親権者の判断基準④
<ご相談者様からのご質問>
妻との離婚を考えています。先月に妻が5歳の長男と一緒に実家に帰ってしまいました。
はじめのうちは,母親が育てる方がよいのではないかと考えたのですが,やはり自分が親権を欲しいと考えています。
先生の話では現在の監護状況が継続することが大事であるとのことでしたので,何としても子どもをこちら側に引っ張ってきたいと考えています。問題はないでしょうか。
<弁護士からの回答>
前回ご説明したとおり,子の親権者の判断においては,現状維持,すなわち,現在生活している環境が特段問題なく,変更後の環境との優劣がない場合には,現状の環境を維持すべきであると考えられています。では,ご相談者様の事例のように現状を確保するために,お子さんをご相談者様側に引き戻すことは適切なのでしょうか。
今回は,違法な奪取行為が親権者の判断に与える影響について協議させていただきます。
前回ご説明したように,現状維持については,親権者の判断要素となります。しかし,現状維持についてのみを優先してしまうと,現状維持を確保するために,子どもを連れ去ることにより監護実績を確保するだけで,親権者の判断にとって有利な状況を作出することが可能になってしまい,連れ去りが横行してしまい,子の福祉を著しく害することになってしまいます。
そこで,親権者の判断においては,違法な連れ去りを行った場合には,親権者としての適格性を欠くとして,親権者の判断においては非常に不利な状況に陥ることになってしまいます。
具体的には,面会交流中に子どもを引き渡さずに拘束したまま返さない場合や,子を連れて別居した妻から,実力行使により子を連れ去る行為や子の監護について夫婦で協議していたにも関わらず,その協議に反し,事実上監護状態を作出する行為などは,違法な連れ去り行為等に該当すると判断されています。特に最初にあるように,実力行為により子どもを奪取する行為は,親権者であったとしても,未成年者略取罪として犯罪行為に該当しうる行為ですので,絶対にやめた方がよいでしょう。
このような,違法な連れ去り行為等を行ってしまうと,相手方が弁護士に依頼をした場合,直ちに,子どもを引き渡すよう,裁判所を通じて求めてきます(子の引渡しの審判といいます。
審判については別の機会にご説明します。)。そして,違法な連れ去り行為を行った当事者に対しては,親権者の判断において非常に不利になってしまうばかりか,親権者として認められなかった後の面会交流の条件面においても一度違法な連れ去り行為を行っている以上,信用性に欠けるとして非常に制限された面会交流しか認められない場合や,程度によっては面会交流が認められない可能性もでてきます。
ご相談者様の事例においても一定程度,相手方の監護下における生活が継続している以上,強制的に連れ去ってしまう行為は,違法な連れ去り行為と判断されてしまう可能性が髙いといえます。別の機会にもご説明しますが,親権について固執するのか,親権者という形ではなく面会交流によりお子さんとの交流を実現すべきであるのかについては,十分に考えなくてはいけない事項ですので,是非一度弁護士にご相談ください。
親権者の判断基準③
<ご相談者様からのご質問>
夫との離婚を考えており,これまで協議をしていました。離婚すること自体には争いはなかったのですが,夫との間の長男の親権について話がまとまりませんでした。現在,私の仕事が忙しく3か月前程から夫の実家にて子どもを面倒見てもらっています。先生のお話では,従前の監護状況が親権者にとって非常に大事であるとのことであったので,従前私が主として子どもを監護してきた以上,私が親権者となると思うのですがどうでしょうか。
<弁護士からの回答>
これまでご説明してきたとおり,親権者の判断は「子の福祉」の観点から判断されます。ご相談者様がおっしゃるように,確かに従前の監護状況については,親権者を判断する重要な要素ですが,それと同様に,現在の監護状況がどの程度継続しているのかという点についても非常に重要な要素となっています。そこで,本日は,現状維持の重要性についてご説明させていただきます。
親権者の指定において,従前の監護状況から環境が変更される場合には,環境の変更による子に与える影響を考慮する必要があります。この点,幼児や15歳以上の子どもになると環境変更による影響は比較的小さくなると考えられています(子の置かれている個々の状況によって異なるとは思います。)。
これに対し,幼稚園に通っている子や中学生特に小学生では環境の変化,具体的には転校による交友関係の変化等与える影響も多く,さらに新しい環境において馴染めるのか否かという点も予測することが困難であります。
また,親権者の判断の際には,従前の環境と新しい環境のどちらが優れているのかという点も判断の要素となりますが,通常,いずれの環境も監護能力については問題と判断され,監護体制で優劣がつくことはあまり多くはありません。
そこで,裁判所においては,現在子がおかれている環境に問題が無い場合,新しい環境が特段優れていると判断できる事情がない場合には基本的には現状を維持すべきであると判断される傾向にあります。
ご相談者様の場合でも,現時点においてご主人の実家での一定程度継続している以上,ご相談者における監護状況によっても異なりますが,離婚に伴って,お子さんが他県に引越しせざるを得ない場合等環境が大きく変更せざるを得ない場合には現状を維持すべきであるとして,相手方に親権者が指定されるべきであると判断される場合もあります。
したがって,ご相談者様の場合にも,環境を変化させないような体制を確保することができるかを検討したり,相手方との話し合いにより,交互に未成年者を監護する等対策を行う必要があると思われますので,是非一度弁護士にご相談ください。
親権者の判断基準②
<ご相談者様からのご質問>
妻との離婚を考えています。妻との間には5歳の息子がいるのですが,息子からは「パパと一緒にいたい」といつも言ってもらっています。息子が私と一緒にいたいと言ってくれているので,親権者は妻ではなく私がなれると考えて問題ないですか。
<弁護士からの回答>
親権者の判断要素のところでもご説明しましたが,子の心身の状況についても判断要素となり,その中でも親権者に関する子の意向について判断要素となることがありますが,子の意向が親権者の判断においてどの程度考慮されるのかについてはケースごとに異なります。そこで,本日は,親権者に関する子の意向についてご説明させていただきます。
これまでもご説明しているように,親権者の判断は子の利益のために行うものであることから,子の意思を尊重すべきことは当然です。家事事件手続法にも,親権者の指定または変更の審判をするとき,子が15歳以上の場合には子の陳述を聞かなければならないと規定されており(169条2項),子の意見を尊重すべきことを規定しています。
もっとも,子が幼いときには,父と母が対立している状況下で両親ともに愛している子どもが,その時々で回答が異なったり,置かれている環境に左右されてしまうことが非常に多いです。そのような状況下でどちらの親と過ごすべきかという判断について,子の意思を重要な判断要素とすべきではないと考えられています。
したがって,幼い子ども(小学校低学年や就学前の幼児)の場合には,一方の親と暮らしたいという意向や,一方の親への嫌悪の意思が確認できたとしても,その発言が真意ではない可能性や真意であったとしても変わる可能性があることから,あくまでも。参考程度に考慮される程度にとどまることになります。
もっとも,家庭裁判所の実務では,子どもの年齢が概ね10歳程度に達している場合には,意思能力に問題はないと考えられています。したがって,意思能力に問題がないとされている10歳程度の子どもの場合には,子の意思の確認がなされ,親権者の判断において考慮されることが一般的です。別の機会にもご説明しますが,子の意思の確認に関しては,家庭裁判所の調査官という子どもに関する専門的な技官において子と面会し意向を確認します。
ご相談者様のケースでもお子さんの意向のみでは,ご相談者様が親権者と指定されることが確定したわけではありません。その他の事情も詳細に確認しなければ正確に判断することは困難であるため,是非一度弁護士にご相談ください。
親権者判断の基準①
<ご相談者からのご質問>
親権者の判断要素についてはわかりました。
では,裁判官は判断要素をもとにどのような基準で親権者を判断するのでしょうか。インターネットなどでは「母性優先の原則」等があり母親が有利であると判断されると聞いたのですが,本当ですか。私の家庭では,いわゆる専業主夫という形をとっており,子どもが生まれた時から,妻ではなく私が子どもを育ててきたのですが・・・・
<弁護士からの回答>
前回は,親権者指定の判断要素についてご説明しましたが,今回から数回に分けて,裁判官がどのような基準で親権者を判断しているのかについてご説明させていただきます。
1 「母性優先の原則」の有無
「母性優先の原則」とは,子(特に幼児)については,母親の存在が不可欠であるとして,特段の事情がないかぎり母親を親権者に指定するべきという考え方です。しかし,前回もご説明したとおり,親権者の判断は,「子の福祉」の観点からどちらがふさわしいかという観点から判断されるため,母親であることということが直ちに「子の福祉」から親権者として相応しいと判断されることにはなりません。よって,建前上は「母性優先の原則」という原則は採用されていません。
もっとも,前回もご説明したとおり,親権者の判断要素として子の監護状況(監護実績等)については,非常に重要な判断要素となっており,日本においては夫が外で働き,妻が家で子を育てるという形が一般的になっているため,母親(妻)が子を監護していることが多いため,母親が親権者として指定されることが多いです。
したがって,よく,親権に関してご相談に来られる方からも「母親だと有利になりますか。」というご質問をいただくのですが,その際には,「母親というだけで有利になるということにはなりませんが,お子さんの養育状況等から母親の方が親権者として指定されることが多いです。」と回答するようにしています。
ご相談者様の事例では,ご相談者様が主にお子さんを監護してきたということですので,監護実績の点においては,ご相談者さまが有利と判断される可能性が高いといえるでしょう。
当事務所へご相談に来られる男性の方には,よく,どうせ母親が親権者として選ばれるのだから親権はあきらめていると話される方がいらっしゃいますが,親権者の判断においては,父親,母親という観点のみならず多くの要素をもとに判断していくため,必ずしも親権者になれないということはありませんので,是非親権について悩まれている場合にはいち早く弁護士にご相談ください。
相続財産に含まれない財産②
<ご相談者様からのご質問>
先日,父が亡くなりました(遺言はありません。)。父の法定相続人は,私と兄の2人なのです。相続財産については,預貯金500万円ほどがあり,兄妹で仲良く250万円ずつで分けることに合意していたのですが,遺産分割協議書を作成する前に,父が兄を受取人とする生命保険をかけており,兄が100万円程生命保険金を受け取っていたことが分かりました。
私としては,相続財産は預貯金と生命保険金の合計600万円であり,300万円がが法定相続分としてもらえると考えているのですが,間違っているのでしょうか。
<弁護士からの回答>
前回は,相続財産に該当しない財産として,一身専属の権利義務についてご説明させていただきましたが,今回は,生命保険金についてご説明させていただきます。
生命保険金については,死亡により支給される仕組みになっていることから,相続財産に含まれると考えられている方が非常に多いのではないかと思います。
しかし,結論からお伝えすると,生命保険金は相続財産に含まれません。理由としては,相続財産とは,相続開始時(死亡した時点)において被相続人が有している財産であるところ,生命保険契約は,契約者と保険会社との間で,保険料を支払うかわりに「被保険者が死亡したことを条件として受取人に対し,生命保険金を支給する」ことを合意する契約です。すなわち,生命保険金はあくまでも保険契約に基づき受取人が受領することができるものであり,被相続人から承継した金銭ではないため,相続財産に該当せず,当該受取人固有の財産となります。
したがって,ご相談者様のケースにおいてもご相談者様の兄が受領した生命保険金100万円については,兄の固有の財産に該当するため,相続財産には含まれないことから,相続財産は預貯金の500万円のみということになります。
このように生命保険金については,遺産分割における相続財産には該当しませんが,生命保険金の額があまりにも高額な場合には,別の機会にご説明しますが,遺留分減殺請求権における「特別受益」として認定される場合もあります。
また,保険金の受取人が「満期の場合には被保険者(被相続人),被保険者が死亡した場合には相続人」と規定されており,相続人が複数存在する場合には,相続財産には含まれないものの,法定相続分にしたがって,各自保険金請求権を有することになります。
また,相続税においては,生命保険金も相続税の課税対象となる「みなし相続財産」に含まれますので,相続税の算定の際には注意が必要です。
相続財産に含まれない財産①
<ご相談者様からのご質問>
先日,元夫が亡くなったと聞きました。離婚調停の際,私が子どもの親権者となり,元夫から毎月2万円の養育費を支払ってもらうように約束してもらいましたが,全然支払ってもらえませんでした。元夫は私と離婚後再婚していましたが,再婚相手には養育費を支払う義務は相続されないのでしょうか。
<弁護士からの回答>
以前にもお話させていただきましたが,被相続人の一身専属の権利義務については相続されず,相続財産には含まれないことになります。そこで,本日は,相続財産に含まれない一身専属の権利義務について説明させていただきます。また,養育費に関しては複雑な問題があるため併せて養育費に関する問題についてご説明させていただきます。
一身専属の権利義務とは,その権利や義務の性質や内容から,他の人に与えたり課したりすることに馴染まない,本人にのみ与えられまたは課せられるべき権利義務のことをいいます。
具体的には,帰属上の一身専属権として,代理権,使用貸借権,労働者である地位等があり,行使上の一身専属権として離婚請求権等があります。
ご相談様のご質問内容では,養育費を支払う義務が相続財産となるかという点が問題となっておりますが,養育費の支払義務に自体は,帰属上の一身専属の義務として,相続の対象とはなりません。したがって,ご相談者様の元夫の再婚相手は,元夫の相続人ですが,養育費を支払う義務までは相続しませんので,今後の養育費に関しては,請求することができません。
もっとも,ご相談者様の事例では,元夫が養育費について,毎月2万円の支払い義務があるにも関わらずこれを支払っておらず,元夫が死亡するまでの未払いの養育費が存在します。この未払いなっている養育費については,上記の養育費を支払う義務とは異なり,単なる,金銭債務となっているため,一身専属の権利義務には該当しません。したがって,ご相談者様の事例の場合でも過去の未払分の養育費については,相続財産として元夫の再婚相手にも相続されます。
ここで注意が必要な点が2点あります。まず,上記の未払分の養育費(金銭債務)は,養育費の対象であるお子さん自身も相続します。この場合相続により債権者と債務者が同一人物になるため債務は消滅します(法律上,混同による消滅といいます。)。
したがって,再婚相手に請求できる金額は,再婚相手の法定相続分に相当する金額となります。
また,過去の未払分の養育費は,毎月支払われる「定期給付債権」であるため,民法169条により,各支払日から5年間で消滅時効になってしまいます。したがって,したがって,何もしていないと未払分の養育費として請求できる金額が毎月毎月減少してしまうことになりますので,いち早く弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
相続財産について②~積極財産~
<ご相談者様からのご質問>
相続財産には借金も含まれるのですね。それでは,積極財産に関してはどのようなものが相続財産になるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
前回は,相続財産に関する総論的なご説明と消極財産の具体例についてご説明させていただきました。今回は,積極財産についてどのようなものが積極財産に該当するかをご説明させていただきます。
1 不動産及び不動産所の権利
被相続人が所有していた土地(宅地,農地,山林)や建物(居宅や店舗も含みます。)等の不動産だけではなく,不動産上に設定されている権利,具体的には,地上権,永小作権や借地権,借家権利等の相続財産に含まれます。したがって,父親名義で賃借していた不動産に関しては父親が亡くなった後でも相続人は不動産を賃借することができます(賃借の対価である賃料を支払う必要はあります。)。
2 現金・有価証券等
現金のみならず預貯金,貸付金,売掛金,株券(株式)等の有価証券についても相続財産になります。この点,預貯金や貸付金等の債権については,可分債権であるのか不可分債権であるのかについてどのように相続人に分配されるのかについて複雑な取扱いになっていますので,別の機会に詳しくご説明させていただきます。
先日,夫が急になくなってしまいました。これから相続のことについて考えなければなりません。夫との間には子どもが1人おり,夫の両親もご兄弟も健在です。この場合,誰が相続人になるのでしょうか。
3 動産
被相続人が所有していた自動車や,家財道具,船舶,宝石,貴金属などの動産についても相続財産になります。動産に関しては相続財産に含まれるのかという問題よりも相続持参の価額をどのように評価するのかという点が問題となります。
4 その他(債権等)
上記以外にも電話加入金,著作権等の権利も相続の対象となります。債務不履行による損害賠償請求権についても相続の対象となります。損害賠償請求権のうち,精神的苦痛に対する慰謝料請求権については従来,一身専属の権利であるとして相続財産に含まれないとされてきましたが,最高裁の判例により(昭和42年11月1日判決),慰謝料請求権であっても相続財産に含まれ相続人において加害者に対し慰謝料請求権を行使することができるとされました。
相続財産について①
<ご相談者様のご質問>
父が先日なくなりました。相続人は私だけなのですが,父が所有していた物は実家の不動産があります。しかし,父はギャンブル等で作った借金もありますが,借金は父が作ったもので私は関係ありませんよね。
<弁護士からの回答>
これまでは,相続人,すなわち,誰が亡くなった人の財産を相続することになるのか,相続人の順位,資格の喪失等についてご説明させていただきました。
今回からは,これまで説明してきた相続人にどういった財産が承継(相続)されるのかという相続財産に関する問題についてご説明させていただきます。
今回は,相続財産の定義や総論的な内容をご説明させていただきます。
民法では,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定されています(民法896条本文)。
したがって,被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続人に承継されるため,相続財産とは,相続開始時に被相続人の財産に属していた一切の権利義務,すなわち,被相続人が有していたプラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)のすべてのことをいいます。もっとも,民法896条但書では「被相続人の一身に専属したものは,この限りではない。」と規定されており,被相続人の一身専属の権利義務に関しては相続財産含まれないことになります。
このように,相続財産については,積極財産(プラスの財産)だけではなく,消極財産(マイナスの財産)についても相続されることになります。積極財産については別の機会のご説明させていただきますが,消極財産としては,負債(借金,事業での買掛金,住宅ローンなど)や,税金関係(所得税,住民税,固定資産税,その他未払いの税金など)に加え,未払いの家賃・地代,未払い分の医療費等も含まれるため,かかる消極財産を承継した相続人は,債権者等に承継した債務等を返済する義務を負うことになります。
また,相続の際には,積極財産のみ承継して,消極財産を承継しないということはできません。したがって,相続する際には,被相続人にどのような相続財産があるのかについてしっかり判明してから相続するかしないかを判断する必要があります(相続放棄については,別の機会でご説明させていただきます。)。
ご相談者様の事例でも,お父様の不動産を相続する際には,お父様が作った債務についても承継し,支払う必要があるので相続するか否かは,慎重に判断された方がよいでしょう。
当事務所でも相続に関しお手伝いさせていただく際には,相続財産を調査するサービスもございますので,お気軽にご相談ください。
特別縁故者について②
<ご相談者様からのご質問>
内縁関係の夫が先日亡くなりました。夫に法定相続人はいないのですが,この場合,特別縁故者として夫の財産を受け取れると聞きました。どのような手続きを行えばいいのでしょうか。
<弁護士からの回答>
前回ご説明したとおり,法定相続人がいない場合には,被相続人の財産は原則として国庫に帰属することになりますが,特別縁故者と認められた場合には,被相続人の財産を特別縁故者として取得することができます。
今回は,特別縁故者の要件と財産を取得するための手続きについてご説明させていただきます。
1 特別縁故者の要件
前回も若干ご説明しましたが,特別縁故者になることができる人物は,民法958条の3に規定されており,
①被相続人と生計を同じくしていた者
→内縁関係のように夫婦と同等の生活を送っている場合や,事実上養子と同様の関係にある人が該当することになります。
②被相続人の療養監護に務めた者
→病気やケガなどで療養する必要がある人に対して看護や介護を行った人も特別縁故者に該当することがあります。もっとも,看護師や介護士等職業上看護等を行うことが予定されている者については特別縁故者に該当しないことになります。
③その他被相続人と特別の縁故があった者
→上記①もしくは②に同等の関係があると認められるような人については特別縁故者に該当することになります。なお,特別縁故者は自然人に限定されることはなく,法人(公益法人,学校法人)についても認められます。例えば,被相続人が生前に,経営者として組織の発展に深く関わっていた法人においては,特別縁故者として財産の承継が認められる場合があります。
2 特別縁故者になるための手続き
特別縁故者になるためには,前提として相続人が存在しないことが必要になります。そこで,別の機会にご説明させていただきますが,まずは,家庭裁判所に対して,相続財産管理人の選任の申立を行う必要があります。相続財産管理人が選任されると,相続財産の調査だけでなく,相続人が存在するかどうかの調査を行うことになります。この調査において,相続人が存在しないことが確定して初めて特別縁故者の申立をすることができます。
特別縁故者として財産の承継を希望する場合には,家庭裁判所に対して,特別縁故者の申立と相続財産分与請求を行う必要があります。
当該申立がなされると,家庭裁判所において,申立人が特別縁故者に該当するかどうかを判断し,特別縁故者に該当するとの判断がなされると,被相続人の財産を相続することができます。
なお,上記の特別縁故者の申立は,相続人が存在しないことが確定してから3か月以内に申し立てる必要があり,3か月を過ぎてしまうと申立が認められなくなってしまうので注意が必要です。
相続財産管理人の申立や特別縁故者の申立て関しては提出すべき資料の収集や,特別縁故者に該当することを証明する必要があるなど,専門的な事柄であるため,特別縁故者として財産の承継を希望される場合には,是非一度,弁護士にご相談ください。
物損の問題点②~経済的全損について~
<ご相談者様からのご質問>
物損事故に遭いました。相手が一方的に悪い事故なので,きちんと修理してもらえると思ったのですが,相手方の保険会社から,「経済的全損状態なので,修理代金は出せません。」といわれました。事故にあって修理が必要なのにどうして修理してもらえないのですか。
<弁護士からの回答>
物損事故の場合,原則として修理代金が支払われるのですが,事故に遭った自動車によっては,無過失事故であっても修理代全額が支払われないことがあります。
今回は,物損事故における経済的全損についてご説明させていただきます。
まず,交通事故における損害賠償請求は,物そのものを事故の前の状態に戻すことではなく,文字通り事故により被った「損害」を金銭的に評価し,その損害を賠償(補填)することができる権利です。
ここで,事故当時の車の価額(時価)が修理額よりも高い場合には,修理額が事故により被った損害になりますので,修理額支払われることになります。
もっとも,車の時価額が,修理額よりも高額である場合には,当該交通事故による損害は,その当時の被害車両の時価に限定されることになります。したがって,修理費用が当該車両の時価を上回る場合には,経済的全損として当該車両の時価のみが賠償されることになります。
当該車両の時価については,オートガイド社の自動車価格月報(通称「レッドブック」といいます。)に基づき判断されますが,走行距離等で価額が異なるため,
中古車販売市場等で平均的な価額を算定したりします。
このように,経済的全損の場合には,修理代金全額は支給されませんが,別の車両を購入する際二発生する検査・登録料,車庫証明費用等の買い替え諸費用については,買い替えに付随するものとして損害に含まれることになります。
なお,経済的全損ではなく物理的全損(客観的に修理することが困難な状況)の場合にも同様に損害額は時価相当額ということになりますが,この場合,損害額には,廃車料や買い替えに通常要する期間の代車料についても請求することができます。
事故に遭われた方は,修理してもらえるのが当然であるという考えであるため,経済的全損の場合には修理代金が支払われないことに対しとても憤りを感じられてしまうかもしれません。しかし,物損事故の場合,損害額に関する正しい知識がないと無用なトラブルが発生してしまいますので,是非一度弁護士にご相談ください。損害額についても正しいアドバイスをさせていただき,トラブルの解決にご協力させていただきます。