手抜き工事の際の損害賠償請求について
【相談事例⑥】
5年前の新築で家を購入しました(売主は,施工主とは別です。)。雨漏りや水道から水が漏れたりするのは欠陥ではないのでしょうか?他にも1年もせず壁にヒビが入っていたり,リビングの扉が閉まりにくくなったり,廊下も歩くとミシミシと音を立てるようになりました。
建てた大手メーカー(施工主)の対応が悪く,何かと修理代を請求されます。明らかに手抜き工事をされているのではないかと思い,苦痛を感じています。
このようなケースは損害賠償を起こすことは難しいのでしょうか?
【弁護士からの回答】
せっかく購入した新築で,こういったトラブルが生じてしまうと,生活していく上で,とても大変な思いをされるだけでなく,気持ちとしてもいい思いはしないでしょう。今回は,不動産の欠陥に関するトラブルについてご説明させていただきます。
1 請求できる法的根拠
まず,不動産を購入(売買契約)した場合に,目的不動産に瑕疵(欠陥)が認められた場合には,売主に対し,瑕疵担保責任として損害賠償や,修繕費用の請求が認められます。また,欠陥について,施工主の過失が認められた場合には,不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます。
2 瑕疵担保責任について
売買契約における瑕疵担保責任については,瑕疵が「隠れた瑕疵」であることから必要になります(民法570条),隠れた瑕疵とは,買主が通常の注意力をもって発見することができない欠陥をいいます。具体的には,雨漏り,シロアリなどの虫食い,土壌汚染,基礎工事の傾き,土壌汚染などについては,隠れた瑕疵に該当することに争いはありません。この隠れた瑕疵が認められた場合には,買主は,瑕疵について,たとえ売主に全く過失がなかったとしても,損害賠償等を請求することができます(無過失責任)。もっとも,この瑕疵担保責任については,期間制限があり,引渡しの日から10年間(売主が宅建業者の場合には,引渡しの日から2年間)で時効になってしまいます。また,上記期間内にあっても,瑕疵を発見してから1年以内に行使をしなければ,損害賠償は認められません。
このように,宅建業者から購入する場合には,購入後,2年を経過した時点で発覚した瑕疵については,損害賠償等が認められないことになってしまいますが。新築の不動産の基礎構造の部分に関する瑕疵については,「住宅の寝室確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき,宅建業者であっても,引渡し時より10年間は瑕疵担保責任を負うとされています。したがって,ご相談者様の場合でも,新築を購入している以上,売主は,10年間は瑕疵担保責任を負うため,修理費用については,本来であれば売主が負担すべき費用であると思われます。もっとも,瑕疵を発見してからすでに1年以上経過している部分については,請求することができないため,瑕疵を発見次第,早急に弁護士にご相談ください。
3 不法行為責任について
今回のご相談者様の事例では,施工業者である大手メーカーにおいて,手抜き講義がなされた可能性が否定できません。もっとも,売買契約自体は,メーカーとは別の売主との間で行っており,買主であるご相談者様とメーカーとの間には,直接の契約関係は存在しません。もっとも,平成19年7月16日最高裁判決では,建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事管理者(「設計・施工者等」)は建物の建築にあたり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建物に建物としての安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を負うとして,設計・施工者等がその義務に違反して建築された建物に,「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」があり,それにより,居住者等の生命,身体,財産が侵害された場合には,不法行為責任を負うと判断しました。また,「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」については,平成23年7月21日最高裁判例において,居住者等の生命,身体,又は財産を危険にさらすような瑕疵であるとし,かつ,現実的に危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵を放置すればいずれは生命,身体,財産に対する危険が現実化することになる場合もこれに該当すると判断しました。
したがって,ご相談者の事例の場合にも,雨漏りや建物の歪み等について,その瑕疵の程度の問題はありますが,場合によっては,「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に該当すると認められる場合には,売り主だけでなく,施工主の大手メーカーに対しても不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。なお,不法行為に基づく損害賠償請求については,「損害及び加害者を知った時」から3年間若しくは,不法行為の時から20年経過したときには請求することができませんが,瑕疵担保責任よりも,請求できる期間が有利になります。
いずれにせよ,不動産の瑕疵の問題については非常に専門的な事項が多々損害するため,是非一度弁護士にご相談ください。
未成年が偽ってお酒を勧めてしまった場合は逮捕?
【相談事例⑤】
未成年が成人であると偽っているにもかかわらず、お酒を勧めてしまった場合、逮捕されたりするのでしょうか?
また、未成年と分かった上で、飲酒を勧めてなくても一緒に飲んでいるだけでいけないのでしょうか?
【弁護士からの回答】
最近,芸能人がお酒の席に同席した未成年者に飲酒を強要したとして活動休止処分になりました。「お酒は20歳になってから」というCMでも表記でもあるように未成年者の飲酒は禁止されていますが,その根拠や違反した場合に本人や周囲の人がどのような制裁を受けるのかについて理解されている方はすくないと思います。そこで,本日は未成年者の飲酒についてご説明させていただきます。
まず,未成年者の飲酒を禁じている根拠については「未成年者飲酒禁酒法」という法律があり,この法律は大正時代に制定された古い法律なのですが,この法律は,未成年者(満20歳に至らない者)は酒類を飲用してはいけないと規定されているのですが(1条),未成年者がその規定に違反して飲酒をしてしまったことに対する罰則は何ら規定されていないのです。したがって,未成年者が飲酒をしたとしても何か刑罰に問われることはありません。もっとも,飲酒の事実が明らかになると,警察から補導されることにはなりますし,それにより高校や大学などで停学や退学等の処分をうけることになりかねませんので,くれぐれも未成年での飲酒はしないよう注意が必要です。
次に,未成年者であることを知りながらお酒を提供した場合,提供した飲食店に対しては,未成年者飲酒禁止法により,50万円いかの罰金が科される可能性があります。したがって,飲食店においては,未成年者の飲酒を認めないというような張り紙を掲示したり,未成年者と疑わしい人に対しては身分確認などを行い,未成年者でないと認識して飲食を提供したという状況を確保する必要があります。したがって,ご質問にあるように,未成年者であると偽られ,飲食を提供したとしても未成年者と知りながら飲食を提供したことにはなりませんで,罰則が科されることはありません。
では,未成年者と知りながら飲酒を進めた同席者(大学の先輩や,ご相談のケースのアイドルの場合等)については何か罰則等は科せられるのでしょうか。未成年者飲酒禁止法では,未成年者の保護者又は監督代行者が未成年者の飲酒を制止しなかった場合に,科料(1000円以上1万円未満の金銭的な制裁を科す処分です。)という処分がなされます。すなわち,親族もしくは親族と同視すべき立場にある人に該当しなければ,未成年者の飲酒を制止しなくとも,犯罪自体には問われることはありません。したがって,アイドルによる飲酒の強要についてもそれ自体で,何か犯罪に触れるというものではありませんが,飲酒を禁じられている未成年者へ強要したという点では道義的,倫理的に問題があるとして活動を自粛することになったのだと思います。
このように,未成年者の飲酒それ自体に関しては犯罪に該当する場合は少なくありませんが,飲酒をきっかけにして別の犯罪に巻き込まれ,または,過度の飲酒により急性アルコール中毒など取り返しのつかない事態になってしまうことも少なくないため,未成年者の飲酒は絶対に控えるべきですし,同席している人が責任をもって飲酒させないように心がける必要があると考えます。
有責配偶者について⑤~有責配偶者からの婚姻費用請求~
【ご相談者からのご質問】
私は結婚しているのですが(子どもはおりません。),夫以外の他の人を好きになってしまい,その人と不貞までしてしまいました。その人はあまり収入がないので,別居後の生活がきちんとできるか心配です。ですが,インターネットで調べたのですが,私が別居した場合,夫から婚姻費用として一定の生活費がもらえると知りました。夫の収入はある程度あるので,何とか生活ができそうです。
【弁護士からの回答】
不貞行為については,夫だけが行うものではなく,妻が不貞行為を行うケースも少なくありません。婚姻費用についての具体的な内容や問題点については,別の機会でご説明させていただきますが,今回は,有責配偶者からの婚姻費用の請求の可否についてご説明させていただきます。
民法760条では,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,かかる規定から,夫婦の一方は,別居していたとしても相手方配偶者の生活費を婚姻費用として支払う義務があります。したがって,収入がある配偶者は,別居した他方の配偶者に対し,離婚が成立するまでの間若しくは,別居が解消するまでの期間については婚姻費用を支払う必要があります。
では,相談事例のように,妻が不貞行為を行い別居した場合のように,有責配偶者が,他の配偶者に対し,婚姻費用を請求することは認められるのでしょうか。
民法752条では,「夫婦は同居し,互いに協力し扶助しなければならない。」と規定されており,夫婦間には同居義務があることを定めています。
そして,裁判例では,自らが不貞行為を行ったことで婚姻関係を破綻させ,夫婦での同居することを困難にさせた有責配偶者であるにも関わらず,婚姻費用を請求することは,信義誠実の原則に反するとして,有責配偶者からの婚姻費用の請求がなされた場合には,請求を否定するか若しくは,通常の場合に認められる婚姻費用の金額から減額されるべきであるとしました。したがって,ご相談者様の事例のように,別居の原因がもっぱら不貞行為にある場合には,婚姻費用の請求は認められないでしょう。他方で,不貞行為をしてしまったものの,それ以前より夫婦関係が相当程度悪化していた場合や,相手にも落ち度がある場合には,減額された婚姻費用が認められる可能性があります。
このように,有責配偶者からの婚姻費用請求は原則として認められませんが,相談事例とことなり,別居した有責配偶者側に未成年の子がいる場合には,有責配偶者自身の生活費分の婚姻費用は認められないものの,子の生活費に相当する部分の婚姻費用は認められることになります。
このように,有責配偶者からの婚姻費用の請求は原則として認められません。そればかりか,不貞行為を行ったことにより,ご自身や,不貞行為の相手方において慰謝料を支払うことにもなるため,くれぐれもお控えいただいた方がよいでしょう。
有責配偶者について④~離婚を実現するためには~
【ご相談者様からのご質問】
私の不倫が原因で妻とは別居して4年になります(子どもはいません。)。これまで妻に対しては,生活費以外に給料のほとんどを渡していましたし,今,住んでいる私名義の不動産についても妻に譲ろうと考えています。さすがに,これ以上妻と一緒にいることは考えていないのですが,やはり,離婚の原因が私にある以上,離婚は認められないのでしょうか。
【弁護士からの回答】
これまで,有責配偶者からの離婚請求が認められる要件についてご説明させていただきましたが,ご相談者様の事例のように,別居期間が若干短い等のように,離婚請求が認められる要件を充たさない場合であっても,直ちに離婚自体をあきらめなければならないわけではありません。そこで,今回は,離婚を実現するために考えられる方策についてご説明させていただきます。
これまでご説明してきた,有責配偶者からの離婚の請求が認められないのは,あくまでも,訴訟での場面に過ぎません。したがって,有責配偶者であっても,協議により相手方が離婚することを承諾した場合は,離婚が成立することになります。
したがって,有責配偶者において離婚を実現するための一番の方策は,協議により離婚を成立させることがもっとも重要であると考えられます。
もっとも,現在は,インターネットの発展や,弁護士による無料法律相談の機会等が増えたことにより,有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないということを,事前知識として有している方も少なくありません。したがって,協議により離婚を成立させるためには,相手方に対し,現時点で離婚に応じた方がよいと思っていただく必要があります。そのためには,相手方へ提示する離婚に関する給付(慰謝料や財産分与)や養育費等について,相場以上の金額や,法律上認められている以上の割合を提示する必要があると考えられます。特に,相手方配偶者が女性の場合には,離婚後の生活の安定が確保されるかについては,非常に不安になっていることが通常であるため,養育費の金額や,住居に関する条件(住宅ローンの支払いをこちらが行い,相手方に無償で住まわせることや,ときには住宅ローン完済後に不動産の名義を相手方に譲ることも検討した方がよいかもしれません。)については,相手方の要望に沿った形での条件に応じる必要があると思われます。
もっとも,相手方としても,不貞行為等を行った本人からの提案では,感情的な対立もあって素直条件を提示しない場合も多いと思います。したがって,代理人である弁護士を通じ,相手方の希望する条件を出してもらうことから始めるべきであると考えます。
相手方の配偶者ともしても,代理人を選任したことで,こちら側が離婚することに本気であると考えますし,今後,調停→裁判になった際の経済的,精神的負担等を考えて,離婚を前提とした話し合いを行ってくれる可能性が高まります。
また,協議による,解決が困難であるとしても必ずしもあきらめる必要はありません。これまで,説明してきた有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件については,すべての要件を充たしていないと必ず離婚が認められないものであると判示した裁判例もあるのですが,すべての事情を総合的に考慮して判断するため,1つの要件を充たさないとしても,離婚の請求が認められるとした裁判例もあります。有責配偶者からの離婚請求が認められないのは,それを認めることが信義に反するという大前提からすれば,各要件にとらわれずに,総合的に判断し,離婚請求が信義に反していないのであれば離婚請求が認められると考えるべきであると考えが一般的になっています。現に,裁判例では,不貞期間や,不貞回数などの有責性の程度や,相手方配偶者にも破綻に至る原因がある場合,離婚を拒否する理由が単に,有責配偶者に対する敵対心しかない場合など,様々な事情を総合的に考慮して,離婚が認められるか否かを総合的に判断しているため,1つの要件を充たさないからといってあきらめる必要はないと考えています。
もっとも,各夫婦の別居に至るまでの事情は千差万別であるため,離婚を実現されたい場合には,これまでの夫婦生活に関する事情等さまざまな事情をお伺いする必要があるため,是非,一度弁護士にご相談ください。
有責配偶者について③~例外の要件について~
<ご相談者からのご質問>
有責配偶者からの離婚請求が認められる要件についてはわかりましたが,どういった場合に,各要件を充たすことになるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
前回は,有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件について,ご紹介させていただきましたが, 今回は,各要件の具体的内容や,どういった点が考慮されているのかについてご説明させていただきます。
1 はじめに(有責配偶者の認定)
有責配偶者として,離婚の請求が原則として認められないことになるのは,ほとんどの場合が,不貞行為を行ったことを有責行為としてとらえられていますが,不貞行為を行った場合に限られるわけではありません。悪意の遺棄や,暴力,他のいやがらせ行為を行った場合等でも有責配偶者にはなりうる場合があります。
2 別居が長期間であること
原則として,夫婦の同居期間と比較して別居期間が長期間であるか否かを判断することになります。また,夫婦双方の年齢も考慮要素となります。もっとも,これまでの裁判例をみてみると,別居期間が10年以上たっている場合等には,単純に同居期間と比較する余地もなく別居期間が長期にわたっていると判断される傾向にあるようです。したがって別居期間が10年未満という場合に,夫婦の年齢や同居期間等を総合的に考慮して,別居が長期間であるかを判断することになります。もっとも,有責性が認められない場合でも別居期間は2年~5年程度必要であると考えられているため,別居期間が5年以内の場合には,別居期間に関する要件が認められる可能性は少ないのではないかと考えています。有責配偶者となってしまった方が,ご相談に来られたときに「相手が離婚に応じないと主張してきた場合には,5年くらいの別居では離婚は認められないかもしれません。」とお伝えすると,非常に驚かれる方が多いです。
3 未成熟の子が存在しないこと
未成熟の子(未成熟子)とは,一般的に経済的に独立(成熟)していない子のことをいい,未成年者と同視されるわけではありませんが,高校生の場合には,一般的に経済的に独立しているとは認められず,未成熟子と判断されることが多いと感じています。逆に,大学生については,働くことは潜在的に可能であるとして未成熟子にはあたらないと判断される場合もあります。また,大学を卒業した成人であったとしても,障害を抱え,監護が必要な子どもについては,未成熟子と同視することができるとして,離婚請求を認めなかった裁判例があります。
4 相手方配偶者,苛酷な状況に置かれないこと
苛酷な状況の有無については,主として経時的な事情が考慮されることになります。具体的には,過去(判決に至るまでの間)の生活費の負担の有無・額,将来における経済的負担の有無,・内容(慰謝料,住居の確保などの離婚の際の給付の申し出),現在の相手方配偶者(離婚を拒否している配偶者)の生活や収入に関する状況等を考慮することになります。
このように,有責配偶者からの離婚請求が認められるためには非常に困難な要件を充足させる必要があり,現実に弁護士の下に相談に来られる方で,上記要件を充足している方というのはそこまで多くはありません。そこで,次回は,有責配偶者とし離婚を実現するための方法についてご説明させていただきます。
有責配偶者について②~例外について~
<ご相談者様からのご質問>
主人の不貞が原因で夫婦関係が破綻している以上,有責配偶者として離婚が原則として認められないということは分かりました。でも,例外的に離婚請求が認められる場合もあると聞いたのですが,どのような場合でしょうか。
<弁護士からの回答>
前回ご説明させていただいたとおり,不貞行為等婚姻関係を破綻させる原因を作出した有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。もっとも,後の最高裁の判決により,例外的な要件のもと,有責配偶者からの離婚の請求が認められるようになりました。そこで,今回は,有責配偶者からの離婚請求が認められる要件についてご説明させていただきます。
有責配偶者からの離婚請求が認められる要件について判断したのは,昭和62年9月2日の判決であり,
① 夫婦の別居が長期間であること
② 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
③ 相手方配偶者が離婚により,苛酷な状況に置かれないこと
という,3つの要件を満たした場合には,有責配偶者からの離婚請求が認められると判断しています。
このように,例外的とはいえ,有責配偶者からの離婚請求が認められることになったのは,婚姻関係に対する裁判所の考え方に変化が見られたことが原因であると考えられています。
すなわち,有責配偶者からの離婚請求を一切認めていなかった,昭和27年の最高裁判決が出された時点では,自分で婚姻関係を破綻させておきながら,離婚の請求をすることは許さない(社会的正義に反する)という考え方が強く(これを「有責主義」と呼んでいます。),形だけでも婚姻関係を継続させることが望ましいと考えられていました。もっとも,上記昭和62年の最高裁判決では,結婚(婚姻)の本質を,両性(夫婦)が精神的肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるとして,夫婦の一方にその意思がなく,共同生活の実体を欠き,回復の見込みがない場合には,戸籍だけの婚姻を存続させることはかえって不自然であるとして,婚姻の実体がなく回復が困難であると判断される場合には,夫婦関係は解消した方が良いという考え方(これを「破綻主義」といいます。)へ考え方を変えたと考えられています。
有責配偶者の事例とは異なりますが,性格の不一致等で,別居に至り,別居の長期化を理由に離婚請求を求める際にも,裁判所は,従前よりも短期間の別居であっても離婚を認めるようになってきており,裁判所全体として破綻主義を採用しているのではないかと考えられています。
もっとも,破綻主義を採用しているからといっても,有責配偶者からの離婚請求が認められることはあくまでも例外的な場合であることに変わりはありません(この点では,裁判所も「有責主義」を完全に排除しているわけではないといえます。)。次回は,上記でご説明した,各要件の具体的内容についてご説明させていただきます。
有責配偶者について①~原則について~
【ご相談者様からのご質問】
結婚して15年になる夫から,数年前より他の女性と不倫をしており,その人と一緒になりたいので離婚して欲しいと言われました。突然のことでとても驚いています。まだ子どもも小さいですし,私としては離婚せずに家族での生活を続けていきたいと考えています。以前,先生のブログを見て,別居期間がある程度あると,離婚したくないと主張しても離婚が認められるとのことなのですが,私の場合でもそうなってしまうのでしょうか。
【弁護士からの回答】
夫婦のいずれかの不貞行為が発覚した際,通常,不貞行為が行った人が,配偶者から離婚を突きつけられるのが一般的ですが,ご相談者様の事例のように,不貞行為をした側から離婚を求めるケースも少なくありません。
そこで,今回から数回にかけて,有責配偶者にまつわる問題についてご説明させていただきます。今回は,有責配偶者からの離婚請求に関する原則についてご説明させていただきます。
まず,離婚事由について規定している民法770条1項では,1号から4号については,「配偶者」と規定されていることから,相手方が不貞行為を行ったことや,悪意の遺棄を行った場合の規定であることは間違いありません。もっとも,770条1項5号は,単に「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」と規定してあり,条文上,夫婦のどちらからでも,離婚の請求をすることができるように規定されています。そこで,不貞行為を行った夫婦の一方が,婚姻関係が破綻しているとして,770条1項5号を根拠に離婚の請求をした場合,離婚は認められるのでしょうか。
この点について,昭和27年2月19日の最高裁判決では,不貞行為を行い,妻以外の女性と同棲している夫からの離婚の請求を行った事案において,離婚の請求を認めませんでした。その際の理由としては,不貞行為を行った夫からの離婚の請求が認められてしまうと,妻としては不貞もされて離婚もされてしまうというまさに,踏んだり蹴ったりである(実際の判決の理由中で「踏んだり蹴ったり」という文言が使われました。)ということを述べています。そして,上記最高裁判決以降,不貞行為等婚姻関係を破綻する原因を作った配偶者(「有責配偶者」といいます。)からの離婚請求は認められないとされてきました。
したがって,ご相談者様の事例においても,不貞行為を行っているご主人からの離婚請求は原則として認められないことになります。もっとも,例外的ではありますが,有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もありますが,それについては,次回,ご説明させていただきます。
治療費について④(入院雑費,付添監護費)
<ご相談者様からのご質問>
先日,交通事故に遭いました。とても激しい事故で,両足を骨折してしまいました。現在に病院に入院しているのですが,どういった費用が賠償してもらえるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
交通事故の場合,激しい事故により重篤なケガを負い入院を余儀なくされることがあり。また,入院も長期間にわたる場合も少なくありません。そこで,今回は,入院を余儀なくされた場合に請求することができる費用等についてご説明させていただきます。
1 入院費
事故により相手方保険会社に治療費を請求できるように入院費用についても請求することができます。入院費用についても治療費と同様,任意保険会社において立替払いのサービスを行っているのが通常であるため被害者の場合には,治療費を手出しすることなく,加害者側の保険会社が支払ってくれるのが通常です。
2 入院雑費
入院に伴い,入院生活のために必要な費用の発生を避けることはできません。日用雑貨,衣類,寝具,電話代などの通信費に加え,新聞代,テレビカード等の文化費等,入院生活中に発生する諸費用のことを入院雑費といい,この入院雑費についても損害として加害者に請求することができます。具体的な請求金額としては,発生した雑費すべてを事細かに計算し請求することはとても煩雑です。そこで,現在では,入院をした際に,一定程度費用が発生することは避けられないことであると認められているため,裁判上,入院1日あたり1500円程度の入院雑費を請求することができます。この点,示談になった際,被害者側が弁護士をつけていない場合,保険会社は自社の基準として1100円程度の入院雑費を提示してくることが多いので,弁護士が代理人で入っていた方が入院雑費についても適正な金額が認められることになります。
3 入院付添費
ご相談者様やご親族からは,入院している際に,見舞いに行ったり,付き添っていたことに関する費用については請求することができるのかということをよくご質問いただきます。
まず,見舞い費用に関しては原則損害として認められてはいません。先程ご説明した入院雑費として家族の見舞いのための交通費が含まれていると考えられているためです。
もっとも,入院の際に,付添いが必要であると認められる場合には入院付添費として1日あたり6500円程度を請求することができます。
もっとも,入院時には看護士が看護を行うことが予定されているため,付添い費が認められるためには,医師の指示や受傷の程度などから看護士による看護を越えた付添が認められる必要があります。
このような入院に関する諸費用についても,場合によっては,被害者のみで対応した場合には,加害者側の保険会社に誠実に対応してもらえない可能性がありますので是非弁護士にご相談ください。
治療費について③(整骨院での施術について)
<ご相談者様からのご相談>
今日,交通事故に遭いました。首が痛いのでムチウチになっているのではないかと思います。仕事の関係でなかなか病院に行けないので,整骨院に通うと思うのですが,問題ありませんか。
<弁護士からの回答>
交通事故でけがをした場合,整骨院に通われる方は少なくありません。結論からお伝えすると整骨院に通うこと自体には問題ないのですが,その際にはいくつか注意を要する事柄がありますのでご説明させていただきます。
1 診断書の作成は医師のみが可能
まず,交通事故でケガを負った場合には警察に対しケガをおったことの証拠として診断書を提出する必要があります。この診断書をもとに警察において交通事故証明書等を作成することにより,加害者側保険会社も事故により被害者がケガを負ったことを確認することができます。この診断書を作成することができるのは医師のみであり,整骨院にいる柔道整復師には作成することができません。
したがって,事故にあったにもかかわらず一度も病院に行かず整骨院にのみ通うことはくれぐれもお控えいただいた方がよいでしょう。診断書を作成しないままであると物損事故扱いとなってしまい,治療費の請求が認められなくなってしまう可能性があります。また,診断書を作成したとしても,作成した日が事故日から相当程度経ってからの場合には,事故とケガとの間の因果関係が否定され治療費などの賠償が認められなくなってしまう可能性もありますので,事故に遭ったらできるかぎり早く(2~3日以内)病院へ行き,診断書を作成してもらうようにしてください。
2 その他の注意点
整骨院での施術は,医師による治療行為とは異なり,あくまでの医療類似行為であるため,すべての場合に整骨院での治療が認められるというわけではありません。
具体的には,①医師が事前に同意している場合か②当該症状について,整骨院での施術が有効かつ相当であると認められる場合には,整骨院での施術費用についても加害者側保険会社に請求することができます。もっとも,ムチウチの場合には整骨院での施術が有効であると考えられているため,さほど問題になることはありませんが,後々のトラブルを防ぐためにも医師には整骨院に通院したい旨伝え,許可をもらっておいた方が良いでしょう。
また,事故によりケガが治癒することなく後遺症が残った場合には,それが自賠責の後遺障害に該当しなければ後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することはできません。ムチウチの場合に後遺障害があると認められるためには,病院にてMRIやレントゲン画像を撮影するとともに,定期的に病院へ通院し,病院での治療を行う必要があり,整骨院での施術のみでは後遺障害として認められる可能性が少ない場合が多いです。
したがって,弁護士としては,可能な限り整形外科などの病院へ通院し,それが困難な場合であっても整骨院のみの通院は避け,定期的に病院へは通うようにsいた方がよいと考えております。
治療費について②(立替払いの打ち切りについて)
<ご相談者様からのご質問>
交通事故に遭い,むち打ちで首が痛く病院で治療を行っていました。先日,ちょうど事故から3か月たった時点で,加害者側の保険会社から「3か月たったので治療費の立替払いを打ち切ります。」と言われました。自分としては,まだ首の痛みが残っているので,通院を継続したいのですが,どうすればいいでしょうか。
<弁護士からの回答>
ご相談者様の事例でもあるように,加害者側の保険会社保険会社からの治療費の立替払いを打ち切られてしまったということが,人身事故に遭われた方からのご相談で多いです。そこで,本日は,加害者側保険会社から治療費の立替払いを打ち切ると言われたときの対応についてご説明させていただきます。
1 治療費が認められる範囲
まず,交通事故のあったとしても,原則として一生病院に通い続けることが認められるわけではありません(事故によりそのような状態になってしまった場合には認められることはありますが,別の機会にご説明させていただきます。)。
治療を続けていくと,どこかで,症状が完全に治った状態(治癒といいます。)になるか,医師において,これ以上治療しても症状が改善しない状態(症状固定といいます。)のいずれかになります。そして,治癒若しくは症状固定になったあとの治療費については,事故による損害と関係のない費用であるとして法律用語でいうと,事故との間の因果関係(原因と結果の関係をいいます。)がないと判断されることになります。
したがって,交通事故における治療費が認められるのは,事故日から治癒若しくは症状固定時期までということになります。
2 保険会社の打ち切り
保険会社が治療費の立替払いを打ち切る際,被害者の状態が上記の治癒,若しくは症状固定の状態になっているのであれば,それ以上の治療費を請求できることはできませんが,保険会社は被害者の状態を考慮せず,単に事故から3か月を経過したことを持って立替払いの打ち切りを実施してくることが多いです(ムチウチの場合は3か月,骨折の場合には6か月といったように保険会社において打ち切る基準を決めているところもあります。)。その場合に,まだ治癒や症状固定の状態になっていない場合には,治療の必要性があるため,法律上,打ち切られた後の治療費についても請求することができます。しかし,前回ご説明したとおり,保険会社の治療費の立替えについては,あくまでもサービスであるため今後も立替払いを続けることを強制することはできません。したがって,打ち切るよう告げられた場合の対応としては,①医師よりまだ治療の必要性があることを説明等してもらい,立替払いの期間を延長しれもらうよう働きかけ,それでも断られた場合には②打ち切られた後は自費で治療費を支払い,治癒,若しくは症状固定になった後に,保険会社に対し,支払を求めるという方法が考えられます。
もっとも,保険会社との話し合いの際,ご本人で対応したとしても保険会社が要望に応じてくれることは少なくありません。そこで,弁護士が代理人として相手方保険会社と交渉することにより,立替払いの期間を延ばすよう説得することができますので,是非弁護士にご相談ください。