弁護士コラム

2019.06.26

起業する前に知っておくべきこと2~法人成り~

前回の記事に引き続き、今回も「起業する前に知っておくべきこと」がテーマです。

今回と次回の記事にわたって、個人事業主が法人成りするメリット・デメリットについてお話します。起業するにあたり、「ひとまず個人事業として始めてみようかな」と考えていらっしゃる方はもちろん、「個人事業として始めてみたけれど、法人化しようかな」といった既に個人事業主として活動されている方にも読んでいただけたらと思います。

前回の記事はこちらから→「起業する前に知っておくべきこと1~注意点~

1. 法人成りとは

法人成りとは、「個人事業主が、株式会社や合同会社などの法人を設立し、個人として行っていた事業を法人に移行すること」を指します。

2. 個人事業主が法人成りするメリット

法人成りによる一番のメリットは、節税できる点です。
現在の日本の税制では、個人に係る所得税は、累進課税制度が採られており、法人に係る法人税は比例課税制度が採られています。つまり、利益があればあるほど、個人事業主よりも法人のほうが節税できるということです。
それでは、具体的にどのように節税できるのか、1つずつ見ていきましょう。

<給与にかかる税金>

(1)給与所得控除

そもそも、給与には、給与所得者が収入から差し引くことができる給与所得控除があります。この給与所得控除は、みなし経費と呼ばれるもので、一定額について経費とみなすため、控除をすることができることになっています。
個人事業主だと、給与ではなく事業所得という扱いになりますが、法人成りした場合、社長である自分自身に給与を支払うことができます。つまり、社長の収入から給与所得控除として一定額を差し引くことができるため、その分の所得税を節税できるというわけです。

(2)家族に対する給与の支払い

個人事業主の場合、事前に税務署に届出をしていれば、青色事業専従者制度によって家族に給与を支払うことができますが、年齢や期間など働き方に制限があります。
しかし、法人成りすると、個人事業主と違って前述したような制限がないので、パートタイムで働かせるなど働き方を自由に決めることができます。
また、日本は、累進課税制度を採用しているため、所得額が多くなればなるほど高い税率が課されます。つまり、個人事業主が一人で稼ぐよりも、法人化して家族への給与支払いという形で分散して還元することによって1人あたりの収入が下がり、それに応じて税率も下がるので、家族全体で考えると税金が安くなります。

(3)配偶者控除・扶養控除の適用

個人事業主の場合、事業専従者である家族に支払う給与について、配偶者控除や扶養控除を適用することはできません。

しかし、法人成りして、家族の給与を年間103万円以下にすると、配偶者控除や扶養控除を適用することができるため、その分所得税を節税できます。

(4)退職金

個人事業主だと自分自身に退職金を支給することができないのに対し、法人の場合は自分に対して退職金を支給することができます。また、退職金が以下の金額までであれば、課税されません。

勤続20年以下の場合
 40万円×勤続年数 ※最低80万円
勤続20年を超える場合
 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
 ⇒勤続20年を超えると、より優遇されます!

<給与以外にかかる税金>

(1)赤字繰越

年度の収支が赤字になってしまった場合、この赤字は翌年度以降に繰り越すことができます。
前回の記事でも少し触れましたが、個人事業主の場合、赤字は3年間しか繰り越すことができません。
しかし、法人成りすると、赤字を9年間(平成30年4月以降は10年間)繰り越すことができます

(2)消費税を2年間免税できる

2年前(法人の場合は2期前)の売上高が1,000万円を超えている、または、前年上半期(法人の場合は前期の上半期)の売上高が1,000万円を超えている場合、消費税を納税しなければなりません。
個人事業主が、売上高が1,000万円を超えて納税義務が発生するタイミングで法人成りをすることで、通常の会社設立をした場合と同様に、2年間免税されます
ただし、前述したとおり、第1期目の上半期の売上高と給与(役員報酬含む)の金額がいずれも1,000万円を超えた場合は、第2期目から消費税納入義務が発生しますので、注意が必要です。

(3)出張手当

個人事業主の場合、自分自身に出張手当を支払うということはできません。
しかし、法人かつ出張規程を作成している場合は、出張手当を支給できます。出張手当は経費扱いになる上、消費税法上、仕入税額控除の対象になります。出張手当は、受け取った従業員の給与には加算されないので、社会保険料や所得税がかからず、従業員にとっても負担になりません。

(4)役員社宅

個人事業主の場合、居住用に借りている自宅の家賃は経費とすることはできません。
しかし、法人の場合は、自宅を法人名義で契約して、社宅として貸し出せば、家賃の半分ほどを経費として計上できます

(5)生命保険

個人事業主の場合、生命保険に加入すると、最大12万円まで所得税の生命保険料の控除をすることができます。
これに対し、法人の場合、法人名義で契約し、被保険者を従業員、受取人を法人とすることで、保険料を経費とすることができます

3. まとめ

今回の記事では、法人成りをする税金に関するメリットについてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか?個人事業として始めた場合でも、売上が1,000万円程度になったら、法人成りした方がお得になります。
次の記事では、今回の続きとして、法人成りの税金以外に関するメリットと、法人成りのデメリットについてご説明します。

2019.06.25

テレビ製作において注意すべきポイント~著作権の取り扱い~

これまで数回にわたり、テレビ番組製作において注意すべきポイントをご紹介してきましたが、今回は、「著作者が死亡している場合の著作権の取り扱い」についてご説明したいと思います。
さまざまな場面において、盗作や無断使用等で何かと話題になる「著作権」ですが、著作者が死亡していた場合、その権利はどうなるのでしょうか。

1.著作権とは?著作者の人格的権利とは?

著作者には、著作財産権(狭義の著作権)と著作者人格権の2つの権利があります。著作財産権は、複製権や上映権、貸与権、二次的著作物の利用権などが挙げられます。これらの権利は全部または一部を、家族や他人などに譲渡することができます。

一方、著作者人格権とは、自分の作品を自由に公表することができる権利(公表権)や氏名表示権、同一性保持権のことを指し、一身専属性の権利です。したがって、著作財産権とは異なり、相続したり譲渡することはできません。

しかしながら、著作権法第60条では、著作者が死亡した後の著作人格権についても、一定程度保護するべきとしています。

第60条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

以上を前提にして、話を進めていくことにしましょう。

2.著作者が死亡している場合の許諾申請

(1)著作者死亡後、著作権は70年間保護される

ある写真を、テレビ番組内で使用するため許諾申請を行おうとした際、撮影した写真家が今から60年前に死亡していたとします。この場合、そもそも著作権の許諾申請は必要なのでしょうか。許諾申請が必要な場合、誰に著作権の使用申請を行えばよいのでしょうか。

著作権法では、著作者の権利を認め、著作権を保護する目的としてこれまで「著作者の死後50年間は保護期間(映画についての保護期間は70年間)として存続される」としていました。しかし、著作権法は、平成28年に環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップ協定に関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(以下、「TPP整備法」といいます。)により改正されました。
そのため、現在は原則全ての著作物の保護期間が「著作者の死後70年間」に変更になっています(著作権法第51条以下)。

ですので、TPP整備法が制定される以前でしたら、今回の写真家の作品は許諾を得なくても使用することができていましたが、保護期間が著作者の死後70年間となった現在の著作権法においては、許諾申請が必要となります。

では、誰にこの許諾申請を行えばいいのでしょうか。上の例であげたように、著作物を番組内で使用する際、許諾を得なければならないのは、著作者の相続人となります。既に説明したように、著作権には、著作者人格権と著作財産権(狭義の著作権)に分類されますが、著作財産権は相続の対象になるため、相続人が権利を引き継ぐこととなるのです。

そして、著作権を相続する人が決まっている場合には、その相続人から許諾を得ればよいのですが、著作者の死後間もない場合や相続で揉めている場合など、権利を取得する相続人がはっきり決まっていないこともあります。
そのような場合は、法定相続人や受遺者等、相続対象となる人全員から許諾を得なければなりません。

(2)財団や管理団体が管理するケースも

では、著作者に相続人が誰もいない場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、生前贈与や遺言により、第三者に権利が譲渡されている場合には、当該受贈者・受遺者が著作権を取得するため、これらの者を相手に許諾申請を行います。
著作者が著名な作家や芸術家などの場合、財団や管理団体を設立し一括して著作物の管理を行っていることもあります。

このケースでは、遺族ではなく財団や管理団体に許諾申請をすることとなりますので、スムーズに番組制作を進めるためには、早い段階でどの人物や団体に著作権が移っているのかを確認し、承諾を得ることがポイントです。
なお、誰にも譲渡されず、相続する者もいない場合は、著作権法第62条1項1号に基づいて著作権は消滅することとなります。

3.具体例

例えば、著名な作家の死亡後に未公開の小説が発見された際など、書籍化やドラマ化を検討することもあるかと思います。このようなケースでも、遺族や権利を有している相続人へあらかじめ許諾申請を行うことで、公開後のトラブルを防ぐことができるでしょう。
この場合も、2.(2)のように、管理団体や遺言により第三者へ権利が譲渡されていることがありますので、誰が問い合わせの窓口になっているか確認が必要です。

また、相続人に著作権が譲渡された作品の使用許諾申請が認められたとして番組内で使用する際などに、すでに著作者本人は死亡しているからといって、作品へ必要以上の改変を行ったり、著しく誤解を招くような不適切な表現を用いて紹介するなどした場合、著作権法第60条により、その遺族や団体から侵害を受けたとして差し止めを求められることもあり得ます。

著作者本人がすでに死亡しているからといって、過度な改変などを行うことは好ましくないといえます。節度を守り使用するようにしましょう。

4.まとめ

今回は著作者が死亡した場合の著作権について見ていきましたが、著作者が生存している場合、テレビ番組の制作時において著作権は当然に重要な権利となります。権利の特徴や期間などをよく理解した上で許諾申請等を行うことが大切です。

また、死亡後に著作権の行方がわからなくなっており、相続人の判明に時間がかかることも予想されますので、制作に間に合わないといったことがないよう、スケジュールに余裕を持って調査、交渉や申請を進めて行きましょう。

2019.06.24

【離婚問題】離婚と子供の問題―面接交渉権―

離婚に伴い子供の親権を取得することが出来なかった場合、今後子供との面会が出来るのか、どの位の頻度で面会が出来るのか分からないことはありませんか?今回は子供との面会交流についてご説明します。

1.面会交流権とは

離婚時に親権を取得することが叶わず、子供と離れて暮らすことになった親には、面会交流権が認められています。面会交流権とは、訪問、文通、電話などを通じて子供と交流する権利のことです。

この権利に基づいて、子供と親が連絡を取り合ったり、会ったりすることを一般的に面会交流と言います。なお、以前は「面接交渉」という言葉がよく使われていましたが、現行民法に、「父又は母と子との面会及びその他の交流」という文言が明記されたことから、「面会交流」という言葉で使われることが多くなりました。どちらも同じ意味ですので、ここでは「面会交流」という言葉を使います。

2.面会交流の内容を決めよう

面会交流の取り決めについては、離婚の成立前に離婚協議書等で文書化して残すことが理想ですが、実際にどの様な項目について調整する必要があるのでしょうか?

◆頻度と時間……週、月当たりの回数、1回当たりの所要時間
◆場所……面会場所の制限の有無
◆宿泊の有無……宿泊の可否
◆子供の受渡し……受け渡し場所、受け渡し場所までの交通費の負担
◆学校行事等……入学式、卒業式、運動会等の行事への参加の可否
◆長期休暇時……夏休み、冬休み等の連休中の対応
◆間接的な交流…手紙や電話、メール等間接的な交流の可否、制限
◆お小遣い等……面会時にお小遣いやプレゼントを渡すことの可否

以上が、面会交流に関して一般的に取り決めておくべき内容となります。他にも互いの生活状況によって個別に決めておくべきこともあるため、事前に弁護士などの専門家に相談し、決めるべきことを整理しておくことが理想です。
なお、夫婦間での協議が不調に終わったときには、家庭裁判所において調停等の手続きを利用することになります。

3.面会交流の拒否・制限について

離婚したときの理由、状況によっては、子供を監護している親側に、子供の面会交流を実施させたくない理由があるかもしれません。しかし、面会交流を拒否するだけの一定の理由がなければ面会交流を拒否することは認められません。

では、どの様な理由があれば面会交流を拒否することが可能なのでしょうか?基本的には「面会交流を実施することが子供の福祉に悪影響を及ぼす」場合には面会交流の拒否を認められる可能性があります。代表的な理由の一例を紹介します。

①子供が暴力を受ける可能性が高い
②子供の連れ去りの可能性がある

これらの理由については面会交流を拒否する理由として認められる可能性があります。その他にも、子供が自分の意志で考え話すとことが可能な年齢であれば、子供自身が面会交流を拒否する「子の拒否」も理由の1つになります。
仮に、例に挙げたような理由で面会交流の拒否を相手に伝え、相手が納得しないときは、家庭裁判所において調停等の手続きをとることになります。

面会交流の拒否についてはこちらもご覧ください。
面会交流~面会交流をさせたくないときは?~

4.子供が連れ去られたときの対処

もし、子供の親権を取得していたのに、相手が子供を引き渡してくれない場合や、面会交流時にそのまま連れ去ってしまった場合はどの様に対処すべきなのでしょうか?以下に具体的な対処法についてご説明致します。

①子の引き渡しを求める調停・審判

家庭裁判所に「子の引き渡し」の調停を申し立てます。調停では、調停委員を介して話し合いでの解決を目指します。しかし、親権者が子の引き渡しについて裁判所を利用するようなケースでは、問題が複雑化していることも多いため、調停では相手が引渡しに応じない可能性が高く、調停が不調に終わることも多くあります。

その様な場合は、自動的に審判に移行します。審判では、話し合いではなく裁判官が一切の事情を考慮して決定します。

②審判前の保全処分

子の引渡しの調停、審判は解決までに一定の時間を要するため、同時に「審判前の保全処分」を申し立てるケースが多いです。審判前の保全処分とは、調停、審判の終結を待っていると当事者の権利の実現が難しくなる場合に、裁判所が権利対象に対する保全(保護)を行うものです。あくまで調停、審判が終結するまでの暫定的な処置となります。

子の引渡しのケースでは、「審判前の保全処分」が認められると、調停、審判の決定を待たずに「子供を仮に引き渡すように」という保全命令が下されます。また、審判前の保全処分では「間接強制」をつけることもできます。具体的には「子供を引き渡すまで1日○○円を支払え」というような金銭的な負担を与え、相手が保全命令を履行することを促す効果が期待されます。

③人身保護請求

人身保護法第2条に基づく人身保護請求は要件が厳格であり、相手の手元に子供が居るというだけでは請求が認められることはありません。子の引き渡しの場合で言うと、子供の拘束について顕著な違法性があり、子供の自由な意思に反していることが要件となります。

そのため、個別具体的事情に鑑みて法律の要件を満たしているのか検討しなければなりません。また、要件のうちどれが問題となるかで主張すべき点が大きく異なってくるため、法的な知識も必要となります。更に、原則として弁護士を代理人として請求する必要もあるため、専門家へ相談のうえ、当該手続きを利用すべきかも含め検討すべきです。

5.おわりに

面会交流を実施するうえで大切なことは、子供の福祉を一番に考えつつ、将来的に面会交流についてトラブルが起きないように、離婚時に将来的なことも含めた条件を決めておくことです。

万が一、トラブルが発生したときには、子供が当事者であることからも可能な限り迅速に必要な手続きを進めることが大切です。もしトラブルが発生した場合には、速やかに専門家へ相談し、子供の安全の確保、その後の対策等について相談することをお勧めします。

2019.06.24

【不動産】マンションでペットを飼育するとき

Q.私の住んでいるマンションは、ペットの飼育が管理規約で禁止されています。ところが、隣室の居住者は犬を飼っている様子で、犬の鳴き声や臭気などに悩まされています。このような状況のとき、隣室の入居者に対して私からどのような請求ができるのでしょうか?

A.マンションとペットの飼育について考える際には、以下に挙げたポイントに注意して検討する必要があります。
□ 飼育禁止の管理規約の存在の有無
□ 管理規約の変更により、飼育禁止の条項が追加された場合
□ 違反行為に対する措置

1 ペットの飼育を禁止できるのか

(1)飼育禁止の管理規約が存在しない場合

マンションにおいて、ペットの飼育を禁止する管理規約が存在しない場合、ペットの飼育を禁止することは可能なのでしょうか。
この点、マンションにおいては多数の住民が1棟の建物で共同生活を営むことを考慮すれば、専有部分内における行為であっても、無制約に認められるものではありません。

例えば、専有部分において猛獣を飼育することなどは、管理規約の定めが無くとも、共同利益背反行為に該当し、建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」といいます。)57条ないし60条記載の措置、例えば「共同の利益に反する行為の停止等の請求」が可能となります。

(2)飼育禁止の管理規約が存在する場合

管理規約の中にマンション内における動物飼育を一律に禁止する管理規約がある場合は、当該規定は有効なのでしょうか。
もしマンション内で動物を飼育するとなると、

・ 動物の糞尿によるマンションの汚損や臭気
・ 動物を介した病気の伝染、衛生上の問題
・ 動物の鳴き声による騒音
・ 動物による噛み付きの事故

といった、建物の維持管理や他の居住者の生活に目に見えて影響をもたらす危険があるほかに、動物を建物内で飼うこと自体が他の居住者に対して不快感を与えるといった目に見えない影響をも及ぼす恐れがあります。
そして、上記のような影響を与える可能性のあるペットの飼育は、区分所有者の共同の利益に反する行為であると認められます。
故に、ペット飼育を一律に禁止する規定は有効であると考えられています。

2 管理規約の変更により、飼育禁止の規定が追加された場合

もしマンションに入居した時点では、管理規約内にペット飼育禁止の規定が無く、一部の区分所有者がペットを飼育している状況であったところに、管理規約の変更によりペットの飼育を禁止する規定が加えられた場合はどうなるのでしょうか。

この場合も、ペットの飼育が区分所有者の共同の利益に反する行為に該当しうるため、管理組合の構成員の多数意思として管理規約の規定を追加する場合には、この追加された規定に基づくペットの一律飼育禁止も有効となります。

しかしながら、区分所有法31条1項後段においては

「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべき時は、その承諾を得なければならない」

と定められていることから、既にペットを飼育していた居住者に対しては、管理規約にペット飼育禁止の規定を追加することについて承諾を求めなければならない場合があることに注意が必要です。

3 居住者による違反行為に対する措置

ペット飼育禁止に違反している居住者に対しては、区分所有法第57条ないし60条に挙げられた措置の他に、
・ 飼育禁止
・ 飼育する動物の即時退去
・ 糞尿の除去・消臭措置
といった請求を行うことが考えられます。

4 ペット飼育に関する裁判例

(1)ペット飼育を禁止する管理組合の規約が有効とされた事例(東京地判平成8・7・5)

当該マンションにおいては、ペットの飼育を禁止する管理規約がありましたが、一方で一部の組合員はペットを飼育していました。そこで、ペットを飼育中の組合員により構成されるペットクラブが設立され、設立時点で組合員が飼育していたペット一代に限って飼育を認め、それぞれの寿命が来れば、ペットを飼育する組合員は自然消滅することとしていました。

ところが、ある居住者はこのペットクラブ設立の数年後より飼育を始めたために、管理組合側よりペットの飼育を辞めるよう通知があったものの、これに応じなかったために、管理組合はこの居住者を訴え、裁判で争うこととなりました。

本判決においては、「マンションは入居者が同一の建物内で共用部分を共同して利用し、専有部分も上下左右又は斜め上若しくは下の隣接する他の専有部分と相互に壁や床等で隔てられているにすぎ」ないため、当該マンションの構造が「必ずしも防音、防水面で万全の措置がとられているわけではない」こと、また、「ベランダ、窓、換気穴を通じて臭気が侵入しやすい場合も少なくない」ことを考えると、各居住者の生活形態が相互に重大な可能性を及ぼす可能性を否定できない」とした上で、「本件マンションは、14階建の居住用の分譲マンションであり、動物の飼育を配慮した設計、構造にはなっていない」ということも認定の要素とし、被告による本件マンションでのペットの飼育を認めませんでした。

(2)管理規約の変更によりペット飼育禁止規定が追加された場合(横浜地判平成3・12・12)

本件は、被告が当該マンションへ犬を連れて入居した後、管理規約において動物の飼育を禁止する規定が新設された事案です。

被告は、当該規約の改正が被告の権利に「特別の影響を及ぼす」ものであるにもかかわらず、被告の承諾なしに改正されたものであるため、区分所有法第31条1項に反しており無効であるとして争いました。

しかしながら、裁判所では、当該マンションに入居する際、「動物の飼育は一応禁止されている」という旨の記載がある入居案内が配布されていた点を考慮した上で、当該マンションが以前からペット飼育禁止という共通認識があったと認定し現在の社会情勢・国民意識に照らし、全面的禁止には相当の必要性・合理性が認められると判断し、区分所有法31条1項後段の「特別の影響」は認められないとしました。

5 まとめ

判例を見ると、マンションは多くの人が共同生活を営む場所である以上、管理規約の内容、組合員の要望、マンションそのものの構造が動物を飼育することを考慮されたものであるかといった様々な観点から検討されていることがわかります。

ペットを飼いたい場合には、こういったトラブルを回避するためにも、マンションを購入する前に必ず管理規約や周知事項を確認するようにしましょう。

2019.06.24

ハンコの持つ効力と役割

前回、「ハンコ」の種類と特徴についてお話しましたが、今回は「ハンコ」の持つ効力と役割についてお話したいと思います。

前回の記事を読むにはこちらから→「ハンコの種類と特徴

1. ハンコの持つ効力

個人が使うハンコには主に実印、銀行印、認印、シャチハタがあり、会社が使うハンコには主に代表社印、社印、割印があると前回お話しましたが、これらの効力はどのようになっているのでしょうか?

そもそもハンコには、ハンコの持ち主が契約書などの書類の内容を理解して、持ち主本人の意思でハンコを押したと思わせる力があります。これに加えて、それぞれ違った大きさの力を持っているのです。

例えば、借主の欄に自分の名前が書かれた、5000万円の借用書が3枚あったとして、それぞれに実印、銀行印、認印が押してあるとします。この場合、どの借用書が1番効力を持っているのでしょうか?
もちろん、実印が押された借用書です。実印は、他のハンコとは違い、印鑑登録を行うにも本人確認が必要であり、法律上、社会上の権利や義務の発生を伴う重要なハンコのため1番効力があるといえます。

一方、認印は大量生産され、100円ショップなどでも簡単に手に入れることができるもののため、本人ではない誰かが,自分で認印を準備して勝手に押したという可能性も考えられます。ですので、1番効力を持っているとは言えないのです。

2. ハンコの持つ役割

では次に、ハンコの持つ役割についてです。ハンコは、契約をするときに押すだけで
なく、様々な使い方をすることができます。以下に、使い方の例を挙げていきます。

(1)契印

2枚以上にわたる文書があるときに、その文書の境目のページに押した印影のことを言います。

意味:文書が勝手に追加されたり、差し替えられたりしていないもので、そのつながりが真正であることを証明します。法的な力はなく、契印があってもなくても文書としての効果に違いはありません。

(2)訂正印

文書に記載した文字や言葉を書き直したり、書き加えたり、削除したりしたいときに訂正部分に押すハンコになります。契約書などの書類の注釈のところに、「間違えた場合は該当部分に二重線を引いたうえで、訂正印を押してください。」という旨の記載が書かれているのを見たことがある方も多いと思います。

意味:訂正印を押すことで、その訂正が勝手に行われたものでないという証明になります。そのため、訂正印は、文書の最後に押したハンコと同じものを使う必要があります。最後の方で間違えてしまうと、修正液や修正テープを使いたくなりますが、訂正印を押して修正を行わなければなりません。

(3)捨印

文書の余白部分に押された印影のことを言います。この印影も、文書の最後に押されたものと同じものである必要があります。

意味:捨印があることで、文書の交付を受けた人に対し、捨印を押した人の了解を得なくても、ある程度まで文書の内容を訂正して良いという権限を与えるということを意味します。
ですが、捨印が押してあるからと言って、契約書の重要な部分まで訂正することはできませんので、注意してください。

(4)消印

収入印紙や切手、はがきなどの文書に使用済みのしるしとして押された印影のことを言います。
押す場所について、特に決まりはありませんが、角に押すことが多いようです。また、ハンコについてもその文書の最後に押されたものと同じものを使うことが多いようですが、違うハンコを使ったとしても効力に変わりはありません。

意味:はがきや切手が再利用されることを防ぎます。

3. ハンコをきれいに押すことができなかったときはどうする?

1と2で、ハンコの持つ効力と役割についてお話しましたが、実際にハンコを押す場面になったとき、斜めになってしまったり、印影が薄くなってしまったりした経験はありませんか?

せっかく大きな契約をとったのに、契約書に押したハンコが滲んでいたり、薄くついてしまったりしていたら、契約書が無意味なものになってしまうのではないかと不安になりますよね。ですが安心してください。押したハンコが薄くても、上下逆さまになっていても、契約が無効になることはありません。なぜなら、契約書は契約の存在を証明する重要な客観的証拠ではありますが、契約自体は当事者双方の合意により有効に成立するからです。

では、なぜわざわざハンコを押すのか。それは、合意があったことを形に残すものである契約書の価値を高めるためです。ですので、印影さえあればハンコがきれいに押されているかなんて関係ないのです。

4. まとめ

今回は、ハンコの持つ効力、役割、そしてハンコをきれいに押すことができなかった場合はどうなるのかについてお話しました。
ハンコは、大事な書類の最後に押すだけでなく、様々な使い方、意味があること、また、きれいにまっすぐ押さないといけないと思いがちですが、意外とそんなことはないということも分かっていただけたかと思います。
この記事を読んだ後、ハンコを押す機会があれば、ぜひ今回知ったことを生かしてみて下さい。

2019.06.19

【離婚問題】面会交流~面会交流をさせたくないときは?~

離婚後も親子の交流を維持することは、子供の健全な成長にとって大変重要です。そのため、離婚した父母の協議により、月1回、2か月に1回等、子供との面会交流が行われています。
しかし、中には離婚した元配偶者に子供を会わせたくないという方も多くいらっしゃいます。今回は、様々なケースを想定して、調停や審判を行った際に、それぞれ面会交流をさせないという方法を取り得るかご説明していきます。

1 面会交流を禁止・制限できる例

(1) 非監護親が子供を虐待していたケース

子供を現実に養育する親のことを「監護親」、養育しない親のことを「非監護親」といいます。

子供が過去に非監護親から虐待を受けており、非監護親に恐怖心を抱いているような場合や、面会交流を行った際に非監護親が虐待を加えるおそれがある場合には、面会交流を実施することが子の利益を害するため、面会交流を禁止・制限すべき理由があるとされています。

ただ、監護親からこの種の主張がなされる場合、非監護親は虐待の事実そのものや程度、子供が恐怖心を抱いていることについて争うことが多く、事実認定が困難となる傾向が見られます。調停では、診断書や怪我をした写真、警察や医師に相談した記録等の提出を求められることが多いので、証拠をきちんと確保しておきましょう。

(2) 非監護親が過去に子供を連れ去ったことがあるケース

子供を現在の生活環境から強引に離して連れ去ることは、養育環境の安定を害することになり、子供に精神的打撃を与える可能性が高いと言われています。そのため、非監護親が過去に子供を連れ去ったことがある場合には面会交流を禁止・制限すべき理由があるとされています。

もっとも、過去に連れ去りの事実があっても、非監護親が真摯に反省し、二度と子供を連れ去らないという確約をしているような場合は、面会交流が認められる可能性があります。その場合でも、決して子供を連れ去ることがないように、弁護士等の第三者の立会いや、面会の場所を制限する等して連れ去り防止策を講じることが重要です。

(3) 非監護親が監護親にDVをしていたケース

監護親が非監護親によるDVの被害者で、非監護親に対する恐怖心やPTSDのため、非監護親との接触に耐えられない場合には、面会交流の実現が現実的に困難なことがあります。特に子供が年少者だと、監護親の協力なしに面会交流を実施できないこともあり、面会交流を禁止・制限せざるを得ない場合も考えられます。

ただ、非監護親から監護親へDVがあっても、子供に対しての暴力は一切なく、子供が非監護親を慕っているという場合もあります。面会交流を禁止・制限すべきかどうかはあくまでも子供の利益の観点から判断されるべきものなので、監護親についての事情をもって当然に面会交流を禁止・制限されるわけではありません。監護親と非監護親の接触を回避することによって面会を実現することが可能になることもあるので、家族の協力や第三者機関の利用も考えられます。

(4) 監護親が非監護親を嫌悪しているケース

実務上、面会交流をさせたくない要因として一番多いのが、監護親が非監護親に対する感情的反発等から面会交流を拒絶するケースです。しかし、面会交流は子供の利益の観点から実施の当否等を検討すべきものなので、監護親の非監護親に対する拒絶を理由に面会交流の禁止・制限が認められることはあまりありません。

場合によっては、非監護親との紛争によって監護親に抑うつ状態が現れ、育児放棄に至る等、子供の利益を害する事態が懸念されることもあります。その際は当分の間直接的な面会交流を見合わせるなどの措置がとられることもあります。間接的な面会交流として、手紙のやりとりをしたり、写真や動画を送付するといった方法もあります。

(5) 子供が面会交流を拒んでいるケース

監護親から、「子供が非監護親に会いたくないと言っている」と主張されるケースも多く見られます。例えば子供が非監護親の監護親へのDVを目撃して恐怖心を抱いており、非監護親に会いたくないという場合には、面会交流を禁止・制限することも考えられます。
しかし、子供が非監護親に会いたくないと言っていることが事実でも、監護親が非監護親を嫌悪している影響から、子供が非監護親に対して拒否的感情を抱いている場合があります。
また、本当は子供が非監護親に会いたくても、同居している監護親に対する遠慮から、面会交流をしたくないと言っている場合もあります。もしくは、監護親と非監護親が面会交流をめぐって対立することを嫌い、面会交流に否定的になることもあります。

いずれにせよ、子供の真意を把握するには慎重な検討を要するところであり、調査官による子供の意向、心情や監護状況等の調査を行った上で、子供の意思を把握する必要があります。

(6) 監護親が再婚し、子供が再婚相手と養子縁組しているケース

子供が監護親の再婚相手と養子縁組をしても、非監護親が子供の実親であることに変わりはないため、子供が非監護親からの愛情を実感する機会としての面会交流の重要性は変わりません。したがって、再婚し、養子縁組をしているという理由のみで面会交流を制限したいというのは難しいです。

2 面会交流を拒否するリスク

もし面会交流の取決めが調停等でなされた場合、それを拒否すると非監護親は強制的に面会交流を実現できる立場にあるため特に大きな問題となります。ただし、この「強制的」というのは、無理やり子供を連れて行くことができるという意味ではなく、間接強制のことを意味しています。間接強制とは、義務を履行しない者に対して、「義務を履行せよ。もし履行しないときは、1回の不履行につき10万円を支払え。」という命令を家庭裁判所が出す制度です。

義務を履行しないとお金を支払わなければならないので、心理的なプレッシャーを受け、義務を履行するようになることを意図しています。
したがって、面会交流が決まっているのに子供を会わせないという方法はお勧めしません。 

3 まとめ

今回は、面会交流をさせたくない場合に、どのような理由であれば面会交流の禁止・制限が調停・審判において認められるのかご説明しました。面会交流をさせたくない理由として様々なものがありますが、面会交流が子供に悪影響を及ぼさない限り、非監護親と子供の交流維持にできるだけ協力しましょう。

また、子供によっては、面会交流自体は楽しみでもその前後の監護親の態度に心を痛めストレスを感じる場合があります。子供が面会交流を行う際は笑顔で送り出し、非監護親とどのような話をしたのか詮索したり、日頃から非監護親の悪口を言うことは避け、子供が楽しく過ごせるように心がけましょう。

2019.06.19

テレビ番組制作において気をつけたいポイント~番組内容の著作権~

テレビ番組制作において一番重要なのは、その番組がどのような内容であるかという事ではないでしょうか。視聴者を惹きつけるような企画や番組構成であれば視聴率も上がり、話題になることでスポンサー広告収入なども得られることでしょう。
他方で、このような人気番組と内容も構成も似ている・・・というような番組も見かけることがあります。このような番組は法的に問題ないのでしょうか。

1.番組の企画は、著作物となる?

世の中にはたくさんのテレビ番組があり、ドラマ、クイズ番組、トークバラエティなどジャンルも様々です。そんな中、例えば、新しいクイズ番組の企画を立ち上げ、以前とは違った斬新なセットを組み、出題形式も目新しいものを制作したとします。その結果、高視聴率をあげる人気番組になりました。

しかしながら、その後この番組と似たような構成のクイズ番組が他局でも放送されるようになってしまいました。この場合、類似性の観点から著作権侵害にあたり違法ではないかと思われるかもしれませんが、実は違法ではありません。
まず、著作権が保護される著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。

先ほどの、クイズ方式やルール、競技は上記のような「思想」や「表現」ではなく「アイデア」と見なされており、著作権法の対象となる「著作物」にあたらないためです。
もちろん、その番組自体はテレビ局や制作会社の「著作物」ですので権利は発生しますが、企画や構成、ルールなどはアイデアと同等なので、他者がその部分を真似しても問題はありません。実際に、アイデアは著作物ではないことを示した裁判例もあります。

内容としては、独自のルールを用いてゲームを考案したXさんがいました。Xさんは、とある映画内で自分が考案した独自ルールに類似したゲームが使われていることを知ったため、当該映画の制作会社に対し著作権侵害を訴えましたが、裁判所は、アイデア自体は「著作物」ではないとして訴えを退けました。

なお、アイデアは著作物しかしながら、セット自体や小道具は「表現」として著作物とみなされる場合はあります。したがって、番組のセット(出演者の後ろに映るパネルや座席のデザインなど)や小道具が他の番組のセット等とよく似ていた場合、著作権侵害のおそれがあります。

前述しましたが、番組には様々なジャンルがあり、放送局も増えてきた中、番組を作ろうとするとどうしても企画が他の番組と似通ってきてしまうものです。現時点では、似たような番組構成についての訴訟で違法となった例はないようですが、あからさまに人気番組と同じ構成であった場合、視聴者に「二番煎じだ」と思われ不快感を与えかねません。
許容範囲を超えない、適切な番組制作・企画を行うようにしましょう。

2.ドラマや映画のパロディは問題ない?

1.ではクイズ番組を例に挙げましたが、他にもテレビ番組で見られるのがドラマなどのワンシーンをコント番組でパロディにし、笑いをとるといった場面です。
ドラマ自体は著作物となるわけですが、こういった「他人の著作物」を利用するということについて、どんな場合においても許諾が必要なのでしょうか。また、許諾申請をしなければ必ず著作権侵害になるのでしょうか。

(1)他人の著作物の利用

判例によると、他人の著作物と自身の著作物とで照らし合わせて、表現上の本質的特徴が同じと判断できれば類似性があると認められるため、他人の著作物の使用許諾が必要であり、許諾がなければ著作権侵害として違法となります。これに対し、本質的特徴が同じでなければ類似性が認められないため、他人の著作物の使用許諾は不要となります。

たとえば、時代劇や大衆演劇などについては話の展開や殺陣、振る舞いに一定のパターンがありますが、これは上記判例のいう、「表現の本質的特徴が同じ」と判断され、類似性が認められるのでしょうか。
まず、前提として、1.で述べた通り、著作物として保護されるものは、「思想」又は「表現」ですので、単なる「事実」や「事件」などは著作物にあたりません。そのため、著作物として保護されるためには、当該事実や事件を題材にして創作的な「表現」になっていることが前提です。

その上で、話の展開や、振る舞い等に一定のパターンがある場合は、他人の著作物の利用に該当するのではないかが問題になりますが、過去の裁判例の中には、こういった表現は武士の作法など歴史的史実も含まれており、さらに既存の作品にも多く登場していることから、「表現上の本質的特徴」とはいえないとして訴えを退けた裁判例があります。

以上を踏まえて、ドラマのパロディに上記の表現上の本質的特徴を照らし合わせてみると、ドラマの登場人物の設定はアイデアの部類になる、つまり表現に含まれないので、この設定を利用したコメディは問題ないといえます。

(2)節度を守った番組作りを

このようなドラマや映画のパロディは頻繁に行われていますが、今のところ、訴訟になった際に違法になった例はありませんが、著作権侵害にあたり違法になる可能性もゼロではありません。
パロディ元を揶揄したり、馬鹿にしたようなもの、質を落とすようなパロディは、権利者側が看過できないとして訴訟になってしまうこともあります。
そのパロディを放送することで、元となったドラマや映画の人気も上昇するなど、お互い有益になるような番組制作・企画作りを行うことがポイントです。

3.まとめ

今回は番組を企画する際や、他人の著作物の利用時に気をつけたい著作権や表現についてご説明しましたが、番組や作品というのはテレビや映画が存在する限り、これからも増えていくものです。

過去に似たような作品や番組がなかったか、また既存作品のパロディを行う場合は、既存作品の表現上の本質的特徴が同じではないか確認し、同じ場合は許諾を得るようにするなど、対策を行った上で番組制作を行いましょう。

2019.06.18

中小事業主に対する1ヶ月60時間超の時間外労働の割増賃金率引上げ

平成30年改正労働基準法(以下、「平成30年改正労基法」といいます。)により、令和5年4月1日から、中小事業主を含む全事業主に対して、1ヶ月間に60時間を超える時間外労働に「5割以上」の割増賃金率が適用されることになります。
施行日後、事業主に求められる実務の対応とはどのようなものでしょうか?

1.平成30年改正労基法「5割以上」の割増賃金率規定の経緯

すでに、平成22年4月1日に施行された改正労働基準法(以下、「平成22年改正労基法」といいます。)により、1ヶ月間に60時間を超える時間外労働について、法定の割増賃金率が「5割以上」に引き上げられています。ただし、この時間外労働の割増賃金率の引き上げについては、一定の中小事業主については、当分の間、適用が猶予されていました。

平成30年改正労基法では、中小事業主への月60時間を超える時間外労働に対する「5割以上」の割増賃金率の適用を猶予している平成22年改正労基法138条の規定が廃止されました。ただし、この規定についての施行日は、中小事業主への影響を考慮して、令和5年4月1日とされています。

2.平成30年労基法改正後の割増賃金の割増率

使用者は、時間外労働または休日労働を行わせた場合には、労働者に割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働の割増賃金率は、通常の労働時間の賃金の「2割5分以上」です。ただし、1ヶ月間に60時間を超える時間外労働分については、「5割以上」です。また、休日労働の割増賃金率は、通常の労働日の賃金の「3割5分以上」です。

これらの割増賃金の支払義務は、法定労働時間及び週休制の原則の維持を図るとともに、労働者の過重な労働に対して補償を行おうという趣旨から定められているものです。

更に、使用者は、労働者に深夜労働(当日午後10時から翌日午前5時までの間の労働)を行わせたときは、それが所定労働時間内の労働であっても、通常の労働時間の賃金の計算額の「2割5分以上」の割増賃金を支払わなければなりません。

時間外・休日労働が深夜労働と重複する場合の取扱いについては、時間外労働が深夜労働の時間帯にわたる場合には通常の労働時間の賃金の「5割以上」の割増賃金を支払わなければなりません。

そして、1ヶ月間に60時間を超える時間外労働が深夜労働の時間帯にわたる場合には、通常の労働時間の賃金の「7割5分以上」の割増賃金を支払わなければなりません。また、休日労働が深夜労働の時間帯にわたる場合には通常の労働日の賃金の「6割以上」の割増賃金を支払わなければなりません。

3.割増賃金支払いの注意点は

使用者の労働者に対する割増賃金の支払いについては、次のことに注意が必要ですので、この機会に改めて確認をしましょう。

①2つの事業場で働いた場合は

1日のうちに甲事業場と乙事業場で労働した場合に、それぞれの事業場では法定労働時間内であっても、2つの事業場の労働時間の合計が法定労働時間を超えるときは、後で働いた事業場の使用者に割増賃金の支払義務が生じます。
甲事業場と乙事業場が同一企業、別企業のいずれであっても支払義務があります。

②法定労働時間内の残業の場合は

所定労働時間7時間の事業場で1時間残業するような法定労働時間内の残業については、時間当たりの賃金を支払えば良いとされており、割増賃金を支払う必要はありません。尚、法定労働時間は、1日8時間1週40時間と労基法に規定されています。

③法定外休日の出勤の場合は

労基法の定める割増賃金が必要なのは、4週間に4日の法定休日が確保できなかった場合です。ですので、法定外休日(例えば法定休日が日曜日である週の土曜日)の出勤であれば、休日労働として割増賃金(3割5分以上)を支払う必要はありません。
ただし、1週40時間の法定労働時間を超える場合は、時間外労働として割増賃金(2割5分以上)を支払う必要があります。

4.月給制の場合の平成30年労基法改正後の時間外労働の割増賃金の計算方法

割増賃金の計算手順は、まず「1時間あたりの基礎賃金」を計算し、そこに割増率と時間外・休日・深夜の実労働時間数を掛ける方法によります。
月給制の場合について説明しますと、割増賃金の計算の基礎となるのは「通常の労働時間(労働日)の賃金」で、これを一般的に「基礎賃金」といいます。

基礎賃金の内訳を大雑把にいうと、基本給に各種手当を加えた賃金です。ただし、各種手当のうち、「家族手当」「通勤手当」「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われる賃金(結婚手当、私傷病手当、退職金等)」「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)」は、基礎賃金に含まないとされています。

これを一般に「除外賃金」といいます。労基法において、賃金とは名称の如何を問わず、労働の対象として支払われるすべてのもののことです。わが国の賃金の実態をみると、家族手当、通勤手当など、労働との直接的な関係ではなく、各労働者の個人的事情に基づいて支払われる賃金が多くあります。

これらの賃金も全て割増賃金の算定基礎に含めると、同一職種で同一時間給を得ている労働者の間で、個人的事情に基づく手当の違いによる割増賃金額の差異が出てくることとなり妥当でないところから、労基法では「除外賃金」とされています。
上記より、時間外労働割増賃金の計算方法は次のとおりです。

※1 1年間の所定労働時間の総数を12か月で割って得た時間数のことです。
※2 1か月間に60時間を超える時間分については「1.5」となります。

5.まとめ

残業時間が1ヶ月間に60時間を超えると、割増賃金率が大幅にアップします。頭書のとおり、割増賃金の支払義務の趣旨は、法定労働時間及び週休制の原則の維持と、労働者の過重な労働に対して補償です。

この趣旨に鑑み、作業効率の見直しなど、事業者には残業時間の短縮を図る対応が求められます。事業者の皆様は、今後の労働時間整備について、一度専門家に相談されることをお勧めいたします。

2019.06.17

【不動産】専有部分のリフォーム

Q.私は現在、中古マンションに母と同居しています。将来的に母の介護が必要になることを見据え、床材を全面フローリングに張り替え、段差をなくしたいと考えています。
加えて、防犯対策のために現在の窓枠の内側にもう1枚窓枠を取り付け、二重サッシにすることも検討しています。こういった工事をする場合、管理組合の理事会の承認は必要ですか?

1.問題の所在

区分所有者が専有部分を利用するにあたっては、室内の不具合の補修や、居住する家族構成の変化などに応じた住環境の改善のため、模様替えや家具の取り付け、取り換え、修繕工事などのリフォームが必要となる場合があります。

しかしながら、マンション標準管理規約では、区分所有者は、

・建物の保存に有害な行為
・その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為

をしてはならないと定められています。マンション標準管理規約とは、国土交通省によって、管理組合が各マンションの実態に応じて、管理規約を制定、変更する際の参考として作成されたものです。

そして、リフォームの要否や内容に関する判断を区分所有者へ全面的に委ねた場合、後々管理組合や他の区分所有者との間でトラブルを発生させかねません。こういった状況を回避するため、マンション標準管理規約では、占有部分の修繕等の実施について、以下の規定が定められています。

理事会の承認が必要な場合

まず、専有部分の修繕の実施に際して、管理組合の理事会の事前承認が必要な場合があります。規約は以下のとおりです。

区分所有者が専有部分の修繕等を行おうとする場合、予め理事長に申請し、書面による承認を得なければならない。

① 対象となる修繕の内容

「床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管の取り付け及び取り換え、間取りの変更」等が、理事会による承認の必要な工事として想定されています。
よって、見出しで挙げた「床材を全面フローリングに張り替える」ことは上記に該当するため、理事会の承認が必要になります。

② 申請時に必要なもの

区分所有者が理事会に修繕の申請を行うに際しては、設計図・仕様書・工程表を添付した申請書を理事長に提出することと定められています。施工業者等へ依頼し、必ず準備しておきましょう。

(書式:国土交通省 「マンション標準管理規約」より)

③ 理事会による承認

理事長が区分所有者から修繕工事の承認申請を受けたとき、その申請について、理事会の決議により、その内容を承認するか、それとも不承認とするかを決定します。
 
承認申請時に提出された設計図等をもとに検討することとなりますが、その内容によっては専門的な判断が必要なケースも想定されることから、専門知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を仰ぐことが望ましいとされています。特に、今回例として挙げたフローリング工事の場合には、床の構造、工事の仕様、使用する材料等により影響が異なるため、専門家への確認の必要性が高いと言えます。
 
また、実際に専門家へ確認を依頼した場合には、区分所有者の提出した設計図等では情報が足りないため、工事予定の箇所を直接視認して調査を実施できる状況にする必要があります。つまり、理事長又はその指定を受けた者(専門家等)は、工事の施工の判断について必要な範囲内で、修繕予定の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことが出来ます。調査時には区分所有者の専有部分に立ち入ることとなりますが、正当な理由が無ければ、当該区分所有者は、立ち入りの要請に応じなければなりません。

(書式:国土交通省「マンション標準管理規約」より)

3.理事会の承認が不要な場合

次に、例示したケースの後半で挙げている、「既存の窓の内側に窓枠を設置して二重サッシにする」という工事について検討していきます
 
まず、窓に関わる工事は理事会の承認が必要なのかという点です。区分所有建物における窓は、専有使用権が付着する共用部分であるため、マンション標準管理規約では、窓を対象とする工事のうち、「現在と異なる部材を用いるもの」が、理事会の承認を必要とする工事であると定められています。

よって、例えば、現在設置されている窓ガラスを防音ガラスや強化ガラスの窓へ交換する場合は、「現在の窓を異なる部材(=防音ガラス・強化ガラス)」を用いた他の窓と交換することになるため、理事会の承認が必要となります。

一方、今回例に挙げたケースでは、窓の素材を交換するわけではなく、「内側にもう1枚窓枠を取り付け、二重サッシにする」という工事内容であり、共用部分である窓そのものを修繕したりするものはないため、理事会の承認は不要であるといえます。

しかしながら、窓枠の取り付け工事に限らず、リフォームを行う際には建物を工事業者が出入りすることが想定されます。また、工事の種類によっては騒音や粉塵が発生することもあります。これらの状況が他の区分所有者に何ら告知の無い状況で発生した場合、他の区分所有者に迷惑をかける可能性が高く、後から苦情が発生しかねません。

これらを避けるために、たとえ理事会の承認が不要であっても、工事を実施する際には、
・管理組合へ工事期間や工事の内容、業者名を届け出る
・騒音や振動の発生が予想される場合には、他の区分所有者にもわかる形で工事期間と工事内容を掲示する
・工事予定の物件の上下、また隣戸には、事前に騒音等が発生することを直接伝えに行く
といったような対策を取ることが良いと考えられます。

4.まとめ

区分所有建物内で専有部分のリフォームをする際には、必ず事前に管理規約を確認し、理事会の承認の要否、他の区分所有者に与える影響、事前調査の可能性等々あらゆる点を注意する必要があります。

折角自分がより住みやすい環境を整えるためにすることですから、後からトラブルが発生しないよう心掛けることが望ましいですね。

2019.06.14

【離婚問題】離婚と子供の問題―養育費について―

離婚をすることになった夫婦の間に未成年の子供がいる場合、子供に関する問題を解決しなければなりません。
親権者の決定、養育費の金額や支払い方法、子供の戸籍と姓、面会交流については離婚前によく考えて決めておくことが大切です。今回は子供の養育費について詳しく説明します。

1.養育費について

養育費とは、子供が生活するために必要な費用のことです。衣食住の費用のほかにも教育費、医療費に加え、娯楽費用(お小遣いなどの適度な金額)も含まれます。父母の収入によりますが、一般的には子供を引き取り育てている親に、引き取らなかった親が養育費を支払うケースが多くなります。

例え離婚して親権を有しない親であっても、未成年の子供を扶養する義務があり、子供には扶養を受ける権利があるためです。ですので、養育費は子供から親に請求することもできます。

養育費を支払うべき対象となる子供の年齢については、父母の話し合いで決める事ができます。家庭裁判所の調停や審判の場合は、「子供が成人するまで」とすることが一般的ですが、「高校を卒業するまで」「大学を卒業するまで」とすることももちろん可能です。

2.養育費の金額について

養育費の金額は法律で定められているものではありません。父母の収入や財産、生活レベルなどに応じて話し合いで決められます。離婚後も、親には子供に親と同レベルの生活をさせる義務があると考えられているため、生活に最低限必要な金額を支払えばいいという訳ではありません。

なお、裁判所を利用し養育費を取り決める場合には、「養育費算定表」が参考資料として広く活用されています。養育費算定表とは、夫婦の収入、子供の年齢、人数などから養育費の目安となる金額を示すものです。協議離婚、調停離婚など当事者の話し合いで養育費を決める場合、最終的な養育費は算定表の額を参考にその他の状況を考慮に入れて定められます。

以上のような方法で養育費は決められますが、養育費の支払いは長期にわたるため、将来的に様々な事情により取り決めた養育費の支払いが難しくなるケースがあります。その様な場合は、当初の取り決めた養育費の金額を変更することも可能です。

養育費の変更については、双方の話し合いによって決めることも可能ですし、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に養育費の変更を目的とした「養育費請求」の調停を申し立てることになります。ただし、当初取り決めた養育費の金額を変更するためには正当な理由が必要です。

《養育費を増額する場合の正当な理由の例》
■子供の進学や授業料の値上げによって教育費が増加した
■子供の病気やケガで多額の医療費がかかる
■監護者の病気やケガで収入が低下した
■リストラや会社の倒産などで、監護者の収入が低下した 等

《養育費を減額する場合の正当な理由の例》
■リストラや会社の倒産などで、支払う側の収入が低下した
■監護者が再婚や就職などで、経済的に安定した 等

3.養育費について決めたなら…

養育費の支払いは長期間に及ぶため,養育費の支払い義務を負う親の経済状況や生活環境の変化で、養育費が途中から支払われないというトラブルも多くあります。そのため、離婚時に養育費の内容が取り決められた場合、口約束だけでなく文書化することをお勧めします。後に養育費について「約束した」「していない」の水掛け論になることを避けるためです。

文書には、①支払いの期間(例:子供が満○歳になる月まで)②金額(例:子供一人につき●円)③支払い方法(例:毎月●日までに●●の口座に振り込む)を必ず明記しましょう。また文書については公正証書で作成することが望ましいです。当事者間で作成した念書、合意書等の文書では、記載内容に不備があり後々文書の有効性を争われることもあります。

また、養育費の未払いが発生して、相手の給与等の財産を差し押さえるにしても、公正証書が無ければ、例えば、訴訟を提起したり、養育費調停を申し立てる等して、債務名義を取得してからでなければ強制執行の手続きに移行できません(公正証書以外の債務名義の取得については、4.で具体的に説明致します)。

その点、公正証書は公証役場で公証人の助言を受けながら作成できるため、法的に不備の無い内容での作成が可能となります。また、公正証書には強制執行認諾文言が付いていることが一般的であり、強制執行認諾文言がある場合、養育費の未払いがあった場合に訴訟の提起等を挟まずに、強制執行の手続きが可能となります。

4.養育費の支払いが滞ったときの対応

養育費の未払いが発生した場合には、手紙や電話などで支払いの催促を行います。それでも支払われない場合は、養育費をどの様な方法で定めたかによってその後の方針が変わってきます。

協議離婚で離婚協議書は作ったものの、協議書を公正証書にしていない場合は、強制執行をすることができません。なので、まず、相手方の所在地を管轄する家庭裁判所に「養育費請求」の調停の申立てをします。調停でも解決しない場合は審判に移行します。調停や審判で解決すると、「調停調書」「審判書」が作成されます。その後も支払いがない場合には、この「調停調書」「審判書」を債務名義として、「強制執行」ができるようになります。

ここで、強制執行は相手方(債務者)の預貯金や不動産、給与、退職金、賞与といった財産の差押を行い、支払いを受ける権利のある人(債権者)がそこから取り立てることができる制度です。給与の差押えの範囲は、一般の債務では給与の4分の1までですが、子供の養育費や婚姻費用などについては給与の2分の1まで差押えることが可能となります。

強制執行は調停離婚、審判離婚、判決(裁判)離婚、和解離婚のほか、協議離婚の場合でも養育費の支払いについて執行文認諾文言付公正証書を作成していれば申し立てができます。ただし、差し押さえるべき相手方の財産を把握できていなければ強制執行をすることはできません。強制執行を申し立てる場合には、差し押さえるべき財産を調査する必要があります。

また、調停離婚、審判離婚、判決(裁判)離婚、和解離婚で養育費の支払いについて取り決めがある場合は、家庭裁判所の「履行勧告」「履行命令」制度を利用しましょう。履行勧告を裁判所に申し立てると、裁判所が支払い状況を調査し、相手方に支払うように説得、勧告します。申出に費用はかかりません。

ただし、法的な強制力はありません。相手方が勧告を受けても支払わない場合は、裁判所が期限を決めて支払いを命じることができます。これが「履行命令」です。法的な拘束力はありませんが、相手方が支払わない場合は10万円以下の過料が課せられます。

5.おわりに

養育費の支払い期間は長いものだと20年以上になるものもあります。この20年の間に養育費を支払ってもらう権利がある側も、養育費を支払う義務がある側も様々な変化が生じると思われます。養育費について取り決めたときには予想していなかった状況の変化が生じることもあるでしょう。

その時は、冷静になって適切な対処をとることが大切です。養育費の算定、未払養育費の請求について当事者で全ての決定をすることも可能ですが、子供にとって最も良い選択をするために一度専門家に相談することをお勧めします。

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