弁護士コラム

2019.02.18

不貞行為と親権者について

【ご相談者様からのご質問】

妻と結婚して20年になります、娘が1人おり17歳です。1年程前から妻の様子がおかしかったのですが、先日、妻が他の男性と不貞行為を行っていることわかりました。
自分を裏切った妻とは婚姻関係を継続していくことは考えられないため、離婚を考えていますが、娘の親権については、絶対に渡したくありません。
不貞行為を行っている人は親権者としてふさわしくはないと思います。

【弁護士からの回答】

これまで、有責配偶者からの離婚請求についてご説明させていただきましたが、今回は、少し違う側面として、不貞行為と親権者の関係についてです。
ご相談者様の事例のように不貞行為をした配偶者との間で親権について問題になるケースは少なくありません。
そこで、今回は、不貞行為が親権者の判断に及ぼす影響についてご説明させていただきます。

以前にもお伝えした通り、親権者を夫と妻のいずれとすべきかについては、「子の福祉と利益」を基準に判断することになります。具体的には父母の属性、監護状況、子の心身の状態や場合よっては子の意向等を総合的に考慮して判断していくことになります。
したがって、不貞行為を行ったことが親権者としての適格性を欠くというふうにダイレクトにつながるものではありません。
ご相談者様のように、「不貞を行っているのだから親権者にはなれない」というようなロジックは働かないため注意が必要です。

もっとも、不貞行為を行っていたことにより、上記親権者の判断に影響を及ぼす場合があります。
例えば、夜に幼い子をおいて不貞相手のところに頻繁に出向いていたような場合には、育児放棄と同視し得るため、不貞行為を行ったということよりも、育児を行っていないとして、不利に判断されることになると思われます。
ご相談者様の事例では、未成年者のお子さんが17歳とある程度自立されているため、育児放棄とまで認められるかについては、不貞行為の内容にもよりますが、微妙なところではないかと思います。

また、未成年者のお子さんが、親が不貞行為を行っていることを知っていた場合には、不貞行為を行っている親に対する悪感情から、未成年者自身が拒絶する場合も少なくなりません。親権者の判断要素において、年齢が一定程度(12歳程度)になれば、未成年者自身の意向が非常に重視されることになります。
したがって、ご相談者様のケースでも、娘さん自身が、母親のことを拒絶している場合には、親権者として父であるご相談者様が指定される可能性も十分に考えられます。
他方で、娘さんが母親と一緒にいたいという意向が強い場合には、仮に、母親が不貞行為を行っていたとしても、ご相談者さまが親権者に指定される可能性は低くなるのが一般的です。
 
このように、親権者の判断は、相手方が不貞行為を行っているからといった単純な理屈で判断されるものではないため、親権者の判断についてお悩みの方は、是非一度、弁護士にご相談ください。

2019.02.12

商標権とグローバル化

グローバル社会である昨今、私たちの生活は「海外」のものに囲まれています。
海外進出をしたい、もっと自社製品を有名にしたい、という思いから海外で商標権を獲得する企業もますます増えています。

そこで今回は、日本で取得した商標権は海外で通用するのか、そして最後に海外の商標制度は日本とどのように異なっているのか、ということについてお話していきたいと思います。

1.国外への商標登録

商標権というのは、日本だけでなく他の国々にも存在しています。
今の商標法の前進となる商標条例が1884年に日本で制定されました。それは、欧米先進国の影響を受けたからです。
1883年に工業所有権(現在は産業財産権と呼ばれる)の保護に関するパリ条約が締結されました。その1年後に日本でも徐々に商標制度が確立し、現在に至ったのです。

このように商標権の歴史は100年以上にもわたりますが、商標権というのは世界共通で有効なのでしょうか?

まず、結論からいうと、
日本で取得した商標権はそのままでは海外で通用しません。あくまで日本国内でのみ有効です。商標権を外国でも保護したい、というのであれば別途外国向けに登録出願が必要です。方法としては主に

①各国へ直接出願
②国際登録出願(マドリッドプロトコル)
③欧州連合商標(EUTM)
の3つがあります。それぞれについてメリット、デメリットとともに見ていきましょう。

①各国へ直接出願

各国への直接出願は、各国内の代理人を通して出願するやり方のことです。
【メリット】
・出願する国が少ない場合コストが最低限で済む。
・現地の特許庁に直接出願するので、国内出願と同じように扱われる
・パリ条約加盟国であれば優先権主張が可能なので、第三者に特許を取られない。(日本で出願したものと同じ商標で出願をする場合、日本での出願日が適用される。)
【デメリット】
・出願先がパリ条約加盟国でない場合、優先権が主張できず第三者に同一内容で特許を取られてしまう場合がある。
・複数国に出願する場合、それぞれの国の言語様式で出願する必要がある。

 

②国際登録出願(マドリッドプロトコル)

日本が2001年にマドリッド協定議定書に加盟したことで、国際事務局を通じて加盟各国への出願が可能になりました。
【メリット】
・日本語での出願が可能。
・複数国へ出願するときのコストが安い。(一度に複数国へ出願可能)
・国際事務局で一括管理されているため更新管理負担が軽減される。
【デメリット】
・本国登録に基づくので、商標は日本で登録したものと同じ表記でなければならない。
・指定役務、サービスの基準が日本と異なるので、同一性が認められない場合がある。

 

③欧州連合商標(EUTM)

欧州連合知的財産庁に出願し、登録された商標はEU加盟国すべてで有効となります。
【メリット】
・一度の出願でEU全加盟国に出願可能なのでコストが安い。
・EU加盟国の中の1か国で商標を使用していれば、商標を使用していないという理由で商標登録が取り消されることはない。
【デメリット】
・EU加盟国の中の一部の国を除いての出願は不可能なため、1か国に拒絶理由があれば登録不可。また、1か国から無効を求められたらEU全体で商標は無効となる。

以上の3つが主な外国への商標登録出願方法です。自分がどこの国や地域で商標権を持ちたいのか、どの方法が合っているのかを考えて選ぶのが良いでしょう。

2.海外の商標制度

海外に商標登録をするにはどのような方法があるのかが分かったところで、次は日本の商標制度と海外の商標制度の違いを見ていきたいと思います。
今回はアメリカを例に見ていきましょう。

①登録主義と使用主義、先願主義と先使用主義

日本では、一度商標登録出願を行い登録が完了すれば、その商標は10年間守られます。これは日本の登録主義に基づく考え方です。そして、登録されている商標は例え使われていなくても、他社が利用することは認められません。

一方、アメリカでは使用主義という考え方を採用しています。
商標を使用していれば、登録をしていなくても商標権の効力が発生します。
だったら商標登録の制度はアメリカでは必要ないのでは?と思うかもしれませんが、登録をしているほうが後で商標権の侵害などトラブルが起きた際に法的な手続きが取りやすいので、登録はしておいた方がよいのです。
また、いつから使っているのかを後に証明するのは非常に手間がかかります。

実際に使用主義という考え方は登録手続きの時にも反映されています。
アメリカでは出願の際に、商標が実際に使用されていること、もしくは今後使用する意思があることを示さなければならないのです。登録や更新の際に商標の使用宣誓書を提出しなければなりません。

日本の場合はとにかく早い「登録」が重要(先願主義)ですが、アメリカでは「使用」の意思が大事なのです。
アメリカでは同時に出願があった際は、先に使用していた方が登録に有利で、先使用主義と言われています。

②審査主義と無審査主義

日本では出願後、登録査定が出るまでの間に商標に識別性があるか、また他の商標と類似していないかなどに審査が行われます。これを審査主義といいます。
こちらに関しては、アメリカも同様に審査主義を取り入れています。
一方、無審査主義の代表国はフランスやイタリアなどが挙げられます。無審査主義の国では、出願の際の形式等に誤りがなければ実体審査を行わずそのまま商標登録されます。実質的な要件はその後異議申立てなどによって決定されます。そのため、審査終了までに期間が短いというメリットがありますが、実体審査が行われていないため、実際の商標の利用に慎重にならないといけません。

このように、国ごとでも商標制度は違うため、登録出願を検討する際はよく確認する必要があります。

3.まとめ

昨今のグローバル化にともない、様々な国の商品やサービスが日本に進出していて、日本からもたくさんの企業が海外へと事業を拡大しています。
せっかく日本で育て上げたブランドイメージも、海外では無効となってしまっては勿体ないことです。

海外での商標権取得を考える際は、商標権を持ちたい国や、その国の商標制度について認識をし、どの出願方法が適切なのかを検討しなければなりません。
日本国内での商標登録よりは少々手間やコストはかかりますが、世界で商標を守っていくことでビジネスの幅も世界へと広げることができるでしょう。

やはり、そのビジネスの将来性を考えながら、どこの国や地域で商標権を取得しておくことが重要か綿密な検討が必要ですね。

2019.02.04

労働者としての性質~請負契約の人に労働基準法が適用される?~

昨今、働き方の多様化や人件費の抑制を理由に、請負契約や業務委託、派遣社員等の雇用ではない社員(以下、「請負・業務委託社員」といいます。)の活用が多くなってきました。
このような働き方をしている社員は、通常自社が直接雇用している労働者ではないのですが、業務の実態によって、「労働者」であるとの主張がなされ、未払い残業代や解雇の無効性を争って紛争に発展する会社が増えてきています。
では、契約上は従業員ではないのに、どういった点で雇用されている従業員だと判断されてしまうのでしょうか?

1.過去の裁判例の分析

過去、さまざまな裁判が行われてきましたが、以下の判例をもとに分析していきたいと思います。

〈内容〉
原告は被告会社と「運送請負契約」を結び配達員として稼働し、かつ被告会社の営業所で所長職に従事していた。(所長職とは、複数名の配達員の中から事業所ごとに1名選出される、被告会社と配達員らの間の窓口となる役職であった。)
原告としては、自身は被告会社の「労働者」であり、所長職の解任や配達員としての稼働停止処分は不当であるとし、解雇無効及び所長解任による賃金減額分の未払い請求を求めた。

〈判決〉
原告と被告会社の間には、配達員としての運送請負契約、所長職に任命する契約関係がそれぞれあったことを認定したうえ、配達員に関する契約は請負契約であるとして稼働停止処分は認められたものの、所長職については、被告会社と指揮命令関係があったとして「労働者」と判断し、賃金減額分の支払を命じた。

≪参考判例 東京地判平成22・4・28労判1010・25≫

今回なぜこのような判決となったかについてですが、いくつか理由が挙げられています。
契約関係においては、配達員としての請負契約は締結していたのですが、所長職に対しての契約は特に結ばれていませんでした。

また、業務の実態においては、①所長職に対する拒否権はなかったこと、②会議等がありそこで原告に対して指示命令がなされていたこと、③営業所内で伝票整理や事務的作業を行うなど場所的拘束があったこと、④所長職を誰かに代理でしてもらうことができる状態でなかったこと等が挙げられました。
そして、過去、所長職手当から源泉徴収がなされたことがあるなど、賃金としての性質を持つ手当の振込みがあったこともあり、以上をもって裁判所としては原告が被告会社の労働者であったと判断し、賃金減額分の支払を命じたのです。

2.判断ポイント

過去、この労働者性というものに関する裁判が多々行われてきており、近年の裁判では、以下の要素をもとに「労働者」か否かの判断が下されています。
(1)仕事の依頼や業務指示に対して拒否する自由があったかどうか
(2)業務における指揮監督関係があったかどうか
(3)時間や場所的自由があったかどうか
(4)職務代行が可能かどうか
(5)報酬が労働の対価となっているのかどうか

(1)仕事の依頼や業務指示に対して拒否する自由があったかどうか

会社と雇用関係にある「労働者」であれば、使用者である会社からの依頼や業務指示に拒否する自由はありません。
しかしながら、請負や業務委託等の契約であれば、その仕事を引き受けるかどうかはその人次第であり、決定権は自身にありますので、指示に対する拒否の自由が判断基準の一つとされています。
ただ、その会社専属の下請業をされている場合は、事実上拒否することは出来ませんので、これだけをもって「労働者」かどうかの判断をされることはありません。

(2)業務における指揮監督関係があったかどうか

指揮監督関係があれば、業務の進め方などで具体的な指示が及ぶことになりますので、そうなると「労働者」と判断されるおそれがあります。
そのため、請負や業務委託等の方への指示は、仕事を依頼している注文者としての立場にとどめ、実際の業務遂行に関しては、本人の裁量に任せるのが望ましいです。
なお、契約した業務内容以外の業務をさせてしまうと、使用者からの指示を受けていると判断される可能性がありますので注意してください。

(3)時間や場所的自由があったかどうか

請負・業務委託社員であれば、仕事をいつ・どこでするのかは個人の裁量に委ねられます。そのため、「労働者」と同じように勤務時間や勤務場所を明確に定めてしまうと、使用者である会社の監督下であると判断される材料となります。
また、会社の全従業員が参加する朝礼等への出席義務も指揮命令関係があると思われてしまいますので、出欠については本人に任せるのが良いでしょう。

(4)職務代行が可能かどうか

請負・業務委託社員は、すべて自身の裁量で決められる個人事業主です。
「労働者」であれば、使用者と指揮監督関係にあり雇用契約となるため、本人に代わって労務の提供をすることは出来ません。
そのため、自身の判断で自身の代わりに業務を提供する人を用意する、つまり労務の代替性が認められているかも判断のポイントとなってきます。

(5)報酬が労働の対価となっているのかどうか

本人へ支払う報酬が労務を提供している時間に応じて金額が決められているのであれば、「労働者」と判断される恐れがあります。
請負や業務委託は、仕事の完成や仕事の処理を目的としているため、一定時間働いたからといって報酬が支払われる訳ではありません。注文を受けた仕事が完成した、契約をたくさんとったなど、成果に対しての報酬となりますので、労働時間とリンクはしません。
そのため、支払われた報酬が時間給で計算されていたり、休んだ分の控除がなされていたりすると、「労働者」と同じく労働時間の提供への対価とみなされる可能性があります。

請負・業務委託社員へは成果に対する報酬、「労働者」へは労働時間に対する報酬ということをきちんと把握し、報酬額を決めるように心がけましょう。

3.まとめ

請負・業務委託社員と「労働者」の違いは、契約関係の違いにとどまらず、実際の業務内容、働き方、報酬などさまざまな要因で判断されます。
また、請負・業務委託社員は自社の「労働者」ではないので、就業規則はもちろんのこと、労働保険や社会保険、退職金制度の適用も出来ません。

トラブルを未然に防ぐためにも、請負・業務委託社員と「労働者」の違いをきちんと理解し、現代社会の多様な働き方のニーズに合わせた対応をしていきましょう。

2019.02.04

マイナンバー制度とわたしたち

これまで、個人の情報は国や地方公共団体などそれぞれの機関内で、住民票コード、基礎年金番号、雇用保険被保険者番号などそれぞれの番号で管理され、個別の情報を照らし合わせる事務に相当の時間と労力が費やされていました。
マイナンバー制度」の導入によって、国や自治体などで管理されている所得や年金、社会保険などが1つの番号で紐付けされます。これにより行政は、事務等の効率化がはかれ、税や社会保険料の適正な徴収などにも役立てられるとともに、国民は公的な手続きにおいて役所などの窓口を訪れる回数が減るというメリットもあります。
行政が個別の情報を照らし合わせる場面にはどのようなものがあり、どんなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

1.わたしたちの国民生活はどう変わる?

みなさん一度は耳にされたことのある「失業保険」は、雇用保険という制度の一つです。雇用保険にはいわゆる失業保険(正式には「求職者給付」の「基本手当」)とは別に、「高年齢雇用継続給付」があり、60歳時に定年となり再雇用となって賃金が下がってしまった場合に、60歳から65歳までの間賃金低下を補填する制度です。
若い世代にはなじみの薄い制度かもしれませんが、60歳~65歳から年金がもらえるというのは、よく見聞きされていると思います。
この「老齢厚生年金」と「高年齢雇用継続給付」が同時に受けられる場合、実はそれぞれを満額で受け取ることはできず、支給調整が行われることとされているのです。

国民は、それぞれの申請の際に、他方の支給を受けていることを自ら申告しなければならず、時には窓口を何度も行き来しなければならないこともありました。
その上、「老齢厚生年金」は日本年金機構が基礎年金番号で、「高年齢雇用継続給付」は都道府県労働局公共職業安定所が雇用保険番号で管理しているため、両者間での情報照会に相当の時間と労力をかけて支給調整事務が行われていました。
今後は、申請書に「マイナンバー」を記載することで国民は同時受給の申告をする必要がないので、国民の利便性の向上がはかられるとともに、照会事務が不要となるため行政の効率化がはかられます。

また、これまで同時に支給を受けてしまっていた場合、不正受給として返還を求められていましたが、これを未然に防ぐことで不正受給返還にかかる事務が削減され行政の効率化がはかられます。
国民にとっても、不知による申告漏れで返還を求められてしまうリスクがなくなり、利便性向上がはかられるとともに、より不正受給のない公平・公正な社会を実現するための社会基盤となると言うことができます。

2.そもそも「マイナンバー」って?

マイナンバー(個人番号)は、赤ちゃんからお年寄りまで、日本国内に住民票のあるすべての方に割り振られる12ケタの個人番号です。
ちなみに「マイナンバー制度」には個人に付番される「個人番号」のほかに、法人に付番される「法人番号」があり、設立登記法人、国の機関、地方公共団体、その他の法人や団体に13ケタの数字で割り当てられます。
この2つの番号には、公開に関し大きな違いがあり、法人番号はだれでも自由に利用することが可能であるのに対し、個人番号は非公開です。

個人情報が漏えいした場合に、なりすましによる被害を受ける可能性があるためで、漏えいに関しては重い罰則規定が設けられています。

3.わたしたち従業員のマイナンバーはどう使われる?

マイナンバーは赤ちゃんからお年寄りまで、と前述しましたが、お子さんが生まれた際、早速健康保険証のため勤務先に申し出て、お子さんを扶養に入れる手続きが必要になります。
平成30年10月より、家族を扶養に入れる手続きには原則マイナンバーが必須となっています。では赤ちゃんのマイナンバーはいつどのようにして分かり、いつ扶養の手続きは可能になるのでしょうか?

実は、マイナンバー通知カードは市町村に出生届が出されてから2週間~1ケ月で国から発送されます。時期の幅は、マイナンバーの振り出しが出生届の受付順に順次行われるためで、たとえばある月にその市町村に生まれた赤ちゃんが多ければ、その市町村の住民であるお子さんのマイナンバー通知カードの発送に時間がかかってしまう仕組みです。
とはいえ、出産された病院から、「お子さんの健康保険証を窓口に出してください」と催促を受けることもあります。
原則マイナンバー必須の例外として、住民票の写しの添付をもって代えることが可能です。ただし、住民票の写し等の交付申請には手数料300円がかかります。

4.わたしたちのマイナンバーを守る企業としての取り組みは?

雇用保険も全国健康保険協会管轄の健康保険も、会社の従業員として加入している制度です。「高年齢雇用継続給付」の申請手続きや扶養に入れる手続きのため、わたしたちのマイナンバーは会社に取得され利用されます。
前述のとおり、情報漏えいに関しては重い罰則規定が設けられていますが、それでは不十分です。
企業はマイナンバーを安全に管理し、外部への漏えいや紛失を防ぐために、「誰が」「どのような事務で」「どのような」マイナンバーを取り扱うかについて措置を検討することが求められます。

そしてこれらを考慮の上、マイナンバーを安全に管理するための方針(基本方針)と、安全に取り扱うためのルール(取扱規定等)を策定し、安全管理措置を講じることが求められます。
これらの企業の取り組みにより、わたしたちのマイナンバーが守られる仕組みになっています。

2019.02.01

【離婚問題】住宅ローンの連帯保証と連帯債務。知っておきたいデメリット

住宅ローンの契約をした時に、夫婦で「主債務者」と「連帯保証人若しくは連帯債務者」の関係となっている場合、離婚したとしても、住宅ローンの完済まで、連帯保証人・連帯債務者の関係は続きます。

この連帯保証・連帯債務の違いや、ローン残債がある場合の名義変更などについて見ていきましょう。

〇住宅ローン控除の違いを確認しましょう

<連帯保証人>
債務者の返済が滞った場合、代わりに返済する義務があります。「連帯して」保証をしているので、催告の抗弁(まずは債務者に請求してくださいと言えること)や検索の抗弁(先に債務者の財産を差し押さえてくださいと言えること)ができません。

<連帯債務者>
連帯債務者は主債務者と連帯して債務を負っています。つまり、連帯債務者は主債務者と同一の立場ということになるため、いつでも金融機関から返済請求を受ける立場にあります。要するに、債務者本人ですね。

連帯保証人、連帯債務者の違いはご理解いただけましたでしょうか?
住宅ローンの契約において、連帯保証、連帯債務のどちらの形式での契約となるかは金融機関によって取り扱いが異なるので、事前によく確認して各々の性質を理解したうえで契約するようにしましょう。

〇所有名義と住宅ローン名義はまるで別物

<ローン残債があるとローン名義の変更はまず無理>
 離婚時に夫婦の共有財産として不動産が存在する場合、財産分与の過程で不動産の名義をどちらにするかを話し合う必要があります。
住宅ローンの残債の無い不動産については、夫婦間の協議によりどちらが不動産を所有するかを決定し、法務局で所有権移転登記を行うことで不動産を取得する側の名義にすることは可能です。
しかし、問題となるのは住宅ローンの残債がある不動産を所有するケースです。

「それは、なんで???」

住宅ローンを借りる際に金融機関と取り交わす「金銭消費貸借契約」…これが厄介なのです。
なぜならば、契約において「住宅ローンの名義を変更する場合は、金融機関の承認を得なければならない」という決まりを設けている場合がほとんどだからです。
金融機関はローン残債がある間は、簡単に名義変更に応じてくれません。

「妻が不動産を取得するので、今後の住宅ローンの支払いも妻が引き受けます。妻が新たに単独で住宅ローンを申し込むので、ローンの名義人である妻へ名義変更するというのはどうですか?」

まず妻に返済基準を満たす収入があるのかが大きな問題となります。
加えて、担保となる自宅があっても、担保に入れる「自宅の時価が住宅ローンの残債を下回る」いわゆるオーバーローンの状態では、住宅ローンの借り換えは難しいのが現状です。

「妻に所有権移転登記だけする!というのはどうですか?」

名義変更することは可能ですが、万が一、住宅ローンの借入先である金融機関に無断で不動産の所有名義を変更したことが知られると、住宅ローンの契約内容によっては契約違反となり一括返済を求められることがあります。

以上の通り、住宅ローンの残債がある不動産の所有名義変更には、一定のハードルがあるのです。

〇離婚破産のカギを握るのは、オーバーローンかアンダーローンか

<八方ふさがりなのはどっち?>
離婚後、家を売却する際に問題になるのが「不動産の価格(時価)」と「住宅ローン残高の有無」です。ここでは、2つのケースが考えられます。

①アンダーローン【不動産の価格(時価)>住宅ローン残高】
②オーバーローン【不動産の価格(時価)<住宅ローン残高】

そもそも、住宅ローンが完済されている場合、不動産の売却益を夫婦間で財産分与の対象とするだけであり、残る問題は売却益を取得する割合の問題だけです。
また、住宅ローンの残高が残っている場合でも、売却する不動産の価値が住宅ローンの残高を上回る場合は、先に述べたアンダーローンの状態となり特に住宅ローンによる問題は発生しません。
不動産の売却後は、売却代金を住宅ローンの残債に充当し、残る売却益を財産分与の対象とすることになります。そのため、離婚に伴って破産に追い込まれる等は起こらないでしょう。

問題となるのは、住宅の価値が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合です。オーバーローンといっても、住宅の価値と住宅ローンの残高の差額により対応は変わってきます。差額が小さく、他の財産で補える状態であれば大きな問題とはなりません。
しかし、差額が大きく、差額を補えるだけの財産を有していない場合には大きな問題となります。このような場合に、住宅ローンの残債を支払い続けることが現実的に難しく、「自己破産」という選択肢を選ばざるを得ないことがあります。

本来、オーバーローンのケースでは、夫婦のどちらかがそのまま住み続け、住宅ローンの支払いを続けることが一般的です。しかし、離婚が前提となっている場合、どちらも「家が必要ない」「家に住みたくない」ということは多々あります。
こうなると、家を売却し住宅ローンの残債だけ残すわけにはいかず、しかし家も必要ないという状況に陥ります。このようなケースでは家を賃貸物件として活用し、賃料収入で毎月の住宅ローンを補おうという方も多いです。
しかし、賃貸として活用するには、事前にリフォーム代として一定額が発生し、その後も長期に及び借り手が現れない、修繕の発生による支出などデメリットも考慮しておかなければなりません。また、住宅ローンの契約内容によっては、賃貸として活用することを禁止している場合もあるため事前の確認が必要です。

よくあるトラブルとしては、「不動産と住宅ローンの名義は夫のまま」で「ローンも夫が支払っていく」が、「家には妻が住み続ける」という状況です。
そもそも、住宅ローンが残る他人名義の家に住むということは、住宅ローンの返済が滞ることにより、実際に住んでいる妻の知らないところで住宅ローンの支払いが滞ることがあり得ますし、それが深刻化して競売に発展することもあります。

また、妻が知らないうちに家を第三者へ売却されてしまい、新たな所有者から急に退去を求められるというケースもあり、常にリスクに脅かされ生活することになります。
そして、妻が連帯保証人若しくは連帯債務者になっている場合、債権者から妻へ対し住宅ローンの残額を一括で請求され、自己破産に陥るという結果に繋がります。
八方ふさがりともいえるようなこのオーバーローン状態が離婚破産に陥る一番の原因です。

〇自己破産してしまったら、人生はどうなってしまう?

<借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度>
「どうしても、住宅ローンが支払えない!」となれば、最終手段は自己破産となります。離婚の話とは少しずれてしまいますが、ここで自己破産についてお話したいと思います。

自己破産とは、借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度です。
破産をするためには、財産があればできないので、基本的に家や車、有価証券、貴金属など一定の価値のある財産は換価され債権者に配当されます。一定額以上の預貯金も債権者への配当の対象となります。

<自己破産のメリットとデメリット>
以下、自己破産のメリットとデメリットです。

●メリット
・免責が得られれば、借金がなくなる(税金等の非免責債権は除く)
・負債を相続人に残さないですむ
・自己破産手続きを代理人に依頼した場合、債権者からの連絡はすべて代理人(弁護士)が受けるので、督促などを受けなくてすむ

●デメリット
・官報に名前と住所が載る
・クレジットカードが使用できなくなる
・信用情報機関に破産の事実が記録される(→通称ブラックリストに載る)
・信用情報が回復するまで新たにローンを作成することが難しくなる
・資産を手放さなければならない
・破産手続き中は一部の仕事に制限がかかる

自己破産をした後は債務もなくなり、普通の生活を送ることには支障がありません。
しかし、長期間に及びローンを組むことが出来ないなど一定の制限はありますので、可能であれば自己破産せざるを得ない状況に陥る前に何らかの対策を講じるべきです。

2019.01.31

経営者が知っておくべき労災保険の基礎知識

労働保険の1つであり、度々耳にする「労災保険」は、経営者であれば必ず理解しておくべき制度です。しかし、「労災保険って具体的にどんな時に適用されるの?」「社長は労災保険に加入できるの?」「労災保険は絶対に加入しないといけないの?」といった疑問を抱いている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
そこで、今回は、経営者の方が知っておくべき労災保険の基礎知識について、詳しく紹介していきます。

1.労災保険とは?

労災保険とは、労働者災害補償保険の略で、労働者の就業中または通勤途中の災害について、労働者やその遺族に対して保険の給付を行うものです。
この災害とは、具体的に、病気や怪我をしたとき、病気や怪我が原因で亡くなったとき、障害が残ったとき、介護を受けるとき、健康診断で異常所見があったときを指します。

労災保険には、労働者ごとではなく、事業主単位で加入することになっており、保険料は全額事業主が負担します。事業主の方の中には、「労災保険に加入すると保険料の出費が増えるけど、怪我をするような業務はないから、入らずに済ませたい」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし労災保険は、正社員・パートタイマ―・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、1人でも労働者を雇用する場合には、加入が義務付けられているのです。

労災保険に加入するためには、所轄の労働基準監督署に、「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を提出する必要があります。
提出期限は、労働保険 保険関係成立届は労働者の採用の日から10日以内、労働保険概算保険料申告書は労働者の採用の日から50日以内となっています。
実際に労働災害が発生してしまった場合の手続きの流れは、労災指定の病院で受診したかそうでないかによって変わってきます。

(1) 労災指定の病院で受診した場合

「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」を病院に提出すれば、原則として自己負担はありません。
そして、提出した請求書を病院が労働基準監督署に提出し、受理・調査された後に、病院に費用が支払われます。

(2) 指定病院以外で受診した場合

一度費用を立て替えて、「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を労働基準監督署に提出します。そして、調査がなされた後に、指定された口座に振り込まれます。

2.社長の労災保険の取扱い

それでは、社長が仕事中に怪我をした場合はどうなるのでしょうか。
労災保険は、名前の通り「労働者」のための保険です。つまり、社長のほか、役員も原則として適用されません。代表取締役も平取締役も、労働者ではなく経営者であるからです。
そして健康保険は、労働災害を対象としていません。ですから、もし労働災害が発生してしまった場合、社長は労災保険・健康保険のいずれも利用することができず、全額を自己負担しなければならないということになります。

ただし、例外として、健康保険の被保険者が5人未満である事業所の代表者であり、一般の従業員と同じような業務に従事している場合には、傷病手当金を除いた健康保険の給付を受けることができます。
また、労働者を1人以上雇用している中小企業について、労働保険事務組合へ事務を委託することで、社長や役員であっても特別に労災保険の加入が認められる「労災保険の特別加入制度」というものもあります。
労災保険に特別加入できる中小企業の要件は、常時使用する労働者の数が、金融業・保険業・不動産業・小売業の場合は50人以下、卸売業・サービス業の場合は100人以下、それ以外の業種の場合は300人以下であることです。

労災保険に特別加入をすると、労働保険料の額に関わらず、3回に分割納付することができます。社長1人だけという場合には加入できませんが、対象となる方々には、労働災害が起きてしまう前に、ぜひこの特別加入制度について検討していただけたらと思います。

3.未加入のリスク

前述のとおり、労災保険は、1人でも労働者を雇用する場合には加入が義務付けられています。では、もし労災保険に未加入のうちに労働災害が発生してしまった場合はどうなるのでしょうか。

結論からいうと、未加入であっても、労働基準監督署に給付を請求することは可能です。ですので、未加入であることによって労働者が不利益を被るということはありません。
ところが、事業主については、遡って保険料を徴収されたり、給付された費用の全部または一部を徴収されたりといったペナルティが課されてしまいます。

経営する上で、保険料の支払いを負担に感じる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、これまでに述べたように、未加入のままにしておくことは大きなリスクを伴います。
加入を怠っていたばかりに莫大な金額を請求されてしまったということを防ぐためにも、雇用形態に関係なく、1人でも労働者を雇用したら、速やかに加入手続きをしましょう。

4.まとめ

今回は、経営者であれば知っておくべき労災保険に関する基礎知識について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
労働災害は突然発生するものです。これを機に労災保険について正しく理解し、万が一の場合に備えていただけたらと思います。

また、労災保険は、経営者・労働者の方々が安心して働くことができる職場環境を整えるための大切な制度です。何か分からないことがある場合には、後回しにせず、社会保険労務士に相談していただくことをお勧めします。

2019.01.30

経営法務リスク~ハラスメントリスクについて~

昨今、メディアでは多くのハラスメント問題が取り上げられ、社会的に注目が集まっています。
ハラスメント問題を放置すると、従業員同士の関係の悪化だけにとどまらず、経営者は被害者から使用者責任又は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の訴訟を提起され、会社の存続を脅かすリスクがあることを忘れてはいけません。
自分の会社には関係のないことだ、たまに社内でハラスメントらしきことが見聞きされるが大丈夫だろうと見過ごし、ハラスメント問題を軽視することはとても危険です。

ハラスメント問題について経営者目線から考えてみましょう。

1.さまざまなハラスメント

パワハラ・セクハラ等の言葉は知っているけれど、どのような事柄がパワハラ・セクハラ等にあたるのか、正しく認識している方は意外と少ないと思われます。まずは、パワハラ・セクハラ等の定義について正しく把握しましょう。以下は、職場で起こりやすいハラスメントの種類について取り上げています。

(1) パワーハラスメント

最近、皆さんがよく耳にするのは「パワハラ」ではないでしょうか。これは「パワーハラスメント」の略語です。パワーハラスメントのパワーは、「力」ではなく「権力」を表しています。
また、ハラスメントとは「嫌がらせ・いじめ」という意味であり、つまり、「権力者によるいじめ」もしくは「権力を利用したいじめ」という意味になります。

一般的に、上司から部下に対して行われることをイメージしがちですが、部下から上司に対してパワハラが行われることもあります。
部下から上司に対して行われる逆パワハラの例としては、業務上適切な指導であったにも関わらず、部下から「人事課に申告するぞ」と脅迫されたり、上司が部下を飲み会に誘った際、飲み会への参加を強要していないにも関わらず、部下から「パワハラだ」と主張されたりするケースがあります。
パワーハラスメントは、業務上の指導に関連していることも多く、指導とパワーハラスメントの線引きが難しいこともあります。

(2) セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントは通称セクハラと呼ばれています。
セクハラは、「労働者」の意に反する「性的な言動」により不利益を受けること、または「性的な言動」により就業環境が害されること、と定義されています。異性間だけではなく、同性に対する行為も含まれます。

(3) マタニティーハラスメント

マタニティーハラスメントはマタハラと略され、一般的に妊娠や出産・育児休業をきっかけに職場内で精神的、肉体的な嫌がらせを受けること、解雇や降格などの不当な扱いを受けることを指します。
なお、妊娠・出産・育児休業の取得を理由として解雇・雇い止め・降格などを行うことは男女雇用機会均等法9条に違反するとして禁止されています。

(4) アルコールハラスメント

アルコールハラスメントは通称アルハラと略され、飲酒を断れない雰囲気を作ったうえで強要してアルコールを飲ませる行為を指します。
例えば、一気飲みをした人が急性アルコール中毒になってしまった場合、一気飲みを強要した人は勿論、一気飲みを止めなかった人についても傷害罪の共犯や幇助犯として罪に問われる可能性があります。
酒席を盛り上げるためという理由で許されるものではないので充分に注意しましょう。

2.加害者や使用者が問われる責任とは?

普段から意識して働いている方は少ないですが、実は労働者も法律により職場の秩序を遵守する義務があり、また、経営者には職場環境配慮義務が定められており、物理的な明るさや騒音などから働く人同士の人間関係など精神的なものまで配慮が必要です。
つまり、労働者も経営者もお互いに快適な職場づくりを目指す義務が定められています。
ハラスメントに及ぶということは、加害者、経営者ともに各々の義務を履行していないことになり、加害者は、ハラスメントにより被害を受けた人から損害賠償を請求され、名誉棄損罪(3年以下の懲役若しくは禁固または50万円以下の罰金)、傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)などの刑事事件に発展する可能性もあります。
また、会社は使用者責任若しくは安全配慮義務違反等に基づき損害賠償を請求されることがあります。

3.経営者視点から考えるハラスメント対策

ハラスメント問題は、職場環境の悪化を通じて企業経営に大きな損失をもたらすことがあります。
それでは、ハラスメント問題の発生原因をなくすために、経営者は日ごろから、どのようなことに努めると良いのでしょうか。

次に、経営者が講ずべきハラスメント対策をまとめました。

  1. ① 経営者の方針を明確にし、労働者に対して、周知・啓発を行う。
    ② 加害者に対し、厳正に対処する旨を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含むすべての労働者に周知・啓発を行う。
    ③ 相談窓口を定める。
    ④ 相談窓口の担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるよう整備する。
    ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する。
    ⑥ 事実関係確認後、速やかに被害者に対して配慮の措置を適正に行う。
    ⑦ 事実関係確認後、加害者に対する措置を適正に行う。
    ⑧ 再発防止に向けた措置を講ずる。(事実が確認できなかった場合も同様に行う。)
    ⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知する。
    ⑩ 相談したことや、事実関係の確認に協力したこと等を理由にして、不利益な扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発を行う。

ハラスメントの防止効果を高めるためには、日頃から労働者のハラスメント問題に対する意識啓発に取り組み、相談しやすい窓口を設けることや、職場環境の点検を行うことが大切です。

経営者はハラスメント問題を個人の問題としてではなく、会社組織の問題として捉え、ハラスメント問題を未然に防ぐ土壌・職場環境づくりに取り組むことが大切になります。

 

4.まとめ

経営者は、大切な「人財」の流出や従業員のモチベーションの低下を防ぎ、労働者が十分に能力を発揮できるよう、法に沿った対策は勿論、自社に合う効果的な対策に継続的に取り組むことが大切です。
職場の秩序を保ち、個人の尊厳が尊重されるような、健全な職場づくりを目指していきましょう。

2019.01.29

知っていれば役に立つ!経費のこと

仕事をしているとよく耳にする「経費」という言葉。
これって何のことか、知っていますか?

1.そもそも経費って?

いきなりですが皆さん、経費って何だと思いますか?
接待に使った食事代、会社で必要なパソコン代等、仕事中、よく耳にするこの経費という言葉・・・。そう!支払ったお金のことです!
しかし、実はこの支払ったお金には2種類あって、それが「資産」と「費用」に分かれます。
まずは、「資産」について。
これは簡単に言うと目に見えるものです。つまり、形があって効用が継続するものになります。
目に見えるものということは、先程でてきたパソコンは、資産になります。もちろん、パソコンを買うためにはお金が必要ですが、私たちは、お金を払う代わりに、パソコンという資産を手にいれるのです。

それに対して「費用」は、お金を払っても別のものは何も手に入りません。
例えば電車代。業務の中でどこかに出かけることがあると思います。その時会社から目的地まで移動をするためにお金を払うのですが、「資産」のように目に見えるものは何も手に入りません。手に入っているのは、電車に乗って移動するという効用であり、効用は電車を降りた時点で残っていません。こちらの「費用」が、みなさんがよく耳にしている一般的に「経費」と呼ばれるもののことなのです。

以上のことをまとめると・・・
「資産」=お金を払う代わりに「目に見えるもの」が手に入る
「費用」=お金だけが減り、「目に見えるもの」が手に入らない
ということになります。

知っていれば役に立つ!経費のこと

2.「経費」にするメリット

1で、支払ったお金には2種類あることをお話ししました。
しかし、この支払ったお金が「資産」か「経費」、このどちらにあてはまるかなんて、そんなに重要なのでしょうか。
1を読むと、お金が無くなるだけの経費よりも、お金を払う代わりに別のものが手に入る資産が多い方が、会社にとっては良いように感じます。
けれど、税金のことを考えれば、資産よりも経費になったほうが良いのです。
税金は、商売をしていくうえで、必ずついてくるものであり、会社にとってコストのひとつになります。コストとなるのなら、可能な限り安く抑えたいというのはみなさん同じですよね。
そんな税金は、基本的には利益に対して課税されます。つまり、税金のことを考えれば、経費が増えた方が良く、経費が増えると、利益が小さくなる、すると支払う税金が少なくなる、ということになります。

では、税金を安く抑えたいからと言って、お金だけが減り、目に見えるものが手に入らないものすべてを経費にしてもいいのでしょうか?
実は、これだけでは経費にすることができません。利益というのは、売上から経費を引いたものになるので、この2つは対応していなければなりません。対応というのは、ただ経費をつかうのではなく、「売り上げをあげるため」に「経費」を使う、ということです。
例えば、住宅兼店舗の場合の光熱費。この場合は、売り上げに必要な店舗で使った分の光熱費のみを経費とすることができます。
以上のことから、経費にするためには、売上との対応関係は必ず必要だということが分かったかと思います。

3.経費にもなる資産

2で、経費は売り上げをあげるために使ったものとお話ししましたが、そう考えるとパソコンや机などの資産も売り上げをあげるために使っているものと考えることができます。
では、これらは資産だけでなく経費にもなるのでしょうか?
答えは「なる」です。そうすると、資産と経費に分ける必要なんてないのではないか?と考えますよね。けれど、分けなければならない理由がきちんとあって、その理由が、資産は何年も使えるからなのです。
例えば「パソコン」。これは、買った時だけでなく、何年も売上をあげるために使用しているため、経費とも言えます。つまり、パソコンがある限り売上との対応関係は続いていくことになります。

それでは、具体的にどのようにして資産を経費にするのでしょうか?
手順として、まずはパソコンをいったん資産にします。そこから、その年の売り上げをあげるために使用した分だけをその年の経費にして、毎年少しずつに分けて経費にしていきます。これを減価償却といいます。
1度に経費にするのではなく、毎年少しずつ経費にしていくことで、資産を経費にしていくのですが、何年間経費として使えるのか、これは誰にも分かりません。長く使えるかもしれませんし、すぐに壊れてしまって、使えなくなるかもしれないのです。
このように、どれくらい使えるかというのは誰にも分らないため、目安としての期間が法律で定められており、これを耐用年数と呼びます。これは国税庁のホームページから知ることができるので、是非参考にしてみてください。

4.まとめ

今回は、経費とはそもそも何か、経費にするメリット、経費と資産との関係についてお話ししました。
仕事をしていくうえで経費は切っても切れないものですし、知っているか知らないかで大きく変わってくるものだと思いますので、この記事を読んだことを機に、少しでも多くの経費に対する知識を身につけて、これから役立てていただければと思います。

2019.01.23

商標登録ってどうやるの?

普段私たちが目にするブランドのマークや、商品名(=ネーミング)などは「商標権を獲得」=商標登録することによって、そのブランドの価値や、商品の持つイメージの独自性が保たれています。
商標権の獲得は早い者勝ちなので、売り出したい商標が決まったら、すぐに商標を出願するのがおすすめです。
今回は、商標登録に関係が深い士業である「弁理士」、商標登録の手順、そして最後に私たちも日常の中でやってしまっているかもしれない商標権の侵害について説明していきたいと思います。

1.商標登録と弁理士

知的財産権のうち、産業財産権に分類される商標権は、特許庁で管理されています。
ですから、私たちがよく知るブランドのロゴや、商品のデザインなど、様々な商標はみな特許庁に商標登録の申請をし、申請承認されることで守られているのです。
「特許」や「権利取得」と聞くととても専門的な響きがして、複雑な行程を踏まないといけないのでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし、実は出願の手続き自体は、所定の様式の書類を記入し、印紙を貼りつけて提出するだけなので、個人で申請することも可能です。

知識や下準備不足で商標登録の申請をした場合、既に同一・類似商標が登録されていたり、不備があると申請が拒絶されたりすることもあり得ます。
こういった事態を自分の力で防ごうとすると、時間や労力がかかってしまいます。また、新たに申請をするとなるとさらに費用もかかります。

そこで登場するのが「弁理士」です。
弁理士とは産業財産権にかかわる全ての事務手続きを代理で行う事ができる国家資格所有者のことです。商標登録代行は弁理士の独占業務です。専門知識のもと、一連の業務をすべて代理で行ってくれるので、自力でやるより時間や労力が省けます。
また申請が拒絶されるリスクもぐっと下がるでしょう。依頼するとなると、費用こそかかりますが、1回の申請で審査に通り、申請費用が無駄にならないと考えると高くはないでしょう。

2.商標登録のステップ

先ほど、登録申請には下準備が必要だと述べましたが、商標登録の申請から承認までには具体的にどのようなステップがあるのかを見ていきたいと思います。
大まかな流れは、①先行商標調査 ②出願 ③審査 ④登録となります。

① 先行商標調査

先行商標調査は商標登録をする上で一番大切なステップです。
先ほど述べた通り、先行商標調査では、自分が登録申請しようとしている商標と同一・類似のものが存在しないかを調べます。
もし既に登録してあることが分かれば、見込みのない出願をしないで済みます。確認がとれたら、商標の区分、指定商品、指定役務(役務=サービス)を検討します。

例えば、文具メーカーが、ボールペンの名称を登録出願する際は、
【第16類】(主に文房具が属する分類)、
【指定商品・指定役務】ボールペン
と設定することが考えられます(一例)。

商標登録の出願は、「商標登録を受けようとする商標(=マーク・ネーミング)」と共に、指定商品・指定役務その商品を使用する区分を指定しなければならないのです。

② 出願

登録したい商標が他と被っていないと判明し、区分の指定も完了したら、いよいよ出願です。
出願は、書類での出願とインターネットでの出願の2種類があります。
今回は主流である書類での出願の流れについて説明します。
 (1)  商標登録願の作成を行います。様式が決まっているのでそれに沿って作成します。
 (2) 「特許印紙」を購入し指定の箇所に貼り付けます。
 (3)  特許庁に提出します(窓口へ直接持参もしくは郵送でも可能です。)
 (4)  電子化手数料の納付(出願後払込用紙が送付されて来ます。)
以上が出願の行程です。

③ 審査

出願後、審査には半年から1年程の時間を要します。特許庁には日々膨大な量の商標登録出願があり、それらを順番に審査していかなければならないからです。
時間を要するので、思い立ったらすぐに出願に取り掛かるのがおすすめです。

特許庁による審査後、問題がなければ登録査定がなされます。一方、何か問題があり登録できない場合は、その旨「拒絶理由通知」で知らされます。ここで「意見書・補正書」を提出し拒絶理由が解消されれば登録査定、解消されなければ拒絶査定となってしまいます。

④ 登録

登録査定が出たのち、所定の登録料を特許庁に納めると、登録が完了し晴れて、商標権が発生します。登録料の納付から約1か月で登録証が送られてきます。これにて一連の手続きは終了です。
また、期間は10年間なので、10年ごとに更新をすることで半永久的にその効力が持続します。

3.身近な商標権侵害

最後に、私たちが日常でやってしまうかもしれない、身近に潜む商標権侵害についてお話ししたいと思います。

たとえば、ブランドのロゴ(商標権取得済)が入っている洋服をリメイクして販売することは商標権侵害になりかねません。ブランドのロゴを使うという事は、そのブランドの効果を狙っていると考えられるからです。
また、ブランドが出している生地(商標権取得済)を使って洋服を手作りしたとします。その洋服をフリーマーケットで販売するというのはどうなのでしょうか?
こちらに関しては、各ブランドで方針が分かれます。
「〇〇(ブランド名)の生地を使用しています」と表記するのであれば商業利用するのは構わない、としているところもあります。一方で、「当ブランドの生地を商業利用することは固くお断りします」としているブランドもあります。

一様ではないので、「商売」をする際は他人の権利を侵害していないかを十分に調べた上で行わなければならないでしょう。

4.さいごに

以上のように、商標権とは容易に申請可能で、近年の企業では本当に多く活用されています。つまり、毎年どんどん多くの商標登録がされている以上、世の中での商標権侵害の可能性が高まっている状況にあります。

今後、商標を活用しながらビジネスを行おうとする場合、商標権侵害のトラブルに気付かぬ内に巻き込まれてしまう可能性がありますので、弁護士へ相談しながら進めることが最善でしょう。
また、個人の生活においても、商標権の侵害は起こり得ます。個人での商売だからと安心していると思わぬ事態になりかねないので、十分に注意しなければなりません。

2019.01.21

【離婚問題】共有名義は離婚を境に、共「憂」名義になる

夫婦共同での住宅購入後に離婚した場合、それまで払い続けていた住宅ローンはどうなるのでしょうか。
また、どちらかが再婚した後に死亡してしまった場合や、連帯保証人のしくみについても詳しくご説明します。

1.共有名義人双方の承諾がなければ、不動産を売却できない??

夫婦がそれぞれ資金を出し合い、住宅ローンを借り入れて住宅を購入した場合、その土地と建物は二人の「共有名義」になります。

この場合の大きなメリットは2つ。
1. 夫婦の収入を合算することで多くのお金を借りられる(やはり、収入が多いほど多くの借入ができるものです。)
2. 購入価格の一定割合を税額控除される「住宅ローン控除」「住宅売却の3,000万円の特別控除」の優遇を二重に受けられる

しかし、共有名義にしたばっかりに、これが離婚後、大きな問題を引き起こすこともあります・・・。

 「大きな問題って!?」

例えば、夫婦のどちらか一方が仕事を辞め、収入がなくなれば、辞めた方は所得がなくなりますので、所得税が発生しなくなります。そうなると、所得税が発生しない以上、住宅ローン控除を受ける余地がなくなりますので、節税のために連帯債務にした恩恵が受けられません。
妻が出産や育児で仕事を辞めるケースが考えられますが、これは予測の範囲内、つまり「通常のデメリット」です。この「通常のデメリット」をはるかに超える問題・・・。
それが、離婚で不動産を売却する場合です。

なかなか知られていないのですが、実は、共有名義の不動産は「夫」と「妻」の両方の承諾がないと売却することができないのです!

【両方の承諾が得られないケース】
① 夫は不動産を売却して得たお金を財産分与として分け合いたい、妻は慣れた家に住み続けたい、と主張しもめている
② どちらかの失踪などで、連絡が取れず、承諾を得ることができない
③ 夫が浮気をし、離婚することになったが、妻が自宅に居座っている

ケース③については、売却益を分与する方が得策ですが、夫への恨みがつのっている妻は頑として、売却に同意しないという場合です。売却までの時間が長引けば、その分、不動産の価値も下がり、この状況が長引いている間にも住宅ローンは返済しなければなりません。
夫と妻の両方から承諾を得ることは簡単なようですが、そううまくいかないのが現状です。

 

2.もし、どちらかが再婚した後、亡くなってしまったら・・・

もし、共有状態のままで離婚し、その後に再婚や相続、借金や納税の問題が生じると、予期せぬ問題が浮上することがあります。
離婚後、どちらかが再婚し、死亡してしまえば、「共有持分」が複数の人に相続される可能性があります。また、住宅ローン完済後であっても、元配偶者が共有持分を担保にして、借金をしたり、税金の滞納をしたりすれば、突然差し押さえられる危険性もあります。

このように問題が起こってしまうと、メリットのある共有名義が、デメリットしかない共「憂」名義になってしまうのです。

 

3.離婚して初めて知る…「自分は連帯保証人だった!!」

「名義変更すれば、連帯保証人が外れるんじゃないの??」

名義変更で連帯保証人が外れることは・・・「ありません!」
また、連帯債務者だった人が名義変更をしたからといって、連帯債務者から外れることは・・・「ありません!」

なぜなら、連帯保証人は「主債務者」を保証する立場にあり、連帯債務者は債務者としての立場にあるため、主債務者の返済が滞ったり、もう一方の連帯債務者の返済が滞った場合に金融機関から返済請求を受けるようになるからです。
例えば、夫が主債務者として住宅ローンを組み、妻が連帯保証人になっているケースでは、夫の返済が滞れば、連帯保証人である妻に返済の義務生じます。また、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組む場合、夫婦共に連帯債務者になっているケースがほとんどです。

もし、あなたが、元夫と離婚をし、再婚した夫と新しい家庭を築き、幸せに暮らしていたとしても、元夫が何らかの理由でローンが返せなくなった場合、突然あなたの元に請求書が届くことがあるのです。
そして、あなたは初めて気づくのです。「自分は連帯保証人であった」「自分も連帯債務者であった」と。
離婚したからと言って、連帯保証や連帯債務がなくなることはありません。

「離婚する時に、家の名義を夫に財産分与して、自分の名義を外れたら、住宅ローンの連帯保証も自動的に外れるのではないの???」

そう思われる方も多いかもしれませんが、実際はそうではなく、連帯保証人や連帯債務者であることは、変わらないのです!!

「離婚したのに、連帯保証が外れないなんて納得できない!」

残念ながら、これは、法律で定められた日本の連帯保証制度なので、どうすることもできません。連帯保証が解除されるのはローンが完済されたときです。

返済中に連帯保証を外すには、住宅ローンを借りている金融機関の同意を得る、同等以上の連帯保証人を立てる、ローンを完済、もしくは完済に近い金額を一括返済する等方法はあるにはありますが、債権者である金融機関の同意が必要で、その同意を得るのはとてもハードルが高いというのが現実です。
金融機関からすれば、離婚したことは関係のない事情であり、離婚を理由に連帯保証人や連帯債務者から外してあげるメリットがないからです。
一方で、ローンを支払っていくどちらかが、住宅ローン残高分全額の借り換えができれば連帯保証債務はなくなります。つまり、違うローンに乗り換える、ということです。しかし、これも物件の担保価値が低ければ、借り換えはかなり厳しいのが現実です。

「だったら、売却する方が、全額返済となって、スッキリするのでは??」

ここで問題となるのが、ローン残高が物件価値を上回っている(つまり、オーバーローン状態の)場合です。この場合、売却代金でローンの完済ができないため、住宅ローンを担保するために付けられていた抵当権を抹消することができません。
そうなると、新しい買主は抵当権付の不動産など購入するはずもありませんから、現実的には売却することができないのです。

金融機関の保証債務免責も無理!
借り換えも無理!!
オーバーローン分を一括で支払えないから売却も無理!!!・・・となると、そのままの状態でローンを払い続けていくしかないのです・・・。
こうなると数年後には破綻しかねないというリスクができてしまいます。

そんな重要な「連帯保証人」なのに、なぜ当事者は連帯保証人になっていることに対する自覚がないのでしょうか。
実際は「自覚がない」のではなく、「忘れてしまっている」ことの方が多いのです。それは、仕方ないことなのかもしれません。結婚した時は、まさか自分が将来離婚するなんて想像しませんし、マイホームを買う時は、希望や高揚感からリスクを考えずに、金融機関や不動産業者に言われるがまま、印をついてしまうのです。
一度、ご自宅の名義や住宅ローン契約者、連帯保証人など、整理して確認してみることをお勧めします。

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