弁護士コラム

2019.05.20

意外と知らない会社法2 ~有限会社・商号・屋号とは~

普段何気なく目にしている会社名や店舗名。

これってどのように決められているか、知っていますか?

1.「有限会社」とは?

 街中で、有限会社と書かれた看板やビルを見かけることがありますよね。実はこの有限会社、今はもう会社法上、設立することができないだけでなく、「有限会社」と看板を掲げている会社も厳密には有限会社ではないのです。

平成18年(2006年)51日に会社法という法律が施行されました。それまでは、商法第2編会社の規定、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)、有限会社法、この3つの法律が会社法的な位置付けとして利用されていましたが、会社法という新しい法律ができたことで商法第2編は削除され、商法特例法と有限会社法は廃止されてしまったのです。

会社法が制定された理由として、商法は明治32年に制定されたものであるため、文がカタカナ表記、文語体になっておりひらがな表記に改める必要があったこと、何度も改正されたことで枝番が付き過ぎて読みにくかったこと、規制緩和やグローバル化に柔軟に対応できるように内容をバージョンアップさせる必要があったことが挙げられます。

会社法の制定に伴い有限会社法が廃止されたことで、それまで株式会社よりも簡単に、かつ少ない資金で設立可能だった有限会社を設立することが不可能となりました。つまり、2006年から有限会社は設立できなくなったのです。では、今まで存在していた有限会社はどうなってしまったのでしょうか?

結論から言うと、「有限会社」は「株式会社」となりました。つまり、「有限会社」というものが世の中からなくなった結果、今まで有限会社としていた会社は「株式会社」としましょうということになりました。法律上、有限会社ではなく株式会社として扱われていますが、今でも変わらず存在していて、このような有限会社のことを形式的には株式会社であるにもかかわらず、「特例有限会社」と呼びます。また、有限会社がなくなった代わりに、株式会社の内容に多くの類型が設定され、有限会社とあまり変わらない形で株式会社を設立することが可能となりました。

 

2.「商号」とは?

 では、次に会社の類型の話から、会社の名前の話に移りたいと思います。世の中には様々な会社の名前がありますが、これって自分の好きな名前を付けられるのでしょうか?

 まず、会社には「商号」と「屋号」というものが存在します。ここでは、「商号」についてお話します。

「商号」とは会社が運営していくうえで他の会社と区別するための名前のことで、会社の名前として登記されます。原則、自由に決めることができますが、いくつかルールが存在します。

まず、文字について。ひらがなやカタカナ、アルファベットなどはもちろん使うことができますが、ローマ数字や()などは使うことができません。

次に、会社の種類を入れなければならないことです。会社の種類とは「株式会社」や「合同会社」のことで、名前の前後に必ず入れるということが定められています。反対に、会社ではないのに「株式会社」などの会社を表す言葉を使ってはいけません。

3つ目に、「銀行」「出張所」など特定の言葉を使用することも禁止されています。

そして最後に、同一住所で、同一商号は使用できないルールが存在します。異なる住所であれば同一の商号でも登記することが可能ですが、他のお店と似た名前を付けてしまうと、不正競争防止法に触れる可能性もありますので、会社を設立する際はインターネットで設立する予定の会社名を検索してみましょう。思いのほか、同じ名前の会社が世の中にたくさんあることに驚くと思います。これは、不正競争防止法の観点からも必要なことですが、ビジネスを行う上で会社の認知度を高める以上、同じ名前の会社が全国にたくさんあっては、広告などの際に不都合が生じますので、意識しておくべきです。

以上のルールを守れば自由に商号を決めることができるので、「商号」を考える際にはぜひ参考にしてみてください。

 

3.「屋号」とは?

 2で、会社には「商号」と「屋号」が存在するとお話ししましたが、3では「屋号」についてお話していきます。

 「屋号」とはビジネス上の名前で、実際に店舗で使ったり、銀行口座、契約書、領収書に記載されたりする名前のことになります。「商号」とは違い、会社法の規制を受けません。そのため、事業ごとに複数作っても、文字数が多くても自由に名前を付けることができるのです。ただし、すでに使われている屋号が商標登録されているものだと、同一市内で同じ屋号を使用することができず、「○○会社」「○○法人」といった名前も、付けることができませんので注意してください。

 また、屋号は商号と違い必ず付けなければならないものではありません。商号と店舗名を分けている会社もあれば、一緒にしている会社もあります。

 最も分かりやすいのが飲食店でしょう。世の中の飲食店は、一つの株式会社が10種類の店舗を別のブランドとして展開していたりします。その際、飲食店の経営においては、株式会社の名前である商号が表に出ることは少なく、あくまでそのお店の屋号でお客さんは把握しますよね。ですので、意外と同じ会社が経営していると知らないチェーン店などもたくさん存在します。

では、もし屋号を付けたいと考えた場合、どのような名前が印象に残るのでしょうか?

屋号は多くの人の目に触れるものになりますので、誰にでも分かりやすく、事業内容のイメージが付きやすいものだと効果的です。どんな事業を行っているのかがすぐに分かれば、どこかでビジネスチャンスが広がる可能性がありますし、記憶に残りやすいものです。1度屋号を決めてしまったとしても変更することが可能で、変更には届出の必要もなく、もし個人事業として行っているなら、確定申告をする際に新しい屋号を記入するだけで簡単に行うことができます。

 さらに、屋号を作ることで、個人事業主であれば、屋号名義で銀行口座を開設することもできますので、屋号をつくること、考えてみてください。

 

4.まとめ

 今回は、「有限会社」「商号」「屋号」についてお話をしました。

 普段何気なく目にしている会社名や店舗名ですが、名前1つを決めるにもたくさんのルールが存在し、そのルールを守ったうえで考え抜かれた名前なのです。

今回この記事を読んだことをきっかけに、会社や店舗の名前の由来や付けた人の思いなどを考えてみるといいかもしれません。

2019.05.17

【相談事例59】仕事で撮影した写真は誰のもの??

【相談内容】

 飲食店を経営している者です。

 先日、従業員に指示して、店のホームページに載せる店の外観を撮影するように指示しました。その従業員は写真撮影を趣味にしており、一眼レフカメラで撮影してくれて、とてもいい写真を撮ってくれて、それ以来ずっと店のホームページや飲食店が掲載されているサイトにその写真を掲載していました。

 この度、写真を撮ってくれた従業員が退社することになりました。従業員が退社したあとも、その人が撮影してくれた写真を継続して使いたいのですが、著作権の関係などで問題はないでしょうか。

【弁護士からの回答】

 最近では趣味で一眼レフカメラを持たれている方も多く、プロ顔負けの写真を撮影される方も少なくないと思います。
 では、ご相談者様の事例のように、従業員さんが撮影された写真について、使用者が自由に使用することはできるのでしょうか。

1 写真の著作物性

 ご相談の事例で問題になるのが、写真には著作権が認められるかという点にあります。著作権が認められる=写真が著作物に該当するかという点が問題になります。

 著作権法上「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法2条1項1号)とされており、写真についても、例えば証明写真等のように、創作性が否定されるもの以外、著作物に該当するとされています(著作権法10条1項参照)。

2 職務上著作について

 次に、写真の著作権を有する人、すなわち著作権者は誰になるのでしょうか。
 個人で写真を撮影する場合には、撮影を行った人が著作権者であり、撮影した写真について著作権を有することになります。
 そうすると、ご相談者様の事例でも、店の外観などを撮影した写真の著作権者は撮影した従業員になるということになりそうにも思えます。

 しかし、著作権法15条1項では、「法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」と規定されております。簡単にいうと、使用者の発意(具体的な指示)に基づき、業務上作成したものであり、使用者や法人の名で公表するものであれば、その著作者(著作権者)は、法人や使用者になるということを規定しています。

 したがって、ご相談者様のケースでも、撮影を依頼した際に、写真の著作権について取り決めをしている場合等をのぞき、お店の外観を撮影した写真の著作者(著作権者)はお店ということになるため、従業員の方が退社した後もその写真を継続して使用することに関しては何ら問題ありません。
 著作権等の知的財産に関しては、企業や事業主の方があまり意識されない分野ですが、意外にトラブルにもなりやすい分野ですので、是非お気軽に弁護士にご相談ください。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。

「相談事例集の掲載にあたって」

2019.05.16

【相談事例58】闇営業は違法??~闇営業の問題点について~

【相談内容】

 最近ニュースで、お笑い芸人が闇営業を行ったとのことで謹慎処分を受けているニュースが目立ちます。

 気に入っていた芸人さんが見ることができなくなってしまうのはとても残念なのですが、闇営業ってそんなに悪いことなのですか?

 そもそも闇営業ってどういったものをいうのでしょうか。

【弁護士からの回答】

 複数人のお笑い芸人が、詐欺グループが主催したパーティーに所属事務所を通さずに参加したことが明らかになりニュースとなっています。さらに、当初、芸人の方は主催したグループから報酬(ギャラ)を受け取っていないと釈明していたところ、後日、実際にはギャラを受け取っていたことが判明し、所属事務所から謹慎新処分を受け、出演番組などに大きな影響を及ぼすような重大な事件として連日報道されています。

 この事件では「闇営業」というワードが非常に多く出てくるのですが、私個人の感想ですが、この「闇営業」というワードのイメージが、この事件の問題点を複雑にしているのではないかと思います。

 そこで、今回の「闇営業」にまつわる事件について法的に何が問題であるのかについてご説明させていただきます。

1 問題となりうる行為について

 今回の闇営業問題において問題となりうる行為としては、          

① お笑い芸人が所属する事務所を通さずに直接仕事の依頼を受けた行為      

② 依頼主(パーティーの主催者)が詐欺グループであったこと  

③ 報酬を受領していたこと                

(④ 報酬の支払ったのが詐欺グループであったこと)      

といった4つの問題点が考えられます。 

 そして暴力団ではないものの、犯罪グループの仕事の依頼を受け、犯罪行為により得た収益である可能性がある報酬を受け取ること自体、社会モラル的に非常に問題のある行為であるため、これだけ大きな事態に発展していると思われるのですが、今回は「闇営業」という点に絞って説明させていただきますので、①と③の問題点についてご説明させていただきます。

2 ①について

 お笑い芸人が所属事務所を通さずに直接仕事の依頼を受ける行為については「闇営業」と言われているそうです。「闇」という響きから違法な人からの依頼を受ける行為を「闇営業」であるというようにイメージしてしまいそうですが、今回の事件でも依頼をしたのが法的に何ら問題のない人であっても「闇営業」ということになるのでしょう。
 この事務所を通さずに直接仕事の依頼を受ける行為については、その行為を規制する法律は存在しません。したがって、「闇営業行為」を行ったことのみをもって、罪に問われるような行為には該当しません。
 

 この闇営業については、芸能事務所と所属する芸人との間でどのような契約を行っているのかという点が重要となってきます。事務所自体が直接仕事を受ける行為自体を許容していたのであれば、闇営業をいくら行っていたとしても問題は一切ありません。

 反対に、事務所として、事務所を通さない仕事を一切禁じている場合や、報酬が一定額以上の場合には事務所を通して仕事をするよう取り決めがある場合にそれに反した場合は所属事務所との契約を解消されてしまうリスクがあります(ニュースなどでは、そもそも所属事務所と芸人との間での契約内容が明確になっていないという点も取りざたされているようであり、契約内容の明確化については芸能界における重要な問題点だと感じております。)。

3 ③について

 このように闇営業行為については、芸能事務所と芸人との間の契約内容の問題ということになるのですが、闇営業行為により報酬を受領することについては何か問題点があるのでしょうか。

 この点、仕事を行い、その対価として報酬を得ること自体は法律上何ら問題はありません(依頼主が上記のように違法なグループである場合には、モラル上の問題があることは否定できません。)。もっとも、お笑い芸人の方は、所属事務所と雇用契約を締結しておらず、業務委託契約を締結しているため、事務所からの給料(報酬)についても事業所得として確定申告を行っているのが一般的であるようです。そして、闇営業により取得したギャラ(報酬)も事業により得られたものであるため所得として計上する必要があります。

 したがって、仮に芸人の方が闇営業で取得したギャラを確定申告の際に収入に計上していなかった場合には、所得隠しとしていわゆる脱税行為に該当することになり、その程度が所得税法などにより刑事罰に課せられる危険性もある行為です。

4 まとめ

 今回の闇営業問題により芸能人や所属事務所のコンプライアンスの重要性が広く認知されたことはとても意義があり、芸能人のみならず通常の会社においても、従業員のコンプライアンス研修や会社における従業員のコンプライアンスの管理体制の構築は非常に重要な問題であることは否定できません。
 企業や従業員のコンプライアンスの環境についてお悩みの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。

「相談事例集の掲載にあたって」

2019.05.16

同性間のパートナーシップ証明について~LGBTQに関する行政の取り組み~

人が人を好きになる理由はさまざまで、また、その対象もさまざまであって、それがこの世の中の興味深いところであると個人的には思うのです。

しかしながら、世の中は、何らかの事情で時として人を好きであることに消極的な姿勢をみせることがあります。例えば同性同士が婚姻をしようとする場合にも法律上は積極的にこれを認める決まりはありません。

心理・社会的性別(gender)について考えると、その内容がとても難しいことに気付きます。どのような社会がよいのか考えても一定の結論にたどり着けないのがこの問題の難しいところです。

1 生物学的性とジェンダーに関して

ジェンダーという言葉をよく聞きますが、果たして何を指しているものなのでしょう。
もしかするとご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ジェンダーは後天的に獲得するに至った性であって、先天的に持つ性別とは異なるものと定義されています。
出生後私たちは発達の過程でジェンダーを獲得します。発達過程において生物学的な性とジェンダーが一致しない場合と、する場合があります。

最近ではその一致は当たり前のことではないという考えのもとLGBTQやLGBTX等の概念が普及しています。
そして「ダイバーシティ」の枠組みの中において多様性の推進がなされている今日、同性同士のパートナーシップを公に認める取り組みも実際になされています。

2019年5月現在において、この取り組みは渋谷区に限定されていますが、今後政令市や中核市などの主要都市が導入をはじめると全国に広がってゆくことが想定されます。

2 渋谷区パートナーシップ証明書

今回ご紹介するのは、渋谷区パートナーシップ証明書制度です。
パートナーシップ証明書とは、法律上の婚姻とは異なるものとして、条例において、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える戸籍上の性別が同一である二者間の社会生活関係を「パートナーシップ」と定義し、二人がパートナーシップの関係にあることを確認して証明するものです。

このパートナーシップ証明書は、同性同士のパートナーシップを前提としており、戸籍上の異性間で婚姻以外のパートナーシップを望む場合は取得できないという問題点はあるのですが、これまで後天的な性に関して閉鎖的であった我が国では先進的な制度といえるでしょう。

渋谷区では、戸籍上の性が同性同士のパートナーシップであっても婚姻に準じた取扱いがなされており、できるだけ異性間の場合と同性間の場合と変わらないように取り扱われるとのことです。

前向きに、パートナーシップに関してお考えの方は、以下簡単に概要を説明しますので、ご覧になっていただければ幸いです。

3 実際にパートナーシップ証明を得るには

実際の手続の概要は条例第10条に定められています(※渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例)。

第4条 区は、次に掲げる事項が実現し、かつ、維持されるように、性的少数者の人権を尊重する社会を推進する。
 (1) 性的少数者に対する社会的な偏見及び差別をなくし、性的少数者が、個人として尊重されること。
 (2) 性的少数者が、社会的偏見及び差別意識にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮し、自らの意思と責任により多様な生き方を選択できること。
 (3) 学校教育、生涯学習その他の教育の場において、性的少数者に対する理解を深め、当事者に対する具体的な対応を行うなどの取組がされること。
 (4) 国際社会及び国内における性的少数者に対する理解を深めるための取組を積極的に理解し、推進すること。

第10条 区長は、第4条に規定する理念に基づき、公序良俗に反しない限りにおいて、パートナーシップに関する証明(以下「パートナーシップ証明」という。)をすることができる。
2 区長は、前項のパートナーシップ証明を行う場 合は、次の各号に掲げる事項を確認するものと する。ただし、区長が特に理由があると認めるときは、この限りでない。
 (1) 当事者双方が、相互に相手方当事者を任意後見契約に関する法律(平成11年法律 第150号)第2条第3号に規定する任意後見受任者の一人とする任意後見契約に係る公正証書を作成し、かつ、登記を行っていること。
 (2) 共同生活を営むに当たり、当事者間において、区規則で定める事項についての合意契約が公正証書により交わされていること
 (3) 前項に定めるもののほか、パートナーシップ証明の申請手続その他必要な事項は、区規則で定める。

第11条 区民及び事業者は、その社会活動の中で、区が行うパートナーシップ証明を最大限配慮しなければならない。
2 区内の公共的団体等の事業所及び事務所は、 業務の遂行に当たっては、区が行うパートナーシップ証明を十分に尊重し、公平かつ適切な対応をしなければならない。

また、取得手続きに入る前に以下の要件を満たしている必要があります。(渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例施行規則3条1号~4号)

① 渋谷区に居住し、かつ、住民登録を行っていること。
② 20歳以上であること。
③ 配偶者がいないこと及び相手方当事者以外の者とのパートナーシップがないこと。
④ 近親者でないこと

以上の要件の下、実際にパートナーシップ証明書を取得する手続きに移行します。

このように、パートナーシップ証明書を取得する基本的な流れは、①任意後見契約に係る公正証書を作成して②登記をし、③合意契約を公正証書で作成し、申請するという流れになるようです。

しかしながら、この手続きには、条例で合意するように定められている事項に合意していること等の要件があり、その上で、公正証書という公証人が作成する公文書を作成しなければなりません。

そこで、パートナーシップ証明書の取得をご希望の方は、パートナーシップ証明書関係の事務を取り扱う渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>にご連絡の上、法律事務所に依頼し、公正証書の案を練るというのが一般的な流れであると思われます。

4 まとめ

さて、今回はパートナーシップの証明についてご説明しました。いまはまだ、渋谷区のみの取り組みですが、今後拡大してゆけば各自治体で取り組むものとなってゆくかもしれません。
このように多様な在り方をみとめてゆくことで、全ての人にとって生活しやすい社会が形成されることへの期待がなされています。

2019.05.16

マイナンバーに関する従業員教育の進め方

2016年1月から社会保障、税、災害対策の分野で行政機関等へ提出する書類にマイナンバーの記載が必要となり本格始動したマイナンバー制度。企業も、税と社会保険の手続きでマイナンバーを利用するなど対応を求められ、外部への漏えい防止等、安全管理対策の徹底が急務となりました。

企業には、人的安全管理措置として、マイナンバーの事務を行う担当者に対し、適切な教育を実施することが求められることはもちろん、担当者の管理者等や一般従業員にも段階に応じた教育の実施が重要となります。
今回はマイナンバーに関する従業員教育の進め方について検討してみましょう。

1.情報管理教育の必要性

2015年5月、日本年金機構が保有している個人情報の一部が、職員の端末に対する外部からのウイルスメールを介した不正アクセスにより、外部に流出したことが判明しました。その件数は約125万件にものぼるといわれています。
こうしたウイルスメール感染による流出は、知り合いを装ってメールを送信する等、年々手口も巧妙化しており、企業規模や知名度に限らず、どんな企業であっても、いつ攻撃の標的にされるとも知れません。

そのため、マイナンバーに関する従業員教育のみならず、情報管理全般についての教育は、時代の潮流といえます。

ウイルスメール感染等のトラブルで自社のマイナンバーをはじめとする重要な情報が漏えいしないように、技術的な安全管理措置(ウイルス対策ソフトによる定期的なチェック等)を実施するとともに、パソコンやタブレット端末を貸与しているすべての従業員に対し、社内文書の回覧や掲示などで、定期的に注意喚起を行うようにしましょう。タイミングとしては、たとえば新聞報道などで、企業等の情報漏えい事案が報じられたときなどが最適です。

2.定期的な従業員教育の進め方

マイナンバーの取得・管理などの取扱いにあたっては、情報が漏えいすることがないよう、安全に扱うことを伝える教育が必要です。

特に、マイナンバーを取り扱う担当者が人事異動や退職で入れ替わったりすることは十分にあり得ることであり、そのタイミングが急であるほど十分な引継ぎもできず、情報が漏れやすい環境となるリスクも高くなります。

そういった意味では、業務の引継ぎがスムーズになるようにマニュアルや業務フロー図の作成などが重要となる一方で、マイナンバー関連の事務をしない管理者への教育の重要性が言えます。従業員への教育は、取扱担当者向けの教育と管理者向けの教育、分けて考える必要があります。

取扱担当者に対しては、その管理の重要性等を伝えて理解してもらう必要があり、管理者については、今後、従業員以外のマイナンバーを取り扱うこともあり得ることから(例えば外部講師を招いて研修をし、講師料を支払った際の支払調書の作成にあたり、外部講師のマイナンバーを取得する場合など)、管理者として部下の情報管理を徹底させるために、幅広い視野による教育の実施が必要です。

次では、特に重要となる取扱担当者への教育について詳述しましょう。

3.取扱担当者への定期的な教育

企業によっては、マイナンバーの取扱担当者が今後将来にわたって何十年も変わらないと推測されるケースがあります。実際、様々な企業の人事労務担当者で、もう何十年も人事労務手続き業務や給与計算業務を手掛けている例はきわめて多く、特に中小企業では体制を基本的に変えない傾向があります。

長期間の同一業務への従事は、プロ意識を促すメリットがある反面、マンネリ化が生じたり、業務手順がずっと見直されなかったり、不正行為があっても発覚しにくい等のデメリットもあります。

そこで、社内外から業務遂行方法について監査(モニタリング)を実施する以外に、定期的な教育の実施を検討することが有効です。定期的な教育もルーティン化してしまうことがあるので、取扱担当者が管理者等への情報管理教育の講師役を担うようにするとよいでしょう。

通常、管理者に対しての研修は、外部の講師を招くか総務部長がその役割を担いますが、総務部長も多岐の業務を抱え内部研修にまで手が回らないケースが少なくありません。
講師役を担うことをとおして、取扱担当者にマイナンバー管理への高い意識が芽生え、様々な情報漏えい事故の情報収集をするクセがつくことが期待できます。

情報収集を意識すれば、必然的に自社の体制との比較を行い、自社の体制を改善させる取り組みも期待できることから、結果として外部から講師を招いて講義を受けるよりも高次元の体制を構築できる可能性があります。
つまり、講師役となって情報収集して発表するプロセスが教育につながるわけです。

4.まとめ

前述の社内研修の実施の例のように、マイナンバーを取り扱う事務担当者のみならず、その担当者の管理者等にも情報管理の教育を行い、指導内容が継続性をもって運用全体に活かされるようなしくみを考えていきましょう。

そして、マイナンバーに関する従業員教育のみならず、情報管理全般についての教育は、時代の潮流としてとらえ、全従業員に対し定期的に実施し、情報管理の徹底を促していくことが重要です。

2019.05.16

労働基準法とは? ~労働時間の原則~

労働時間に関する法規制について全て把握していますか?
例えば、労働時間を1日〇時間とした場合、休憩時間はどれくらい必要なのか。1日に最大何時間・週に最大何時間まで働かせても良いのか。など多くの疑問があるかと思います。そこで今回は労働時間について詳しくご説明したいと思います。

1.労働時間の原則

皆さんが労働時間の原則と言われて思いつくことは何でしょうか。
例えば人事や総務、管理職の方は1日8時間・週40時間という数字を頭に思い浮かべる方も多いのではないかと思います。労働基準法第32条の下記条文は特に重要です。

1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

つまり、1日8時間・週40時間というのが原則的な労働時間として労働基準法で定められております。しかし、このような原則形態にも例外が定められており、それが労働基準法第40条、労働基準法施行規則第25条の2第1項です。

①商業
②映画・演劇業(映画製作事業を除く)
③保健衛生業
④接客娯楽業

①~④の事業で、かつ、従業員の数が「常時10人未満」の場合は、1週間の法定労働時間が44時間となります。ただし、1日について労働させることができる上限が1日8時間であることは変わりませんので、そこは注意が必要です。

なお、労働時間(実際に拘束されている時間)とは、休憩時間を除いた実際に労働に従事している時間を指しますので、気をつけてください。

さて次は、曜日についてお話したいと思います。先ほど、労働時間の原則は1日8時間・週40時間とお伝えしましたが、「週」とは何曜日から何曜日のことでしょうか? 1週間は〇曜日~〇曜日?と聞くと、働き始めるのが月曜日という人が多いため、おそらく月曜日から日曜日と答える人が多いのではないでしょうか。

しかしながら、労働基準法では異なる定めがされております。就業規則等で定めがない場合は日曜日から土曜日のことを指すことになっていますので、週40時間という法規制も日曜日から土曜日で算定しないといけません。

ここまで、労働時間の原則についてお話ししましたが、「毎日8時間まで、週は40時間まで」と言われても、それがビジネスモデルとしてマッチしない業態もあると思います。特に不動産業などは、やはり入社・入学シーズンもあり、2月~4月などが極端な繁忙期となり、夏などは相当な閑散期となってしまいます。
そのような業種であっても1日8時間・週40時間を厳守しなさいと言われても、繁忙期は1日8時間では足りない、ただ閑散期は1日8時間もいらない、というニーズがあると思います。

そこで、変形労働時間制という定められた労働時間を効率的に割り振って、労働者と使用者共に無駄なコストを減らす制度が存在しています。ここからは変形労働時間制についてお話ししていきます。

2.変形労働時間制

この制度は、労働者と使用者において生活に影響を及ぼさない範囲で、労働時間において柔軟な対応ができるようにし、結果として労働時間を短縮するために整備された制度です。

ただし、変形労働時間制の場合、労務管理をする立場にとっては毎週・毎月の労働時間が異なってくるため、労務管理が極めて煩雑で管理コストが大き過ぎるというデメリットがあったり、制度を整備するにあたっても法律上の要件があったりと、導入するためには労力もコストも必要な制度となっています。
そこで1ヶ月単位の変形労働時間制とフレックスタイム制についてみていきます。

①1ヶ月単位の変形労働時間制

A.労働者の過半数で組織する労働組合がある場合
B.労働組合がない場合

AかBのいずれかによって、採るべき手続きが変わって来ます。前提として、労働者との労使協定を締結し、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する旨の就業規則を定めなくてはなりませんが、Aの場合は労使協定を労働組合と会社で締結します。これに対して、Bの場合は労働者の過半数を代表する従業員個人と会社で労使協定を締結します。

これによって、平均して1週間あたりの労働時間が、1週間の法定労働時間(40時間、特例の場合44時間)を超えなければ、以下の場合でも、法定労働時間内に収まっているとする制度です。

・特定週に、1週間の法定労働時間(40時間、特定の場合44時間)を超えて労働する
・特定日に、1日の法定労働時間(8時間)を超えて労働する

➁フレックスタイム制

簡単に言うと、1日の労働開始・終了を自分の裁量で決められるという制度です。
この制度を導入するには以下の事項に関する定めが必要です。
A.就業規則等に始業・終業を労働者に委ねる定め
B.労使協定に以下の事項を定める届出不要)
 (1) 対象労働者
 (2) 1ヶ月以内の清算期間
 (3) 清算期間の起算日
 (4) 清算期間における総労働時間
 (5) 1日の標準の労働時間
 (6) コアタイム・フレキシブルタイムを導入する場合はその時間帯

3.まとめ

いかがだったでしょうか。労働に関してのニュースとして最近では働き方改革に伴い、在宅ワークを導入する企業や、週休3日制を採用する企業が出てきています。労働に関する法律としては有給休暇5日の取得義務化など大きく変容しています。
難しい言葉が出てくるからすぐに目を背けるのではなく、時事問題や最新の法律に少しずつでも目を向けていくことが、会社を守るために必要なことではないでしょうか。

少しでも気になった方は、本やインターネットを参考にしてみてください。もし従業員との関係が良くない場合は状況が悪化する前に法律事務所を訪ねるなど、早めに手を打ち相談されることをおすすめいたします。

2019.05.15

【相談事例57】婚前契約とは?~結婚前に契約書を作成する理由は?~

【相談内容】

 芸能人などが結婚する前に、婚前契約書というものを作成したとして話題になっているのをテレビで見たことがあるのですが、婚前契約書とはどういったものをいうのでしょうか。

 「婚前」ということは結婚する前に作成するものだと思うのですが、どうして結婚前に作成しなくてはいけないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

 欧米などでは、一般的に行われているのですが、日本ではあまりなじみのなかった婚前契約ですが、最近では日本でも婚前契約を行ったうえで夫婦になれるかたは少なからずいらっしゃいます。 
 そこで、今回は婚前契約の内容についてご説明させていただきます。

1 婚前契約とは

 婚前契約とは、結婚をする前に結婚に関する取り決めをしておくことをいいます。

 具体的には、同居中における生活のルールやお子さんの育て方に関するルールを定めることや、金銭管理の方法について規定することに加え、慰謝料についてもあらかじめ定めておくことがあります。

 例えば、「夫が妻に暴力を振るったら1回あたり〇〇万円支払う。」といった内容や、「不貞行為をした場合には1回あたり〇〇万円を支払う。」などといった文章を入れることもあります。また、結婚期間中の決め事だけでなく、離婚時に関する条件についても定めることが一般的です。例えば、離婚の際の財産分与の対象となる財産を特定する条項を設ける場合や、分与の割合についてあらかじめ合意しておくことが多いです。

2 婚前契約のメリットとは

 日本では、結婚する前に離婚に関する話し合いなどをすることに抵抗を感じるなどの理由から、婚前契約の普及率は極めて低いです。

 しかし、夫婦の間で事前に合意事項を作成することで、結婚生活後の生活上の無用なトラブルを避けることが可能になります。また、慰謝料の関する金額などを定めておくことで、不貞行為等違法な行為をしないという強い誓いにもなるため、離婚を避けるために婚前契約を締結する方もいらっしゃいます。

 また、会社を経営されている方の場合には、自社の持ち株についても共有財産の対象となりうるものであることから、財産分与の対象となってしまうと、離婚後の会社の経営に影響を及ぼすことになりかねないため、あらかじめ婚前契約において、株式は財産分与の対象とならないことについて合意しておく方がよい場合があります。

3 なぜ「婚前」に作成?

 それでは、なぜ、婚「前」契約というように婚姻前に作成しなくてはならないのでしょうか。

 それは民法上の規定を理由としており、民法744条では、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。」と規定されており、婚姻中行った契約については、夫婦の一方から取り消すことができると規定されているため、婚姻中に合意したとしても、その実効性がありません。
 婚姻前に関する契約については、民法758条1項に、「夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない」と規定されており、婚姻前に行った夫婦間の財産契約については、届出後に変更することができないという強い拘束力を有することになるため、届出前に作成する必要性があります。

 入籍予定の方で婚前契約したほうが良いのではないかと検討されている方は、是非一度当事務所までご相談ください。

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.05.15

WEBサービスを始めるなら必要!利用規約やプライバシーポリシーについて

WEBサービスを立ち上げる際、必ず準備しておきたいのが「利用規約」です。
対面での契約と違い、WEB上では購入者と書面で契約書を取り交わすことは不可能に近いと言えます。その契約書と同様の利用規約を作成し、プライバシーポリシーと併せてサイトに掲載、さらに利用者に同意をしてもらうことで、万が一トラブルが起こった際、適切に対処することができます。つまり、契約書の代わりになるのが利用規約やプライバシーポリシーとなります。
ではその利用規約やプライバシーポリシーについて、どのような点に注意して作成すれば良いのでしょうか?

1.サービスに沿った利用規約を作成しましょう

(1)契約書と同様の意味をもつ利用規約

上記の繰り返しになりますが、通常、物品の購入やサービスを受けるには売る側と買う側の間に「売買契約」が生じます。紙の契約書を取り交わしたり、同意書に署名したり、というようなことを行いますが、WEB上では同じように書面のやり取りをするということは現実的ではありません。
そこで、利用規約としてWEBサービスの利用者、商品の購入者に対して、サービスの内容やサイト内で守ってほしい項目や禁止行為、免責事項などを明記し、同意してもらうことで契約書の代わりとするのです。

(2)トラブルが起こった場合に備える

万が一トラブルがあった際などには、サイト管理者が利用規約に基づいてトラブルの対応をすることになります。
よく見受けられるのが、商品注文後の返品・返金・キャンセル等(ここでは返品等とします)ですが、利用規約に記載があり内容に則した返品等であれば対応が必要です。
しかしながら、すべての返品等に応えていては売り上げも立ちませんし、労力ばかりが増えてしまいます。返品等についての対応期限を設けたり、初期不良以外の返品不可といった条件を設定し、サイト管理者側が不利にならない内容にしましょう。
とりあえず返品に対応する、というようなあいまいな内容では利用する側も不安を覚えてしまいます。具体的に記載し、どんなケースでも対応できるようにすることが重要です。

(3)その他、利用規約に必要な具体的な項目は?

上記で例に挙げた返品対応についてはなんとなく思い浮かぶものですが、他の項目を一から考えて利用規約を作成する、と言っても法律の専門家でない限り、なかなか最初の文字すら出てこないものです。
すでに多くのWEBサービスがネット上に存在しているので、まずは参考として、自分が始めたいサービスと同様の形態を取っているサイトを見てみましょう。

多くのサイトでは、メニュー部分やサイトマップ(サイトの目次一覧)のページに利用規約へのリンクが掲載されていることが多いですので、そのリンクからアクセスし確認することができます。
また、検索エンジン(yahooやgoogleなど)の検索窓に「〇〇ショップ(サイトの名前) 利用規約」などのキーワードを入れ検索すると、そのショップの利用規約ページに直接アクセスできることもあります。

見てみるとどのサイトの利用規約も似通っており、「ではこれを丸写しすればいいんだ!」と思ってしまうかもしれませんが、あくまで参考とし、普遍的な部分以外は自身が行うサービスに則した内容にしていきましょう。利用規約にも著作権が認められたケースもありますので十分注意が必要です。

また、「サービス利用前に、こんなに膨大な文章の利用規約なんて誰も読まないだろう」と考え、利用者が不利になるような内容にするのも危険です。これまでも、利用者が作成したデザインの著作権はサイト管理者側へ譲渡されるといった規約内容が問題であるとされ、SNSで拡散炎上、利用規約の変更を迫られた他、企業イメージのダウン、更にはサービスの終了や業績低迷につながった例もあります。

近年起こっているSNSでの問題発覚は、上記のような規約以外でも多大な影響を及ぼしています。たとえ小規模なサイトであっても、全世界に向けてサイトを公開していること、細かい部分まで誰かが見て読んでいることを念頭に置いて運営していきましょう。

2.プライバシーポリシーって必要?

(1)利用者の個人情報を取得し、適切な利用を

プライバシーポリシーとは、そのWEBサイトを運営する管理者が、サイト上で得た個人情報の取り扱い方について方針を示すものです。個人情報保護方針とも言われ、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)により、個人情報の利用目的や第三者への情報提供などについて明記する義務があります。
こちらも多くのWEBサイトでは、利用規約と同様にメニュー部分やサイトマップのページにリンクが掲載されていますので、そのリンクからアクセスし内容を確認することができます。サイトによっては利用規約の中に組み込まれていることもあります。

プライバシーポリシーは、単に個人情報を適切に扱いますよ、という方針を記載するだけでは内容が不十分です。会員登録などで知り得た個人情報を、今後どのように取り扱うのかを具体的に説明せねばなりません。
例えば、
・販売後のフォローや、関連情報を知らせるために利用することがある
・購入者の解析や分析のため、データ解析会社や広告代理店など第三者へ情報を提供することがある
・新商品が発売されたら、案内をする際に使用する
…など、今後個人情報を利用するシチュエーションを考え、作成していくようにしましょう。この個人情報の利用目的を明確化しておかないと、後日個人情報を使いたいと思ったときに、プライバシーポリシーに記載されている利用目的と異なる利用はできないこととなってしまいます。今後のビジネスの発展や展開を考えながら、個人情報の利用目的を検討しましょう。

(2)プライバシーポリシーには必ず同意を!

問い合わせフォームや資料請求のページなど、利用者自身の個人情報を入力する部分にもプライバシーポリシーを掲載しておきます。そしてポリシーに同意しなければフォーム内容を送信できないようにすることがポイントです。
同意がなければ、上記のような販売後のフォローや関連情報の提供などを購入者へ対して行うことができませんし、販売拡大のためのデータ活用もできないため、必ず同意を得るようにしましょう。

3.まとめ

利用規約、プライバシーポリシーどちらにしてもWEBサービスにおいては欠かせないものとなっています。消費者トラブルや情報漏えいを起こした場合、この2つの記載内容が不十分だった際には、責任の所在を問われることになります。
WEBサービスを早く始めるにはその作成を専門家に依頼し、自分は他の準備に専念するのも一つの方法ですが、専門家もそのサービスについて熟知しているとは限りません。任せきりにせず、しっかり事業内容や事前情報を伝えた上でアドバイスを受け、より良い規約を作成していくようにしましょう。

2019.05.15

給与計算業務②~給与計算の流れ~

前回の記事では、給与計算を行うにあたって必要な知識についてお話しました。今回は、それを踏まえて、実際の給与計算業務の流れについてご説明します。

前回の記事はこちら
給与計算業務① ~給与とは~
https://www.nakagawa-lawoffice.jp/blog/business/3370/

1. 給与計算の流れ

(1)支給項目の計算

初めに、支給項目の計算を行います。
まず、基準内賃金(基本給のほか、役職手当、通勤手当など毎月決まった金額で固定的に支払われる手当)と基準外賃金(時間外労働をさせた場合に支払う手当など毎月変動的に支払われる賃金)を合計します。また、前回の記事でも述べた通り、給与は労働の対償として支払われるものなので、欠勤や遅刻、早退のように、従業員の労務の提供がない場合は、給与を支払う必要はありません。ですので、基準内賃金と基準外賃金の合計額から、欠勤や遅刻、早退をした場合の欠勤控除、遅早控除の額を差し引き、総支給額を算出します。

支給額が毎回変動する給与は、支給する度に計算する必要があります。変動がある項目として代表的なのが残業手当です。タイムカード等で記録している残業時間のうち、法定時間内労働、法定時間外労働、法定休日労働、深夜労働について、それぞれ分けて集計する必要があります。

(2)保険料の計算

(a)社会保険料

社会保険料とは、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満の従業員のみ)のことです。
各従業員の社会保険料を確認するために、まず、保険料額表を準備します。健康保険料率と介護保険料率は毎年3月、厚生年金保険料率は毎年9月に改正されるので、最新のものを準備するようにしてください。

保険料額表を準備したら、報酬月額を算出します。この報酬月額とは、基本給のほか、通勤手当、家族手当、住宅手当、残業手当など労働の対償として会社が支払う報酬のことを指します。臨時に支払われるものや、3か月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含まないので注意しましょう。

算出した報酬月額を保険料額表にあてはめることで、標準報酬月額が決定します。この標準報酬月額に保険料率を掛けることで、保険料が決定します。
標準報酬月額を決定するのは、従業員の入社時、毎年7月に標準報酬月額の見直しを行う定時決定時、大幅な昇給・降給があった場合の随時改定時です。

<控除する社会保険料の求め方>

※この表は例ですので、実際に計算する際は必ず前述した保険料額表を準備・参照してください。

例えば、報酬月額が22万5千円である場合、標準報酬月額は22万円になるので、標準報酬月額が220,000の行を参照します。社会保険料は、会社と従業員で折半するので、従業員の給与から控除するのは全額ではなく、折半額です。
健康保険料については、40歳未満の従業員であれば、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の折半額(今回の場合、11,264円)、40歳以上の従業員であれば「介護保険第2号被保険者に該当する場合」の折半額(今回の場合、13,167円)を控除します。
厚生年金保険料については、一般の被保険者の折半額(今回の場合、20,130円)を控除します。

(b)雇用保険料

雇用保険料は、総支給額に雇用保険料率を掛けて計算するため、総支給額が変わる度に計算しなければなりません。雇用保険料率は、会社の事業の種類によって異なるので、厚生労働省のホームページで確認しましょう。

<控除する雇用保険料の求め方>

※この表は例ですので、実際に計算する際は必ず厚生労働省のホームページを参照してください。
雇用保険料も、従業員が負担する分と会社が負担する分に分かれるので、従業員の給与から控除するのは①労働者負担にあたる額のみです。

例えば、一般の事業に該当する会社の従業員で、総支給額が20万円である場合、20万円に①労働者負担率0.3%を掛けた600円を控除します。

(3)所得税・住民税の計算

所得税は、源泉徴収税額表を用いて計算します。この源泉徴収税額表には、月額表と日額表があります。
給与を月、半月、10日、月の整数倍の期間ごとに支払う従業員に対しては月額表を使います。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員については甲欄、その他の従業員については乙欄を使います。
これに対して、日や週ごとに支払う従業員、日割で支払う従業員、日雇賃金を支払う従業員に対しては日額表を使います。日や週ごと、日割で支払う従業員で、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人については甲欄、その他の従業員については乙欄を使います。日雇賃金を支払う従業員については丙欄を使います。
また、扶養控除等申告書を提出している場合、配偶者、子、親といった扶養親族等の人数を確認しましょう。

<控除する所得税の求め方>

※この表は例ですので、実際に計算する際は必ず国税庁のホームページを参照してください。

例えば、月ごとに給与を支払っており、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額が29万円、扶養控除等申告書を提出している従業員で、扶養親族等が2人の場合、4,800円を給与から控除します。

住民税は、毎月5月頃までに会社に送られてくる特別徴収税額決定通知書をもとに控除します。

(4)給与明細の作成

最後に、給与明細を作成します。たとえ給与を振込みで支給していたとしても、必ず給与明細を作成して、役員を含む従業員に渡す必要があります。

給与明細書

2. まとめ

前回の記事と今回の記事にわたって、給与計算に関する基本的な知識・流れについてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。給与計算は、支払日までに、思っている以上に多くの手順を踏む必要がある難しい業務です。慣れないうちは特に大変ですが、1つ1つの項目を丁寧に理解して業務を進めていきましょう。

 

2019.05.14

意外と知らない会社法

「会社」や「株式会社」、よく聞く言葉ですよね。
しかし、何のことを指す言葉なのか聞かれると意外と答えられない言葉でもあると思います。世の中には本当に多くの会社があり、総務省統計局による平成26年経済センサスによれば、日本中の企業の数は382万社にのぼります。

これだけ多くの会社が世の中にはあり、様々な種類の会社がありますが、会社経営と縁のない立場としては、会社の種類なんて気にしたことないですよね。世の中の構造を理解することは、人生を賢く生きる術でもありますから、ぜひ知っておいてください。
今回は、そんな会社の種類について説明します!

1.「会社」とは

世の中には、数え切れないほどの「会社」が存在していますよね。株式会社、合同会社などいくつか種類がありますが、そもそも「会社」とは一体何のことでしょうか?

「会社」とは、営利行為を業とすることを目的として設立された社団法人のことを言います。細かく分類して説明すると、以下の通りです。

営利行為:利益を得ることを目的とする行為のこと
(得られた利益を構成員に配当するところまでを含みます。法律用語として厳密な説明をすると、儲けるためにビジネスをしていることではなく、株主に対して配当を行っていることを「営利」と呼びます。)

業とする:反復継続すること(実際に反復継続している場合だけでなく、実際には1回限りだったとしても、反復継続する意思で行われている場合も含まれます。)

社団:一定の目的を持った人々の集まり

法人:人ではないが、法律で人格を認められたもので、権利義務の主体とされるもの(要するに、契約の主体として、契約書に署名押印できる立場を言います。)

つまり「会社」を簡単に説明すると、継続的に利益を得ることを目的とした人々の集まりで、権利義務の主体となることができるものとなります。

では、「会社」は利益を得るという目的があれば何をしても良いのでしょうか?
もちろん、そんなはずはなく、どのような事業を行っていくのかを定めなければなりません。これが「会社」の目的となります。「会社」は定められた目的の範囲内でのみ、法人格が与えられるため、目的外のことについては権利義務の主体となることができません。

通常、会社の登記簿には「会社の目的」が列挙されています。例えば、飲食店を経営する会社であれば、登記簿の目的の欄に「飲食店経営」と書かれており、飲食店経営に必要な事柄については権利義務の主体になれる(契約を行うことができる)のですが、全く関係のない事柄に関しては権利義務の主体にはなれません。

そのため、新しいビジネスを始める場合、現状の会社の目的の欄に関係しそうなものが見当たらない場合には、登記簿の目的欄を追加して、会社の目的として新しいビジネスを書き込みます。

会社の登記簿なんて見たことないかもしれませんが、法務局に行けば誰でも何の会社でも登記簿を取得することができますので、自分が知っている会社や働いている会社の登記簿を取得して、会社の目的や役員構成などを見てみても面白いかもしれません。

2.「株式会社」とは

会社法では、現在設立することのできる会社の種類として、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つが定められています。この中で、最も多く使われているのが「株式会社」になります。

よく耳にするこの「株式会社」という言葉ですが、どのような会社のことを指すのでしょうか?

「株式会社」は、設立する際に出資者(会社に対してお金を出してくれる人々)が集まります。この出資者のことを株主と呼び、株主は会社の持ち主となり、会社に対して様々な権利を持つことができます。

株主の持つ権利は株式とよばれ、株式を具体化したものを「株券」といいます。(一昔前であれば、どこかの会社の株式を持っている人は株券を保有しているのが通常でした。例えば、キティちゃんなどで知られる株式会社サンリオの株券は、キティちゃんが印刷された株券でした。これも東京証券取引所に行けば見学できますので、見てみてください。しかし、現在では株券は発行しなくても良いことになっていますので、株券をいちいち発行していない会社が大半でしょう。なので、世の中で株券というものを保有している人は多くないと思われます。)

また、株主はあくまでも会社の所有者でしかなく、経営のプロという訳ではありません。そのため、会社を経営する取締役として、株主でない他の人に経営を委ねて経営してもらうことを前提としています。これを「所有と経営の分離」と呼びます。

株主には会社を経営する義務がないと先程お伝えしましたが、経営しなくて良いということは、会社に対して出資のみをすることになります。
ですので、もし株主をやめたいと思った時には、株式を他の人に売り、出資したお金を回収することが可能です。原則として、株主は株式を自由に譲り渡すことができるのです。(ただし、譲渡制限株式という株式を譲渡する際には会社の承諾が必要となるタイプの株式も存在し、上場企業でなければ譲渡制限株式であることが多いですので、確認されてみてください。これも会社の登記簿を確認すれば書いてあります。)

3.「持分会社」とは

2では、株式会社についてお話をしましたが、ここでは株式会社以外の会社について説明をしたいと思います。2で、会社法では4つの種類の会社が定められていることを紹介しました。1つは株式会社、残りの3つは合同会社、合資会社、合名会社となり、この3つを合わせて持分会社と呼びます。

持分会社とは、社員と出資者が同じで、比較的自由度が高い会社になるため、その分社員同士の関係性が大切になってきます。このことから、持分会社は少人数や仲間内で設立するのに適している会社となります。

また、持分会社の社員には、出資額の範囲内で責任を負う「有限責任社員」と出資額に関わらず、会社の負債のすべてにおいて責任を負う「無限責任社員」の2種類が存在し、有限責任社員のみで構成される会社を「合同会社」、無限責任社員のみで構成される会社を「合名会社」、有限責任社員と無限責任社員の両方がいる会社を「合資会社」と言います。

どの会社についても、株式会社と比べて設立手続きが簡単で、社員間の取り決めも簡単にできるようになっています。
最近は、有限責任で簡単に設立でき、設立時のコストも安いことから、合同会社で立ち上げられるベンチャー企業も多くなっています。

4.まとめ

今回は、「会社」、「株式会社」、「持分会社」についてお話をしました。よく聞く言葉でも、いざどんなものかと聞かれると答えることが難しいですよね。

また、これらの言葉や会社法について、知っていて損をすることはないと思いますので、是非この記事を読んで日々の生活に役立ててください。

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