【離婚問題】住宅ローンの連帯保証と連帯債務。知っておきたいデメリット
住宅ローンの契約をした時に、夫婦で「主債務者」と「連帯保証人若しくは連帯債務者」の関係となっている場合、離婚したとしても、住宅ローンの完済まで、連帯保証人・連帯債務者の関係は続きます。
この連帯保証・連帯債務の違いや、ローン残債がある場合の名義変更などについて見ていきましょう。
〇住宅ローン控除の違いを確認しましょう
<連帯保証人>
債務者の返済が滞った場合、代わりに返済する義務があります。「連帯して」保証をしているので、催告の抗弁(まずは債務者に請求してくださいと言えること)や検索の抗弁(先に債務者の財産を差し押さえてくださいと言えること)ができません。
<連帯債務者>
連帯債務者は主債務者と連帯して債務を負っています。つまり、連帯債務者は主債務者と同一の立場ということになるため、いつでも金融機関から返済請求を受ける立場にあります。要するに、債務者本人ですね。
連帯保証人、連帯債務者の違いはご理解いただけましたでしょうか?
住宅ローンの契約において、連帯保証、連帯債務のどちらの形式での契約となるかは金融機関によって取り扱いが異なるので、事前によく確認して各々の性質を理解したうえで契約するようにしましょう。
〇所有名義と住宅ローン名義はまるで別物
<ローン残債があるとローン名義の変更はまず無理>
離婚時に夫婦の共有財産として不動産が存在する場合、財産分与の過程で不動産の名義をどちらにするかを話し合う必要があります。
住宅ローンの残債の無い不動産については、夫婦間の協議によりどちらが不動産を所有するかを決定し、法務局で所有権移転登記を行うことで不動産を取得する側の名義にすることは可能です。
しかし、問題となるのは住宅ローンの残債がある不動産を所有するケースです。
「それは、なんで???」
住宅ローンを借りる際に金融機関と取り交わす「金銭消費貸借契約」…これが厄介なのです。
なぜならば、契約において「住宅ローンの名義を変更する場合は、金融機関の承認を得なければならない」という決まりを設けている場合がほとんどだからです。
金融機関はローン残債がある間は、簡単に名義変更に応じてくれません。
「妻が不動産を取得するので、今後の住宅ローンの支払いも妻が引き受けます。妻が新たに単独で住宅ローンを申し込むので、ローンの名義人である妻へ名義変更するというのはどうですか?」
まず妻に返済基準を満たす収入があるのかが大きな問題となります。
加えて、担保となる自宅があっても、担保に入れる「自宅の時価が住宅ローンの残債を下回る」いわゆるオーバーローンの状態では、住宅ローンの借り換えは難しいのが現状です。
「妻に所有権移転登記だけする!というのはどうですか?」
名義変更することは可能ですが、万が一、住宅ローンの借入先である金融機関に無断で不動産の所有名義を変更したことが知られると、住宅ローンの契約内容によっては契約違反となり一括返済を求められることがあります。
以上の通り、住宅ローンの残債がある不動産の所有名義変更には、一定のハードルがあるのです。
〇離婚破産のカギを握るのは、オーバーローンかアンダーローンか
<八方ふさがりなのはどっち?>
離婚後、家を売却する際に問題になるのが「不動産の価格(時価)」と「住宅ローン残高の有無」です。ここでは、2つのケースが考えられます。
②オーバーローン【不動産の価格(時価)<住宅ローン残高】
そもそも、住宅ローンが完済されている場合、不動産の売却益を夫婦間で財産分与の対象とするだけであり、残る問題は売却益を取得する割合の問題だけです。
また、住宅ローンの残高が残っている場合でも、売却する不動産の価値が住宅ローンの残高を上回る場合は、先に述べたアンダーローンの状態となり特に住宅ローンによる問題は発生しません。
不動産の売却後は、売却代金を住宅ローンの残債に充当し、残る売却益を財産分与の対象とすることになります。そのため、離婚に伴って破産に追い込まれる等は起こらないでしょう。
問題となるのは、住宅の価値が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合です。オーバーローンといっても、住宅の価値と住宅ローンの残高の差額により対応は変わってきます。差額が小さく、他の財産で補える状態であれば大きな問題とはなりません。
しかし、差額が大きく、差額を補えるだけの財産を有していない場合には大きな問題となります。このような場合に、住宅ローンの残債を支払い続けることが現実的に難しく、「自己破産」という選択肢を選ばざるを得ないことがあります。
本来、オーバーローンのケースでは、夫婦のどちらかがそのまま住み続け、住宅ローンの支払いを続けることが一般的です。しかし、離婚が前提となっている場合、どちらも「家が必要ない」「家に住みたくない」ということは多々あります。
こうなると、家を売却し住宅ローンの残債だけ残すわけにはいかず、しかし家も必要ないという状況に陥ります。このようなケースでは家を賃貸物件として活用し、賃料収入で毎月の住宅ローンを補おうという方も多いです。
しかし、賃貸として活用するには、事前にリフォーム代として一定額が発生し、その後も長期に及び借り手が現れない、修繕の発生による支出などデメリットも考慮しておかなければなりません。また、住宅ローンの契約内容によっては、賃貸として活用することを禁止している場合もあるため事前の確認が必要です。
よくあるトラブルとしては、「不動産と住宅ローンの名義は夫のまま」で「ローンも夫が支払っていく」が、「家には妻が住み続ける」という状況です。
そもそも、住宅ローンが残る他人名義の家に住むということは、住宅ローンの返済が滞ることにより、実際に住んでいる妻の知らないところで住宅ローンの支払いが滞ることがあり得ますし、それが深刻化して競売に発展することもあります。
また、妻が知らないうちに家を第三者へ売却されてしまい、新たな所有者から急に退去を求められるというケースもあり、常にリスクに脅かされ生活することになります。
そして、妻が連帯保証人若しくは連帯債務者になっている場合、債権者から妻へ対し住宅ローンの残額を一括で請求され、自己破産に陥るという結果に繋がります。
八方ふさがりともいえるようなこのオーバーローン状態が離婚破産に陥る一番の原因です。
〇自己破産してしまったら、人生はどうなってしまう?
<借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度>
「どうしても、住宅ローンが支払えない!」となれば、最終手段は自己破産となります。離婚の話とは少しずれてしまいますが、ここで自己破産についてお話したいと思います。
自己破産とは、借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度です。
破産をするためには、財産があればできないので、基本的に家や車、有価証券、貴金属など一定の価値のある財産は換価され債権者に配当されます。一定額以上の預貯金も債権者への配当の対象となります。
<自己破産のメリットとデメリット>
以下、自己破産のメリットとデメリットです。
●メリット
・免責が得られれば、借金がなくなる(税金等の非免責債権は除く)
・負債を相続人に残さないですむ
・自己破産手続きを代理人に依頼した場合、債権者からの連絡はすべて代理人(弁護士)が受けるので、督促などを受けなくてすむ
●デメリット
・官報に名前と住所が載る
・クレジットカードが使用できなくなる
・信用情報機関に破産の事実が記録される(→通称ブラックリストに載る)
・信用情報が回復するまで新たにローンを作成することが難しくなる
・資産を手放さなければならない
・破産手続き中は一部の仕事に制限がかかる
自己破産をした後は債務もなくなり、普通の生活を送ることには支障がありません。
しかし、長期間に及びローンを組むことが出来ないなど一定の制限はありますので、可能であれば自己破産せざるを得ない状況に陥る前に何らかの対策を講じるべきです。
経営者が知っておくべき労災保険の基礎知識
労働保険の1つであり、度々耳にする「労災保険」は、経営者であれば必ず理解しておくべき制度です。しかし、「労災保険って具体的にどんな時に適用されるの?」「社長は労災保険に加入できるの?」「労災保険は絶対に加入しないといけないの?」といった疑問を抱いている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
そこで、今回は、経営者の方が知っておくべき労災保険の基礎知識について、詳しく紹介していきます。
1.労災保険とは?
労災保険とは、労働者災害補償保険の略で、労働者の就業中または通勤途中の災害について、労働者やその遺族に対して保険の給付を行うものです。
この災害とは、具体的に、病気や怪我をしたとき、病気や怪我が原因で亡くなったとき、障害が残ったとき、介護を受けるとき、健康診断で異常所見があったときを指します。
労災保険には、労働者ごとではなく、事業主単位で加入することになっており、保険料は全額事業主が負担します。事業主の方の中には、「労災保険に加入すると保険料の出費が増えるけど、怪我をするような業務はないから、入らずに済ませたい」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし労災保険は、正社員・パートタイマ―・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、1人でも労働者を雇用する場合には、加入が義務付けられているのです。
労災保険に加入するためには、所轄の労働基準監督署に、「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を提出する必要があります。
提出期限は、労働保険 保険関係成立届は労働者の採用の日から10日以内、労働保険概算保険料申告書は労働者の採用の日から50日以内となっています。
実際に労働災害が発生してしまった場合の手続きの流れは、労災指定の病院で受診したかそうでないかによって変わってきます。
(1) 労災指定の病院で受診した場合
「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」を病院に提出すれば、原則として自己負担はありません。
そして、提出した請求書を病院が労働基準監督署に提出し、受理・調査された後に、病院に費用が支払われます。
(2) 指定病院以外で受診した場合
一度費用を立て替えて、「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を労働基準監督署に提出します。そして、調査がなされた後に、指定された口座に振り込まれます。
2.社長の労災保険の取扱い
それでは、社長が仕事中に怪我をした場合はどうなるのでしょうか。
労災保険は、名前の通り「労働者」のための保険です。つまり、社長のほか、役員も原則として適用されません。代表取締役も平取締役も、労働者ではなく経営者であるからです。
そして健康保険は、労働災害を対象としていません。ですから、もし労働災害が発生してしまった場合、社長は労災保険・健康保険のいずれも利用することができず、全額を自己負担しなければならないということになります。
ただし、例外として、健康保険の被保険者が5人未満である事業所の代表者であり、一般の従業員と同じような業務に従事している場合には、傷病手当金を除いた健康保険の給付を受けることができます。
また、労働者を1人以上雇用している中小企業について、労働保険事務組合へ事務を委託することで、社長や役員であっても特別に労災保険の加入が認められる「労災保険の特別加入制度」というものもあります。
労災保険に特別加入できる中小企業の要件は、常時使用する労働者の数が、金融業・保険業・不動産業・小売業の場合は50人以下、卸売業・サービス業の場合は100人以下、それ以外の業種の場合は300人以下であることです。
労災保険に特別加入をすると、労働保険料の額に関わらず、3回に分割納付することができます。社長1人だけという場合には加入できませんが、対象となる方々には、労働災害が起きてしまう前に、ぜひこの特別加入制度について検討していただけたらと思います。
3.未加入のリスク
前述のとおり、労災保険は、1人でも労働者を雇用する場合には加入が義務付けられています。では、もし労災保険に未加入のうちに労働災害が発生してしまった場合はどうなるのでしょうか。
結論からいうと、未加入であっても、労働基準監督署に給付を請求することは可能です。ですので、未加入であることによって労働者が不利益を被るということはありません。
ところが、事業主については、遡って保険料を徴収されたり、給付された費用の全部または一部を徴収されたりといったペナルティが課されてしまいます。
経営する上で、保険料の支払いを負担に感じる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、これまでに述べたように、未加入のままにしておくことは大きなリスクを伴います。
加入を怠っていたばかりに莫大な金額を請求されてしまったということを防ぐためにも、雇用形態に関係なく、1人でも労働者を雇用したら、速やかに加入手続きをしましょう。
4.まとめ
今回は、経営者であれば知っておくべき労災保険に関する基礎知識について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
労働災害は突然発生するものです。これを機に労災保険について正しく理解し、万が一の場合に備えていただけたらと思います。
また、労災保険は、経営者・労働者の方々が安心して働くことができる職場環境を整えるための大切な制度です。何か分からないことがある場合には、後回しにせず、社会保険労務士に相談していただくことをお勧めします。
経営法務リスク~ハラスメントリスクについて~
昨今、メディアでは多くのハラスメント問題が取り上げられ、社会的に注目が集まっています。
ハラスメント問題を放置すると、従業員同士の関係の悪化だけにとどまらず、経営者は被害者から使用者責任又は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の訴訟を提起され、会社の存続を脅かすリスクがあることを忘れてはいけません。
自分の会社には関係のないことだ、たまに社内でハラスメントらしきことが見聞きされるが大丈夫だろうと見過ごし、ハラスメント問題を軽視することはとても危険です。
ハラスメント問題について経営者目線から考えてみましょう。
1.さまざまなハラスメント
パワハラ・セクハラ等の言葉は知っているけれど、どのような事柄がパワハラ・セクハラ等にあたるのか、正しく認識している方は意外と少ないと思われます。まずは、パワハラ・セクハラ等の定義について正しく把握しましょう。以下は、職場で起こりやすいハラスメントの種類について取り上げています。
(1) パワーハラスメント
最近、皆さんがよく耳にするのは「パワハラ」ではないでしょうか。これは「パワーハラスメント」の略語です。パワーハラスメントのパワーは、「力」ではなく「権力」を表しています。
また、ハラスメントとは「嫌がらせ・いじめ」という意味であり、つまり、「権力者によるいじめ」もしくは「権力を利用したいじめ」という意味になります。
一般的に、上司から部下に対して行われることをイメージしがちですが、部下から上司に対してパワハラが行われることもあります。
部下から上司に対して行われる逆パワハラの例としては、業務上適切な指導であったにも関わらず、部下から「人事課に申告するぞ」と脅迫されたり、上司が部下を飲み会に誘った際、飲み会への参加を強要していないにも関わらず、部下から「パワハラだ」と主張されたりするケースがあります。
パワーハラスメントは、業務上の指導に関連していることも多く、指導とパワーハラスメントの線引きが難しいこともあります。
(2) セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメントは通称セクハラと呼ばれています。
セクハラは、「労働者」の意に反する「性的な言動」により不利益を受けること、または「性的な言動」により就業環境が害されること、と定義されています。異性間だけではなく、同性に対する行為も含まれます。
(3) マタニティーハラスメント
マタニティーハラスメントはマタハラと略され、一般的に妊娠や出産・育児休業をきっかけに職場内で精神的、肉体的な嫌がらせを受けること、解雇や降格などの不当な扱いを受けることを指します。
なお、妊娠・出産・育児休業の取得を理由として解雇・雇い止め・降格などを行うことは男女雇用機会均等法9条に違反するとして禁止されています。
(4) アルコールハラスメント
アルコールハラスメントは通称アルハラと略され、飲酒を断れない雰囲気を作ったうえで強要してアルコールを飲ませる行為を指します。
例えば、一気飲みをした人が急性アルコール中毒になってしまった場合、一気飲みを強要した人は勿論、一気飲みを止めなかった人についても傷害罪の共犯や幇助犯として罪に問われる可能性があります。
酒席を盛り上げるためという理由で許されるものではないので充分に注意しましょう。
2.加害者や使用者が問われる責任とは?
普段から意識して働いている方は少ないですが、実は労働者も法律により職場の秩序を遵守する義務があり、また、経営者には職場環境配慮義務が定められており、物理的な明るさや騒音などから働く人同士の人間関係など精神的なものまで配慮が必要です。
つまり、労働者も経営者もお互いに快適な職場づくりを目指す義務が定められています。
ハラスメントに及ぶということは、加害者、経営者ともに各々の義務を履行していないことになり、加害者は、ハラスメントにより被害を受けた人から損害賠償を請求され、名誉棄損罪(3年以下の懲役若しくは禁固または50万円以下の罰金)、傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)などの刑事事件に発展する可能性もあります。
また、会社は使用者責任若しくは安全配慮義務違反等に基づき損害賠償を請求されることがあります。
3.経営者視点から考えるハラスメント対策
ハラスメント問題は、職場環境の悪化を通じて企業経営に大きな損失をもたらすことがあります。
それでは、ハラスメント問題の発生原因をなくすために、経営者は日ごろから、どのようなことに努めると良いのでしょうか。
次に、経営者が講ずべきハラスメント対策をまとめました。
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① 経営者の方針を明確にし、労働者に対して、周知・啓発を行う。
② 加害者に対し、厳正に対処する旨を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含むすべての労働者に周知・啓発を行う。
③ 相談窓口を定める。
④ 相談窓口の担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるよう整備する。
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する。
⑥ 事実関係確認後、速やかに被害者に対して配慮の措置を適正に行う。
⑦ 事実関係確認後、加害者に対する措置を適正に行う。
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずる。(事実が確認できなかった場合も同様に行う。)
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知する。
⑩ 相談したことや、事実関係の確認に協力したこと等を理由にして、不利益な扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発を行う。
ハラスメントの防止効果を高めるためには、日頃から労働者のハラスメント問題に対する意識啓発に取り組み、相談しやすい窓口を設けることや、職場環境の点検を行うことが大切です。
経営者はハラスメント問題を個人の問題としてではなく、会社組織の問題として捉え、ハラスメント問題を未然に防ぐ土壌・職場環境づくりに取り組むことが大切になります。
4.まとめ
経営者は、大切な「人財」の流出や従業員のモチベーションの低下を防ぎ、労働者が十分に能力を発揮できるよう、法に沿った対策は勿論、自社に合う効果的な対策に継続的に取り組むことが大切です。
職場の秩序を保ち、個人の尊厳が尊重されるような、健全な職場づくりを目指していきましょう。
知っていれば役に立つ!経費のこと
仕事をしているとよく耳にする「経費」という言葉。
これって何のことか、知っていますか?
1.そもそも経費って?
いきなりですが皆さん、経費って何だと思いますか?
接待に使った食事代、会社で必要なパソコン代等、仕事中、よく耳にするこの経費という言葉・・・。そう!支払ったお金のことです!
しかし、実はこの支払ったお金には2種類あって、それが「資産」と「費用」に分かれます。
まずは、「資産」について。
これは簡単に言うと目に見えるものです。つまり、形があって効用が継続するものになります。
目に見えるものということは、先程でてきたパソコンは、資産になります。もちろん、パソコンを買うためにはお金が必要ですが、私たちは、お金を払う代わりに、パソコンという資産を手にいれるのです。
それに対して「費用」は、お金を払っても別のものは何も手に入りません。
例えば電車代。業務の中でどこかに出かけることがあると思います。その時会社から目的地まで移動をするためにお金を払うのですが、「資産」のように目に見えるものは何も手に入りません。手に入っているのは、電車に乗って移動するという効用であり、効用は電車を降りた時点で残っていません。こちらの「費用」が、みなさんがよく耳にしている一般的に「経費」と呼ばれるもののことなのです。
以上のことをまとめると・・・
「資産」=お金を払う代わりに「目に見えるもの」が手に入る
「費用」=お金だけが減り、「目に見えるもの」が手に入らない
ということになります。
2.「経費」にするメリット
1で、支払ったお金には2種類あることをお話ししました。
しかし、この支払ったお金が「資産」か「経費」、このどちらにあてはまるかなんて、そんなに重要なのでしょうか。
1を読むと、お金が無くなるだけの経費よりも、お金を払う代わりに別のものが手に入る資産が多い方が、会社にとっては良いように感じます。
けれど、税金のことを考えれば、資産よりも経費になったほうが良いのです。
税金は、商売をしていくうえで、必ずついてくるものであり、会社にとってコストのひとつになります。コストとなるのなら、可能な限り安く抑えたいというのはみなさん同じですよね。
そんな税金は、基本的には利益に対して課税されます。つまり、税金のことを考えれば、経費が増えた方が良く、経費が増えると、利益が小さくなる、すると支払う税金が少なくなる、ということになります。
では、税金を安く抑えたいからと言って、お金だけが減り、目に見えるものが手に入らないものすべてを経費にしてもいいのでしょうか?
実は、これだけでは経費にすることができません。利益というのは、売上から経費を引いたものになるので、この2つは対応していなければなりません。対応というのは、ただ経費をつかうのではなく、「売り上げをあげるため」に「経費」を使う、ということです。
例えば、住宅兼店舗の場合の光熱費。この場合は、売り上げに必要な店舗で使った分の光熱費のみを経費とすることができます。
以上のことから、経費にするためには、売上との対応関係は必ず必要だということが分かったかと思います。
3.経費にもなる資産
2で、経費は売り上げをあげるために使ったものとお話ししましたが、そう考えるとパソコンや机などの資産も売り上げをあげるために使っているものと考えることができます。
では、これらは資産だけでなく経費にもなるのでしょうか?
答えは「なる」です。そうすると、資産と経費に分ける必要なんてないのではないか?と考えますよね。けれど、分けなければならない理由がきちんとあって、その理由が、資産は何年も使えるからなのです。
例えば「パソコン」。これは、買った時だけでなく、何年も売上をあげるために使用しているため、経費とも言えます。つまり、パソコンがある限り売上との対応関係は続いていくことになります。
それでは、具体的にどのようにして資産を経費にするのでしょうか?
手順として、まずはパソコンをいったん資産にします。そこから、その年の売り上げをあげるために使用した分だけをその年の経費にして、毎年少しずつに分けて経費にしていきます。これを減価償却といいます。
1度に経費にするのではなく、毎年少しずつ経費にしていくことで、資産を経費にしていくのですが、何年間経費として使えるのか、これは誰にも分かりません。長く使えるかもしれませんし、すぐに壊れてしまって、使えなくなるかもしれないのです。
このように、どれくらい使えるかというのは誰にも分らないため、目安としての期間が法律で定められており、これを耐用年数と呼びます。これは国税庁のホームページから知ることができるので、是非参考にしてみてください。
4.まとめ
今回は、経費とはそもそも何か、経費にするメリット、経費と資産との関係についてお話ししました。
仕事をしていくうえで経費は切っても切れないものですし、知っているか知らないかで大きく変わってくるものだと思いますので、この記事を読んだことを機に、少しでも多くの経費に対する知識を身につけて、これから役立てていただければと思います。
商標登録ってどうやるの?
普段私たちが目にするブランドのマークや、商品名(=ネーミング)などは「商標権を獲得」=商標登録することによって、そのブランドの価値や、商品の持つイメージの独自性が保たれています。
商標権の獲得は早い者勝ちなので、売り出したい商標が決まったら、すぐに商標を出願するのがおすすめです。
今回は、商標登録に関係が深い士業である「弁理士」、商標登録の手順、そして最後に私たちも日常の中でやってしまっているかもしれない商標権の侵害について説明していきたいと思います。
1.商標登録と弁理士
知的財産権のうち、産業財産権に分類される商標権は、特許庁で管理されています。
ですから、私たちがよく知るブランドのロゴや、商品のデザインなど、様々な商標はみな特許庁に商標登録の申請をし、申請承認されることで守られているのです。
「特許」や「権利取得」と聞くととても専門的な響きがして、複雑な行程を踏まないといけないのでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし、実は出願の手続き自体は、所定の様式の書類を記入し、印紙を貼りつけて提出するだけなので、個人で申請することも可能です。
知識や下準備不足で商標登録の申請をした場合、既に同一・類似商標が登録されていたり、不備があると申請が拒絶されたりすることもあり得ます。
こういった事態を自分の力で防ごうとすると、時間や労力がかかってしまいます。また、新たに申請をするとなるとさらに費用もかかります。
そこで登場するのが「弁理士」です。
弁理士とは産業財産権にかかわる全ての事務手続きを代理で行う事ができる国家資格所有者のことです。商標登録代行は弁理士の独占業務です。専門知識のもと、一連の業務をすべて代理で行ってくれるので、自力でやるより時間や労力が省けます。
また申請が拒絶されるリスクもぐっと下がるでしょう。依頼するとなると、費用こそかかりますが、1回の申請で審査に通り、申請費用が無駄にならないと考えると高くはないでしょう。
2.商標登録のステップ
先ほど、登録申請には下準備が必要だと述べましたが、商標登録の申請から承認までには具体的にどのようなステップがあるのかを見ていきたいと思います。
大まかな流れは、①先行商標調査 ②出願 ③審査 ④登録となります。
① 先行商標調査
先行商標調査は商標登録をする上で一番大切なステップです。
先ほど述べた通り、先行商標調査では、自分が登録申請しようとしている商標と同一・類似のものが存在しないかを調べます。
もし既に登録してあることが分かれば、見込みのない出願をしないで済みます。確認がとれたら、商標の区分、指定商品、指定役務(役務=サービス)を検討します。
【第16類】(主に文房具が属する分類)、
【指定商品・指定役務】ボールペン
と設定することが考えられます(一例)。
商標登録の出願は、「商標登録を受けようとする商標(=マーク・ネーミング)」と共に、指定商品・指定役務その商品を使用する区分を指定しなければならないのです。
② 出願
登録したい商標が他と被っていないと判明し、区分の指定も完了したら、いよいよ出願です。
出願は、書類での出願とインターネットでの出願の2種類があります。
今回は主流である書類での出願の流れについて説明します。
(1) 商標登録願の作成を行います。様式が決まっているのでそれに沿って作成します。
(2) 「特許印紙」を購入し指定の箇所に貼り付けます。
(3) 特許庁に提出します(窓口へ直接持参もしくは郵送でも可能です。)
(4) 電子化手数料の納付(出願後払込用紙が送付されて来ます。)
以上が出願の行程です。
③ 審査
出願後、審査には半年から1年程の時間を要します。特許庁には日々膨大な量の商標登録出願があり、それらを順番に審査していかなければならないからです。
時間を要するので、思い立ったらすぐに出願に取り掛かるのがおすすめです。
特許庁による審査後、問題がなければ登録査定がなされます。一方、何か問題があり登録できない場合は、その旨「拒絶理由通知」で知らされます。ここで「意見書・補正書」を提出し拒絶理由が解消されれば登録査定、解消されなければ拒絶査定となってしまいます。
④ 登録
登録査定が出たのち、所定の登録料を特許庁に納めると、登録が完了し晴れて、商標権が発生します。登録料の納付から約1か月で登録証が送られてきます。これにて一連の手続きは終了です。
また、期間は10年間なので、10年ごとに更新をすることで半永久的にその効力が持続します。
3.身近な商標権侵害
最後に、私たちが日常でやってしまうかもしれない、身近に潜む商標権侵害についてお話ししたいと思います。
たとえば、ブランドのロゴ(商標権取得済)が入っている洋服をリメイクして販売することは商標権侵害になりかねません。ブランドのロゴを使うという事は、そのブランドの効果を狙っていると考えられるからです。
また、ブランドが出している生地(商標権取得済)を使って洋服を手作りしたとします。その洋服をフリーマーケットで販売するというのはどうなのでしょうか?
こちらに関しては、各ブランドで方針が分かれます。
「〇〇(ブランド名)の生地を使用しています」と表記するのであれば商業利用するのは構わない、としているところもあります。一方で、「当ブランドの生地を商業利用することは固くお断りします」としているブランドもあります。
一様ではないので、「商売」をする際は他人の権利を侵害していないかを十分に調べた上で行わなければならないでしょう。
4.さいごに
以上のように、商標権とは容易に申請可能で、近年の企業では本当に多く活用されています。つまり、毎年どんどん多くの商標登録がされている以上、世の中での商標権侵害の可能性が高まっている状況にあります。
今後、商標を活用しながらビジネスを行おうとする場合、商標権侵害のトラブルに気付かぬ内に巻き込まれてしまう可能性がありますので、弁護士へ相談しながら進めることが最善でしょう。
また、個人の生活においても、商標権の侵害は起こり得ます。個人での商売だからと安心していると思わぬ事態になりかねないので、十分に注意しなければなりません。
【離婚問題】共有名義は離婚を境に、共「憂」名義になる
夫婦共同での住宅購入後に離婚した場合、それまで払い続けていた住宅ローンはどうなるのでしょうか。
また、どちらかが再婚した後に死亡してしまった場合や、連帯保証人のしくみについても詳しくご説明します。
1.共有名義人双方の承諾がなければ、不動産を売却できない??
夫婦がそれぞれ資金を出し合い、住宅ローンを借り入れて住宅を購入した場合、その土地と建物は二人の「共有名義」になります。
この場合の大きなメリットは2つ。
1. 夫婦の収入を合算することで多くのお金を借りられる(やはり、収入が多いほど多くの借入ができるものです。)
2. 購入価格の一定割合を税額控除される「住宅ローン控除」「住宅売却の3,000万円の特別控除」の優遇を二重に受けられる
しかし、共有名義にしたばっかりに、これが離婚後、大きな問題を引き起こすこともあります・・・。
「大きな問題って!?」
例えば、夫婦のどちらか一方が仕事を辞め、収入がなくなれば、辞めた方は所得がなくなりますので、所得税が発生しなくなります。そうなると、所得税が発生しない以上、住宅ローン控除を受ける余地がなくなりますので、節税のために連帯債務にした恩恵が受けられません。
妻が出産や育児で仕事を辞めるケースが考えられますが、これは予測の範囲内、つまり「通常のデメリット」です。この「通常のデメリット」をはるかに超える問題・・・。
それが、離婚で不動産を売却する場合です。
なかなか知られていないのですが、実は、共有名義の不動産は「夫」と「妻」の両方の承諾がないと売却することができないのです!
【両方の承諾が得られないケース】
① 夫は不動産を売却して得たお金を財産分与として分け合いたい、妻は慣れた家に住み続けたい、と主張しもめている
② どちらかの失踪などで、連絡が取れず、承諾を得ることができない
③ 夫が浮気をし、離婚することになったが、妻が自宅に居座っている
ケース③については、売却益を分与する方が得策ですが、夫への恨みがつのっている妻は頑として、売却に同意しないという場合です。売却までの時間が長引けば、その分、不動産の価値も下がり、この状況が長引いている間にも住宅ローンは返済しなければなりません。
夫と妻の両方から承諾を得ることは簡単なようですが、そううまくいかないのが現状です。
2.もし、どちらかが再婚した後、亡くなってしまったら・・・
もし、共有状態のままで離婚し、その後に再婚や相続、借金や納税の問題が生じると、予期せぬ問題が浮上することがあります。
離婚後、どちらかが再婚し、死亡してしまえば、「共有持分」が複数の人に相続される可能性があります。また、住宅ローン完済後であっても、元配偶者が共有持分を担保にして、借金をしたり、税金の滞納をしたりすれば、突然差し押さえられる危険性もあります。
このように問題が起こってしまうと、メリットのある共有名義が、デメリットしかない共「憂」名義になってしまうのです。
3.離婚して初めて知る…「自分は連帯保証人だった!!」
「名義変更すれば、連帯保証人が外れるんじゃないの??」
名義変更で連帯保証人が外れることは・・・「ありません!」
また、連帯債務者だった人が名義変更をしたからといって、連帯債務者から外れることは・・・「ありません!」
なぜなら、連帯保証人は「主債務者」を保証する立場にあり、連帯債務者は債務者としての立場にあるため、主債務者の返済が滞ったり、もう一方の連帯債務者の返済が滞った場合に金融機関から返済請求を受けるようになるからです。
例えば、夫が主債務者として住宅ローンを組み、妻が連帯保証人になっているケースでは、夫の返済が滞れば、連帯保証人である妻に返済の義務生じます。また、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組む場合、夫婦共に連帯債務者になっているケースがほとんどです。
もし、あなたが、元夫と離婚をし、再婚した夫と新しい家庭を築き、幸せに暮らしていたとしても、元夫が何らかの理由でローンが返せなくなった場合、突然あなたの元に請求書が届くことがあるのです。
そして、あなたは初めて気づくのです。「自分は連帯保証人であった」「自分も連帯債務者であった」と。
離婚したからと言って、連帯保証や連帯債務がなくなることはありません。
「離婚する時に、家の名義を夫に財産分与して、自分の名義を外れたら、住宅ローンの連帯保証も自動的に外れるのではないの???」
そう思われる方も多いかもしれませんが、実際はそうではなく、連帯保証人や連帯債務者であることは、変わらないのです!!
「離婚したのに、連帯保証が外れないなんて納得できない!」
残念ながら、これは、法律で定められた日本の連帯保証制度なので、どうすることもできません。連帯保証が解除されるのはローンが完済されたときです。
返済中に連帯保証を外すには、住宅ローンを借りている金融機関の同意を得る、同等以上の連帯保証人を立てる、ローンを完済、もしくは完済に近い金額を一括返済する等方法はあるにはありますが、債権者である金融機関の同意が必要で、その同意を得るのはとてもハードルが高いというのが現実です。
金融機関からすれば、離婚したことは関係のない事情であり、離婚を理由に連帯保証人や連帯債務者から外してあげるメリットがないからです。
一方で、ローンを支払っていくどちらかが、住宅ローン残高分全額の借り換えができれば連帯保証債務はなくなります。つまり、違うローンに乗り換える、ということです。しかし、これも物件の担保価値が低ければ、借り換えはかなり厳しいのが現実です。
「だったら、売却する方が、全額返済となって、スッキリするのでは??」
ここで問題となるのが、ローン残高が物件価値を上回っている(つまり、オーバーローン状態の)場合です。この場合、売却代金でローンの完済ができないため、住宅ローンを担保するために付けられていた抵当権を抹消することができません。
そうなると、新しい買主は抵当権付の不動産など購入するはずもありませんから、現実的には売却することができないのです。
金融機関の保証債務免責も無理!
借り換えも無理!!
オーバーローン分を一括で支払えないから売却も無理!!!・・・となると、そのままの状態でローンを払い続けていくしかないのです・・・。
こうなると数年後には破綻しかねないというリスクができてしまいます。
そんな重要な「連帯保証人」なのに、なぜ当事者は連帯保証人になっていることに対する自覚がないのでしょうか。
実際は「自覚がない」のではなく、「忘れてしまっている」ことの方が多いのです。それは、仕方ないことなのかもしれません。結婚した時は、まさか自分が将来離婚するなんて想像しませんし、マイホームを買う時は、希望や高揚感からリスクを考えずに、金融機関や不動産業者に言われるがまま、印をついてしまうのです。
一度、ご自宅の名義や住宅ローン契約者、連帯保証人など、整理して確認してみることをお勧めします。
【離婚問題】離婚が破産につながる!?原因は住宅ローン!!
離婚の話が持ち上がったら、養育費や慰謝料のことなどが優先的になり、不動産や住宅ローンについてはどうしても後回しにされやすいものです。しかしながら放って置くとトラブルに巻き込まれることも!
今回は、離婚時に気をつけたい不動産や住宅ローンについてお話しします。
1.はじめに
日本において「離婚」といえば、離婚について話し合って役所へ離婚届けを提出して成立する「協議離婚」、家庭裁判所における離婚調停で離婚が成立する「調停離婚」、家庭裁判所の裁判官の判断によって離婚が成立する「裁判離婚」の3種類があります。
その中でも、日本における離婚の大半は「協議離婚」であり、離婚全体の9割を占めます。
「協議」離婚と言うからには、話し合って離婚が成立するのですが、離婚するか否かだけでなく、その他離婚に付随する様々な事柄を話し合うことになります。その「協議」される内容としては「子の親権・養育費」「慰謝料」「財産分与」などがあります。
簡単にだけ説明しておきましょう。
まず、「親権」は、両親のいずれが離婚後に子供の親権を持つのかを協議します。そして、親権を持たなかった方の親は、現実に子供を育てないため、代わりに子供を育てる方の親に対して養育費を支払うことになります。
次に、「慰謝料」とは、有責行為(浮気・DV・生死不明など)で離婚の原因を作った側が配偶者に支払う賠償金です。
また、「財産分与」については、離婚の原因にかかわらず、夫婦で築いた共有財産を公平に分与することになります。
《対象となるものの例》
不動産や家具、預貯金、車、有価証券、保険解約返戻金、退職金etc.
離婚後、特にトラブルになりやすいのが不動産に関する問題です!一般的に、離婚される家庭は、高齢者の離婚でない限り、住宅ローンの残債が残っていることが普通でしょう。このとき、住宅ローンは残債額が何千万単位と多額であるため、その処理において紛争の火種となり得ます。
「売却すれば、問題は解決するのでは?」と考えられる方も多いかもしれませんが、
新築で購入した場合、少しでも住めば中古物件です。一気に価値が下がって、もはや売却しても住宅ローンの残債額の方が多いという状況があり得ます。住宅ローンが物件価格(時価)をオーバーしている場合(※オーバーローン・債務超過と言います)、売却しようと思うと、通常、売却代金で足りない分は一括で返済しなければならないので、離婚が破産につながる原因のほとんどが住宅ローン!というのはこれが原因です。
2.離婚の話が持ち上がったら、確認してほしいこと
皆さんは、不動産に関する権利関係、契約内容を正確に認識されていますか?
離婚の話が持ち上がったら、不動産に関する問題を冷静に把握、整理することが大切になります。そこで、まず確認してほしいことを記載します。どれだけ正確に認識できているか、ぜひチェックしてみてください!
□不動産の取得時期はいつだった?
□不動産の購入代金はいくらだった?
□不動産を購入の際、頭金は支払った?
□頭金は誰が支払った?
□頭金は支払わず、フルローンを組んでいる?
□土地・建物の名義はどうなっている?(共有名義?単独名義?)
□担保権(抵当権や差押え)の有無はどうか?
□住宅ローンの残高はいくら?
□住宅ローンで連帯保証人の有無はどうか?(登記簿謄本に載らない)
□住宅ローンで連帯債務者の有無はどうか?(登記簿謄本に載る)
□住宅ローンの完済時期はいつ?
□不動産の査定はいくら?
……。
いかがでしたでしょうか?結構たくさんチェックすべきことがありますね。
マイホームを手に入れられる喜びでいっぱいで、権利関係などを十分に把握していない方が少なくなく、離婚後、不動産トラブルに巻き込まれてしまう方が多くいらっしゃいます。
そこで、不動産の名義や住宅ローンの契約内容、保証人など現状がどのような権利関係になっているのかしっかり確認してほしいのです。
不動産の権利関係や内容は法務局で不動産の登記簿謄本を取得して調べることができます。売却の予定があるのなら、不動産業者に土地・建物の査定をしてもらい、あらかじめ資産価値を把握しておくとよいでしょう。
3.養育費等とは話が違う!破産のリスクが一気に高まるローン残債問題!!
離婚の話が持ち上がったとき、どちらかに離婚原因があったら慰謝料について、子供がいるときは親権・養育費についてが争点になります。不動産の話はどうしても後回しになりがちです・・・。
預貯金や車、家財などの財産分与は分与した時点で終わります。慰謝料や養育費については、話し合いで双方の納得が得られれば、分割での支払いは可能です。
しかし、住宅ローンは契約している相手が金融機関です。金融機関にとって、夫婦の離婚は関係のない話ですよね。金融機関は、自分が住むための自宅購入資金であり、自宅を守るためには頑張って返済をしてくれるであろうとの前提から、極めて低金利で住宅ローンを組ませてくれるのです。これが滞ったり、約款違反があれば、一括で返済を求められます。
元夫:債務者。家を出てローンを返済し続けている。
元妻:連帯保証人。子どもと自宅に住み続けている。 場合・・・
→元夫が何らかの理由で返済しなくなると、金融機関は期限の利益を喪失したとして、元夫に対して一括支払いを求めます。しかし、元夫が返済できないとなると、自宅に住んでいる元妻に対して連帯保証人として一括で支払うよう請求してきます。
住宅ローンを組んでいる以上、自宅に抵当権を設定しているでしょうから、支払えない場合は、金融機関が抵当権を実行して自宅を競売にかけ、もしそれでも残債が返済しきれない場合には、自己破産に一気に突き進んでしまう危険性があります。
こうなってしまう前に、住宅ローンを借り入れている金融機関に連絡して、契約内容を確認することです。借入状況、照会時点までの返済履歴などがわかりますし、借り換えなどをして契約内容が変わっている場合もあるので契約書類一式を必ず確認しましょう。
4.まとめ
離婚の話が持ち上がったら、後回しになりがちな不動産に関する問題を冷静に把握、整理するために、権利関係、不動産の内容を登記簿謄本で確認!!
売却する予定があれば、資産価値をあらかじめ把握!!
住宅ローンを借り入れている金融機関で借入状況や契約内容を確認!!
今、誰が、どのくらい債務を負っているのかをしっかり認識すること、これが、離婚後、不動産に関するトラブルに巻き込まれないためにとても大切なことなのです。
弁護士の仕事とは②~裁判外業務について~
前回は,弁護士の仕事の総論的な部分をご説明させていただきました。
今回は,弁護士の仕事のうち,裁判外業務の内容について,ご説明させていただきます。
1 代理人としての交渉業務
裁判外の業務において一定の割合を占めるのが,この代理人としての交渉業務になります。お金を貸したのに返してもらえない,家賃を払ってもらえないので,アパートから退去して欲しい,夫と離婚したい,交通事故に遭ってしまったので相手方保険会社との間に入って欲しいなど,様々な法律問題について依頼者の代理人として依頼者の利益を実現するために相手方と交渉を行うのが弁護士としての役割です。また,上記のような民事上のトラブルだけではなく,刑事上のトラブル,例えば,ケンカをして相手を殴ってしまい,ケガをさせてしまった場合には,被害者との間で示談を成立するための活動を行うことも弁護士の仕事です。
この交渉業務は,弁護士の業務において非常に重要な業務であると考えています。すなわち,交渉によりトラブルが解決することにより,依頼者が抱える問題を早期に解決することができ,紛争にまきこまれることを防ぐことができるため,交渉によりスムーズにトラブルを解決することが弁護士としての責務ではないかと感じています。
2 顧問弁護士としての顧問業務
上記の交渉業務に関しては,基本的には法的トラブルが発生した段階でお手伝いさせていただくことが多いです。しかし,弁護士の業務として企業や時には個人の顧問弁護士として常日頃,相談等関係を構築しておくことで,弁護士として紛争が起こらないようにアドバイスをすることができます。たとえば,法的にトラブルが発生しないようにきちんとした契約書を作成することや,就業規則の作成を行ったり,何か行動を起こす前に,法的に問題がないかの確認を弁護士に依頼したり(リーガルチェックといいます。)するなど,顧問弁護士を利用することにより,紛争が発生することを防ぐためにお手伝いさせていただくことができます。
機会があれば,ご説明させていただきますが,何かトラブルがおきてから弁護士に依頼するよりも,何かトラブルが起きないように弁護士に相談をする方がとても重要であるため,顧問業務については重要な仕事であると考えています。
当事務所には,支払った顧問料を無駄にすることなく,積み立てることができる,「フレックス顧問契約」という形態をとっておりますので,顧問弁護士をご検討されている方につきましては,是非,一度ご相談ください。
弁護士の仕事とは①
第三者委員会のメンバーになったり,刑事事件の弁護人になったりと弁護士さんのお仕事の場面は色々あるのですね。弁護士がどんなお仕事をしているのかってあまり知る機会がないため,弁護士の仕事について教えてもらいたいです。
【弁護士からの回答】
一般の方が日常生活を過ごす中で,トラブルに巻き込まれない限り,弁護士と関わり合うことが通常ないと思われます。したがって,弁護士の仕事がどのような内容であるかについては,あまり知る機会がないと思われます。そこで,今回から数回にかけて,弁護士の仕事の内容についてご説明させていただきます。
1 弁護士とは
まず,弁護士についてご説明させていただきます。弁護士とは,司法試験という国家試験に合格し,国家資格を有する法律の専門家をいいます。弁護士になることで,他人の法律事件に関して報酬を得て代理行為などを行うことができます。逆をいえば,原則として他人の法律問題について,報酬を得て間に入ることができるのは弁護士だけということになります。
2 弁護士の仕事について
弁護士の仕事について,大きく2つに分けると,①裁判業務と②裁判外業務の2つがあります。①の裁判業務については刑事裁判と民事裁判に分けられます。刑事事件の場合には,起訴された被告人の代理人(弁護人といいます)として,検察官が起訴した事実について,被告人が犯人ではない場合や,犯罪が成立しない場合には,無罪を主張し,逆に犯人であることや有罪であることが間違いない場合であっても,被害者と示談を行ったり,被告人を監督する親族等の証人として申請する等する弁護活動(情状弁護といいます。)を行います。
他方,民事裁判では,契約関係のみならず日常生活での当事者間のあらゆる紛争について一方当事者の代理人として,主張を行うとともに,証拠とともに立証活動を行います。
②の裁判外業務については,簡単に言えば,弁護士が行う業務のうち,裁判業務以外の全て業務であり,交渉,書面作成,法律相談,法的なアドバイス等様々な活動があります。
テレビドラマなどで俳優などが演じている弁護士はほとんどが,裁判での活動を行っているため,一般の方からすると,弁護士の活動はほとんど裁判所で仕事をしているといったイメージを持たれている方も少ないのではないかと思いますが,基本的に,弁護士の活動は,裁判外の業務の方が多いというのが一般的であると思います。
今回は,弁護士の仕事の総論的な部分をお話しさせていただきましたが,次回からは具体的な内容についてご説明させていただきたいと考えております。
保釈とは②
逮捕された段階では,保釈は認められないのですね。そういえば,保釈金ってニュースなどでみると,300万円とか500万円など非常に高い金額になっている気がしますが,保釈金の金額はどのようにして決まるのですか。また,一度保釈金を払ってしまうと,払ったお金を戻ってこないのですか。
【弁護士からの回答】
前回は,保釈の定義や要件についてご説明させていただきました。今回は,保釈金について,その内容や保釈金の金額の決まり方についてご説明させていただきます。
1 保釈金とは
保釈金とは,裁判所が保釈の決定を出す際に,被告人支払いを求める金銭のことであり,正確には,保釈保証金といいます。
身体拘束から解放された被告人が逃亡することなく裁判所に出頭してもらうために一時的に裁判所に預けられる金銭になります。したがって,保釈金については,一度支払ったら戻ってこないものではなく,きちんと裁判所に出頭すれば,事件終了後に返金されることになります(これを還付といいます。)。しかし,被告人が正当な理由なく裁判所に出頭しない場合や,逃亡したり,証拠を隠滅しようとした場合には,保釈が取り消されることになり,その際に,保釈金も没収されることになります。このように,保釈金は,身体拘束から解放された被告人に対し,金銭をいわば人質として裁判所に預けさせることにより,きちんと裁判所へ出頭すること確保するためのものになります。
2 保釈金はどうやって決まるの?
それでは,この保釈金の金額はどのように決まるのでしょうか。
刑事訴訟法93条2項では,「犯罪の性質及び情状,証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して,被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。」と記載されています。「被告人の出頭を保証するに足りる」金額,裁判官が「このぐらいの金額を預かっておけば,逃げずに裁判所に出頭してくれるだろう」と考える金額を支払わなければならないといっても過言ではないと思います。
したがって,芸能人ではない一般人の方の保釈金であっても,200万円~300万円の支払いが要求されるのが通常です。これに対し,芸能人や高収入の方で,200万円程度では,出頭しなければならないという金額ではない場合には,数千万円,場合によっては億を越える金額が決定されることもあります。
3 最後に弁護士より
保釈については,被告人が長期間身体を拘束されることによる,不利益を回避するために有意義な制度ではあるとは思います。しかし,無実の罪の方の場合を除き,起訴されて身体拘束されている人は,それだけ重大な犯罪を犯してしまったため,拘束されているという事実を忘れてはいけないと考えています。自分で犯してしまった罪と向き合い,もう二度と罪を犯さないようにするために,保釈をしないという方もいらっしゃいます。もっとも,保釈の必要性が認められる方も当然おられます。保釈を認めてもらうためには弁護士の協力が必要不可欠であるため,是非一度,弁護士にご相談ください。