。
4.まとめ
今回は年俸制について説明をしましたがメリット、リスク等を含めご理解いただけましたでしょうか?リスクを軽減するには、正確な雇用契約書の作成、就業規則の整備、従業員との合意、が大切なポイントとなります。
年俸制の採用を検討している企業は専門家に相談したうえで、現状のまま年俸制をスタートさせて問題がないか精査を行い、必要であれば就業規則等を整えたうえで、年俸制への移行を進めましょう。
安全衛生管理体制の重要性
労働安全衛生法(以下「安衛法」といいます。)とは何かご存知でしょうか。安衛法は、1972年に職場における、労働者の安全と健康を確保するために制定されました。
安衛法では、主に「労働災害の防止」「健康の保持増進」「快適な職場環境の形成」等を促進するための規定が定められています。
そこで、使用者は労働者が安全に作業できる環境を作るため、及び労働災害を防止するために安全衛生管理体制というものを確立し、統括安全衛生管理者、安全管理者及び衛生管理者を選任しなければいけないこととなっています。
1.統括安全衛生責任者とは
統括安全衛生責任者とは、現場の混乱や思わぬ労災を防ぐために、特定元方事業者(建設業・造船業)の事業所で働く労働者の安全を統括する人のことです。
なぜ統括する必要があるのかというと、労働者が1つの会社(雇い主)から派遣されている場合は、指導・指揮も統一しやすいのですが、複数の会社(雇い主)から派遣されている労働者が混在している職場では、指導・指揮系統が乱れがちになるためです。
建設現場等では、関連して行われる事業が複数の元請人に分割して発注されたり、複数の下請人に分割して発注される等、複数の事業場の作業員が混在して働いています。
このように、複数の事業場の作業員が安心・安全に作業を行うことができるように努めることが、統括安全衛生責任者の職務と言えます。
<統括安全衛生責任者になるには?>
特定安全衛生責任者の業務を行うにあたり、必要な免許等はありません。資格要件としては、「建設現場においてその事業の実施を統括管理する者」であり、統括安全衛生責任者は、実質的に現場を統括する立場にあること(現場をよく把握していること)が大切なのです。つまり、現場の責任者として仕事を管理している人が適任と言えるでしょう。
2.安全管理者とは
職場の安全全般を管理する人のことです。林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業・製造業などの業種で、常時50人以上の従業員を雇用している事業場(会社単位ではなく、支店や営業所などの場所ごと)は選任が義務付けられています。
しかし、従業員が50人未満の事業場は安全管理をしなくてもよいというわけではありません。常時10人以上50人未満の従業員を雇用している場合は、別途、安全衛生推進者(中規模な事業場において、その事業場の安全・衛生に関する事項を統括管理する者)を選任する必要があります。
なお、安全責任者の選任人数は決まっていません。ですので、安全管理者を多く選任しすぎてしまうと、今度は安全管理者同士の情報共有が難しくなるため、選任人数も踏まえて考えることが望ましいと言えます。
3.安全管理者になるには?
安全管理者になるためには、①労働安全コンサルタントの資格を取得するか、②一定期間の実務経験を積んだ後に厚生労働大臣が定める研修を修了する必要があります。
研修は、厚生労働省に登録した民間の業者が請け負っており、全国で受講が可能です。研修の長さは2日間で、必要経費は1万円~1万5千円となっています。
②のうち、必要となる実務経験の期間は、理科系の大学・高等専門学校の過程を卒業した方で2年、同じく高校で理科系の過程を選択し、卒業した方で4年、理科系以外の課程の中学・高校・大学を卒業した方は4年~7年です。
4.衛生管理者とは
衛生管理者とは、従業員が安全に衛生に仕事ができるように職場環境を調えたり従業員の健康を管理したりする人のことです。常時50人以上を雇用している職場では対して、衛生責任者の選任が義務付けられています。
そのため、安全管理者の選任が義務付けられていない職場であっても、衛生管理者の選任は絶対に必要です。
なお、雇用する従業員の勤務形態は問われません。正社員1人にパートやアルバイトが49人の職場でも、衛生管理者の選任が必要です。
また、事業所に常時ほとんど人がいない場合でも、書類上50人以上の従業員が所属している場合は選任が必要になります。
①衛生管理者の種類と専任の条件
衛生管理者には、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者があります。第一種免許は全業種で衛生管理を行うことが可能ですが、第二種免許では、有害業務と関連の少ない小売業や情報通信業などの職場においてのみ、衛生管理を行うことができます。
②衛生管理者になるには?
(1)大学(工学か理学に関する課程)を卒業し、厚生労働省の定める研修と修了試験を受ける。
(2)一定期間労働衛生に関する実務経験を積み、資格試験に合格する。
(3)歯科医師・医師・薬剤師等の資格を取得し、必要書類を労働基準監督署に提出する。
(4)労働コンサルタントの資格を取得する。
などの方法があります。実際に労働衛生の職務についている方はそのまま実務経験を積んで試験に合格するのが一番の早道です。安全管理者のように研修を受ければなれるものではないので、難易度は衛生管理者の方が高くなっています。
5.衛生管理者と安全管理者の違い
衛生管理者は、職場で働く従業員の健康や衛生管理を行い、安全管理者は職場の安全管理を行います。2つの職務についている方がそれぞれの職務を全うすることにより、従業員は安全な職場で衛生的に働くことができるのです。
安全管理と衛生管理は共通する部分も多いため、お互いに協力して職務を行うことも多いでしょう。また、職場によってはより安全で衛生的に仕事を行うために、衛生管理者・安全管理者が構成メンバーとなる安全衛生委員会の設置が、法律で義務付けられています。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は安全衛生管理体制についてお話しました。
統括安全衛生管理者、安全管理者及び衛生管理者がそれぞれの職務を全うするだけでは、安全衛生管理体制の構築には不十分です。従業員の観点から見た危険箇所(不衛生な箇所)があれば逐一報告してもらえるよう、従業員との信頼関係を作ることも大切です。
業務災害の定義と起因性
会社及び労働者の双方にとって、業務災害を発生させない方が良い環境だと言えます。
では、完全に業務災害を発生させない方法はあるのでしょうか?
答えは「NO」です。職種にもよりますが、一般的には何らかのモノを建造したり製造したりする建設業や製造業の現場や、多くの建材や機械が導入されている場所では業務災害が発生しやすいとされており、事務だけの会社でも発生する可能性ももちろんあります。
では、何をもって業務災害と言うのか、どういう方法をとれば業務災害を発生させにくい会社にすることができるのかについて、定義や事例を挙げて説明していきます。
1.業務災害とは
「業務災害」とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます(いわゆる「業務起因性」。)。
また、業務災害に対する保険給付は労災保険が適用される事業(原則、国の直営事業、非現業の官公署、船員法の適用を受ける船員を除いて、1人でも労働者を使用している事業が適用事業となります。)に、労働者として雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われるものですから、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません。(いわゆる「業務遂行性」。)
以上のことから、業務上と認められるためには、「業務起因性」が認められなければならず、その前提条件として「業務遂行性」が認められなければなりません。
「業務遂行性」の判断にあたっては、①事業主の支配・管理下で業務に従事している場合、②事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合、③事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合に分けて検討することができます。
2.事例の検討
ここからは、具体的な事例を用いて、業務災害に当たるかどうかを検討していくことにします。
(1)作業中
作業中に発生した災害は、業務災害として認定されることが大半を占めます。しかし、業務外の原因である場合や、担当している業務以外で発生した災害は業務災害として認められない場合も多々あります。
したがって業務遂行性は、労働者が労働契約に基づいて事業主の管理・支配下にある状態にないといけないのです。
(2)出張中
出張とは事業者の命令等で、通常働く勤務地から離れて別の所で働き、戻ってくるまでの一連の流れのことを指します。
つまり、出張中は事業主の支配下にあるということであり、私的行為以外の行動については業務遂行性が認められるとされています。
(3)通勤途上
通勤途上とは、いわゆる通勤中のことです。この時は、自宅と就業場所の往復をするものの事業主の支配下にあるとは言えず、業務遂行性があるとは言えません。
ただし、次のような場合は、業務災害となります。
①事業主が提供する労働者専用バス・車
②事業主の命令を受けて出勤した際の事故・災害等
(4)療養中
療養中の災害とは、例えば、業務中にケガをして入院又は通院した場合に、治療を受けたその帰り道の途中で転んでまた同じ箇所をケガして悪化させた場合などです。
この療養中の業務災害の判断は困難な事例が多いのが現状です。 業務上の傷病の療養中、業務外の災害によって傷病が加重または増悪する場合がありますが、通院や日常的な行為などの業務外の行為が介在しているので、当該傷病の増悪に業務起因性が認められるか否かにより、「業務上」の傷病と言えるか判断されることになります。
(5)天変地異
天変地異とは暴風雨、水害、土砂崩れ、落雷、雪害等のことで、業務と無関係の自然現象です。
そのため、天災地変による災害が業務遂行中に発生したとしても、業務起因性が認められないのが原則です。
したがって、天災地変による災害は労災とは認定されません。ただし、業務の性質・内容、作業条件・作業環境、事業場施設の状況などから、天災地変に際して災害を被りやすいという場合は、天災地変による災害も業務に伴う危険としての性質を持ってきます。
天災地変による災害が、天災地変による災害を被りやすい業務上の事情があり、天変地異と当該事情とあいまって発生したと認められる場合は、業務に伴う危険が現実化したとして業務起因性が認められます。
(6) 第三者による行為災害
第三者行為災害とは、たとえば通勤中や営業中の交通事故などにおいて、一般的に事故の相手方である加害者が存在する災害のことです。
「第三者行為災害」となる災害には次のものがあります。
<第三者行為災害の例>
①交通事故
②通勤途上でペットに噛まれたなどの理由で負傷した場合
③業務に起因して他人から暴行を受けた場合
ここでは、③を例に説明します。
たとえば、鉄道の駅員などが酔っ払いの乗客に注意したことで暴行を受けてしまった場合、駅員が職務上の義務として注意をした結果、乗客による暴行を誘発したと考えられます。
その場合は業務上で起こった第三者行為災害となります。一方、同じく業務中に起こった暴行でも、労働者同士のケンカが原因の場合は第三者行為災害とはなりません。
それは労働者の故意により発生したものであり、業務に起因した災害とはみなされないからです。
以上のように、第三者行為災害は業務に起因して意図せず起こった災害を指し、労災保険の当事者以外の加害者が「第三者」となります。
3.まとめ
様々な事例を基に、どういったことが原因で業務災害となるのか見ていきました。
結論としては業務災害の原因は、身近なところに潜んでいます。事業主としては、業務災害防止のために労働安全衛生関係法令の順守、自主的な安全衛生活動、リスクアセスメント(作業に伴う危険性又は有害性を見つけ出し除去、低減する手法)に基づく取組などが大切です。
危険性というものは一定ではなく、環境面の変化や人の異動などに左右されますので、取組を行っているからといって安心するのではなく、半年に1回は実施中の取組みを見直すようにした方が良いかもしれません。
健康診断の義務と健康の保持増進のために
従業員が仕事をする上で事業者が注意しなければいけないことは多岐にわたります。
その注意しなければならないことの1つとして従業員の健康管理があります。
特に重労働が多い職場では精神的にも肉体的にも大きな負担がかかってしまうことから、健康管理ができていないと労災に発展したり、トラブルに発展したりと最悪の事態にもなりかねません。
そのため、労働安全衛生法第66条では事業者による健康診断が義務化されており、精神面においても、面接指導や一定の従業員数以上の事業場ではストレスチェックが義務付けられています。
1.一般健康診断について
(1)雇入れ時の健康診断
事業者が、常時使用する労働者を雇入れる場合は、医師による健康診断を実施しなければなりません。
「常時使用する労働者」とは、①雇用期間の定めのない者、②契約期間が1年以上である者、⑶契約更新により1年以上引き続き使用されている者、④契約更新により1年以上使用されることが予定されている者であり、かつ、その者の1週間の所定労働時間が、当該事業場において同種の業務に従事する通常労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である者をいいます。
したがって、アルバイトやパート等の短時間労働者についても、上記の基準に該当すれば,健康診断の対象者となります。
(2)定期健康診断
事業者は、1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を受けさせなければなりません。
ただし、雇入時の健康診断、2以降で説明する特殊健康診断を受けた者については、当該健康診断の実施日から1年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略することができます。
2.特殊健康診断について
特殊健康診断とは、有害な業務(高圧室・潜水・放射線・鉛・四アルキル鉛・有機溶剤・石綿・除染)に関連する業務を行う者に対して設けられている健康診断のことです。
有害な業務に従事させている場合は、6カ月以内ごとに1回(但し、四アルキル鉛業務については3ヶ月以内に1回)、定期的に特別項目についての健康診断を行わなければいけません。
特別な項目とは一般健康診断の際に実施する項目のほかに、四肢の運動機能調査、皮膚検査、被ばく検査などで、それぞれの有害な業務で発生しうる状態異常(機能障害や皮膚が変色している等の症状が出ていないか)の確認をするために必要な項目です。
健康診断を忘れないように注意しましょう。
3.臨時健康診断について
臨時健康診断とは、都道府県労働局長が労働衛生指導医の意見に基づいて、その実施を指示することができる健康診断のことです。
感染が疑われるような病気(結核やノロウイルス)などは医師や本人から連絡が事業主にあるかと思いますので、速やかに労働局に報告しましょう。
その後で、労働局から健康診断の項目や受診対象者についての連絡が文書にて通知されます。通知された場合は速やかに健康診断を実施又は受診しましょう。
4.面接指導について
事業者は、労働者の労働時間の状況や健康面(精神的・身体的)に何らかの状態異常を感じた場合は、面接指導の対象となる労働者の申出により、医師による面接指導を実施しなければなりません。具体的には下記の通りです。
【面接指導】
①1週間に40時間を超えて労働させたときに、その40時間を超えた部分を通算して1月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者が対象です。
②ただし、研究開発業務従事者及び高度プロフェッショナル制度対象労働者については、1月あたり100時間を超える場合は、労働者の申出なしに、医師による面接指導を実施する必要があります。
②面接指導の対象でない者でも面接指導を受けさせることは可能です。ただし、対象でない人に関して面接指導を受けさせるかどうかは事業者の任意(努力義務)となっています。
【面接指導を実施する場合の注意事項】
(1)労働時間の算定は毎月1回以上実施し、労働時間の状況の記録の3年間の保存義務。
(2)上記①に該当する労働者に対する、時間外労働時間に関する情報の通知義務。
(3)面接指導の記録は5年間の保存義務。
(4)面接指導の結果に基づき医師の意見を聴くこと。
(5)医師の意見を基に対策すべき場合は、就業場所の変更・作業転換・労働時間の短縮・残業の短縮などの措置をとらなければならない。
なお、個人情報の観点からいうと、労働者が医師の面接指導を受けた場合、事業者は労働者の同意を得ないで医師から結果を聞いてはいけませんし、医師は労働者の同意を得ないで提供してはいけません。
5.ストレスチェックの実施について
上記4.のとおり、事業者は一定の労働者に対して、面接指導を実施しなければなりません。
しかし、事業者は企業規模が大きくなると、労働者全員の状態を確認することは困難になるため、そういった場合にストレスチェックを実施します。
このストレスチェックは、自己評価だけではなく、自分以外の労働者を見た時の項目もあり、職場全体のストレス状況の把握に役立ちます。
この結果に応じて、先ほどと同様に面接指導や職場環境の改善などの措置を講じることになります。なお、ストレスチェックについては常時50人以上の労働者を使用する事業場の場合に、1年以内ごとに1回、定期的に管轄の労働基準監督署に提出することになっていますのでお気を付けください。50人未満の場合は努力義務となります。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は健康診断や面談、ストレスチェックについてお話しました。事業者が労働者のストレスに配慮し、ストレスが生まれにくい環境をつくることが一番いい方法ですが、それは難しい方法です。
従って、ストレスチェックを行うことが職場の状況を早く知り、改善するのに最適なのです。
また、健康でいるためには心身の不調の早期発見が大切となっており、健康診断には2つの目的があります。
1つ目は、一次予防で健診結果から生活習慣の改善を行い、病気を予防することや、自分自身の生活習慣の問題点を自覚し、改善に取り組むきっかけとすることです。
2つ目が二次予防で病気を早期発見し治療につなげ、からだや時間・費用などの負担の軽減をはかることです。そのためにも、しっかり労働者の健康管理を行いましょう。
労働者と通勤災害
労働者の方は全員、公共交通機関、徒歩、自転車、バイク、又は車に乗って仕事場まで通勤しているかと思います。通勤災害とは、労働者が通勤中に被った負傷、疾病、障害又は死亡のことを言います。
では、どのような場合を通勤途中と指すのか、通勤の定義や通勤災害となるパターンについて見ていきましょう。
1.通勤の定義(労働者災害補償保険法第七条)
労働者災害補償保険法第7条において、「通勤」とは、労働者が就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとすると定められています。
そして、「次に掲げる移動」として、以下の3つが定められています。
① 住居と就業の場所との間の往復
② 厚生労働省令で定める(※)就業の場所から他の就業の場所への移動
③ 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)
※厚生労働省令で定める就業の場所とは、労災保険適用事業場に係る就業の場所、特別加入者(個人タクシー業者等を除く。)に係る就業の場所等のことです。
次からは、この「通勤」の要件を詳しく説明していくことにします。
2.通勤の要件
(1)「就業に関し」とは
通勤とされるには、移動行為が業務に就くため、又は業務を終了したことにより行われるものであることが必要です。
したがって、被災当日に就業することとなっていたこと、又は現実に就業していたことが必要となります。
(2)「住居」とは
「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところをいいます。
したがって、就業の必要上、労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くにアパートを借り、そこから通勤している場合には、そこが住居となります。
さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、別にアパートを借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊り、そこから通勤するような場合には、家族の住居に加え、アパートの双方が住居と認められます。
(3)「就業の場所」とは
「就業の場所」とは、業務を開始し、又は終了する場所を指します。一般的には、会社や工場等の本来の業務を行う場所をいいますが、外勤業務に従事する労働者で、特定区域を担当し、区域内にある数か所の勤務先を受け持って自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり、最後の用務先が業務終了の場所となります。
(4)「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動」とは
転任に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが、その往復距離(片道60km以上等)を考慮して困難となったため住居を移転して労働者であって、一定のやむを得ない事情により、当該転任の直前の住居に居住している配偶者と別居することになった者の住居間の移動のことをいいます。
(5)「合理的な経路」とは
「合理的な経路」とは、住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法をいいます。最短経路のことではありませんので注意してください。
合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。
また、当日の交通事情により迂回してとる経路、マイカー通勤者が月極の駐車場などを経由して通る経路など、通勤のためにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。
しかし、特段の合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
また、合理的な方法には、鉄道・バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車・自転車等を本来の用法に従って使用する場合、 徒歩の場合などが当てはまります。
(6)「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」とは
逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤とは関係ない行為を行うことを言います。ただし、逸脱や中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、当該又は中断の間を除き通勤途中としてみなされます。 (タバコやジュースの購入、公園での小休息、お手洗いなどがその例です)
通勤途中として認められた点が下記の通りとなります。
日用品を購入する
帰途に惣菜等を購入する
独身者が食事のため食堂に立ち寄る
クリーニング店に立ち寄る
選挙で投票する
医療機関などへ通院する
要介護状態にある家族を介護する(ただし、介護を継続的に又は反復している場合に限る)
3.通勤災害の際の対応方法
万が一、通勤災害が発生した場合は、会社は速やかに下記の手続きを行いましょう。
・公共交通機関の場合
社員が診療を受けた病院に、通勤災害用の書類(「療養給付たる療養の給付請求書」)を提出します。
裏面に、通勤経路や時間等を細かく記載する欄があるので、自宅から最寄り駅までの交通手段や所要時間、乗り換え方法など、会社に到達するまでのすべてを記載します。
・マイカー通勤時の事故の場合
マイカー通勤をしている社員が通勤時に事故にあった場合、前提として、労災保険で処理するか自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責)で処理するかを判断し、選択する必要があります。
どちらを選ぶかは会社の担当者が自由に決定できます。あとは担当者が社員に代わって保険会社に連絡を取り、保険会社から求められる書類を作成することになります。
なお、マイカー通勤による交通事故で第三者と接触事故を起こした場合、従業員の治療費などは、相手(加害者)の自賠責を使って損害賠償をしてもらうことが一般的です。
4.まとめ
通勤災害が発生した場合、それが本当に通勤災害となるのか、会社の担当者の確認作業が大事です。特に今日では、通勤災害の範囲は拡大傾向にあります。
実際に事故が生じた場合、担当者が「基準を知らなかった」、「判断を間違えた」という事態にならないよう、最新の情報に気を配っておきましょう。
意外と知らない会社法5~会社の分割など~
前回の記事では、 M&A、事業譲渡、合併についてお話をしました。
今回は、前回の続きとして、「会社分割」、それに加えて「会社の終わり」「倒産」についてお話していきたいと思います。
1.「会社分割」とは
「会社分割」とは、会社のすべての事業、もしくは一部の事業を他の会社に譲渡することを言います。
前回の記事で、事業譲渡についてお話しましたが、事業を他社に譲渡するという点では、事業譲渡と会社分割は共通しています。ですが、事業譲渡は買い手側の企業が譲渡される事業を選ぶことができるのに対し、会社分割は、譲渡する事業に関する全ての権利義務を他社に引き継がなければなりません。
もちろん、従業員についても引き継がれます。
また、会社分割には「吸収分割」と「新設分割」の2種類が存在します。
「吸収分割」とは、ある事業に関する権利義務の一部または全部をすでに存在している会社に承継する組織再編の方法、「新設分割」とは、ある事業に関する権利義務の一部または全部を新たに設立する会社に承継する組織再編の方法をいいます。
どちらの方法を取るにしても、分割会社は事業を譲渡する対価として、買い手側の企業の株式が付与されます。
吸収分割ではこの場合、株式は分割会社もしくは分割会社の株主に付与され、分割会社に付与されることを「物的分割」、株主に付与されることを「人的分割」と呼びます。
2.「会社の終わり」とは
みなさんは、「会社の終わり」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
恐らく、ほとんどの人が「倒産」を思い浮かべたのではないでしょうか。
ですが、「会社の終わり」が必ずしも「倒産」というわけではありません。
会社の終わりとは、「解散」、「清算」をすることを言います。
会社法では、会社法第471条によって以下のように定められています。
- 1. 定款で定めた存続期間の満了
- 2. 定款で定めた解散事由の発生
- 3. 株主総会の決議
- 4. 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
- 5. 破産手続開始の決定
- 6. 第824条第1項又は第833条第1項の規定による解散を命ずる裁判
さらに、長期間活動を行っていない会社、会社法で言うところの第472条第1項では「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの」を「休眠会社」と呼び、長期間登記がなければ、みなし解散となります。
会社が解散すると、「清算手続」に移ります。
清算では、会社の設立から現時点までに発生した債権や債務を整理し、株主に対して残余財産を分配します。その後、法人格が消滅することになります。
加えて、会社を清算したこと、清算が完了したことについては登記が必要になるので、忘れずに行ってください。
3.「倒産」とは
3で、「会社の終わり」と聞いて、どんなことを思い浮かべるか、お尋ねしたと思います。
4では、その質問の答えとして多くの方が1番最初に思い浮かべたであろう「倒産」についてお話していきたいと思います。
まず、会社の「倒産」とは、会社や個人が債務超過などによって経済的に破綻し、業務を続けて行くことができなくなる状態のことを言います。
明確な規定は存在しませんが、もし会社が「倒産」することになったとき、経営者は会社を再生する、もしくは破産するか、選択しなければなりません。
再生することを選んだ場合、「民事再生手続」もしくは「会社更生手続」のどちらかを行います。
「民事再生手続」は、業務は今まで通り継続しながら、「再生計画案」を立て、裁判所に提出します。
これが債権者の多数決で承認されると、再生手続が開始されます。
民事再生は、破綻、破綻寸前の企業がとる手続になりますので、手遅れになる前に行うことができる最善の方法と言えますし、会社を倒産させてしまった本人がもう一度経営を担うことになりますので、「私的整理」と近い再建方法と考えられているのです。
では、もう一方の「会社更生手続」とはどんなものでしょうか?
これは、「会社更生法」に基づいた手続で、民事再生と異なる点として株式会社のみが対象であること、大企業が行うことを想定していることが挙げられます。
さらに、経営権が管財人に移ること、担保権の実行が禁止されるという点においても民事再生とは異なります。
また、裁判所から任命された管財人は大きな権力を有し、会社を再建させます。
ですが、民事再生に比べるとかなりの時間と費用がかかってきますので、大企業の利用率が高くなっています。民事再生手続きや、破産が上手くいかなかった場合、会社更生手続きに移ることも可能となっています。
次に、破産することを選んだ場合、この場合は倒産した会社、もしくは倒産した会社の債権者が裁判所に申立てを行うことで手続が開始されます。
破産の手続が開始されると、破産する会社の業務は停止します。つまり、解散したことになるのです。
先ほど、手続きが開始されると業務が停止するとお話しましたが、ある一部の事業では収益をあげていると言った場合、この場合は、裁判所の許可を得ることで事業を継続していくことができます。
さらに、一部の事業のみを事業譲渡することも可能ですので、その場合は速やかに事業譲渡の手続きを開始しましょう。
4. まとめ
今回は、「会社分割」「会社の終わり」「倒産」についてお話してきました。
これらの言葉を聞くと、どうしてもマイナスなイメージを持ってしまいがちですが、そんなことはないということを、今回の記事で知って頂ければと思います。
国際結婚後の配偶者ビザ、名字、戸籍などについて
国際結婚をした場合、日本人同士の結婚と比較して様々な手続きが必要となります。また、戸籍、名字などについての取り扱いも日本人同士の結婚の場合と異なります。
今回は、国際結婚後の、配偶者ビザ、名字、戸籍などについてご説明致します。
1.日本人配偶者のビザの内容とは?
国際結婚をした場合、外国人配偶者は在留資格「日本人の配偶者等」を取得するのが一般的です。在留資格「日本人の配偶者《等》」とは、「等」という言葉が表す通り、配偶者だけでなく、子や特別養子も対象となっています。
<日本人の配偶者>
この場合の「配偶者」とは、現に法的に婚姻中の夫婦の一方の者をいうため、内縁関係、離婚や死別をしている場合は含みません。
また、有効に婚姻している者であっても、同居、相互扶助、社会的通念上の夫婦の共同生活の実体がない場合には、在留資格は認められません。
これは、在留資格目的での偽装結婚を防止するための措置となります。したがって、入国管理局では、夫婦の実体を証明出来るだけの資料と説明を申請者に求めています。
<日本人の子として出生した者>
日本人の子供であればいいので、婚姻をしていない日本人との間に生まれた子でも、認知さされていれば「日本人の配偶者等」として在留資格を取得することができます。
<日本人の特別養子>
特別養子縁組が認められるには、6歳未満で、実父母と身分関係が法的に消滅する要件を満たしており、家庭裁判所で定められた手続きを経る必要があります。
普通養子縁組では、実父母との法的関係が切れないため、日本人の配偶者等在留資格を取得することは出来ません。
2.日本人配偶者ビザ申請で同居って必要なの?
上記1で説明したとおり、日本人配偶者として在留資格を取得するためには、同居、相互扶助、社会的通念上の夫婦の共同生活の実体が必要となるため、夫婦の同居が実務上重要視されています。
新規での申請、ビザ更新時に同居の実態が無い夫婦は、細心の注意を払い入局管理局へ文書で説明する必要があります。入局管理局は夫婦の同居を当たり前のように押し付けてくる傾向がありますが、それは、偽装結婚で配偶者ビザを取ろうとする人が多いからです。
愛のない男女が同居するのは苦痛のはずなので、偽装結婚によるビザ取得の犯罪を防ぐために夫婦の同居が実務上重要視されているのです。
3.国際結婚をしたら名字はどうなるの?
日本人同士が結婚した場合は、戸籍が一緒になるため名字は夫婦のどちらか一方の名字に統一され、夫婦は同じ名字を使うことになります。日本では、女性が男性側の名字に変更するのが一般的です。
では、国際結婚をした場合はどうなるのでしょうか。
日本人女性が外国人男性と国際結婚をした場合、外国人には戸籍がないため、日本人女性は結婚前の本名の名字を使い続けることになります。
つまり、結婚しても名字は変わらず、夫とは名字が別々になります。しかし、結婚して「名字を統一したい」と思った場合は、結婚から6か月以内に本籍地又は所在地のいずれかの市区町村役場に「外国人配偶者の氏への氏変更届」を提出することにより、日本人は外国人配偶者の名字を使うことができます。
但し、婚姻の日から6か月を超えているときは、家庭裁判所に申立てをする必要があるため、注意が必要です。
以上の手続きを経て、戸籍の名前の名字が変わります。そして、子供が生まれた場合でも、親と同じ名字にすることができます。
では、離婚してしまった場合はどうなるのでしょうか。離婚した場合、自然と元の名字に戻るのではなく、3か月以内に「氏変更届」を提出する必要があります。
また、外国人女性が名字を日本人男性の名字にしたい場合は、「通称名」の登録申請をすればできます。
これは、あくまで「通称名」としての位置づけなので、外国人の本名自体は変わりません。
また、一度「通称名」を登録すると、変更が認められるのは離婚して通称名を廃止するとき、及び再婚時に姓を変更するときのみとなるため、注意が必要です。
4.国際結婚をしたら戸籍はどうなるの?
日本人と外国人が国際結婚をした場合、戸籍はどのように記載されるのでしょうか。
日本人には戸籍がありますが、外国人には当然戸籍がありません。
結婚前(つまり未婚の日本人)は、両親の戸籍に入っています。日本人同士で結婚した場合は、2人が一緒に入っている戸籍が作られますが、国際結婚の場合は両親の戸籍から抜けて、日本人配偶者一人の戸籍ができることになります。
外国人配偶者は戸籍がありませんが、日本人配偶者の戸籍謄本の身分事項欄に外国人配偶者の氏名や国籍が記載されることになり、これで婚姻しているという状態が分かります。
しかし、あくまでも外国人配偶者には戸籍謄本はありません。(ちなみに住民票は外国人にもありますので、日本人と同じように取得することができます。)
5.おわりに
以上のように、日本人同士の結婚と国際結婚では大きな違いがあります。
戸籍については日本人同士の結婚と国際結婚では記載事項が異なりますし、名字についてもたとえ夫婦の片方が日本人で、日本に住むからと言っても国際結婚であれば当然に同じ名字になるわけでもありません。
諸々の手続きで困ったときは、専門家に相談しましょう。