【相談事例51】大麻の使用は犯罪ではない??
【相談内容】
近年、芸能人の薬物使用などが問題となっており、残念に思います。
ふと気になったのですが、同じ薬物犯罪でも覚せい剤を使用した人は使用の罪で逮捕されているのですが、大麻を使用した人は使用ではなく大麻を所持していたことで逮捕されていることに気づきました。
大麻を使用したことが明らかであるのであれば、大麻の使用の罪で逮捕すればいいと思うのですが・・・。
【弁護士からの回答】
芸能人に限らず薬物犯罪は後を絶ちません。薬物は一度手を付けてしまうと依存度が強く簡単にやめることはできないため、絶対に手をつけてはいけません。
今回は、大麻取締法に関して、大麻の使用に関しての規律についてご説明させていただきます。
1 覚せい剤取締法
大麻についてご説明させていただく前に、覚せい剤に関する規定についてご説明させていただきます。
覚せい剤に関しては、覚せい剤取締法が存在し、覚せい剤の輸入、所持・譲渡・譲り受け、使用等が処罰の対象となっており、営利目的で輸入・所持などを行った場合には、罪が加重されています。
2 大麻取締法
大麻に関しては、大麻取締法により規制がされています。大麻取締法では、大麻取扱者(適法に栽培している人や大麻の研究者などをいいます。)でなければ大麻の所持、譲り受け、譲り渡しについては、覚せい剤取締法と同様に罰則を定めています。
しかし、大麻取締法では、覚せい剤取締法において規制されている使用に関する規定が存在していません。つまり、大麻に関しては所持に関しては犯罪になるものの、大麻を使用したことに関しては犯罪にならないのです。
もっとも、大麻を使用したことが認められれば、少なくとも所持していたか、譲り受けたことは間違いないため、大麻を使用しただけなので無罪ですという主張は通用しないでしょう。
覚せい剤と同様、大麻も違法薬物であり、使用することがもっとも禁じられるようにも思えるのですが、なぜ、大麻の使用が処罰されていないのでしょうか。
3 大麻とは
大麻取締法1条では
と規定されています。すなわち、大麻草の成熟した茎の部分や種子の部分は所持していたとしても、大麻取締法の「大麻」には含まれないため、罪にはならないことになります。
大麻草に関しては、大麻草全体に中毒性のある有害物質が存在するというわけではなく、大麻草の花や葉の部分に有害物質が多く含まれているのですが、茎の部分や種子の部分にはほとんど有害物質が含まれていないのです。
そして、日本では、茎委の部分は麻織物や麻縄として昔から伝統的に使用されています。さらに、種子については、七味唐辛子の中の1つである麻の実であり、語弊を恐れずにお伝えすると、七味唐辛子を食事の際に使用している方は、大麻草の一部を服用していることになります。
このように、大麻草の一部については、日本で伝統的に使用されているものであるため、茎の部分及び種子の部分は所持をしていたとしても、処罰されないことになります。
4 使用は処罰できない?
このように、茎の部分や種子の部分については、所持をしていたとしても、罪にはなりません。そして、厄介なのが、この茎の部分や種子の部分には有害物質が全く含まれていないわけではなく、微量に含まれている場合があるそうです。
そして、所持することが違法でない茎の部分や種子の部分を使用したとしても当然罪にはならないため、使用も処罰はできません。
したがって、体内から大麻の成分が検出されたとしても、それが違法な花や草の部分を使用したものであるのか、茎や種子を使用したものであるのかについて区別がつかないため、大麻の使用については犯罪として立件することが困難になります。
このように、大麻の使用について処罰の対象になっていないのは、日本特有の理由がありますが、最初にも伝えた通り、一度違法薬物に手を染めてしまうと、抜け出すことは非常に困難になってしまいます。
したがって安易な気持ちで薬物に手を出すことは絶対にやめてほしいと思います。
掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」
【離婚問題】離婚時に行うべき手続きについて
配偶者の方と離婚することになったとき、何を決めなければならず、どんな手続きをしなければならないかは、夫婦ごとに様々です。子供がいるかどうか、財産があるかどうか、揉めているかどうか等によってしなければならないことは大きく異なります。
以下では、その判断の前提として、一般的に必要となる手続きや決めなければならないことについて説明致します。
①離婚をするために必要なこと
まず、離婚を行う上で絶対的に必要となる手続きは離婚届の提出であり、逆に、お互いが納得して離婚届をきちんと作成し提出しさえすれば、離婚は成立します。
しかしながら、一方が離婚に同意しない、離婚条件に折り合いがつかない、となると離婚届を提出する前に協議や調停、場合によっては裁判をしなければなりません。また仮に離婚届を提出したとしても、その後一方が財産分与や慰謝料などを求めてくれば、同様に手続きをしなければいけなくなります。
②離婚の条件
ところで、そもそも離婚をするにあたって協議が必要となり得る事項についてですが、一般的には以下の通りとなります。
ア 親権
イ 養育費
ウ 面会交流
エ 財産分与
オ 慰謝料
カ 年金分割
このうち、親権は離婚届に記載しなければならないため離婚時点に決めておく必要がありますが、その他については後日取り決めることが可能です(ただし、慰謝料は3年、財産分与と年金分割は2年で時効により請求権が消滅してしまいます。)。
今回、これらの事項に関する具体的な説明は割愛致しますが、それぞれについて決めなければいけないケースは以下の通りです。
ア 親権
⇒お子さんがおられる場合です。ただし、お子さんが未成年の場合に限ります。お子さんが複数おられる場合、親権者を別々にすることも可能です。
イ 養育費
⇒お子さんがおられる場合です。「●円でなければならない」「●歳まででなければならない」という決まりはありません。仮に裁判所の審判に付される場合、原則として夫婦それぞれの収入を基準に金額を算出し、お子さんの就学状況や夫婦の学歴等によって終期を決定します。
金額に関しては、家庭裁判所が養育費相場について算定表を公開していますので、これを基準として決定するケースが多いです(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)。また、近年は大学進学率の向上に伴い、両親が大卒の家庭では、養育費も子供が大学を卒業する年の3月までと決められる家庭が多い現状にあります。
ウ 面会交流
⇒お子さんがおられる場合。こちらも決め方に決まりはありませんが、「原則として面会交流は実施されるべきである」というのが裁判所の考え方です。裁判所の審判に付される場合、具体的な頻度や時間、場所等については、夫婦やお子さんの意見、これまでの面会状況を踏まえて内容が決定されます。
一般論としては、十分に面会を実施しながらも、子供や監護親の負担も考慮して、月1日程度の面会交流を実施するケースが多いです。
エ 財産分与
⇒離婚時に財産がある場合。預貯金、自宅不動産(所有の場合)、積立型の生命保険、退職金等が一般的です。こちらも具体的な分け方、割合について決まりはありませんが、法律上「婚姻時から別居時(あるいは離婚時のいずれか早い方)までの間に形成された夫婦の財産」を対象とすることになっています。
あくまで夫婦が協力して築き上げた財産を分け合うための制度ですので、婚姻関係が続いていて、同居しながら共に生活している期間に築き上げた財産が対象となります。その中でも退職金の財産分与が問題となるケースが多く見受けられますが、退職金は必ず財産分与の対象となる訳ではありません。
退職金とは、退職時の会社の状況に応じて金額が変動する可能性もありますし、支給されない可能性すら存在します。したがって、退職金が財産分与の対象となるためには、一定程度確実に退職金が支給されるであろうケースに限られますので、ご注意ください。
オ 慰謝料
⇒離婚の原因が一方の違法な行為にある場合。こちらも「いくらでなければならない」という決まりはありません。「離婚しなければいけなくなったこと」を内容とする、いわゆる離婚慰謝料の他、「離婚とは関係なく、婚姻中に一方当事者が違法行為を行ったこと」を根拠とする慰謝料が考えられます。
前者の場合は離婚成立から、後者の場合は違法行為による損害が発生したとき(通常は、違法行為時)から3年の間に請求する必要があります。
なお、離婚の原因がいずれにあるかと、法的に慰謝料が発生するかは別問題ですので注意が必要です。法律論として慰謝料が発生するためには、一方が他方に対して不法行為を行ったと評価できないといけませんので、それなりのハードルがあります。慰謝料が発生すべきケースかどうかは、必ず専門家に相談しましょう。
カ 年金分割
⇒一方が厚生年金または共済年金に加入している場合。ただし、いわゆる「3号分割」の要件を満たせば、合意の必要はなく、分割を求める配偶者が単独で手続きできます。
この年金分割は、厚生年金部分(老齢基礎年金は含まない)のみの分割であるため、単純にもらえる年金額が夫婦で半分になるというものではありません。年金分割をするとどの程度の年金がもらえるのかは、年金事務所でシミュレーションしてくれますので、相談してみましょう。
③トラブルを防止するために
①でご説明した通り、離婚は離婚届を提出するだけで成立しますので、離婚やその条件に争いが無ければ、法律上は離婚届の作成・提出以外に手続きを行う必要はありません。しかしながら、どのようなご夫婦であっても、②記載のいずれかの条件に関し、離婚後争いが生じる恐れは存在します。
したがって、仮に円満に離婚をしようとしておられる夫婦であっても、離婚協議書を作成し、離婚後にトラブルが生じないよう予防しておく必要があるといえます。「揉めないから作らない」のではなく、「円満に離婚するために作る」のです。
離婚協議書の形式に関して法律上の決まりはありませんが、仮に相手方配偶者から何らかの金銭給付(養育費、財産分与等)を受けられる場合には、給付がなされなかった場合に備えて公正証書の形式で作成されるのがベストです。
これは、公正証書で作成していなかった場合、別途裁判をしなければ相手方の財産を差し押さえることができないためです。公正証書で作成し、執行認諾文言というものを付していれば、万が一支払いがなされないときは即座に給与の差押え等を行うことができますので、ぜひご活用ください。
また、作成される際には、内容を明確に、他の解釈を許さない文言で記載し、後日漏れが発覚した場合に備えて「その他一切の債権債務が無いことを確認する」旨のいわゆる清算条項を設ける必要があるでしょう。
④まとめ
以上、離婚手続きと離婚条件の概要と、トラブル防止策についてご説明致しました。
これらを十分踏まえて手続きを行って頂ければ問題ありませんが、冒頭に述べた通り、具体的に行うべき手続、取り決めなければならない内容は個々のケースによって異なり、協議書の記載方法等についてもそれに応じて慎重に検討する必要があります。
これらを専門的に学んでいない方が対応するのは相当に困難でしょうから、やはり専門家に相談しながら、幸せな未来に向けて十分な準備を行うよう心掛けてみられてください。
手荷物検査と飛行機内のルール~航空法について~
ゴールデンウィークの10連休、飛行機を利用してどこかへ旅行に行かれた方も多いかと思いますが、意外と知らない航空機の法律をご紹介します。
保安検査場を通るときって少し緊張しませんか?自分の荷物をX線で見られて、あのゲートを通る時です。実は、保安検査場での手荷物検査は航空会社が実施する保安措置の一つなのですが、その根拠は法律で定められています。
1.保安検査には法律の根拠がある
飛行機に乗る時に絶対通るのが保安検査場です。保安検査場ではライターを2本持っていたりしたら捨てるように言われますが、あれは何かの根拠があってのことなのでしょうか。
飛行機への持ち込みに関しては、航空法にこのような決まりが定められています。
第86条 爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのある物件で国土交通省令で定めるものは、航空機で輸送してはならない。
2 何人も、前項の物件を航空機内に持ち込んではならない。
上記の通り、保安検査を受ける以前に、航空機に乗る人(私たち、運航乗務員、客室乗務員、その他航空機に乗る全ての方)は、危険なモノを航空機に持込んではならないと法律で定められております。さらに第86条の2では以下の様に明記されています。
このように実は、航空会社は私達の手荷物の中に危険な物あると疑われるとき、持込みを拒絶して取り卸すことが出来るのです。
そしてその疑いを発見するのが手荷物検査です。
なお、手荷物検査は航空会社が行う保安措置の一つですが、保安措置には様々なものがあります。日本において航空会社が航空運送業を営む為には、国土交通大臣に対し、「事業計画(航空法第100条第2項)」を提出したうえで「許可(航空法第100条)」を受ける必要があります。
その事業計画には「航空機強取等防止措置の内容(航空法施行規則第210条第1項第7号、同法232条第1項第7号ホ)」を記載することと明記されています。
この「航空機強取等防止措置の内容」が私たちの手荷物検査を含む保安措置内容ということになります。
このようにして、私たちは保安検査場において法律で禁止されている物品の持ち込みをしていないことを確認されて、飛行機に乗り込むことになります。
2.機長の権限
飛行機のドアが閉まった後にゆっくり滑走路を走っていくとき、こんなアナウンスは聞こえませんか。
「航空法の定めるところにより禁止されており、刑罰の対象となることがあります。」
え!?なんかこわい!
と初めて乗った時は思われたかもしれません。
実は、あの状態のとき・・・ゆっくり空港の中を走っている時や、順番待ちで止まっている時でも航空法違反行為をした場合、機長の強い権限で拘束されることがあります。
航空会社は、ビデオなどを使ってやんわりと禁止行為を説明していますが、ついつい聞き流してしまいます。一体航空機の中でやってはいけないことって何なのでしょうか。
具体的には航空法施行規則という規則で以下の行為が禁止されています。
もしかすると、意外に違反してしまっているかもしれません。
① 乗降口又は非常口の扉の開閉装置を正当な理由なく操作する行為
② 便所において喫煙する行為
③ 航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務の執行を妨げる行為であつて、当該航空機の安全の保持、当該航空機内にあるその者以外の者若しくは財産の保護又は当該航空機内の秩序若しくは規律の維持に支障を及ぼすおそれのあるもの
④ 航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある携帯電話その他の電子機器であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく作動させる行為
⑤ 離着陸時その他機長が安全バンドの装着を指示した場合において、安全バンドを正当な理由なく装着しない行為
⑥ 離着陸時において、座席の背当、テーブル、又はフットレストを正当な理由なく所定の位置に戻さない行為
⑦ 手荷物を通路その他非常時における脱出の妨げとなるおそれがある場所に正当な理由なく置く行為
⑧ 非常用の装置又は器具であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく操作し、若しくは移動させ、又はその機能を損なう行為
意外にもルール違反をしてしまいそうなルールではありませんか?
ちなみに機長には、違反者だけでなく、このような違反行為をやろうとしている人についても、該当者を拘束したり飛行機から降ろしたりする権限が与えられているのです。航空法には、以下の通り機長の権限が定められています。
上記の通り、機長は飛行機の全部のドアが閉まった瞬間から、客室内で迷惑な行為をして、客室乗務員を困らせたりする人を拘束したり、飛行機からおろしたりする強い権限を持っているのです。
3.まとめ
パイロットは頭がよくてスマートというイメージですが、その中でも機長はただ飛行機を飛ばすだけではなくて、航空機の秩序や乗客の安全も守らなければいけない重大な任務を遂行しているようですね。
連休にかかわらず、この先も航空機を利用していろんな国や地域へ旅行される方も多いかと思いますが、こうした航空機のルールを守って楽しい旅行にしましょう。
振り込め詐欺救済法に基づく手続きで被害金を取り戻そう
皆さんは「振り込め詐欺」という言葉をご存知でしょうか?その悪質な犯罪行為はニュースでもたびたび取り上げられているため、ほとんどの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。
では、振り込め詐欺に遭ってしまった場合、もうお金を取り返すことはできないのでしょうか?やはり、詐欺グループから取り返すことは困難なのかもしれません。そこで、今回は、万が一振り込め詐欺の被害に遭ってしまったとき、どのように救済してもらえるか、法律に基づく手続きについてご説明したいと思います。
1.振り込め詐欺の定義
「振り込め詐欺」とは、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺などの犯罪行為の総称で、2004年に警視庁によって命名されました。この振り込め詐欺は、「特殊詐欺」に該当します。そもそも特殊詐欺とはどのような詐欺行為のことなのでしょうか。
警察によると、特殊詐欺は「面識のない不特定多数の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、対面することなく被害者をだまし、不正に入手した架空または他人名義の預貯金口座への振り込みなどの方法により、被害者に現金などを交付させたりする詐欺」と定義されています。
特殊詐欺の中でも代表格といえるのが、今回取り上げる振り込め詐欺で、特に高齢者が被害に遭う傾向が強く、平成30年の警察庁の調査によると、被害者の7割以上が高齢者となっています。
もしも、自分や周りの人たちがこれらの詐欺の被害に遭ってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか。被害に遭ってしまった場合の救済処置を定めた法律があるので、次はそちらを見ていきましょう。
2.振り込め詐欺救済法とは
振り込め詐欺と思われる電話を受けたときは、詐欺だと気づいて被害を未然に防ぐことが出来たら一番良いですが、残念ながら多くの方が被害に遭っているのが現状です。このように振り込め詐欺の被害に遭ってしまった被害者の方々を助けるために作られたのが「振り込め詐欺救済法」という法律で、平成20年6月21日から施行されました。
振り込め詐欺救済法では、振り込め詐欺の被害者に対する被害回復分配金の支払い手続等を定めています。被害回復分配金とは簡単に言うと、振り込め詐欺の加害者の預金口座から取り戻し、各被害者に分配(返還)される資金のことです。その手続は以下の3つに分かれて進められます。
① 取引停止(口座凍結)
② 債権消滅手続
③ 被害回復分配金の支払手続
ここからはそれぞれの手続について詳しく見ていきましょう。
3. 振り込め詐欺救済法に基づく手続①取引停止(口座凍結)
被害にあってしまった際に、まず行うのが取引停止手続です。取引停止手続では、金融機関に対し、犯罪行為に利用された疑いのある預金口座に関する取引の停止等の措置をとることができます。いわゆる口座凍結のことです。口座凍結後は該当の預金口座では、入金や振り込み、預金の引き出しなどが一切できなくなります。
この口座凍結を行うには、振り込め詐欺の被害者側が、払込先(加害者)の預金口座を開設している金融機関に対して、その口座が犯罪利用の疑いがあるということを情報提供しなければなりません。情報提供の方法としては、金融機関に直接口座情報を提供するやり方以外に、警察や弁護士会、金融庁や消費者センター等の公的機関や、弁護士や認定司法書士を通して情報提供を行うことも可能です。情報提供を受けて金融機関により、すみやかに取引停止の措置が取られます。
もともと、振り込め詐欺救済法が施行される以前は、振り込め詐欺の被害に遭った際の口座凍結の手続は加害者の名前が分からなければ行えませんでした。また、名前が分かったとしても、預金は口座名義人のものということで被害金を取り戻すことは容易ではありませんでした。
しかし、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結は、振込先の口座番号と口座名義人が分かれば可能で、かつ要請後に早急に口座凍結が行われるので、加害者は預金を引き出すことが出来なくなり、被害金の回復の可能性が大きくなりました。
取引停止手続がとれたら、次は債権消滅手続へと移ります。
4.振り込め詐欺救済法に基づく手続②債権消滅手続
債権消滅手続では、加害者が振り込め詐欺に利用した預金口座の所有権がはく奪されます(=失権)。所有権がはく奪されることで、口座内の預金等の債権も加害者のものではなくなります。実際にこの手続きがどのような流れで進んでいくのかを見ていきましょう。
まず、①の取引停止措置を行った金融機関が、加害者の失権のための公告を預金保険機構に要請し、それを受けた預金保険機構が、ホームページで「債権消滅手続開始」の公告を実施します。この預金保険機構の公告というのは、預金保険機構のホームページにアクセスすれば誰でも見ることができ、「債権消滅手続き開始」の公告では、加害者の口座情報(金融機関、店舗、預金の種類、口座番号)や名義人の氏名や名称、預金額の情報を公開しています。
この公告開始から60日以内に、口座名義人からの届出がなければ、債権は消滅し、「債権消滅」の公告が実施されます。この公告を受け、次の被害回復分配金の支払手続へと進みます。
5. 振り込め詐欺救済法に基づく手続③被害分配金の支払手続
「債権消滅」の公告の実施を受け、今度は金融機関が「支払い手続開始」の公告を預金保険機構に要請しなければなりません。この公告では、②「債権消滅手続開始」で公開した情報に加え、被害者に対して、被害回復金の支払申請期間を掲載しています。
そのため被害者は金融機関に対して被害回復分配金の支払い申請を行う必要があります。 被害者からの支払い申請を受付けた金融機関は、申請人が支払いを受けるに値するのかを判断した上で、値すると判断した場合は被害回復分配金の支払いを行います。
この時の支払額は消滅預金等債権の額(=凍結口座の預金額)×(各被害者の被害額/総被害額)となります。つまり、複数の被害者から支払い要請がある場合は、口座に残っている残高を、それぞれの被害額に比例した額を配分したうえで支払われることになります。
このような仕組みで振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の支払いは行われているため、総被害額分の預金が残っていなければ、被害者の方は全額返金を受けることが出来ません。
さらに残高がない、もしくは1000円未満の場合は振り込め詐欺救済法による支払い手続の対象にもなりません。また支払いまでに1か月程度の期間を要しますので、これらの点を心得ておかなければなりません。
6.まとめ
以前は、振り込め詐欺にあってしまったら犯人の特定をしなければ、その被害金を取り戻すことは困難だとされていました。しかし、振り込め詐欺救済法の施行後は、犯人の特定が出来なくても預金口座の凍結を行うことができるようになり、その後の手続きも定められたため、被害金を取り戻せる可能性が大きくなりました。
それでも、被害金を全額取り戻せる保証はないですし、取り戻すまでには期間を要します。日頃からご自身や、周りの人たちが被害に遭わないように振り込め詐欺の手段や実体を把握し、注意しておくとともに、万が一被害にあってしまった時は、早急に対処をすることが必須です。
弁護士を通じて金融機関に情報提供を行うことも可能ですので、もし一人で対応することが難しいと感じた場合はすぐに専門家に相談をしてください。
【不動産】マンション設備に関する売主の説明義務
「駐車場付きマンション」という広告・説明を受けてマンションを購入したのですが、実際には、マンションとは別に第三者である地主と駐車場の賃貸借契約を締結しなければなりませんでした。こんな時、分譲業者には責任を追及することは可能でしょうか?
1. 売主の説明義務に関する一般論
売買契約における売主の本来的な義務は、契約の目的物である財産権を買主に移転することです。しかしながら、マンション購入の意思決定に際し重要な意義を持つ事項に関しては、売主には、信義則上の付随義務として説明義務が認められます。
2. マンション設備に関する売主の説明義務
まずは、マンション販売に関する売主の説明義務が争点となった事例を、具体的な裁判例を通してみて見ましょう。
(1)駐車場の利用権(横浜地判平成9・4・23)
【事案】
Xらは、マンションの分譲業者であるY社が分譲したマンションを、駐車場付きの広告を見たり説明を受けたりして購入したが、実際には、Y社とは全く別の地主(第三者)と駐車場の賃貸借契約を締結する必要があった。
Xらは、Yに対し、債務不履行及び契約締結上の過失に基づき、駐車場利用権の相当額や慰謝料の損害賠償を請求した。
【判旨】
一般にマンション(集合住宅建物)の区分所有権の売買契約においては、買主に駐車場利用権を取得させる債務が契約の給付の内容に含まれない場合であったとしても、乗用車が日常生活における重要な生活手段となっていることに鑑みれば、売主には駐車場の存否とその利用契約締結の可否について買主に正確に説明すべき付随義務があると解するのが相当である。
したがって、特に買主から駐車場の有無が契約を締結するか否かの判断のために必要である旨が表示されている場合においては、付随義務とはいえ、信義則上、売主の説明義務違反を軽んじることはできない。
また、売買契約が締結される前の勧誘行為において、説明義務に違反する行為があった場合においても、いわゆる契約締結上の過失の問題として、売買契約の成否にかかわらず、売主に債務不履行責任が生じる余地があると解される。
これを本件についてみるに、Xらは、Yの販売担当者から本件マンションの販売勧誘を受けた際に駐車場の存否を尋ねているか、又は駐車場が確保されていることがマンション購入の必要条件となるという趣旨を告げていたため、本件各売買契約が締結される前の状態ではあったが、販売担当者には、本件駐車場の所有関係、利用契約の趣旨内容を、Xらに説明すべき信義則上の義務があったということができる。
この説明義務は、本件売買契約が成立した場合には、当然にこの契約の付随義務となるものと解されるが、契約締結前における説明義務違反は、契約の成否にかかわらず、いわゆる契約締結上の過失の一態様として、売主に債務不履行責任を発生させるものと解するのが相当であり、右の債務不履行責任は、実際に行われた説明を信じたことによる買主の損害の賠償を義務付けるものというべきである。
(2)マンション内の防火設備(最判平成17・9・16)
【事案】
宅地建物取引業者であるY2社は、Y1社(Y2はY1の100%子会社)から販売代理業務の委託を受け、Aに対してマンションの専有部分を売却する売買契約を締結した。本件専有部分には中央付近に防火扉が設置されていたが、その電源スイッチが一見してそれとはわかりにくい場所に設置され、電源が切られた状態で専有部分の引渡しがされた。Aは妻Xとともに居住していたが、専有部分内で発生した火災により死亡した。
Y2は、Aらの入居時までに、Aらに重要事項説明書や図面等を交付したが、本件防火扉の電源スイッチの位置や操作方法、火災発生時の作動の仕組み等を説明しなかった。
XはY1に対しては瑕疵担保責任に基づき、Y2に対しては説明義務違反があったとして不法行為に基づき、損害賠償を請求した。
裁判所は、Y1及びY2の説明義務違反を認め、不法行為に基づく損害賠償義務を負うものであると判示した。
【判旨】
本件防火扉は、火事が発生した際の防火設備の一つとして極めて重要な役割を果たし得るものであることが明らかであるところ、被上告人Y1から委託を受けて本件売買契約の終結手続きをした被上告人Y2は、本件防火扉の電源スイッチが、一見してそれとはわかりにくい場所に設置されていたにも関わらず、A又はXに対して何ら説明せず、Aは防火設備の電源スイッチが切られた状態で802号室の引渡しを受け、そのままの状態で居住を開始したため、本件防火扉は、本件火災時に作動しなかったというものである。
また、記録によれば、Y2はY1による各種不動産の販売等に関する代理業務等を行うために、Y1の全額出資の下に設立された会社であり、Y1から委託を受け、その販売する不動産について、宅地建物取引業者として取引仲介業務を行うだけでなく、Y1に代わり、またはY1と共に、購入希望者に対する勧誘、説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務を行っていること、Y2は、802号室についても、売主であるY1から委託を受け、本件売買契約の締結手続きをしたにとどまらず、Aに対する引渡しを含めた一切の販売に関する事務を行ったこと、Aは、このようなY2の実績や専門性を信頼し、Y2から説明等を受けた上で802号室を購入したことがうかがわれる。
上記の事実関係を考慮すると、Y1には、Aに対し、少なくとも、本件売買契約条の付随義務として、上記電源スイッチの位置、操作方法等について説明すべき義務があったと解されるところ、上記の事実関係が認められるものとすれば、宅地建物取引業者であるY2はその業務において密接な関係にあるY1から委託を受け、Y1と一体となって本件売買契約の締結手続きのほか、802号室の販売に関し、Aに対する引渡しを含めた一切の事務を行い、AにおいてもY2を上記販売にかかる事務を行うものとして信頼した上で、本件売買契約を締結して802号室の引渡しを受けたこととなるのであるから、このような事情のもとにおいては、Y2には信義則上、Y1の上記義務と同様の義務があったと解すべきでありその義務違反によりAが損害を被った場合には、Y2はAに対し、不法行為による損害賠償義務を負うものというべきである。
3. 結論
以上、マンションの設備の説明義務が問題になったケースとして、駐車場、及び防火設備にまつわる判例を見てきました。
まず、契約締結交渉の段階で、買主側が売主側(分譲業者)に対し、対象となる設備(駐車場など)の有無を尋ねていたなど、当該設備があるからこそマンションを購入したという趣旨が売主(分譲業者)側に伝えられていた場合には、買主は売主(分譲業者)に対して、説明義務違反として損害賠償請求をすることが出来ます。
また、防火設備のようにマンション設備として重要な役割を果たすべきものについては、その設備が売買契約書上に直接内容として記載されていない場合であっても、売主側には買主に対する説明義務が課されるものであり、売主側がその義務に違反した場合には、買主に対し損害賠償義務を負うことになるのです。
知っていれば役に立つ!経費のこと5 ―食べ歩きは経費になる?―
業務には直接関係ないけれど「経費」にしたいもの、自己負担でもいいけれど、金額も大きいし、できることなら「経費」にしたいもの、ありますよね。
もちろん、業務と関係ないお金は、その事業のための経費ではありませんので、経費化できる訳はありません。
あくまで、業務との関連性について説明ができないと、経費化はできませんのでそこは悪しからず。
1.業務に関係のない本や雑誌を読んでいます
業務を行っていくなかで様々な情報を集めるために、専門書や経済新聞など、仕事に直接つながるような本や新聞を読むことがありますよね。けれど、専門的な文書ばかり読んでいても、偏った情報が集まりやすいため、たまには仕事とは全く関係のない分野の本や雑誌を読むこともあると思います。
そんなとき仕事の分野とは関係ない、一般的な本や雑誌などを購入するために使った費用は経費になるのでしょうか?
答えは、「なる」です。仕事に関係のない本や雑誌を読んだって、役に立ちそうな情報は得られないでしょ!と思ってしまいそうですが、関係のない内容だからこそ、得られるものがあるのです。
もちろん、専門分野の本を読むことで知識が深まったり、新しいことを知ったりすることもたくさんありますが、それでは視野が狭くなってしまいます。
そこで、いつもとは違った分野の本や雑誌を読むことで、新しいアイデアを思いついたり、今まで疑問に思っていたことが解決したりすることがあるのです。
これら本や雑誌の購入費は、「新聞図書費」として「経費」にできるのですが、条件として「従業員なら誰でも、いつでも読めるようにしておく」ことが必要となります。
もちろん、マンガを買って経費にするとなれば、そのマンガを購入することがどのように業務上必要なのか説明が付かないといけませんので、なかなか難しいと思われます。
ご自身のビジネスとの兼ね合いで、どのような書籍なら業務上の必要性ありと説明できそうか考えてみてください。
2.食べ歩きをしています
飲食店を経営しています。フレンチのお店なのですが、今度新しいメニューを開発するにあたってヒントを得るために、和食やイタリアン、中華など様々なジャンルのお店で食べ歩きをしています。
さて、こんな場合、食べ歩きに使った費用は「経費」になるのでしょうか?
経営しているのはフレンチのお店ですが、1でお話ししたように、自分とは異なった分野に触れることで、新しいアイデアを思いつくこともあります。そのため、この場合は「研究開発費」や「研修費」、「調査費」として「経費」にすることができます。
しかし、ただ食事をしただけと思われないように、お店で食べた料理の分析や、新しいメニューの案をレポートとして残しておくことが必要となります。
細かくレポートを作成することが難しい場合は、実際に行ったお店でパンフレットなどをもらい、そこに味や、何か参考になったことなど、メモを残しておきましょう。
つまり、書籍の箇所でご説明した通り、使ったお金がどのように業務上必要となるのかの説明ができなくてはならないということです。税務調査を受けた際、「なるほど、そういうことであれば確かに必要な経費ですね。」と調査官に思わせられるかがカギとなります。
3.結婚式を挙げます!
結婚式を挙げることになりました。招待しているのは取引先の方々ばかりです。この場合、結婚式にかかる費用は「経費」にすることができるのでしょうか?
招待しているのが取引先ばかりの場合、仕事の延長のようなものなので、「経費」にしたいところですよね。しかし、結婚式は個人的なものになるので、「経費」にすることができないのです。
もし、結婚式をビジネスにしているのならば「経費」にすることが可能なのですが、該当する人はなかなかいないため、ほとんどの場合は自己負担で式を行うことになります。
では、取引先の結婚式に招待されたときのご祝儀はどうでしょうか?
これは、「経費」にすることができます。1年に数回など、頻度が少ない場合であれば、自己負担だとしてもそこまで金額は大きくならないですが、取引先が多かったり、これから増えていったりすると式の頻度も増え、自己負担が厳しくなってきますよね。
そのため、ご祝儀に関しては「接待交際費」として「経費」にすることができます。
ただし、誰の結婚式に参列したのか、どのような立場で招待されたのかなど、後で説明しないといけない場面が訪れたときのため、招待状を残しておくことを忘れないようにしてください。
また、会社から自社の従業員に対してご祝儀を支払った場合は、「福利厚生費」として「経費」にすることができますが、社内で規定を作成し、金額に関しては地域相場を意識したものにしましょう。
従業員に対するお祝いなので、他の会社よりも高い金額を払ってあげたいと考えたとしても、税務署は全額を経費と認めてくれないかもしれません。
その場合は、一部が否認されたとしても仕方ありませんので、その腹積もりでご祝儀を払ってあげるようにしてください。
4.まとめ
今回は、ご祝儀や食べ歩きで使った飲食代など、一見「経費」にできないようなお金のことについてお話をしました。直接業務には関係なくても、新しいアイデアのヒントや問題解決につながるものであれば「経費」にすることが可能なので、これを利用して視野を広げ、仕事に役立てていきましょう!
何かお金を使う際は、業務との関連性を意識しながら、経費化できそうかどうか検討しましょう。そして、迷った際は、税理士に相談するようにしましょう。
給与計算業務①~給与とは~
毎月行わなければならない従業員の給与計算は、単純そうに思えて、とても煩雑な業務です。自社で給与計算を行っている会社は多いでしょうが、思いのほか給与計算を間違っているケースが多く、従業員の本来もらうべき給与額になっていないケースが散見されます。
そこで、今回と次回にわたって、給与に関する基礎知識と、給与計算業務の基本的な流れについてご説明します。
1. 給与の定義
まず初めに、普段、何気なく使っている「給与」という言葉ですが、そもそも給与とは何のことを指すのでしょうか。
労働基準法11条において、給与とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義されています。
つまり、従業員が欠勤や遅刻、早退をした場合は、労務の提供が履行されていないので、その時間について給与を支払う義務はありません。
2. 支払いのルール
給与の支払いについては、労働基準法24条においてルールが定められています。
①通貨払い
給与は現金で支払う必要があり、小切手や自社商品では認められません。ここで、「私の会社は銀行振込をしているけど大丈夫なの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
本来は、銀行振込はこのルールに反していますが、従業員の同意を得た場合は、従業員の指定する口座に振り込むことが認められています。また、退職金に関しては、従業員の同意があれば、小切手や郵便為替での支払いが認められています。
②直接払い
給与は従業員本人に直接支払う必要があります。配偶者や保護者等に支払うことはできません。
ただし、従業員が病気で受け取ることができないといった事情がある場合に、家族が使者として受け取ることはこのルールに反しないとされています。
③全額払い
給与は全額を支払う必要があります。振込手数料や積立金などを勝手に差し引いたりしてはいけません。
ただし、従業員の代表と労使協定を締結すれば、一定のお金を控除することができます。また、健康保険料や雇用保険料などの社会保険料や、所得税や住民税といった税金については、法律によって控除することが認められています。
④毎月1回以上払い
給与は少なくとも毎月1回支払う必要があります。数か月ごとにまとめて支払うことは認められません。
年俸制の場合でも、一括支給ではなく、分割して支払わなければなりません。
⑤一定期日払い
給与は期日を特定して支払う必要があります。支払日にずれが生じてしまう「毎月最終金曜日」のような決め方は認められません。
※④⑤について、臨時に支払われる賃金、賞与、1か月を超えて支払われる精勤手当・勤続手当は除きます。
給与額は、会社が自由に決めることができますが、最低賃金を上回っている必要があります。最低賃金には、⒜精皆勤手当、⒝通勤手当、⒞家族手当、⒟時間外労働・休日労働等の割増賃金、⒠賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、⒡臨時の賃金は算入されません。
【最低賃金との比較方法】
時間給の場合:時間給と最低賃金を比較
日給の場合:時間額(=日給÷1日の平均所定労働時間)と最低賃金を比較
月給の場合:時間額(=月給÷1か月の平均所定労働時間)と最低賃金を比較
都道府県別の最低賃金額については、厚生労働省のホームページから確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
3. 給与の支給項目と控除項目
従業員に支給する給与は、支給項目から控除項目を差し引いて計算します。支給項目、控除項目として一般的なものは以下の通りです。
4. まとめ
今回は、給与計算業務を行う前に知っておく必要がある基礎知識についてお話しました。給与計算業務に携わっていなかった時にはあまり気にしていなかった内容も多くあったのではないでしょうか。
これから給与計算をされるという方には、ぜひ今回の記事の内容をしっかりと理解していただけたらと思います。
次の記事では、実際の給与計算の流れについてご説明します。
【離婚問題】「納得の離婚」のために知っておきたい【お金】【手続き】のこと
離婚とは人生が変わる瞬間です。やはり、今まで配偶者と精神的にも経済的にも支え合いながら生きてきた夫婦が離婚するとなると、精神的支えを失うだけではなく、特に専業主婦だった奥様は経済的支えを失うことになります。
だとすれば、今後の人生を豊かに過ごすためにも、お金のことや手続きのことは明確に理解しておかなくてはなりませんね。
離婚前、離婚後にもらえる可能性のあるお金はどんなもの?
離婚前、離婚後にもらえる可能性のあるお金にはどんなものがあるのか、説明します。
1.婚姻費用(離婚前)
夫婦には、お互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」があります。
たとえ別居中であっても夫婦の婚姻が継続している限り、婚姻費用分担の義務は生じます。つまり、別居していても生活費を支払ってあげなければならないのです。
ただし、婚姻費用分担請求は請求した時から認められますので、「婚姻費用を払って欲しい」と主張しておかないと、後になって過去にもらえるはずだった婚姻費用を請求することは極めて困難ですので注意してください。
別居期間が長いと、その分、婚姻費用の支払いも続きます。また、夫婦で住んでいた住宅のローンが残っている場合には、住宅ローンの支払いも続きます。
離婚したいけれど相手が応じてくれず、ずるずると婚姻費用と住宅ローンを払い続けた挙句、自分の生活が苦しくなってしまう。婚姻費用を滞納してしまったために給与が差し押さえられてしまった、というのはよくあるケースです。
また、生活費を請求しても払ってもらえないという場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」を申し立てると裁判所が出頭してきた夫婦の収入等を確認して婚姻費用を算出します。
そして支払うように話し合いが持たれます。そこで合意が取れないと調停不成立となりますが、調停不成立と同時に今度は審判の手続きに移行します。審判手続きでは、家庭裁判所が婚姻費用分担額を決めてくれるのです。
家庭裁判所の審判は確定した判決と同じ効力があるので、万が一、審判に従った婚姻費用が支払われない場合、給与や預貯金などの差押えもできます。
以上の通り、婚姻費用は「協議(話し合い)」「調停」「審判」の順番で手続きが進みます。
まずは、家庭裁判所が婚姻費用の相場表を開示していますので、ご自身の場合、婚姻費用がどの程度もらえそうか、検討してみましょう。ただ、必ずしもこの相場表に縛られる訳ではありませんので、ご注意ください。
2.慰謝料
浮気や暴力などの有責行為が原因で離婚する場合、婚姻生活中に味わった精神的苦痛に対して精神的な苦痛を被った方が慰謝料を請求することができます。
主に自分の側に離婚原因がある場合には、慰謝料を請求されてしまう可能性があるということです。相手側の浮気が原因で離婚に至るような場合には、浮気相手に対しても慰謝料を請求できます。
慰謝料の金額は「離婚に至った原因行為の内容」「結婚の期間の長さ」「相手の資力・収入」などの事情を総合的に考慮して決定されます。
離婚の原因に多い「性格の不一致」「価値観の相違」など、どちらかが一方的に悪いわけではない場合は、慰謝料の請求が認められないことが多いです。
3.財産分与
婚姻生活中に夫婦が協力して増やしてきた財産を、財産増加の貢献度に応じて分けることを言います。
一般的には婚姻期間が長くなり、年齢が上がっていくほど給料も上がるので貯金も増え、財産分与の対象となる財産が増えます。そのため、婚姻期間が長くなるほど高額の財産分与を受けられる傾向があります。
ただし、あくまでも貯まった財産を分ける手続きですので、使ってしまって溜まっていなければ、いくら夫が高額所得であっても財産分与の対象財産が有りません。財産分与でもらえる金額が少額となることはあり得ますので、ご注意ください。
4.養育費
養育費とは、未成年の子どもを成人させるまでに必要な経費のことです。(20歳までと決まりがあるわけではなく、子供の扶養が必要なくなるまでですので、大学を卒業する「22歳になった後の最初の3月まで」と決めるケースが一般的かと思います。)離婚する際に子供がいる場合、男性、女性に関わらず、子どもと一緒に生活していない側が支払います。
離婚するとき、「別れた元夫や元妻には一銭も支払いたくないが、子どものためなら払っていきたい」と思っている人は一般的に多いようです。
しかし、その後の人生で転職や再婚など、生活状況の変化が訪れ、結局養育費を支払われなくなる、というケースが多いのが実情です。
5.退職金
退職金は「賃金の後払い」としての性質もあるので、所得のなかから形成した預貯金等と同様に、財産分与の対象になります。しかし、定年まで勤務するか分かりませんし、本当に退職金がもらえるかどうかもわかりません。
退職金が財産分与の対象となるのは、退職が間近であったり、確実に退職金が受け取れる場合、または、相手が公務員の場合は認められやすいです。
ですので、まだ受け取っていない退職金については財産分与の対象になるかどうかケースバイケースですので、専門家による検討が必要でしょう。
6.年金分割
夫婦間の年金額を決められた割合により分割する制度です。分割の対象は厚生年金と旧共済年金部分だけで、国民年金部分は対象になりません。
分割された年金を受給できるのは、年金の受給資格を持つ年齢になってからです。
分割払いの慰謝料や養育費は元配偶者の経済力がなくなれば滞る可能性もありますが、年金分割の場合は国からの支払いになるので安心感はあります。
自分が納得して、第二の人生を踏み出せるように準備する
離婚を決意すると、「とにかく別れたい」と、慰謝料、養育費等の条件を決めずに離婚届を提出する方もいらっしゃいます。
離婚後に慰謝料、養育費等について話し合おうとしても、相手が話し合いに応じてくれない、連絡が取れなくなるということもあります。
そうなってしまうと、離婚に伴いもらえるはずのお金ももらえなくなってしまいます。また、離婚前に離婚後の条件を決めていても、決めた内容を書面に残していなければ、相手が養育費等の支払い義務を履行せずに争いになった場合、2人で決めた内容を証明するものがないため問題の解決に至る過程が複雑になることも多々あります。
その様なことを防ぐためにも、争いがない場合でも離婚協議書等で合意した内容を書面として残しておくことが大切です。
離婚の条件を取り決める書面としては主に「離婚協議書」、「離婚公正証書」のどちらかで作成することが一般的です。
どちらの書面も離婚の条件を記載することは同じですが、各々にメリット、デメリットがあるため以下で説明をします。
1.離婚協議書
離婚協議書のメリットとしては作成の容易さです。当事者双方で決めた条件を文章化し、お互いに署名、捺印することで作成出来ますので費用もかかりません。
デメリットとしては、離婚協議書に定めた内容を相手が守らなった場合に、直ぐに強制執行を行うことは出来ず、裁判を経て債務名義を取得した後に強制執行の手続きに移行するため時間がかかる点です。
また、裁判において離婚協議書で定められている内容の有効性等が争われることもあります。そのため、離婚協議書を作成するときは、離婚協議書の作成、内容の確認等を専門家に依頼することが理想です。
2.離婚公正証書
離婚公正証書のメリットとしては、法律の専門家である公証人が作成に携わるため記載内容が法令に違反する心配が無いこと、公正証書において定められた内容に債務不履行があるときに公正証書に強制執行認諾条項が定められていれば直ぐに差押え手続きに着手できることになります。
デメリットしては公正証書の作成に伴い公証役場の手数料が一定額発生すること、公正証書の内容について法的知識が無ければ公証人との調整が難しいことです。
前述した通り、離婚協議書等を作成しない離婚はリスクを伴います。それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、離婚届を提出する前に離婚協議書等の作成をお勧めします。
終わりに
離婚をするとなると、考えなければならないこと、解決しなければならない問題はたくさんあります。感情だけで離婚まで突き進んでしまい、のちのち後悔するようないように、そして新しい人生のスタートを清々しい気持ちで切れるようにしっかりと問題を解決していきましょう。
また、離婚という問題が持ち上がると、悩みごとも多くなり、どうしたらいいのかと思い悩む日々が続くかもしれません。一人で悩み続ける事はとても体力がいります。弁護士などの専門家でなくても結構です。あなたの信用できる「誰か」に相談するだけでも心は楽になると思います。
一人で悩まないでくださいね。このブログが今、離婚で悩まれている誰かの道標に少しでもなっていただけたら幸いです。
【離婚問題】親権~親権者はどうやって決める?~
離婚するにあたり子どもがいる場合、子どもの親権はどちらが持つかということで対立するケースは非常に多く見られます。
親権の問題は、慰謝料や養育費、財産分与などのお金の問題とは根本的に異なり、お金に代えられない子供との繋がりの問題ですので、紛争が激化しやすいものです。
そこで、今回は、父母の協議で親権者が決まらなかった場合に裁判所はどういう基準で親権者を指定するのかという点を中心にご説明します。
1 親権とは
親権とは、未成年の子どもに対する、父母の養育者としての立場における権利義務の総称です。その効力は、子どもの身上に関する権利義務、子どもの財産についての権利義務の双方に及びます。あくまで未成熟な子どもを監督する権利義務ですので、子どもが成人すると親権はなくなります。
さて、親権は、父母の婚姻中は父母が共同して行います(民法818条1項)が、父母が離婚する際には、必ず父母の一方を親権者と定めます(民法819条1項)。離婚の合意ができても、親権者の指定について協議が調わないときは、離婚届を提出しても受理されません。
裁判離婚の場合は、判決で裁判所が父母の一方を親権者と定めるか(民法819条2項)、裁判上の和解において父母の一方を親権者と定めます。
離婚の際に親権者となった者がその後再婚しても、親権者であることには変わりません。
父母の離婚後、親権者に指定されなかった親は、親権者としての権限を全く持たないことになります。つまり、子の進学など重要な局面においても、法的には発言権を持ちません。
したがって、子どもの親権者となることは重要な意味を有します。そのため、離婚協議の際には、やはり親権に関する争いがなかなか絶えません。
ただ、必ずしも子どもとの関わり合いとは親権に限定される訳ではありませんので、親権だけにこだわるのではなく、子どもの幸せを最優先に考えるようにしましょう。
2 親権者指定の基準
では、裁判所は、どのような基準で親権者を指定するのでしょうか。これは、子の利益に合致することに尽きます(民法766条1項)。
子の利益に合致するか否かを判断するにあたっては、父母側の事情(監護に関する意欲と能力、健康状態、精神的・経済的家庭環境、居住・教育環境、子に対する愛情の程度、従来の監護状況、実家の資産、親族・友人の援助の可能性など)や、子の側の事情(年齢、性別、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、子の意向など)を比較考量しながら決定されています。特に重視される事情には以下のものがあります。
① 現状の尊重(継続性)
変更すべき特段の事情がない限り、現に子の監護を行っている親権者が引き続き監護すべきであるという考え方です。実務では、この基準が優先されているように思われます。すなわち、子の虐待などが認められるケースを除けば、現状を尊重することが基本原則とされ、そのうえで、現状を覆すべき特段の事情があるか否かを審理するのが一般的です。
② 母親の優先
乳幼児については、特別の事情がない限り、母親が優先されるべきであるという考え方です。母親が現に乳幼児を監護しているケースでは、①②をともに満たすため、よほどの事情がない限り母親が親権者に指定されます。
③ 子どもの意思の尊重
子どもが15歳以上であるときのみならず(家事事件手続法152条2項・169条2項)、15歳未満であっても、できるだけ子どもの意思は尊重されるべきであるという考え方です。
実務では、おおむね10歳以上の子の意思が尊重される傾向にあると言われています。ただ、子どもは現在育ててもらっている親に嫌われないよう気を遣った発言をする傾向があるため、子どもの発言を鵜呑みにすることはできません。
子どもの意思を確認する際には、発言の字面だけでなく、その発言が真意に基づくものか否かを態度や行動等を総合的に見ながら判断しています。
④ 兄弟姉妹の不分離
兄弟姉妹は可能な限り同一人によって監護されるべきであるという考え方です。もっとも、子の年齢が上がるにつれて、兄弟姉妹の不分離の基準は重視されない傾向にあります。
裁判例でも、複数の未成年の子はできるだけ共通の親権に服せしめる方が望ましいが、ある程度の年齢に達すれば、その望ましさは必ずしも大きいものではないとし、15歳の長女の親権者を父、12歳の長男の親権者を母に指定したものがあります(東京高判昭和63年4月25日)。
離婚原因となった事情、たとえば不貞行為や暴力行為などが親権者指定において考慮されるかという問題があります。
不貞行為は倫理的に非難されるものの、直ちに親権者として不適格であるとは言えないと解されています。
暴力行為については、子の目の前で配偶者に暴力をふるうなどの事実があれば、子の健全な育成に悪影響を与える可能性が大きいので、親権者としての不適格性につながる可能性があります。
3 監護権とは
親権とは別に、子どもを現実に養育する権限という概念もあり、これを「監護権」といいます。離婚の際に親権者に指定されなかった親を監護権者と定めることもでき(民法766条1項・2項)、その場合は親権と監護権が別々の者に帰属することになります。
世の中には、親権はなくても、子どもと日々の生活を共にできれば十分だと考える親もいるでしょう。
実務では、親権者の指定について双方が対立しており、離婚がなかなか成立しない場合に、窮余の一策として、親権者と監護権者を分けて、妥協点を見出すことがあります。
しかし、親権者と監護権者を分けた場合、進学などの手続や各種申請などの際に親権者の協力が必要となるため、監護権者はその都度親権者に連絡を取り、親権者の署名・押印をもらわなければならず不便です。
しかも、けんか別れした間柄ですから、親権者の協力が得られるとも限りません。
このことが原因となって、元夫婦が紛争を再燃させ、子どもがその対立に巻き込まれる恐れもあります。
したがって、親権と監護権を別々の者に帰属させることは、あまりお勧めできません。離婚の実務でも、親権者と監護権者を分けることはめったに行われません。
4 親権者の変更
未成年の子どもについては、父母が離婚する際に一方の親が親権者に指定されていますが、その後の事情の変化により、他方の親が親権者となる方が良い場合があります。
そのため、「子の利益のため必要がある」ときは、親権者を変更することができます(民法819条6項)。
親権者の指定は当事者間の協議ですることができますが、親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停または審判を経なければなりません。
そして、子どもが15歳以上のときは、審判前に必ず子どもの陳述を聴かなければなりません(家事事件手続法169条2項)。
しかし、子どもが親権者から虐待を受けている場合のように、子どもを保護すべき緊急の必要性があるケースもあります。
このような場合には、審判前の保全処分を申し立てて、審判の結論が出る前に緊急の措置として、子どもの引渡しを求めることもできます(家事事件手続法175条1項)。
親権者の変更の基準は、親権者の指定の基準とは異なります。これは、親権者による監護の実績があるためです。
そのため、親権者の変更においては、父母双方の事情の相対的な比較考量のみならず、父母の一方による実際の監護の実績を踏まえて、変更すべき事情の有無を検討します。
ただし、親権者を変更するということは、子どもの現在の生活環境を変更するわけですから、変更する必要性が相当程度高くないと変更は認められません。
また、離婚によって子どもの単独親権者となった父または母が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組をしたために、子どもが実親と養親の共同親権に服している場合には、他方の実親は親権者変更の申立てができないとされており、注意が必要です。
5 まとめ
離婚の合意はしていても、親権者の指定についての協議が調わないことが原因となって、協議離婚が成立しないケースが多く見られます。
逆に、中には早急に離婚を成立させたいあまり、とりあえず親権については譲り、離婚した後に親権者を自身に変更すれば良いと考える方もおられるかもしれません。
しかし、将来親権者を変更することは決して容易ではありません。離婚の際には不本意に親権を譲ってしまわないよう、慎重に検討する必要があります。
そして何よりも、自分の子どもに対する愛情も踏まえた上で、子どもにとって最も幸せな人生を送れる選択肢を選ぶように心掛けましょう。
法の観点からみるネットビジネスに不可欠なWEBサイト作りとは?
ネットビジネスを始めるのであれば、必須なのが「WEBサイト作り」です。
ネットの世界では、日々ビジネスの種類に合わせて様々なタイプのWEBサイトが開設され、運用されています。
しかしながら、いざ始めようと思っても考えなければならない部分は非常に多くあります。
どこにWEBサイト制作を依頼するのか?自作するのか?WEBサイト名やドメイン取得はどうする?など…
今回は、法の観点から見るWEBサイトを作るにあたっての注意点や押さえておきたいポイントをご説明します。
1.自分が思い描いたネットビジネス用のWEBサイトを作るには
(1)外注制作会社を探す
まずWEBサイトを作るにあたって、専門的な分野であるネットワークの知識やプログラム言語などを習得した方でないと、本格的なWEBサイトやショッピングシステムを構築することは難しいものです。
そのような場合、多くはWEBサイト制作会社に外注することになりますが、見積を依頼する時点で、「自分が思い描いているサイトをしっかり作ってくれるか」という部分に重きをおいて外注会社を探しましょう。
外注を検討している制作会社には、どんなサイトにしたいか、各ページはどのような構成にするのか、訪問者はどのような流れで購入するのか、いつまでにサイトをオープンしたいのか、など希望をしっかり伝えましょう。
依頼することになったら、必ず契約書として上記の内容を書面に残すことがポイントです。
(2)なぜ契約書が必要なの?口約束でも契約は有効では?
できあがったWEBサイトの納品後、希望を伝えたのに思っていたサイトと違っていた場合、「そんなことは聞いていない」「言われた通りに制作した」という制作会社とのトラブルは避けたいものです。やはりイメージを伝えているだけなので、なかなか思い通りに出来上がらないのが一般的で、トラブルが後を絶ちません。
書面に残すことで証拠となり、納品後の修正や改善要求等に受注側の責任として応じてもらうことができます。
納期や金額についても明確に契約書に記載すると、WEBサイト制作に起こりやすい納期遅延の対策となります。
実際に遅延となった場合は、法律上、契約書に明記されていなくとも損害賠償請求をすることができますが、契約書の記載内容によっては損害賠償の額が少なくなってしまうこともあります。
制作会社から提示された契約書の内容に不安がある方は、弁護士などにリーガルチェックを依頼するとよいでしょう。
2.WEBサイトの名前、サービス名とドメインの決定は慎重に
(1)商標を侵害していないか検索
実店舗を構える際にも同様のことが言えますが、サービス名(商品名)、ロゴマークなどを決める際は、すでに世に出ているものの商標権を侵害していないかを確認する必要があります。
先に商標登録されたサービス名や商品名、ロゴマークに類似したものは使用できません。
独立行政法人 工業所有権情報・研修館が運営している「J-PlatPat」では、商標登録されているサービス名などの検索ができるので、ここで調べてみるのも方法の一つです。
J-PlatPat特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
しかしながら、類似サービス名や類似ロゴの検索はできても、商標権侵害にあたるかどうかの明確な基準までは、上記サイトではわかりません。
サイト開設後、スムーズに運用を進めたいのであれば、弁理士などに商標権侵害の調査とサービス名やロゴなどの商標登録を依頼してみるといいかもしれません。
商標登録まで行ってしまえば、今度は他人からのサービス名やロゴの侵害を防ぐことができ、安心してビジネスに取り組むことができるでしょう。
(2)ドメインはオリジナル性のあるものに
さらに、WEBサイト特有なものとして「ドメイン」があります。
これはネット上の住所といわれるものですが、独自ドメインといって、先に取得されていなければ自由に好きな文字列で取得することができます。
例えば、この「那珂川オフィス」サイトでいうと「nakagawa-lawoffice.jp/」の部分です。
このドメインを、「大手企業と同じ名前で最後の部分だけちょっと違う」ものにしてしまったらどうなるでしょうか。
これは、消費者(訪問者)にその関連企業であるかのように勘違いされ、混同をまねく行為として不正競争防止法の違反に当たる可能性があり、損害賠償請求や信用回復措置請求の対象になりかねません。
法律の観点から他人の真似をしないことはもちろん重要ですが、個人的な意見としては、オリジナリティのあるドメイン名を取得することで自身のサイトに愛着が湧き、サイトをより良くしていこう、という気持ちにつながるのではないかと思います。
3.WEBサイトが完成。更新を自分で行う時に気を付けたいポイント
(1)ブログページも開設!でもその画像、大丈夫…?
例えば、WEBサイトを開設し落ち着いてきた頃、商品についてのPRをブログで行うこととなったとします。
ネットを閲覧中に、たまたま同じ商品の写真を掲載していた他のサイトを見つけたので、無断でコピーし、あたかも自分が撮影したかのようにサイトへ掲載しました。
すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、このような場合、著作権侵害にあたり、掲載元から損害賠償請求をされることもあります。
たとえありふれた街の風景の写真や小さなアイコンでも、他人が撮影・制作したものに対して、無断で使用することは許されません。有名人や著名人の写真ももちろん無断使用は違反です。
商品の写真撮影は自身で行うか、カメラマンに依頼しましょう。最近では、自身で撮影した写真を切り抜いたり加工してくれるWEBサービスなどもあります。
(2)過大表示や紛らわしい表現に気をつける
テレビCMや広告チラシなどでも問題となっていますが、実際の商品より良く見せる「有利誤認表示」はWEB上でも起こります。
「通常価格〇〇円のところ、今なら特別に●●円!」という表記をよく見かけますが、実際にはこの通常価格で一度も販売したことはなく、特別価格での販売が常態化していた場合、
景品表示法違反となるおそれがあります。
その他にも、アプリゲームなどでは途中から有料になるのにも関わらず「完全無料で遊べる」と表記したり、「必ず痩せるナンバーワンサプリ」などという医学的にも根拠がない文言を掲載することも景品表示法(または薬事法・薬機法違反)になります。
4.まとめ
今回はネットビジネスを始めるにあたって必要なWEBサイトについてご説明しました。
起こり得る多様なトラブルに先回りし、予防策を講じることで息の長いWEBサイトとなり、ビジネスも加速していくことでしょう。
制作会社との契約や著作権についてはビジネスに関わらず、趣味のサイトや、サークル活動でのコミュニティサイトなどを制作する際にも気をつけたい部分ではないでしょうか。
そのような方々もぜひ参考にしていただければと思います。