弁護士コラム

2019.04.30

【社会保険】家族を扶養に入れる加入条件と手続き方法

家族を自分の扶養に入れたい、夫・妻の扶養に入るため手続きをしたいけど、条件に当てはまっているのか気になりますよね。
必須条件は『主として被保険者の収入によって生計を維持していること』です。後期高齢者医療制度の創設により、75歳以上の者は被扶養者になれないので注意が必要です。
また、扶養に入る被保険者が社会保険に加入していることは前提条件となりますので、確認も必要です。

今回は、どのような人なら社会保険の扶養に入ることができるのか、どのような手続きが必要なのか等をご説明させていただきます。

1.被扶養者の範囲

『被扶養者』とは、被保険者の扶養に入った人のことです。
主として被保険者の収入によって生計を維持していることが条件で、被保険者と同様に、病気・けが・死亡・出産などについて、保険給付が行われます。
※収入には、給与のほか、事業収入、不動産収入、公的年金、失業給付等も含まれるので注意が必要となります。

被扶養者の範囲

※1 「主として被保険者に生計を維持されている」とは、被保険者の収入により、その人の暮らしが成り立っていることをいい、被保険者と一緒に生活をしていなくてもかまいません。

つまり、離婚したお父さんが子供のための養育費を支払っていて、その養育費で子供が生計を維持しているのであれば、同居していなくても子供はお父さんの扶養に入ることができます。

※2 「同一世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいますので、同一戸籍内にあるか否か問わず、被保険者が世帯主でなくてもかまいません。

2.共働きの場合は?

①被保険者と同一世帯の場合

ア)対象者の年間年収が130万円未満、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満の場合は該当します。
イ)対象者が60歳以上や一定の障害者の場合
対象者の年間年収が180万円未満、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満の場合は該当します。
ウ)上記アイの条件に該当しない場合であっても、年間収入130万円未満(イの方は180万円未満)、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的にみて、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者として認められます。

②被保険者と同一世帯ではない場合

対象者の年間収入が130万円未満(イの方は180万円未満)、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には被扶養者に該当します。

③被扶養者となる配偶者の方

20歳以上60歳未満の人は、国民年金の第3号被保険者となり、年金保険料が免除されます。該当した場合は、合わせて手続きを行う必要があります。

3.手続き方法

被扶養者の加入手続き方法1

手続き方法は上記の図をご参照ください。

4.まとめ

扶養に入れるのは3親等内の親族で主として被保険者の収入によって生計を維持している人です。範囲と要件によっては、届出書の添付資料にも違いがありますので、しっかり確認することが大切です。
手続きが遅れますと、さらに追加の資料が必要になったり、保険証が届くのも遅くなりますので、速やかに適切な手続きを行いましょう。

 

 

2019.04.26

【相談事例50】破れたお札は交換してもらえる?~紙幣の引き換えについて~

【相談内容】

先日、自宅の掃除をしていると、何十年の前に隠したのであろう母のへそくりが見つかりました。

母も亡くなっており、へそくりを見て懐かしい気持ちになったのですが、へそくりとしてのお金は封筒などに入っていなかったためボロボロの状態で、中には破れて半分しか残っていないお札もありました。

そのようなボロボロの紙幣は処分するしかないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

前回、貨幣の通用限度等についてご説明させていただいた際、紙幣の引き換えの制度について簡単にふれさせていただきましたが、今回は具体的な引き換えの基準などについてご説明させていただきます。
ご相談者様のように紙幣が半分程度しか残っていない場合であっても、引き換えできる場合が多いのであきらめる必要はありません。

1. 紙幣の引き換えについて

まず、紙幣がボロボロの状態になったからといって価値がゼロになるわけではありません。

日本銀行法48条では、「日本銀行は、財務省令で定めるところにより、汚染、損傷その他の理由により使用することが困難となった日本銀行券を、手数料を徴収することなく、引き換えなければならない。」と規定しており、紙幣については無償で引き換えを行うことができると規定されています。

具体的には、日本銀行や、お近くの銀行により破損などした紙幣を持参すれば引き換えてもらうことができます。
そして、上記法律をうけた日本銀行法施行規則8条1項により、
表裏の両面が具備されていることを前提として

① 券面の三分の二以上が残存するものについては額面価格の全額
② 券面の五分の二以上が残存するものについては額面価格の半額

といった基準で引き換えがなされることになります。すなわち、紙幣の5分の2未満しか残っていない場合を除けば、金額が半額にはなってしまいますが、引き換えてもらうことができます。

なお、破れて2つに分かれてしまった紙幣の引き換えについても規定があり、上記施行規則8条2項では、「日本銀行券の紙片が二以上ある場合において、当該各紙片が同一の日本銀行券の紙片であると認められるときは、当該各紙片の面積を合計した面積をその券面の残存面積として、前項の規定を適用する。」と規定されており、破れた各紙片の合計面積が5分の2以上であれば半額、3分の2以上であれば全額引き換えることができます。

2. 紙幣を受け取る側の注意点

このように、破損している紙幣であっても、新しい紙幣と引き換えが可能ではあるため、多少の破損であれば後に引き換えが可能な場合であることが通常であるため、お店などでも多少であれば、通常の状態でない紙幣も支払いの際に受け取っても差し支えないでしょう。

もっとも、ボロボロの紙幣の場合、お釣りなどで使用するには適さず、銀行などで引き換えをする手間も生じます。
また、破損の具合によっては、減額されて引き換えがなされる場合もあるため、あまりにも破損している紙幣の場合受け取りを拒否するなどの対応も必要です。

 

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2019.04.26

【相談事例49】大量の小銭での代金の支払いは認められる?

【相談内容】

先日、コンビニでの料金の支払いに大量の1円玉を出して支払いを行おうとしてレジの人を困らせるような動画が投稿されているのを見ました。

こういった動画も迷惑動画の類だと思うのですが、大量の小銭により支払いを求めた場合、代金額を支払っている以上、店側は大量の小銭を受け取らなくてはならないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

最近ニュースを見ていると、次から次へと迷惑動画に関する問題が取り上げられているのを見ると、なぜこのような迷惑な行為がやむことがないのかと疑問に思ってしまいます。

ご相談者様のおっしゃられるように、今回の動画(「1円玉会計」などと呼ぶそうです。)についても迷惑動画といえるでしょう。
このような大量の小銭を用いた支払いについて店側は支払いを拒否することができるのかについてご説明させていただきます。

1. 日本における通貨について

日本における通貨(貨幣)に関し規定した法律として、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律というものがあり、日本における通貨の単位を円とすること(2条1項)、通貨とは、貨幣及び日本銀行券(紙幣のことです)であること(2条3項)などが規定されています。

なお、余談になりますが摩耗などにより流通に不適当となった貨幣や、汚染、損傷その他の理由により使用することが困難となった紙幣については、上記法律や日本銀行法により、無償で交換することができるとされています。

2. 貨幣の通用限度

では、代金の支払いに関しては、貨幣(小銭)をいくら使用してもよいのでしょうか。
民法402条1項では、

「債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。」

と規定されており、「1万円札で支払う」などと特定されていない場合には、債務者(代金を支払う人)は各種の通貨(1万円札、千円札などの紙幣や貨幣)を債務者の選択に支払い支払うことができます。

もっとも、さきほどご説明した、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律の7条では、「貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する。」と規定しています。

つまり、同一の貨幣は20枚までは通貨として通用するが21枚以上になると通貨として通用しないことになります。

したがって、通貨として通用しない以上店側は、同一の効果を21枚以上提出してきた場合には、その効果での支払いを拒否することができるようになります。ちなみに、紙幣の場合には、通用限度はなく、どれだけ高額な金額であっても紙幣で支払う場合には枚数制限はありません。

貨幣のみ通用限度が設定されている理由としては、貨幣はそもそも代金の支払いなど決済を簡易にするために用いられるものであるところ、迷惑動画にあるように大量の貨幣での支払いを認めてしまうと、簡易な決済を阻害することになりかねないため、通用限度を設定しています。

したがって、迷惑動画のような嫌がらせのように大量の小銭で支払いをしようとしている場合には、店側としては毅然とした態度で貨幣での支払いを拒否することで差し支えありません。

もっとも、小さいお子さんが少しずつもらった小銭をためて代金を支払にくるというようなほほえましい場面には、店側として21枚以上の同一通貨を受け取ること自体は問題ないため、柔軟に対応してあげるのがよいのではないかと思います。

 

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2019.04.26

【相談事例48】ゴールデンウイークが10連休になる理由は?

【相談内容】

2019年のゴールデンウイークは10連休となっています。
今まで10連休ということがなかなかなかったので、どうやって休みを過ごそうか悩んでいます。
ふと気になったのですが、いつものゴールデンウイークと違いどうして2019年は10連休になるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

2019年のゴールデンウイークは10連休となっています。

通常のゴールデンウイークは3連休と4連休の組み合わせですが、2019年に関しては天皇陛下の生前退位の関係もあり10連休となるのですが、10連休となることについても、しっかり法律により規定されています。

今回も豆知識的な内容となっておりますが、10連休となる仕組みついてご説明させていただきます。

1. 新天皇即位に伴う祝日の制定

平成30年12月8日、皇太子さまが新しい天皇に即位される日である2019年5月1日と、新天皇に即位されたことを公に示す「即位礼正殿の儀」が行われる2019年10月22日の両日を祝日とする法律が成立しました(なお、両日が祝日となるのは2019年のみであり、翌年以降は祝日にはなりません。)。
このように、2019年5月1日が祝日になることにより。10連休になることになります。

2. 国民の祝日に関する法律

日本には、祝日に関する事項を規定した、国民の祝日に関する法律があります。
具体的には、第2条により各祝日の日付と祝日の意味が規定されています。
例えば、昭和の日(4月29日)は、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。」と規定されています。

そして、第3条3項において、「その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。」と規定されており、簡単にいうと、国民の祝日に挟まれた平日は、休日になります。

上記規定により、4月29日の昭和の日と5月1日の天皇の即位の日という祝日に挟まれた4月30日は休日となります。また5月1日と5月3日の憲法記念日という祝日に挟まれた5月2日も同じく休日になります。

このように2019年は、4月30日と5月2日が休日になったことで、4月27日から5月6日までの期間が10連休となることになります。
なお、2019年5月5日の子ども日は祝日かつ日曜日であるところ、国民の祝日に関する法律3条2項では、「「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。」と定めており、翌日である5月6日も休日(いわゆる振替休日)となります。

 

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2019.04.26

【相談事例47】シェアハウスでのトラブル~勝手に部屋に入るのは違法?~

【相談内容】

大学に進学する際、高校の同級生と2人でマンションを借りていわゆるシェアハウスをすることにしました。

お互いの部屋を決めて互いの部屋には絶対に入らないと約束していたのですが、先日、友人が勝手に私の部屋のドアを開けて部屋の中に入っているのを目撃しました。

どうやら探し物があったらしく私が持っていたら借りようとしていたらしいのですが、友人に勝手に部屋の中に入ったことを咎めても全然反省してくれません。

いくら同じところだとしても勝手に部屋の中に入ることは問題ではないのですか?

【弁護士からの回答】

近年、シェアハウスで生活している人が増えたというニュースを耳にしました。
シェアハウスといっても、一軒家にて複数の人が生活するスタイルや、ご相談者様の事例のように、マンションに他人と生活するというようなスタイル(正確にはルームシェアというようです。)などいろいろあるようです。

シェアハウスやルームシェア等は、コストの削減のみならず同居している人との交流も図れる等、メリットもありますが、他人同士がいわゆるひとつ屋根の下で生活する以上トラブルも起こりうると思います。

そこで、今回は他人の部屋に無断に入る行為の問題点についてご説明させていただきます。

1.住居侵入罪

刑法130条では、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」と規定されており、正当な理由がないのに住居や建造物に侵入する行為は住居(建造物)侵入罪となります(130条の後半分は「不退去罪」という犯罪です。)。

今回のご相談内容では、ご友人の行為が住居侵入罪にあたるか否かが問題となります。

2. 他人の部屋は「住居」??

刑法130条でいう「住居」とは、「人が起臥寝食(きがしんしょく)のために日常的に使用する場所」とされています。そして、解釈上、マンションの各個室のように1つの建物中の区画された部屋もそれぞれ独立の住居になると解されています。

したがって、ルームシェアのようにお互いの部屋それ自体も独立の住居として認められ「侵入」したと認められる場合には、住居侵入罪が成立しうることになります。

3. 「侵入」とは??

では、ご相談者様の事例のように無断で他人の部屋に入る行為は、住居侵入罪の「侵入」に該当するのでしょうか。

「侵入」という語感からすると忍び込むような行為をイメージされる方も多いと思われますが、判例などでは、侵入とは、「管理権者の意思に反する立ち入り」であると解しています。

例えば、銀行への入店の際、外観上は一般の利用客と異ならない場合であっても、銀行強盗や窃盗をするために入店する場合には、管理権者(銀行の支店長)の意思に反する立ち入りであるため住居侵入罪が成立します。

ご相談者様の事例のケースでも、お互いの部屋には入らないという取り決めしていた以上、部屋に無断で入る行為は、部屋の管理権者であるご相談者様の意思に反するものとして住居侵入罪が成立する可能性があります。

もっとも、単なる部屋の場合、鍵をかけていない場合等については、立ち入りを許容していることの意思の表れとも思えるので、シャアハウスのように個室ごとに鍵が設置されている場合と比較すると住居侵入罪が成立するか否かはケースバイケースのようにも思えます。

いずれにせよ、同棲とは違い他人と一つ屋根の下で生活し、かつ、それぞれの居住スペースをすみ分けする以上、鍵を設置することやルールをきちんと明確に定める等トラブルにならないよう対策を講じる必要があるでしょう。

 

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2019.04.26

【相談事例46】18歳で飲酒は可能?~未成年と成人②~

【相談内容】

18歳で、自由に契約ができるようになるのですね。
安易に契約して、不利にならないように気を付けなければいけませんね。
18歳で成人になるということはお酒を飲んだりタバコを吸ったりすることも18歳からできるようになるのですか。

【弁護士からの回答】

前回は、民法上の成人と未成年者の違いについてご説明させていただきましたが、今回は他の法律との関係性についてご説明させていただきます。

1.お酒とタバコについて

飲酒(お酒)については、未成年者飲酒禁止法という法律があり、タバコについては、未成年者喫煙禁止法という法律があります。

では、2022年4月1日より開始する民法上の成人年齢の引き下げに伴い、飲酒や喫煙をすることができる年齢も引き下げられるのでしょうか。

結論としては、民法上の成人年齢が引き下げられたとしても、飲酒及び喫煙のいずれも20歳にならないと行うことはできません。

未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法においては、民法改正後であっても20歳未満の人の飲酒、喫煙を禁じることになります。

これは、いずれの法律も20歳未満の人の身体の安全等に配慮したものであるため、民法上の成人年齢の引き下げに伴い、引き下げられるべきではないと考えられているからです。

2. 養育費について

夫婦が離婚する際に未成年のお子さんがいらっしゃる場合には、お子さんの生活費を養育費という形で支払うことについて合意するのが一般的です。

その際、「子が成人に達するまで」というように支払期限を設定していた場合に、2022年4月1日以降より、上記のような規定の場合には養育費の終期については18歳までに引き下げられてしまうのでしょうか。

これについては、法務省において見解が示されており、取り決めの時点では成人年齢が20歳であった場合には成人年齢の引き下げがなされたとしても養育費の終期は20歳のままとすべきとされています。

理由としては、養育費については経済的に未成熟であるお子さんのために支給されるものであって、成人年齢が18歳に引き下げられたからといって当然に18歳のお子さんが経済的に未成熟な状態でなくなるわけではないからとされています。

もっとも、お子さんの経済的な成熟度に関してはケースバイケースであるようにも思えるため、今後成人年齢の引き下げ後に関する養育費の問題については、是非一度弁護士にご相談ください。

 

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2019.04.26

【相談事例45】いつから大人になるの?~未成年と成人①~

【相談内容】

私は今年15歳になります。選挙権が18歳から認められるようになり、自分も18歳になったら投票に行ってみようと思います。

ニュースで見たのですがもう少ししたたら、成人の年齢が18歳に引き下げられるようになると聞きました。
成人になると何が違うのですか?

【弁護士からの回答】

平成28年から公職選挙の選挙権が与えられる年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
平成30年に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることを内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。

これにより、2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の人は、その日(2022年4月1日)に成人になることになります。

そこで、まもなく成人年齢が引き下げになることから、今回から、未成年者と成人の違い等についてご説明させていただきます。
今回は、成人になることで未成年と何が異なるのかについてご説明させていただきます。

1. 単独で法律行為を行うことができる

未成年者が、法律行為(契約の締結等)を行う場合には、親の同意が必要であり、親の同意なく行った行為については、民法上取り消すことが可能となっています(未成年者が親の同意なく行った法律行為を行った場合に、取り消すことができるという内容は、成人年齢が引き下げになる前と後で変わりはありません。)

たとえば、携帯電話の契約、ローンの締結、賃貸マンション契約等については、未成年者の場合には親の同意が必要となります。

2022年に成人年齢が18歳に引き下げられることにより、18歳、19歳であっても親の同意なく、上記の契約を締結することができるようになりますが、その反面、これまで認められていた取り消しが認められないため、18歳、19歳の人が悪徳商法に引っかかってしまう場合や、契約に際しトラブルに巻き込まれてしまうケースが多発するのではないかとの懸念が生じています。

2. 親の同意なく婚姻することができる

これまでの民法では、男性は18歳、女性は16歳で結婚することができました。もっとも、未成年者が結婚するためには親の同意が必要となっていました。
したがって、成人に達すると親の同意なく結婚することが可能になります。

なお、成人年齢を引き下げる民法の改正の際、女性の結婚することができる年齢は16歳から18歳に引き上げられることになりました。

これにより、2022年4月1日以降、男女ともに、18歳になれば親の同意なく婚姻できるようになりましたが、逆に18歳になる前は親が同意したとしても婚姻は認められなくなりました。

次回は、成人年齢の引き下げと他の法律との関係についてご説明させていただきます。

 

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2019.04.26

【相談事例44】会社の経費でポイントを貯めることは違法?

【相談内容】

会社を経営しています。従業員のことで相談なのですが、営業で外回りに行く従業員に対しては、車のガソリン代などは会社の経費で支給しています。

ガソリンのレシートを貰って、その金額を後日支給しているのですが、先日、従業員からもらったレシートを見ると、従業員がガソリンを入れる際に、自分のポイントカードを使ってポイントを貯めていたことが分かりました。

ガソリン代については会社が支給しているのにポイントは自分でもらうということは法的にも問題にならないのでしょうか?

【弁護士からの回答】

近年、コンビニやガソリンスタンド等様々な店舗などで購入金額に応じたポイントを付与し、たまったポイントを利用し割引などの特典を得るというサービスが行われています。

ご相談者様の事例では、ガソリンを入れる際のポイントという1回あたりのポイントの金銭的な価値はさほど高くはないものですが、これが長期間にわたり継続していく場合には大きな金額となっていくものであると思います。

また、ポイントと同様に、飛行機を利用した際にたまるマイル等の場合にも大きな金額となるのが通常です。今回は、経費を使用した場合のポイントの帰属に関する問題についてご説明させていただきます。

1. ポイントの所有者(権利者)は誰?

まず、会社の経費として支払った際のポイントが誰のものか(権利者は誰か)という点が問題になります。
ポイントが付与される前提となる代金等の支払が会社から支給されている点に着目すれば会社の物とも解される側面もあります。

もっとも、ポイントについては誰が代金を支払ったかという点は一切問題にしておらず、カードなどを提示した人に対して付与されるものである点からすると、カード等の所有者に帰属するとも考えられます。

このように、経費を使用して支払った代金際のポイントの帰属については、明確に誰に帰属するものであるかについては、決まっているものではありません。

2. 無断で自身のポイントにする行為は違法か?

では、ご相談者様の事例のように、会社に無断で自身のカードにポイントを貯める行為は法的に問題となるでしょうか。

結論からいうと、会社の就業規則等によって、明確にポイントやマイルが会社の所有(会社に帰属)することが規定されていない場合には、従業員が無断で自己のカード等を使いポイントを貯めていたとしても刑事のみならず民事上も法的責任を問うことは難しいでしょう。

上記のとおり、ポイントが誰に帰属するかについては、明確な基準があるわけでもない状況であることに加え、会社としてポイントの帰属に関して何ら明言していない以上、会社としても従業員が購入等をする際のポイントの帰属については、放置(放任)していたと捉えられてもやむを得ない状況とであるといえるでしょう。

したがって、就業規則などでポイントの帰属やルールについて何ら明言していない以上、自身のポイントカードにポイントを貯めた従業員には、業務上横領罪や、背任罪などの犯罪は成立せず、また、自身のポイントカードを使用したことを理由とする懲戒処分もすることは違法になってしまうでしょう。

3. 会社としての対策は??

他方で、就業規則等において、ポイントやマイルについては、会社に帰属するものとすることや、購入時には会社のポイントカードを使用する旨規定されている場合には、会社での経費で支払う際のポイントについては、会社に帰属することが明確に明らかになっているため、規定に反し、従業員が自身のカードを使用した場合には、規定違反を理由として懲戒処分を行うことも可能です。

また、業務上横領罪若しくは背任罪として刑事処罰の対象になる可能性もあります。

会社として、ポイントについては従業員に自由に与えてもよいというスタンスであるのであれば別ですが、会社として、ポイントについても会社の帰属としたい場合には就業規則などにその旨を明確に規定するとともに、従業員に対し、会社のカードを使い、自身のカードを使用しないようはっきりと伝えることが必要になります。

就業規則の作成や変更に際しては、専門的な知識も要する分野ですので、是非一度弁護士にご相談ください。

 

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2019.04.26

【相談事例43】4月1日生まれは早生まれなのはなぜ?

【相談内容】

私の息子は4月2日が誕生日で6歳になりました。
来年から小学校に通うことになるのですが、息子より1日早く4月1日に生まれたお友達は、今年から小学校に通うので、学年が違ってしまい少しかわいそうです。

気になったのですが、どうして4月1日生まれと4月2日生まれで学年が変わってしまうのでしょうか。
どうして3月31日と4月1日というような、ちょうどよいところで区切っていないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

4月に入り、お子さんが小学校に入学される方も多いと思います。
今回は法的なトラブルに関するものでなく、豆知識といった内容にはなりますが、4月1日生まれのお子さんが早生まれになる理由についてご説明させていただきます。

1.小学校へ進学するのはいつから?

学校教育法22条では、保護者は、子どもが「満6才に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから」小学校へ通わせる義務があると規定しています。

そして、学校教育法施行規則では、「小学校の学年は、4月1日に始まり、翌年3月31日に終る。」と規定されております。上記各規程だけを見てもどういったことになるのかについては分かりづらいと思いますが、簡潔にいうと、「満6歳になった日の次の日以降で最初に来る4月1日」に小学校に進学することになります。

この内容だけ素直に読むと、4月1日生まれの子は、4月1日に満6歳になるのだから、その次の日(4月2日)以降で最初に来る4月1日は翌年の4月1日になり、4月1日生まれの子は早生まれにならないのではないかとも思われるのですが、実際はそうではありません。

2.人はいつ年を取るのか?

人がいつ年を取るのかについてですが、それに関して規定している法律があります。

年齢計算ニ関スル法律という明治時代に制定された法律に規定されており、年齢については生まれた時間にかかわらず、生まれた日を1日目として起算するとされています。

また、上記法律で準用されている民法143条2項により、出生日(起算日)に応答する前日をもって満了することになります。

簡単な言葉で言うと、年を取るタイミングは、生まれた日ではなく、「生まれた日の前日の午後(夜)12時」となります。

午後12時は、翌日の午前0時と時刻的には同じですが、すくなくとも年を取る瞬間は、厳密には、誕生日の前日ということになります。

話はそれますが、うるう年の2月29日生まれの人はよく4年に1度しか年を取らないなどと冗談で言うことはありますが、法律上は、誕生日の前日(2月28日)の午後12時に年を取っていることになります。

3.日本で一番多い誕生日は4月2日??

上記の年を取るタイミングを進学するタイミングに当てはめると、4月1日生まれの人が年を取るタイミング、すなわち満6歳になるタイミングは、3月31日の午後12時ということになります。

そして、小学校に進学するタイミングは、満6歳になった日(3月31日)の翌日以降で最初に来る4月1日であり、「以降」とはその日も含まれますので、4月1日生まれの子は早生まれとなり、4月2日生まれの子よりも1年早く小学校に進学することになります。

厚生労働省の統計では、1985年から2015年までの間では4月2日が誕生日である人が日本では1番多いとされています。

これは、本当は3月末や4月1日に出産した人であってもお医者さんなどが気を利かせ、4月2日生まれとする出生証明書等を出して、4月2日生まれとして出生届を出すことが多いからではないかと言われています。

進学については年齢という一律の基準により判断すべきという点は原則ではありますが、個人的には、同じ年齢であってもお子さんの成熟や個性は様々であるため、進学に関しても柔軟に対応することができる仕組みを考えてもよいのではないかなと感じております。

 

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2019.04.26

【相談事例42】子どもの不法行為で親が賠償責任を?

【相談内容】

子どもがこの春から小学校に進学します。
新しい環境で頑張ってほしいと思っているのですが、子どもが他のお子さんをケガさせたり、物を壊してしまったりしたときには親が賠償責任を負わなければならないと聞きました。本当でしょうか。何か対策はないでしょうか。

【弁護士からの回答】

未成年の不法行為と親の賠償責任については、以前迷惑動画の投稿に関するコラムの中でも少し書かせていただきましたが、4月からお子さんが小学校に進学するかたもいらっしゃると思いますので、改めてご説明させていただきます。

お子さんの行為であっても、多額の賠償義務が発生する場合は少なくありませんので注意が必要です。

1. お子さんの行為で多額の賠償責任が発生

小学校に進学するとなると、お子さんの活動範囲も増えることに伴い、お子さんの行為がきっかけでさまざまなトラブルに発生する可能性は否定できません。

例えば、お子さんが自転車に乗るようになり、お子さんの不注意で自転車で歩行者に衝突し、歩行者が転倒し死亡してしまった場合には数千万円という多額の賠償義務が発生することなども珍しくありません。

2. 子どもの不法行為の賠償責任

では、お子さんが起こした不法行為については誰が賠償責任を負うのでしょうか。

民法712条では、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と規定しており、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力といいます。)がない場合には、不法行為責任を負わないとしています。

この責任能力の有無については、具体的なお子さんの状況などを考慮して事例ごとに判断されるものなのですが、おおむね11歳~12歳程度のお子さんであると責任能力がないと判断されるのが一般的です。

そして、責任能力がないと判断された場合の賠償義務については、民法714条1項に規定があり、

「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

と規定しており、未成年者を監督する法定の義務を負う者、すなわち通常の家庭であれば、親権者である両親が賠償責任を負うことになります。

714条1項ただし書きには、「監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」には賠償義務を負わないとされており、従前、このただし書きの規定が適用される場面はほとんどなかったのですが、近年事例に即して、ただし書きが適用された最高裁判所の判例も出てきております。

3. 親としてできる対策は?

とはいえ、原則として責任無能力の未成年のお子さんが起こした不法行為については、親権者のご両親が賠償責任を負うことになります。
上記のとおりお子さんの行為であっても多額の賠償義務を負う可能性は少なくありません。

また、お子さんの自転車での事故については、自動車の任意保険の対象とはなりません。
そこで、親としてできる対策として、個人賠償責任保険に加入することをおすすめします。

個人賠償責任保険は、通常の医療保険や生命保険などにセットで特約として入れることができ、わずかな保険料で高額な賠償を補填することができるため、是非、個人賠償責任保険にも加入をご検討ください。

 

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