企業が備えておくべき試用期間のリスク
多くの企業では、本採用前に一定の試用期間を置き、面接では知り得なかった社員の能力や適性を見極める期間を設けています。実際に試用期間とは、どのような目的で設定されており、試用期間中の雇用契約はどうなっているのでしょうか?
また、企業は試用期間中の従業員に対して、解雇や試用期間の延長、本採用の拒否などを行いたい場合はどのような点に気を付けなければならないのでしょうか?今回は企業が理解しておくべき試用期間の法的性質についてご説明いたします。
1. 試用期間とは法的に見てどのような雇用形態なの?
試用期間は、正社員に限らず、アルバイトやパート、契約社員などに対しても設けることが可能です。企業は試用期間を定める場合には、期間を明確に定めなければなく、「〇ヵ月前後」といった不明確な取り決めは認められていません。
試用期間の長さについて制限する法律は定められていませんが、過去に1年を超える試用期間を設けたケースは、公序良俗違反と判断され試用期間が無効となった裁判例があり、過度に長期となる試用期間の設定は認められないものと考えられます。(裁判例:名古屋地判昭59.3.23)
では、試用期間中の企業と従業員の雇用契約は厳密にどの様な状況になっているのでしょうか?試用期間中の雇用契約は「解約権留保付労働契約」が締結されていると考えられています。「解約権留保付労働契約」とは、企業が従業員を解雇することが出来る解約権を有している労働契約を意味しています。ただ、企業側が解約権を有しているからといって、何の制限もなく企業側が従業員を解雇できるというわけではありません。
試用期間中の従業員の立場は、不安定で不利な立場であり、試用期間中は他の企業へ就職する機会を放棄している状態になります。よって、企業が試用期間中の従業員に対して解雇や延長を行うのであれば、客観的で合理的な社会通念上相当の理由が必要です。
次からは、企業が試用期間を延長する場合及び試用期間中に解雇を行う場合について具体的に見ていくことにします。
2. 試用期間の延長は法律に違反するの?
試用期間が終了したときに企業側が本採用とするか否かの判断がつかずに、試用期間を延長してもう少し様子を見たいといったケースもあると思います。その様な場合、試用期間を延長すること自体は法律に違反しませんが、次の点に注意しなければなりません。
① 就業規則や雇用契約書などに試用期間を延長する可能性を明記しておくこと
② 試用期間の延長について従業員との間で合意がなされたこと
③ 客観的で合理的で社会通念上相当性のある理由があること
以上3点については企業側が試用期間の延長という選択をする場合に必ず守らなければならない事情となります。もし、これらを守らずに一方的に試用期間の延長を決定した場合、従業員から試用期間の延長の是非について争われ、その結果試用期間の延長を無効と判断されるケースもあるため注意が必要です。
ここからは、上記の各注意点についてもう少し詳しく説明することにします。
前述した通り、試用期間中の従業員は非常に不安定な立場であるため、企業は試用期間の延長が可能であること、及び延長する場合の期間などを、予め就業規則や雇用契約書などに明記しておく必要があります(①)。
また、従業員との間で試用期間の延長について合意がなされていなければなりません(②)。ただ、仮に従業員との間で合意がなされたとしても、試用期間については延長前の期間を含めて最長でも1年以内であるべきと考えられています。試用期間の延長について合意がなされたとしても、延長前の試用期間がリセットされるわけではありませんので、気を付けましょう。
最後に、試用期間の延長には、客観的で合理的な社会通念上相当性のある理由が必要になります(③)。延長の理由が認められる可能性が高いとされる例は、従業員が何らかの理由により長期の欠勤があり試用期間中に従業員の適性を見極めることが難しいケースや、業務内容の変更に伴い改めて適性を見極める必要性が認められるケースなどが挙げられます。
3. 試用期間中の解雇はできるの?
試用期間中において、企業は解約権留保付労働契約に基づく解約権を留保しているため、一定の「解雇の自由」が認められています。しかし、どの様な理由でも解雇が認められるわけでは無く、試用期間の延長と同じように「客観的に合理的で社会通念上相当と是認できる」場合に限られています。具体的には、重大な経歴詐称、正当な理由なく遅刻・欠勤を繰り返す場合等です。
また、試用期間の開始から14日を経過して解雇する場合、本採用後の社員を解雇する場合と同様の手順を踏む必要があります。解雇という判断をした場合には、従業員に対し解雇日の30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告を行わなかった場合には従業員に対して「解雇予告手当」を支払う必要があります。
もし、企業側が本採用をしない決定をした場合でも、企業側の意思表示が従業員に明確に伝えられていないまま試用期間を終えると、従業員は本採用になったものと判断されます。試用期間に解雇を判断した場合は、試用期間が経過する前に従業員へ解雇の意思表示を行いましょう。
4.まとめ
企業側にとって試用期間を設けることは、正確な採用判断を行うことが可能であり必要な期間となります。しかしながら、予め就業規則や雇用契約書を整備しておかなければ、試用期間の運用を誤った場合の企業へのリスクを防ぐことはできません。
就業規則や雇用契約書を不備の無いようにきちんと整えることで、リスクから会社を守るツールとして役立てましょう。就業規則の整備等については、法的な知識が必要となるため一度専門家へ相談することをお勧めいたします。
ハンコの種類と特徴
会社や家、銀行など様々な場面で使う機会のあるハンコ。どんな種類があるのか、特徴は何なのか、知っていますか?
まず、ハンコとは何でしょうか。よく、「ハンコお願いします。」「ハンコ押してください。」と言ったり言われたりすることがありますよね。このハンコとは、あの小さな物体のことなのか、それとも紙についたインクのことなのか、どちらのことを指しているのでしょうか?
1.「ハンコ」とは?
実は、私たちがよく言う「ハンコ」とは、物体のことで、「印章」と呼ばれるものになります。紙についたインクの方は「印影」と呼ばれています。分かりやすく言うと、「ここにハンコお願いします。」のハンコは、「印影」、「ハンコ買わないと。」のハンコは「印章」のことなのです。
ちなみにハンコと同じくらいよく使う言葉である「印鑑」とは、市区町村に印鑑登録を行った「印章」のことを指し申請をすれば証明書がもらえます。「実印」とも言います。
このように、ハンコひとつでも、「印章」「印影」「印鑑」などいくつかに分けることができるのです。
2.「ハンコ」のもつ力
普段の生活の色々な場面でハンコを使いますが、なぜ書類や契約書など手続きを行うのにハンコが必要なのでしょうか?
日本は「ハンコ文化」と言われるほど、何かとハンコが必要とされます。銀行に行って手続きをしようと思ったら、「登録されているハンコと違うので手続きができません。」と言われたり、後日これだ!と思って違うハンコを持って行ったのに、また違うハンコだと言われ、どのハンコが正解なのか分からなくなってしまった経験が1度はあると思います。
免許証や保険証で本人確認をせず、登録されているハンコで手続きできるかどうかが決まるほど、日本ではハンコのもつ力が大きいのです。
例えば3,000万円の借用書があり、そこに自分の印影があったとします。そして、借用書の印影が、自分の印章によって顕出されたものであるときは、事実上その印影は自分の意志に基づいて顕出されたものとだと推定されます。その結果、自分が3,000万円という大金を借りたことが推定されてしまうのです。
例え自分がハンコを押したのではなく、誰かが勝手に押していたとしても、です。
では、ハンコにはどれくらいの種類があるのでしょうか?3では、ハンコの種類と、それぞれの特徴についてみていきたいと思います。
3.「ハンコ」の種類と特徴
ハンコにはどんな種類、特徴があるのでしょうか。
初めに、個人が使うハンコについてです。主に、実印、銀行印、認印、そしてシャチハタがあります。
実印:
市区町村に登録を行い、申請をすれば証明書がもらえるもの。
登録するには本人確認が必要で、証明書を出してもらうにも、身分証明書による本人確認が行われる。
銀行印:
銀行や信用金庫などの金融機関に印影を届け出ているもの。
預金を払い戻してもらう際に、お金を受け取る人が本人かどうかを確認するために必要。
認印:
印鑑登録をしていないハンコ全般のこと。
書類に確認や承認の証明としてよく使われる。
シャチハタ:
使う度に朱肉をつかって捺印するのではなく、印章自体にインクが入っている「浸透印」のこと。認印に含まれる。
シャチハタとよばれているが、シャチハタとは製造しているメーカーのことで、重要な書類や公的な場面などでは使うことができない。
上記のように、個人が主に使う印鑑だけでも4種類存在します。
では次に、会社が使うハンコについてお話します。種類として、代表者印、社印、割印等があります。
代表者印:
会社の実印のことで、会社を設立する際に法務局に登録したもの。
印鑑証明は法務局で発行することができ、丸印と呼ばれることもある。
「株式会社〇〇 代表取締役印」と彫られていることが多い。
社印:
会社の認印のこと。会社の認印として、主には注文書や請求書などの社外文書の他、稟議書などの社内文書に用いる。角印と呼ばれることもある。
「株式会社〇〇之印」と彫られていることが多い。
割印:
複数ある書類にまたがって押すハンコのこと。
書類が2部になる場合などに、同一、関連書類であることを証明するために押す。割印を押しておくことで、「契約書」を作成したあとに、内容を改ざんされるリスクを回避することができる。
「株式会社〇〇之印」と彫られていることが多いが、形は押しやすいように、縦長になっている。
以上が、会社でよく使われるハンコになります。
ハンコによって、持つ効力や役割も異なりますので、それらについては、次回お話ししたいと思います。
4.まとめ
今回は、ハンコとは何なのか、種類や特徴にはどんなものがあるのかについてお話ししました。
普段よく使うハンコですが、種類や呼び方など意外と知らないことばかりですし、この契約書だからこのハンコを押す、これは認印でも大丈夫なものだから社印を押す、などといった覚え方をしている方も少なくないと思います。
きちんと、それぞれのハンコについて知っておけば役に立つ場面がたくさんあると思いますので、この記事を読んで今後の生活に生かしていってください。
テレビ番組制作において気をつけるべきポイント~未成年者の実名報道編~
テレビ番組などでは、未成年者が起こした事件について実名などを伏せて報道されているかと思います。
なぜ匿名でなければならないのでしょうか。また、過去に起きた事件の中には、未成年である被告人に死刑判決が下された後から一部メディアで実名報道されるということもありました。
そこで浮かんでくる疑問は、未成年者の実名報道についての特例や、例外があるのか、ということです。以下では、未成年の犯罪に関する報道について見ていくことにします。
1.未成年の犯罪についての報道と少年法
(1)少年法61条
少年法61条では、「記事等の掲載の禁止」として下記のように未成年者の報道について定めています。
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
※ここでいう「少年」とは、20歳未満の男子女子すべての未成年者を意味しています。
(2)テレビ報道と少年法61条
未成年者の犯罪等が発生し逮捕された場合、新聞などでは少年法に基づき匿名で報道されています。しかしながら、テレビ報道は、出版物ではないため、同条の適用はないのでしょうか。新聞と並び記載されている「その他の出版物」について、テレビ報道が含まれないのでしょうか。
現在、テレビ局の報道番組では実名を伏せ、「18歳男子が殺傷事件を起こし逮捕された」というような報道を耳にするかと思います。同条の「その他の出版物」の中に、雑誌やテレビ局、いわゆるメディア全般が行う報道も含まれるとする裁判例があり、現在はこれに基づいてテレビ局も報道を行っています。
多くのテレビ局はこの少年法61条を重視しており、自局のガイドラインで報道について細かく定めるなどし、後述する死刑や死亡の場合を除いて、現時点では実名報道をしないとしているようです。
(3)「推知することができる」とは?
「推知」という言葉自体、あまり聞きなれないかもしれませんが、文字通り推測して知ることができるかどうかという意味です。そして、判例によって同条の「推知」は、「不特定多数の人間が、その報道によって本人を推察し知ることができるかどうか」と解釈されています。
例えば、報道番組の中で、未成年被疑者についての詳細が放送されたとします。
被疑者がどんな人物であったかという部分で、被疑者の職歴や友人、知人との関係を放送しても視聴する多くの人は、本人を推察し特定することはできないため、少年法的には問題ないとされます。
ただし、被疑者本人を知っている者が、この放送で言われている内容で、本人の名前や顔などが推知できる場合、肖像権やプライバシーの侵害にあたる可能性もあります。
少年法61条には罰則がなく、違反しても刑事責任は問われませんが、民事上の責任(賠償責任)を問われることも過去の裁判例ではあるようです。
事例として、ある週刊誌が、被疑者である少年の職歴、交友関係、非行歴、法廷での様子を記した記事を掲載したため、被疑者である少年が、当該週刊誌の出版社を相手取り、少年法61条違反と肖像権・プライバシー権の侵害を主張して損害賠償を求めたケースがあります。
上記の事例で裁判所は、不特定多数の一般人からしてみれば、面識のない少年について、この記事だけでは本人を特定することはできないとして、少年法には違反しないと結論づけました。
しかしながら同じようなケースで訴訟となった際、民事上の責任を負うという判決も示された事例もあり、すべての裁判例が同様であるとは言えない現状となっています。
2.少年法をどこまで適用させるのか
さて、少年法61条に基づくと、犯行時に未成年だった場合、永久に匿名のまま取り扱われるということになります。これを、どこまで匿名報道し続けるのか、どういった場合に実名報道に切り替えるのかは、テレビ局によって違いがあるようです。
多くのテレビ局が、実名報道に切り替えるケースとしては、
・被疑者・被告人が死亡したとき
・被告人の死刑が確定したとき
が多く、なぜ切り替えるのかを明確に説明した上で実名や顔写真を報道しています。その理由としては、
・死刑の対象は明らかに報道すべきであるという指針
・社会復帰の可能性が事実上消失したこと
・事件の重大性、社会に与える影響を考慮した
などという点を挙げています。
当時18歳の少年が起こしたいわゆる光市母子殺害事件では、少年に死刑判決が言い渡された後、社会復帰の見込みがなくなったとして実名報道に切り替えるメディアと、再審の可能性もあるなどして、匿名報道を続けたメディアとで対応が分かれました。
当時の法務大臣や法務省は、上記のような理由に基づき行う被告人への実名報道に対しては、経緯を説明して行っているので、一定程度の理解はできると会見しています。
3.まとめ
テレビ局などのマスコミは、ガイドライン(放送指針)を定めています。
特にNHKや民放連のガイドラインは未成年の実名報道がどんな時になされるのか、などを詳しく表記しています。テレビ事業に新規参入するなど、ガイドラインを新たに策定する場合や、現在のガイドラインを見直しする際には参考にするとよいでしょう。
警察庁の調査によると、1900年代と比較して2000年代以降、未成年者による犯罪は減少傾向にあるようです。しかしながら、未成年の凶悪犯罪は依然として注目を集めやすく、社会に与える影響も大きいものです。
取り扱う場合には十分注意を払い、法的な問題やガイドラインに抵触していないかをよく確認するようにしましょう。
起業する前に知っておくべきこと1~注意点~
「起業したい!」と思った場合、「今勤めている会社を辞めずに起業しても大丈夫?」「法人を設立すべき?それとも、個人でやっていくべき?」といった様々な疑問が浮かんでくるのではないかと思います。
そこで、今回の記事から数回にわたり、起業する方または起業するかどうか悩んでいる方に、実際に起業をする前に知っておいていただきたいことについてご説明します。
1. 会社勤めの人が起業するときの注意点
今、どこかの会社で働いている人にとっては、一口に「起業する」といっても、(1)会社を辞めて起業する(独立)、(2)会社は辞めずに起業する(副業)という2つの選択肢があります。以下では、選択肢ごとに注意点を見ていくことにします。
(1)会社を辞めて起業する(独立)
今勤めている会社を辞めて起業する場合、いくつか気を付けなければならないことがあります。
住民税や国民健康保険料は前年度の収入に基づいて決まる
⇒会社を辞めてから収入が減ってしまうということは十分に考えられます。しかし、納付する住民税、国民健康保険料は、前年度の収入、つまり会社勤めで収入が多かった頃の金額に基づいて決定されます。収入が減ってしまう可能性を考えて、余裕を持って貯金しておきましょう。
起業したばかりだとクレジットカードが作りにくい
⇒クレジットカードの作成を申し込んだとき、クレジットカード会社は「この人はちゃんと貸したお金を返してくれるかな?」という点を見て判断します。会社勤めの頃は、安定した収入がありますが、起業してすぐだと何の実績もなく信用度は低いため、審査に必ずしも通るとは限りません。
しかし、事業がうまくいかず資金繰りをしなければならないという状況になることもあり得ます。それを見越して、会社を辞める前にクレジットカードを作っておきましょう。
家の購入や引っ越しが難しくなる
⇒クレジットカードの作成申し込みと同様に、家を購入するときや引っ越しをするときにも、不動産会社はその人が信用できるかどうかを見ています。会社勤めの場合は、源泉徴収票を見せれば大丈夫なところが多いですが、起業した場合は源泉徴収票と会社の決算書が必要となることが多いです。
それらに記載されている金額で信用度が変わってくるので、会社勤めであればある程度の信用は得られます。しかし、「起業したもののあまり事業がうまくいっていない…」という場合、どうしても信用度が低くなるため、家の購入や引っ越しは当分難しいかもしれません。クレジットカードの作成と同様、家の購入や引っ越しを考えている場合も、会社を辞める前に済ませておきましょう。
(2)会社は辞めずに起業する(副業)
(1)に対して、今の会社で働きながら起業するということも考えられます。例えば、今働いている会社の休日に活動するといった場合です。この場合も、注意すべき点があります。
副業が禁止されていないか確認
⇒会社によっては、業務への影響や、利益相反等を理由に副業を禁止していることがあります。会社を辞めずに起業したいという場合は、まず、会社において副業が禁止されていないかどうか、就業規則などの規程を見て確認しましょう。
会社に副業がばれてしまう可能性がある
⇒もしかすると、「副業は禁止されていないけれど、なんとなく会社にばれるのは嫌だ」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、確定申告のやり方によっては、会社に副業がばれてしまう可能性があります。
(確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得と、その所得にかかる所得税を計算し、精算する手続きのことです。)
基本的に、従業員の住民税は、給与から天引きをして、会社から市町村に納付します。この天引きは、毎年5月頃までに会社に送られてくる特別徴収税額決定通知書をもとに行われます。そのため、会社から支給されている給与と副業で得た収入を合算して確定申告をしてしまうと、それに基づいた住民税額が会社に通知されてしまいます。この通知書を見て、会社が支給した給与よりも総所得額が多いことが発覚して、会社にばれてしまうというわけです。
このような事態を防ぐために、確定申告の際に、副業の収入について「普通徴収(給与から天引きするのではなく、自分で納付する)」を選択すれば、納付書によって別途自分で納付することになるので、会社にばれにくくなります。
ただし、会社との思わぬトラブルを避けるためには、副業を禁止する定めの有無にかかわらず、事前に会社に相談することをおすすめします。
2. 個人事業と法人の違い
1を踏まえて、早速起業しようと考えた方に質問です。個人事業と法人の違いをご存知ですか?「個人事業と法人って何が違うの?どっちにすればいいの?」とお思いの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
個人事業とは、会社を作らず個人で行う事業のことをいいます。俗に言う自営業のことです。これに対し、法人は想像しやすいかと思いますが、会社のように、法律上別の人格が認められたもののことをいいます。
では、個人事業で始めるか、法人を設立して始めるか、どちらが良いのでしょうか。
一概には言えませんが、個人事業と法人にはこのような違いがあります。どちらにも良い点、悪い点があるので、「絶対にこっちにすべき!」と言い切ることは難しいです。両者を比較して、自分にはどちらが合っているか考えてみましょう。
3. まとめ
今回は、会社勤めの人が起業するにあたり気を付けるべきことと、個人事業と法人の違いについてご説明しました。
「何事も早いに越したことはない!」と考え、急いで起業の準備を始めたい方もいらっしゃるかもしれませんが、起業には金銭面など多くのリスクがあります。「ちゃんと考えてから動けばよかった…」と後悔しないように、この記事を参考にしていただければ幸いです。
【離婚問題】離婚と子供の問題ー親権についてー
未成年の子供がいる夫婦の離婚では、親権、養育費、子供の姓、面会交流等の様々な内容について決めなければなりません。
今回は親権に関わる部分に特化して説明したいと思います。
1.親権者の権利
未成年の子供がいる夫婦の離婚では必ず親権者を決めなければなりません。親権の取得を簡単に説明すると、子供を引き取り育てていく権利という理解が一般的ではないかと思います。では、実際には親権の取得により具体的にどの様な権利が発生するのでしょうか?代表的な権利として2つの例を挙げます。
① 身上監護権
子供の衣食住にかかる日常の世話、教育やしつけをする権利・義務。
②財産管理権
子供の財産を管理し、契約等の財産管理に関する法律行為を代理で行う権利・義務。
以上2つの権利は、子供を育て教育すると同時に、金銭管理と未成年の期間における契約行為を代理で行うという権利です。両方の権利とも子供を育てるにあたり必ず必要な権利になります。
また、親権のうち、①身上監護権には次のような内容も含まれています。
㋐子供の住む場所を指定する権利
㋑子供が悪いことをしたときに注意し罰を与える権利
㋒子供が仕事をするときに判断し許可を与える権利
以上、親権に含まれる代表的な権利を紹介しました。このように、親権と一括りになっているものの、本来は細かい権利を複合して親権という言葉が成り立っています。
2.親権者の決定
離婚では親権の取得が最大の争点となり、離婚に際し取り決めるべき事項のうち、その他の問題点については全て合意していても親権の問題がネックとなり、離婚手続が長期化、複雑化するケースは少なくありません。
離婚手続には、協議離婚や調停離婚等、段階に応じて各手続が用意されていますが、親権の問題が各離婚手続へどの様に影響するのかを簡単に説明します。なお、各手続の詳細は別記事で改めて説明していますので、そちらをご参照ください。
① 協議離婚
協議離婚では、当事者が離婚届を市町村役場へ提出し、役所から受理された場合に離婚が成立します。提出する離婚届の必要記載事項には、親権者の欄があり、夫婦のうちどちらが親権者になるかを明記する必要があります。
もし、親権者の欄が空欄であれば離婚届は受理して貰えないため離婚自体が成立しないことになります。夫婦間で話し合って親権者を決定出来ない場合には、協議離婚での解決はできないため、離婚手続は離婚調停へと進んでいきます。
② 離婚調停
調停離婚は、家庭裁判所を利用し、調停委員という第三者を介して離婚の内容や条件を話し合う手続となります。真っ向から親権が争われる場合は、家庭裁判所の調査官が選任され、夫婦のどちらが親権者として適切かの調査が行われ、調査結果を基に協議を行う場合も多いです。
ここで親権者について合意することが出来れば問題無いのですが、あくまでも話し合いであり、裁判所が親権者を指定することはできないため、お互いに主張が対立した場合は不成立となり審判、若しくは訴訟に移行します。
③ 審判
審判離婚は、離婚やその条件の大筋については当事者間で合意がまとまっているものの、合理的な理由によらずに細かい点について合意がまとまらない場合に、裁判官の決定で離婚、親権を含めたその他の諸条件を決定することが出来る手続きです。親権で互いの主張が真っ向から対立している場合に裁判所が審判を出すケースはほとんどないと思われます。
また、審判の通知を受け取ったとしても異議申し立てにより審判の効力を失わせることが可能なため審判で離婚が決定するケースは離婚手続全体の割合から見ても少ないです。審判の効力が失われると、次は離婚訴訟となります。
④ 離婚訴訟
調停の不成立、審判の取り消しから移行するのが離婚訴訟です。訴訟では実際に裁判期日が開かれ、裁判官が離婚の成立を認める判決を出した場合には親権者等の諸条件も合わせて決定されます。
以上、①から④で分かるように離婚手続きにおいて親権者を話し合いで決定できるのは②の離婚調停の段階までで、審判、訴訟となると裁判官が決定権を持つことになります。
家庭裁判所が親権者を指定するときの傾向として、子供が乳幼児の場合は母親が優先されています。母親に育児放棄、虐待等で子供を養育出来ないことが明らかな場合などの特別な事情が認められる場合は、父親が親権者に指定されるケースもあります。
そして、家庭裁判所は子供の現在の生活環境を維持することを優先的に考えられています。裁判所を利用して離婚手続を進めている夫婦は別居しており、子供は夫婦どちらかが監護していることが一般的です。その様な状態で、裁判官が現在監護していない親を親権者として指定した場合には、子供にとっては家、同居人などの生活環境全般、保育園や小学校などに通っている場合は周辺との関係性も含め大きく変わることになるため、子供への負担を強いることになってしまうためです。
では、仮に子供が2人以上いるケースでは、親権者はどの様に指定されるのでしょうか?子供が2人居る場合には、子供1人1人につき親権者が定められます。そして、兄弟姉妹は同一の親権者が指定されることが一般的です。
また、子供が満15歳以上であれば、裁判所は親権者の指定について子供の意思を確認することが義務付けられています。仮に15歳未満であった場合でも発達状況により子供の意思が親権者の指定に大きな影響を与えることは多々あります。
もし、子供を妊娠している間に離婚することになってしまった場合はどうなるのでしょうか?その時点では子供生まれていないため、親権者という立場も存在しません。そして、この様な場合では原則として生まれた時点で母親が親権者となります。もしろん、生まれた後に親権者を父親に変更する手続きも可能となります。
稀なケースとしては、親権から身上監護権(子供の世話や教育に関する権利、義務)を分けて親権者と監護者(監護権者)に分ける事で解決をはかることもあります。このケースでは、監護者が子供を引き取り日常的な世話や教育を行っていくことになりますが、あくまでももう一方の親が親権者として親権の内、他の権利を有することとなります。
3.離婚後の親権者の変更について
離婚時に定めた親権者を後日変更することは可能です。しかし、元夫婦間の話し合いだけで全てを決定できるわけではありません。もし、話し合いで簡単に親権者を変更出来てしまうと、その都度子供の生活環境が大きく変わるため、子供に不利益を与える結果となります。
その様な状況を防ぐために親権者を変更したい場合には、家庭裁判所へ親権者変更調停の申立てを行う必要があり、調停が成立すれば親権者を変更することが可能となります。調停が不成立となった場合には審判に移行することになります。
親権者の変更が認められるには主に次のようなケースが考えられます。
①親権者が病気等により子供の世話が不可能となった場合
②子供への虐待が認められる場合
③子供の養育環境が著しく劣悪な状態であるとき
④ その他、親権者の変更が子供にとって必要であると認められるとき
親権者の変更が確定したら、確定した日から10日以内に市町村役場へ「親権者変更届」を提出します。なお、親権者と監護者がそれぞれ分かれているケースで、監護者のみを変更したいとうときは当事者の話し合いだけで変更をすることが可能です。
4.おわりに
以上のように親権者の決定は離婚手続全般と大きく連動しており、互いに影響を及ぼしています。また、一度指定された親権者を後日変更するには一定の条件があるため簡単ではありません。離婚時の親権者の決定は、その後への影響を考えると互いに簡単に折り合いがつかないケースが多いです。
加えて、親権の問題は互いに感情面の対立に発展するケースが多く、本来は対立していなかった部分まで問題化してしまうこともあります。その様な事態に陥る前に、弁護士に問題点の整理や見通しなどを相談することも解決策への1つとなります。
標準報酬月額②~算定基礎届(定時決定)のポイント~
毎年6月ごろに年金事務所から届く「算定基礎届」。今年もこの時期がやってきました。毎年1回、実際の報酬と標準報酬月額が大きくかけ離れないように、「算定基礎届」を提出しなければなりません。全員提出すればいいというものでもありませんので、しっかり要件を確認してみましょう。
ちなみに、提出期限は、7月1日~7月10日ですので、ご注意ください。
1.定時決定とは
原則として毎年7月1日現在の被保険者全員が対象となり、標準報酬月額の見直しを行います。これを、定時決定といいます。
標準報酬月額は、原則として、当然被保険者全員について毎年1回決定され、その決定された標準報酬月額が、1年間使用されます。
(1)算定方法
定時決定の算定の対象となる、4月・5月・6月のことを「算定基礎月」と言い、算定基礎月に支払われた給与(報酬額)を対象とします。
この金額を、期間の月数で割った額を報酬月額として、標準報酬月額を決定します。
例:末日締め、翌月10日払いの場合
4月…4月10日支給 21万円
5月…5月10日支給 18万円 → 合計60万円÷3か月
6月…6月10日支給 21万円 =平均20万円
支払われた給与・・・?どの手当を含むの?こちらの記事に詳しく解説があります。
標準報酬月額①~基礎知識と報酬に含む手当~ はこちらから
4・5・6月の給与が多いと、その後1年間の社会保険料が高くなります。
7月以降の給与が少なかったとしても、この3ヶ月で算出された社会保険料は基本的に変わらないので、4-6月は極力残業を少なくすることをお勧めします。
しかし、業務の性質上、4-6月に残業や歩合が多く発生することが見込まれる場合については(算定基礎月とその他の月を比べて2等級以上の差がある場合)、「定時決定の特例」として扱われ、年間平均額を算出し、別途、理由を記載した申立書や同意書を提出し、年間平均額にて決定することもできます。
(2)支払基礎日数
「支払基礎日数」とは、給与を起算する基礎となった日数のことをいいます。
間違えやすいのが、4月・5月・6月に出勤した日数ではなく、それぞれに支払った給与の計算基礎となった日数となります。つまり、4月支給分の基礎日数は3月勤務分となります。
4月…31日
5月…30日
6月…31日
(3)算定の対象月
①支払基礎日数(出勤日数)が17日以上ある月を計算の対象とします。
②短時間労働者:同一の事業所に使用される通常の労働者の、1週間の所定労働時間の4分の3未満、又は、1か月間の所定労働日数の4分の3未満であるときは、11日未満
※4分の3以上であれば、短時間労働者でも①と同様に17日。
③月給制:支払基礎日数の暦日数、休日や有休休暇も含み、欠勤は含みません。
所定労働日数が20日で、2日欠勤した → 18日(支払基礎日数)
④日給制・月給制:支払基礎日数の出勤日数に有給休暇を足した日数。
⑤17日を満たしていない月は?(短時間労働者かつ4分の3未満の人は11日)
支払基礎日数が17日未満の場合は、算定の基礎から外して、給与を平均します。
例:4月は20日勤務 5月は18日勤務 6月は15日勤務
→17日未満となる、6月を除き、4月と5月だけで給与を平均します。
(4)「算定基礎届」の提出が不要な人
7月1日現在、被保険者である人で以下に該当する人は定時決定を行いません。
①6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した人
→定時決定ではなく、入社時決定方法で標準報酬月額が決まります。
→7月1日に退職した人は、届出が必要です。
②4~6月に賃金の変動があり、7月~9月に標準報酬月額が随時改定される人、又は、産前産後休業や育児休業等を終了した際に標準報酬月額を改定される人。
→定時決定ではなく、「月額変更届」が優先されます。
4月や5月に昇給降給し2等級以上変更となる人は、9月の定時決定を待たずに、「月額変更届」と同様の改定となります。
→産前産後・育児休業の方は、終了した後に提出する、報酬月額変更届により決まります。
(5)届出までの流れ
<有効期限>
定時決定によって決定された標準報酬月額は、原則として、その年の9月から翌年の8月までの各月の標準報酬月額とする。
2.事務手続き
届出先 | 管轄する年金事務所 |
---|---|
期日 | 7月1日~7月10日 |
必要書類 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届 ※70歳以上の方は、「厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎届」を提出します。 |
添付書類 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届総括表 |
注意1 | 算定基礎届出用紙は、管轄の年金事務所より事前に郵送で届きます。 被保険者1人ひとりについて、氏名・生年月日など印字されています。退職者の記載があったり、入社した人が記載されていないことがありますので、注意が必要です。 |
注意2 | 提出が不要な人やその他記載が必要な方は、備考欄に記載しましょう。 パートや短時間労働者な、備考欄の確認は必須です。 |
3.まとめ
算定基礎届出用紙がまだ届いていない場合は、管轄の年金事務所へ問い合わせてみましょう。「算定基礎届出」は、被保険者の報酬額に応じた保険料を算出する大切な作業ですが、各事業所の報酬の支払い状況や被保険者数などを年金事務所が把握する為というのも兼ねています。
提出が遅れたり金額を間違えると、本人たちが迷惑することもですが、会社も後日精算した金額を支払ったり手間となりますので、期限内の提出、適正な記入を行いましょう。
クーリング・オフ期間を過ぎて契約を解除するにはどうするの?
前回、『一度結んだ契約が取り消せる?「クーリング・オフ制度」とは?』の記事で、エステの契約をし、契約書面を受領した日から8日間がクーリング・オフ制度の対象期間となり、その期間を過ぎてしまうと、原則としてクーリング・オフはできない、ということをご説明しました。
しかし、クーリング・オフできないからといって、契約を一切解除できないわけではありません。
今回は、クーリング・オフ以外に商品購入の契約を解除する方法を見ていきましょう。
1. 中途解約
まず1つ目の契約解除の方法が中途解約です。
クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約できることが、特定商取引法第49条で定められていて、以下のように記されています。
こちらを分かりやすく解説すると、
サービス提供事業者が、エステ等の特定継続的役務提供契約を締結した場合、消費者は契約書面を受け取った日から数えて8日が経過した後は、サービス提供期間内であれば、将来に向かって、契約を解除することができる、ということです。ここでいう「将来に向かって」というのは、それまでに提供されたサービスについては返金対象外であるが、それ以降の、まだサービス提供を受けていない部分に関しては返金を受けることができるという意味です。
このように、クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約で契約解除をすることが可能なことがわかりましたが、中途解約の際に、注意しておかないといけないことがあります。
2.中途解約時に注意が必要なこと
中途解約時、気を付けておかなければならないことの1つ目が解約料についてです。
① 解約料
特定商取引法で定められている通り、中途解約を申し出ることで、サービスを受けていない分に関しては返金を受けることはできますが、一方で中途解約では、事業者に対して解約料(違約金・損害賠償額)を払わなければならないときがあります。この解約料を払う必要があるかどうかは、事業者の方針によって異なりますが、その額の上限は2万円と決められているので、この上限を超えた金額をエステの中途解約時に請求されることはありません。
上限2万円の範囲で解約料が発生するので、特に事業者で解約料の定めがなければ、
・サービスを受ける前であれば2万円、
・既にサービスを受けている場合は、2万円か、契約残額の10%のうちの低いほう
が解約料となります。つまり、契約残額の10%の額が2万円より少ない場合は、そちらが解約料となります。契約残額とは、契約に関するサービスの対価の総額から、すでに受けたサービスの分の対価を差し引いた金額のことです。
次に知っておいたの方が良いのが、関連商品についてです。
② 関連商品の中途解約
エステの契約を結んだ際に、サプリメントやボディケア商品などの関連商品も一緒に購入することがあります。これらの関連商品も、エステのサービス同様に中途解約の対象となります。
ただし、未使用品のみ解約の対象になりますので、開封・使用・消費したものに関しては対象外となってしまうので、注意が必要です。
このように、中途解約はサービスを受けた部分は返金対象外で、また解約には一定の解約料が発生します。また、使ってしまった関連商品は解約の対象外となりますので、その点を注意しておきましょう。
次に、クーリング・オフでも、中途解約でもない方法での契約解除の仕方を見ていきましょう。
3. 消費者契約法における契約取消
消費者契約法においては、消費者取消権というものが認められていて、不当な勧誘によって結ばれた契約は、取り消すことができます。
エステにおける不当な勧誘による契約とは、以下のような、消費者に誤認や困惑がある状態で勧誘し、契約を結ぶことを言います。
① 不実告知
不実告知とは、重要事項について、事実と異なることを告げることです。その結果、消費者が告げられた内容を事実と誤認してしまうことにより、消費者取消権が認められます。
具体的には、施術内容やその効果について嘘(「エステを受ければ若返る」という)をつくこと、専門用語や専門知識を使い、消費者には理解し難い説明を行い契約させることや、クーリング⁺オフや中途解約に関する消費者の権利・義務について告げていないこと、「無料」と謳いながら、実際には有料の施術を受けさせた場合などが不実告知にあたります。
② 断定的判断の提供
断定的判断の提供とは「絶対に痩せます」「二度と元の体型には戻りません」などのように「絶対」、「二度と」などの断定的な表現を使い勧誘・契約を行うことを言います。代金を払いエステを受けたことで「絶対に」その効果を体感できるということは言い切れないので、そのような勧誘は消費者契約法違反になり、取消の対象となります。
このように、契約時に述べた内容が実際は違っていたり、「絶対」などと言い切れないことを断定したりして契約に結び付けると、消費者契約法の違反になるので、取消の対象となります。
また、いずれも取消できる期間は、誤認に気が付いたときから6か月間、また契約時から5年間です。契約後5年以上が経過してしまうと原則として取り消せなくなってしまうので注意が必要です。契約を解約したい人は、ご自身が契約時にどのようなやり取りをしたのか、記憶を辿ってみましょう。
4.まとめ
クーリング・オフは期間が短いですが、期間を過ぎてしまったからといって、後悔している契約の解除を諦めるのは早いです。
中途解約もできますし、また勧誘や契約の仕方が不当である場合は法律の定めで契約の取り消しが可能です。
しかし、不当な勧誘・契約と言っても様々なケースがあり、一概には言えず、ご自身で判断するのは難しいので、困ったときは専門家に相談するのが良いでしょう。
意外と知らない会社法3~会社の設立~
世の中に数多く存在している「会社」ですが、それらは、どのようにして誕生するのでしょうか?
1. 「定款」の作成
会社を設立するためにはいくつかの手続きが必要になってくるのですが、その流れにはどのようなものがあるのでしょうか?
手続きの最終段階である登記が完了するまでには、大きく分けて4つの過程があり、その1つ目が「定款」の作成です。「定款」とは、会社を運営していく上で必要な基本的規則を定めたもので、「会社の憲法」と呼ばれるものになります。
これを、「発起人」と呼ばれる会社の設立を企画し、会社の経営を担っていく人物が作成し、会社の定款に認証を与える権限を有する「公証人」の認証を受けることになります。
定款の内容として、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の記載が必要で、これらの記載がないと定款の認証を受けることが不可能、つまり定款が無効となってしまいますので気を付けましょう。
・絶対的記載事項:定款に必ず記載しなければならない事項
(項目)会社の目的、商号、本店の所在地、出資額、発起人の氏名・住所、発行可能株式総数
・相対的記載事項:定款に定めなければ効力が生じない事項
(例)現物出資、財産引受、発起人の報酬・特別利益など
・任意的記載事項:定款ではなく、他の方法で定めても良いもの。会社法の規定や公序良俗に違反しない限りは定款で定めることが可能
(項目)定時株主総会の招集時期、役員の数、事業年度(決算期に関する事項)
2. 資金を集める
2つ目は、会社の資本金を集めることです。
「資本」とは一般的に、事業を行うために必要なお金のことですが、会社法で言う資本とは、「設立」又は「株式の発行」に際して株主となる者が、株式会社に対して「払込み」「給付」をした「財産の額」のこと(会社法第445条参照)つまり、会社の財産を確保するために株主から払込み、給付をされたお金のことになります。
会社にある程度の財産がないと、取引先の業者や銀行など、会社からお金を払ってもらう、返してもらう立場の人々に、お金が返ってこないのではないかという不安を与えかねませんし、信用の度合いも低くなってしまします。ですので、初めにある程度の資本金を集めておき、安心して取引を行えるようにしておく必要があるのです。
では、用意する資本金の最低額はいくらなのでしょうか?
平成18年に会社法が施行されるまでは、「最低資本金制度」という制度により、有限会社を設立するには最低でも300万円、株式会社だと1,000万円の資本金を用意しなければなりませんでした。しかし、会社法ができたことにより、「最低資本金制度」は廃止され、現在は設立時の資金が0円でも設立ができるようになったのです。
厳密に言うと、出資額を0円にすることはできません。しかし、例えば20万円出資したとして、登録免許税や定款の認証手数料に20万円使ったとなると手元には1円も残らないことになります。つまり、会社の資金が0円となるのです。
一般的には、会社の設立費用に20万円強かかりますので、それ以上の金額は資本金として会社に最初から入れておくケースが多いです。
3. 会社経営陣の選任と登記
定款の作成、資金集めが終わると今度は会社の経営陣を決定します。
まず経営陣とは、取締役、監査役、会計参与を総称して表す言葉のことで、簡単に言えば会社役員のことです。選任する際に気を付けることとして、取締役や監査役は、誰でもなれるわけではないということです。以下の人はなることができません。
【取締役の欠格事由】(会社法第331条参照)
一 法人
二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第197条、第197条の2第1号から第10号まで若しくは第13号、第198条第8号、第199条、第200条第1号から第12号まで、第21号若しくは第22号、第203条第3項若しくは第205条第1号から第6号まで、第15号若しくは第16号の罪、民事再生法(平成11年法律第225号)第255条 、第256条、第258条から第260条まで若しくは第262条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成12年法律第129号)第65条 、第66条、第68条若しくは第69条の罪、会社更生法(平成14年法律第154号)第266条 、第267条、第269条から第271条まで若しくは第273条の罪若しくは破産法(平成16年法律第65号)第265条 、第266条、第268条から第272条まで若しくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
上記の欠格事由に該当しない人を、1でも出てきた発起人が選任し、選任が終わると、発起人は選任決定書を作成します。
そして、最後に登記を行います。必要書類を揃え、本店所在地の管轄法務局に登記申請を行います。不備がなければ、申請から1週間ほどで登記が完了し、会社が誕生します。
4. まとめ
今回は、会社を設立するために必要な流れをおおまかに説明しました。
実際に会社を設立するとなると、印鑑を作成したり、誰から出資を募るかを決定したり、書類を集めたりと、様々な準備が発生しますので、まずは、登記までの流れを把握し、必要な準備を始めていきましょう。
その後、出資金をいくらにして、どのようなビジネスを行っていくか等は、専門家に相談しながら進めて行くことをお勧めします。
会社に関する事務って何をするの? ~総務・人事・経理の定例業務~
皆さんは、「事務」と聞くとどのような仕事を思い浮かべますか?総務や経理、一般事務、営業事務など、偏に事務といっても業務内容は様々です。
今回は、その中でも、総務、人事、経理といった「会社に関する事務」に着目してお話します。これから会社に関する事務に携わる予定の方はもちろん、就職・転職活動をされている方にもぜひ読んでいただけたらと思います。
1. 会社に関する事務
会社に関する事務は、大きく以下の3つに分けられます。まずは、それぞれの分野について、一般的な業務をご説明します。
※会社によって、各分野の業務領域は異なります。
(1)総務
総務は、会社の各部署がスムーズに業務を遂行できるようにサポートを行います。また、官公庁や取引先など社外の人とも関わる機会が多いです。幅広い業務について柔軟に対応することが求められます。
<例> 印鑑や重要書類などの管理 官公庁や取引先などの対応 株主総会の準備・開催 など
(2)人事
人事は、主に従業員に関する手続き全般を行います。従業員の大切な個人情報を保有することになるので、漏洩することのないように、慎重に情報を扱うことが求められます。
<例> 各種保険手続き 給与計算 年末調整 など
(3)経理
経理は、主に会計や税金に関する業務全般を行います。会社の成長に直結するので、迅速かつ正確に業務を進めることが求められます。
<例> 現金・預金管理などの会計処理 法人税など各種申告書の提出・納付 など
ここからは、総務・人事・経理の毎年定例の業務をご紹介します。
2. 総務の年間定例業務
〇株主総会の準備・開催(4月~5月※)
会社の決算が終わったら、株主総会を開催します。決算日から2~3か月以内に行うのが一般的です。開催に伴い、事業報告書や計算書類などを準備する必要があります。また、開催したら、必ず株主総会議事録を作成します。
※ 3月末決算の場合
〇役員改選等の登記申請手続き(5月※)
株主総会において役員の改選等があった場合、変更が生じた日から2週間以内に登記をする必要があります。
※ 3月末決算の場合
3. 人事の年間定例業務
〇健康保険・介護保険の料率改定の確認(3月)
健康保険と介護保険の保険料率は毎年3月に改定されます。必ず最新の保険料額表を準備して、改定内容を確認しましょう。
〇雇用保険の料率改定の確認(4月)
雇用保険の保険料率は毎年4月に改定されます。必ず最新の雇用保険料率表を準備して、改定内容を確認しましょう。
〇労働保険の年度更新手続き(6月)
毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付を労働基準監督署に行う必要があります(労働保険概算・確定保険料申告書)。
〇特別徴収税額の更新(6月)
毎年5月末頃までに、会社に特別徴収税額通知書が送られてきます。6月からはこの通知書に基づき、従業員の給与から住民税を差し引くことになるので、必ず変更された税額を確認しましょう。
〇社会保険の定時決定(7月)
社会保険料は、原則として年に1回見直しを行います。そのため、7月1日時点で使用している全被保険者の3か月間(4~6月)の給与をもとに「標準報酬月額」を見直し、7月10日までに年金事務所に届出をする必要があります(健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届)。
〇社会保険の標準報酬月額等級の更新(9月)
前述した算定基礎届を提出して決定した新しい社会保険料は、その年の9月から適用されます。必ず変更された社会保険料を確認しましょう。
〇厚生年金保険の料率改定の確認(9月)
厚生年金保険の保険料率は毎年9月に改定されます。必ず最新の保険料額表を準備して、改定内容を確認しましょう。健康保険・介護保険(3月改定)、雇用保険(4月改定)とは改定時期が離れているので、確認を忘れないように注意してください。
〇年末調整(12月)
「毎月の給与計算で差し引かれた所得税額」と「1年間に支払った給与をもとに計算した納付すべき所得税額」における過不足額を精算し、税務署・市町村に書類を提出する必要があります(給与支払報告書、源泉徴収票、法定調書合計表)。
4. 経理の年間定例業務
〇償却資産申告書の提出(1月)
毎年1月1日時点で所有している、事業のために用いることができる構築物・機械・工具・器具・備品等の固定資産(これらを償却資産といいます。)について、1月31日までに市町村に申告をする必要があります。償却資産の例としては、パソコンなどの事務機器、看板、印刷機などがあります。
〇所得税の納付(1月、7月)
毎月給与から差し引く所得税の納付は、原則として翌月10日までに行います。ただし、給与を支払う従業員が常時10名未満で、納期の特例制度が適用されている場合は、1月と7月に6か月分をまとめて納付します。
〇決算準備・決算(3月~4月※)
会社は、決められた事業年度における業績について、貸借対照表や損益計算書などの書類を作成します。それらをもとに、株主総会において株主へ業績の報告と承認を求め、承認された内容に基づいて税金の申告を行う必要があります。この書類作成業務のことを決算といいます。申告については後述します。
※3月末決算の場合
〇法人税申告書、法人事業税・住民税申告書、消費税申告書の提出(5月※)
決算に基づき、納税額を確定するため、法人税申告書、法人事業税・住民税申告書、消費税申告書を作成し、期末から2か月以内に税務署に提出する必要があります。これらの書類の作成は、多くの場合、会計事務所に依頼します。
※3月末決算の場合
〇住民税の納付(6月、12月)
所得税同様、毎月給与から差し引く住民税の納付は、原則として翌月10日までに行います。ただし、給与を支払う従業員が常時10名未満で、納期の特例制度が適用されている場合は、6月と12月に6か月分をまとめて納付します。
5. まとめ
今回は、会社に関する事務について、年間スケジュールに基づいてお話しました。従業員の少ない会社だと、全ての事務を1人で担当するということも十分あり得ます。これから会社に関する事務を担当される予定の方もいらっしゃるかと思いますが、実際に勤務を開始すると、毎日沢山の業務に追われてしまい、1年間の予定をゆっくり確認する時間が取れないと思います。
事前に、いつ頃、何の業務をする必要があるのかということを把握しておくだけでも全く違うと思いますので、ぜひこの記事を参考にしていただければ幸いです。
警察(警察官)にクレームをお持ちの方へ
突然ですが皆さんは「3歳にも満たない子どもがバラバラに切断された」という事件を知って、数日後「その事件の容疑者が逮捕された」という報道がなされたときどう思いますか?
「よかった、逮捕されたんだ!」
「こんな残酷なやつは死刑にしてしまえばいい!」
「サイコパスじゃないのこの人?」
もしかするとそんなことを思うかもしれません。
しかしながら、逮捕された人=犯人とは必ずしも限りません。
1 約7割は有罪にはなっていない
我が国では、公訴が提起(刑事訴訟法247条)されればそのほとんどが有罪になりますが、逮捕されたのちに起訴される確率は、31%程度にとどまっています(平成29年犯罪白書)。
つまり、逮捕された人の約7割は(実際に犯罪を行ったかはさておき)有罪にはなっていないのです。
逮捕された人というのは、その段階では罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由がある者(刑事訴訟法199条、通常逮捕の場合)であって、逮捕の段階では、犯人とは限りません。この段階で疑われている人(しばしば容疑者といわれます)のことを被疑者といいます。
刑事訴訟手続では「疑わしきは被告人の利益に」という原則がありますが(刑訴336条、憲法31条)、その一方で、警察段階では、条文に従うと、少なくとも疑わしい者を逮捕することとなっています。
もしかすると、あなたが何らかの理由で犯行の行われた現場にいて、疑われる状況になり、逮捕されることも十分にあり得る話なのです。
そうすると、最初に例に出した逮捕された人に対して感じた、「悪いことをした人が捕まった」という印象が、もしかすると間違っていた可能性もありますよね。
人にはあまり物事の判断に時間を割かず、白黒をつけてしまう性質があるので、それ故の仕方のないことであると思われます。
例えば、「カルテット」というドラマの主題歌にもなった椎名林檎さんの「おとなの掟」という曲の歌詞にこんなものがあります。
“ああ、白黒つけるのは恐ろしい
切実に生きればこそ“
本当に切実に、ものごとと向き合って考え、悩んだとき、苦悩しながら白黒つけることの難しさや恐ろしさに直面するものと思われます。
さて、ここで本題に戻りますが、反対に何かを悪いと決めて断ずる人がいなければどうなるでしょう。誰も何も悪いと言わない結果、物事がうやむやになってしまう事態が考えられるのです。そのため、一定の秩序を保たなければいけないという要請もあります。
秩序を保つためには、誰かを罪人であると主張する役割(つまり公訴の提起を行う人)もいなければいけないのです。その役割は検察官が職務の一貫として担っています(刑事訴訟法247条)。そして、その検察官の判断材料を集めるのが警察官の一つの役割となっています。このような役割の下では警察が行き過ぎた行為を行うことや、反対に、捜査に対して消極的になることも想定できます。
2 警察の責務に関する法律の定め
皆さんは警察官というとどのような人をイメージしますか?青島刑事でしょうか?シバトラでしょうか?警察官で思い出される人は結構刑事さんが多いような気がするのですが、実際に関わるとなると街の警察官であると思います。そして、みなさんがトラブルに巻き込まれるのも街の警察官との間であると思われます。
なお、警察法によると、警察の責務は以下のように定められています。
(警察の責務)
第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
1 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。
警察官は、①犯罪の予防、②犯罪の鎮圧、③犯罪の捜査、④被疑者の逮捕、⑤交通の取締、⑥その他公共の安全と秩序の維持にあたること、を責務としていて、責務の遂行にあたってはその権限の濫用があってはならないこととされているのです。
3 警察官の行き過ぎた行為の報告先
当然、犯罪を行った可能性のある者を捜査するものですから、捜査が行き過ぎることも考えられます。逆に警察官にも色々いらっしゃいますので、なかなか捜査や取締に積極的でない警察官もいると思われます。
例えば警察官から、行き過ぎた行為を受けたとか、告訴を行っているのに受理しようとしないなどの事情で、警察官に対する苦情をお持ちになる場合もあるかもしれません。その際は、苦情の通報先がありますのでご利用になってみるのもよいかもしれません。
(1) 都道府県警本部 監察官室等
福岡県では監察官室という窓口が設置されています。警察官が実名を名乗らなかった場合については、制服を着た警察官の場合は胸にある識別章の番号【AA111】などアルファベット2文字と数字3文字をメモしておくと、のちのち特定することができます。福岡県警察の場合、以下が苦情の申出先になっています。
〒812-8576
住所:福岡市博多区東公園7番7号
福岡県警察本部(相談コーナー)
電話:092-641-9110
(2) 都道府県の公安委員会
都道府県公安委員会は、都道府県知事の直下におかれる組織です。都道府県公安委員会が管理しているのが都道府県警察本部で、その下に県警本部と本部長、警察署があります。都道府県公安委員会に対し苦情を申し出ることも出来、その申出の根拠は警察法で定められています。以下が警察法の規定と、申出の方法に関する規則です。
(苦情の申出等)
第七十九条 都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し、国家公安委員会規則で定める手続に従い、文書により苦情の申出をすることができる。
2 都道府県公安委員会は、前項の申出があつたときは、法令又は条例の規定に基づきこれを誠実に処理し、処理の結果を文書により申出者に通知しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
(省略)
そして、国家公安委員会規則に『苦情の申出の手続に関する規則』という規則がありこのように定められています。
『苦情の申出の手続に関する規則』
(苦情申出書の提出)
第二条 苦情申出を行おうとする者(以下「申出者」という。)は、次の各号に掲げる事項を記載した文書(以下「苦情申出書」という。)に署名又は押印をしてこれを提出するものとする。
一 申出者の氏名、住所及び電話番号
二 申出者が住所以外の連絡先への処理の結果の通知を求める場合には、当該連絡先の名称、住所及び電話番号
三 苦情申出の原因たる職務執行の日時及び場所、当該職務執行に係る警察職員の執務の態様その他の事案の概要
四 苦情申出の原因たる職務執行により申出者が受けた具体的な不利益の内容又は当該職務執行に係る警察職員の執務の態様に対する不満の内容
2 (省略)
第三条 苦情申出書の受理に関する事務を行う警察職員は、申出者が苦情申出書を作成することが困難であると認める場合には、当該申出者の口頭による陳述を聴取し、苦情申出書を代書するものとする。
2 警察職員は、苦情申出書を代書した場合には、申出者に当該苦情申出書を読み聞かせ、又は閲読させた上で、その署名又は押印を求めるとともに、自己の所属、官職及び氏名を記載し、押印するものとする。
3 警察職員は、苦情申出書を代書するに当たり通訳その他の者を立ち会わせた場合には、当該苦情申出書にその者の署名又は押印を求めるものとする。
4 まとめ
なお、都道府県公安委員会宛のものは苦情の申出の手続に関する規則による決まりで必ず結果がお知らせされるというようになっているので、調査したうえでの結果をお知りになりたい方はこちらを選ばれる事が望ましいようです。
上記に定められるような苦情申出書には書かなければならない事項が難しく作成が難しいかもしれません。もしも記載が難しければ、法律上の規定ともからめて苦情申立書を作成することも出来ますので身近な法律家に相談するのがよいものと思われます。