返済義務の有無について②~消滅時効について~
返済義務の有無について②~消滅時効について~
<ご相談者様からのご質問>
若い頃に,消費者金融数社からお金を借りており,少しは返していたのですが,働けない時期があり,返せないままずっと放置していました。
つい先日,その消費者金融から督促の手紙がきました。これは返す必要があるのでしょうか。1つの債権者は11年前くらいに裁判をされており判決が確定しています。また1つの消費者金融からは電話があり,返すように言われたため,「今は返済できないので少し待ってほしい」と回答しています。
<弁護士からの回答>
一度お金を借りた以上,返さなければいけないことは当然のことですが,その義務(債務)が一生残り続けるわけではなく,債権者が一定期間権利(債権)を行使しなかった場合にはその権利は消滅することになります。
本日は,消滅時効にかかっている債務についてご説明させていただきます。
消滅時効とは,債権者が一定期間権利(債権)を行使しなかった場合には,その権利が消滅することをいいます。借金についても,弁済期又は最後に返済した日から一定の期間が経過すると,消滅時効の対象となり,債務者は債務を返済する必要がなくなります。消滅時効の対象となる一定の期間については債権の種類ごとに異なっており,知人,友人など商人でない個人から借り入れた場合には10年間,貸金業者が会社である場合には5年間で消滅時効の対象となります。
時効期間が経過する前に,債権者が裁判で請求したり,債務があることを承認(返済する行為も承認に該当する行為です。)した場合には,時効は中断(リセット)され,再び時効期間が経過するまでは,消滅時効を主張することができません。また,裁判により判決が確定した場合には当初の時効期間が5年であったとしても,判決により確定した債権の時効期間は10年間となります。
したがって,ご相談者様の事例でも1社については,判決が確定してから10年以上経過しているので,消滅時効の対象となります。
ここで注意が必要な点は,消滅時効については,時効期間が経過したことにより,当然に債務が消滅するという効果は発生しないということです。消滅時効により債務が消滅するためには,債務者において消滅時効の援用の意思表示(消滅時効の効果を主張するという意思を表示することです。)を行う必要があり,援用があって初めて債務が消滅することになります。そして,時効期間が経過していたとしても,債務を承認するような行為をしてしまった場合には,消滅時効の効果を主張することができなくなってしまいます。したがって,ご相談者様の事例でも,債権者からの連絡に対し返済の猶予を求めており,これは,債務の承認に該当する行為であるため,承認した債権者に対しては,消滅時効を主張することはできません。
以前に借り入れた債務については,上記のとおり消滅時効により返済する必要がないものもございますので,是非一度弁護士にご相談ください。弁護士により,債権者に対し時効援用通知という書面を送ることにより,債務を支払わなくてすむ場合がございます。その際には,ご相談者様の事例にように債権者からの連絡に応じることなくできるだけ早くご相談にお越しいただくのがよいでしょう。
離婚後の年金について
【相談事例②】
年金分割について教えて欲しいです。夫と離婚をして,2年7か月になります。離婚する際に,年金について何も話さないまま,離婚し,結婚していた期間は9年ですが,その間,第3号被保険者でした。自分が勉強不足で離婚してすぐに合意分割の手続きをしていないことに気づき,慌てて調べると離婚成立した翌日から換算して,2年経過してしまうと請求手続きが出来なくなるとの事でした。そうなった場合,結婚していた間の年金は全く含まれなくなるのでしょうか?
【弁護士からの回答】
結論から申し上げますと,現時点で2年以上経過しているため,年金分割は認められず,婚姻期間中に相手方が支払った厚生年金保険料の分割を受けることができません。年金分割については離婚に関する記事において,詳しくご説明させていただきますが,今回は,離婚に伴う,各種請求権の時間的制限についてご説明させていただきます。
1 年金分割について
年金分割とは,夫婦が婚姻期間中に支払った厚生年金保険料を当事者の合意や審判等で定められた割合で分割する制度のこといい,これにより,会社員,公務員などの第1号被保険者が配偶者である第3号被保険者であっても,第1号被保険者である者が支払っていた厚生年金保険料の一部(原則は半分になります。)を自ら支払ったことになります。
この年金分割を求める権利(「分割請求権」といいます。)については,厚生年金法や厚生年金法施行規則にて,離婚が成立した日から2年間以内に,分割割合を決めて年金事務所に申請をする必要があります(2年以内に調停や審判を申し立てるだけではなく,調停や審判で解決し,その結果をもとに,年金事務所へ申請する必要があるので注意が必要です。)。したがって,2年が経過する前に調停や審判等を申し立てていない以上,ご相談者さまのケースでは年金分割は認められません。
2 財産分与について
財産分与とは,婚姻期間中に夫婦で協力し取得した財産を離婚時に分与割合に応じて分配するものですが,財産分与請求権については,離婚と同時に請求することもできますが,離婚後に請求することもできます。もっとも,離婚後に財産分与を請求する際には期間制限があり,民法768条2項により,離婚後2年以内に家庭裁判所に財産分与調停を申し立てなければ財産分与請求を行うことはできません。
3 慰謝料請求
相手方配偶者が不貞行為を行った場合等,相手方の不法行為が原因で離婚する場合には,慰謝料請求を行うことができます。慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条,710条)の行使ですので,民法724条により「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から」3年間で消滅時効にかかってしまいます。したがって,不貞行為が原因で離婚に至った場合には,離婚という損害を知った時点(離婚が成立した日)から3年間以内に行使する必要があります。この点,不貞行為が発覚した時点と離婚が成立した時期が離れており,不貞行為が発覚してから3年以上経過しているが,離婚日は3年が経過していないという場合には,不貞と離婚との因果関係(原因と結果の関係をいいます。)が問題になってきますが,それについては離婚のコラムにおいて詳しくご説明させていただきます。
4 養育費及び面会交流について
夫婦の間に未成年のお子さんがいる場合には離婚時に親権者を夫婦のどちらかに定めなければいけません。その際,監護していない親(非監護親)は原則として,子の生活費として養育費を支払わなければなりません。他方で非監護親は未成年のお子さんと面会交流できる権利を有しています。
この養育費を請求することができる権利と面会交流を請求できる権利については,財産分与や慰謝料と異なり,2年や3年などの期間制限はなく,原則として,子が成人(20歳)に達するまでの期間であればいつでも請求することができます。もっとも,養育費について今まで相手方から支払ってもらえなかった分について,過去にさかのぼって支払うよう求めたとしても,原則としてさかのぼっての請求は認められず,請求した時点からの分しか認められないことの方が多いため,養育費を請求したい場合には早めに弁護士等に相談された方がよいでしょう。
5 まとめ
このように,離婚にまつわる各種の請求権については,それぞれ期間制限が設けられています。離婚の際にこれらの権利についても解決していれば問題はありませんが,離婚時には何ら対応していない場合には,期間が過ぎてしまうと,期間制限があることを知らなかったとしても請求することができなくなってしまうため,早めに弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。
返済義務の有無について①~ヤミ金について~
返済義務の有無について①~ヤミ金について~
<ご相談者さまからのご質問>
借金が積み重なり,消費者金融からも借り入れができなくなってしまいました。インターネット等で調べたのですが,ヤミ金等からお金を借りた場合には,元金も返さなくてよいと聞きました。もし,そうならヤミ金から借りることも考えているのですが・・・・
<弁護士からの回答>
結論から申し上げますと,ヤミ金から借りるのは絶対にやめておくべきです。当事務所にご相談に来られる方も,いわゆるヤミ金からお金を借りてしまった人は,とても悲痛な面持ちで事務所に来られます。今回は,ご依頼者様がヤミ金にお金を借りてしまった際の弁護士としての解決方法についてご説明させていただきます。
ヤミ金とは,法律上の名称ではないのですが,闇金融の略であり,貸金業としての登録を行っていない貸金業者や,登録していたとしても出資法に違反する高金利を取る業者のことを指します。
こうしたヤミ金業者は,通常の消費者金融と異なり,融資の際に審査などなく,借り入れを希望すれば直ちに貸してくれるのですが,金利が非常に高く,いわゆるトサン(10日間で元金の3割の利息が発生するものです。)などで貸し付けるもので,少しの間ヤミ金からお金を借りただけで,膨大な金額の請求がなされることになります。
それだけでなく,ヤミ金の業者の怖いところは,違法な取りたてがなされるところにあります。携帯電話に執拗に取り立ての電話が鳴り続け,ひどい場合には家まで取り立てに来るなど執拗な取り立てがなされます。
また,一度ヤミ金業者へ借り入れを行い,連絡先等個人情報を提供してしまうと,ヤミ金業者間で顧客の情報の共有がなされ,他のヤミ金業者が借り入れをするよう働きかけてくる等,ヤミ金からの借り入れから逃れられないような状況に陥ってしまう可能性もあります。
もし,ヤミ金からお金を借りてしまい,執拗な取り立てなどで困っている場合にはいち早く弁護士にご相談ください。
出資法では,貸金業者の上限金利を29.2%と定めており,それを超える利息の貸付契約を行った場合には出資法違反として刑罰の対象になります。さらに,上記のトサンの貸付けのように,年109.5%を越える利息の貸付では,そもそも契約自体が公序良俗に反し無効(民法90条)になるだけでなく,貸付金は民法708条の不法原因給付となり,ヤミ金業者から借り入れたお金は,元金も含めて一切返還する必要はありません(返済した金員についても返還請求することが可能になりますが,犯罪を行っている人達からの回収可能性は乏しく,現実的ではありません。)。
したがって,弁護士が代理人に入った場合には,直ちにヤミ金業者に連絡をして,法律上返還する義務がないこと,今後依頼者に対し取り立て行為を行わないことを伝えることにより,ほとんどの場合,ヤミ金業者からの違法な取り立てを止めることができます。仮に,弁護士からの連絡によっても取りたての電話等が止まらない場合には警察にヤミ金業者であることを連絡し,携帯電話の番号等の情報を伝えることにより,電話を止める措置を講じてもらうことも可能です。
このように,ヤミ金からお金を借りてしまったとしても,法律上返還する義務はありません。しかし,ご相談者様のように,返す意思がないのにも関わらず,ヤミ金からお金を借りる行為は,それ自体が詐欺として犯罪行為に該当するだけでなく元金すら一切返済しない場合には,ヤミ金業者からの取り立ては非常に激しいものとなります。警察を通じ携帯を止めたとしても,番号を変え執拗に取り立てがなされる可能性があるため,安易にヤミ金からお金を借り入れることは絶対にやめておいた方がよいでしょう。
借金で苦しまれている方には,法律上適切な解決方法がありますので,是非一度弁護士にご相談ください。
当事務所では、初回無料相談や出張相談もご対応致します。
借金問題の解決方法について
借金問題の解決方法について
<ご相談者様からのご質問>
借金の支払いで困っているのですが,弁護士さんに頼むとどういった形で解決してくれるのですか。
<弁護士からの回答>
前回ご説明させていただいた通り,借金問題を適切に解決するためには,ご相談者様から様々な事情や資料をご準備いただく必要があります。本日は,借金問題の解決方法についてご説明させていただきます。
1 返済義務の調査
借金問題と聞くと,一般的には破産や任意整理などをすぐイメージされる かもしれませんが,弁護士としてはまず,ご相談者様が支払う必要があると考えられている債務について,本当に支払う必要があるのか(返済義務を有しているのか)について調査していくことになります。
例えば,ご依頼者様が,銀行や消費者金融ではなく,いわゆるトサン(10日間で元金の3割の利息が発生する貸し借りです。)等でお金を貸しているヤミ金等からお金を借りている場合には,法律上,返済義務が認められない場合があります(詳しくは別の機会にご説明させていただきます。)。
その他にも,最後に借り入れや返済をしてから長期間経過している場合には,消滅時効により債務が消滅する場合もあります。また,テレビCMでも頻繁にやっているのでご存知の方も多いとは思いますが,過払金が発生する場合には,債務を返済する義務がなくなるだけでなく,返済していたお金が返還される場合もあります。
このように,お話をお伺いしていくなかで,そもそも返済義務が存在しない可能性がある場合には,返済せずにすむような形で,代理人としてお手伝いさせていただくことになります。具体的な,誰から借りているか,いつから借入と返済を行っているか,最後に返済を行ったのはいつかということを中心にお伺いさせていただくことになります。
2 債務整理について
上記のように,返済義務がそもそも存在するか否かを調査した結果,返済義務が存在する場合には,破産により債務を消滅させたり,民事再生により債務の額を減額したり,任意整理により,毎月の支払額を減少させる等して,ご依頼者様の経済的な再建をお手伝いさせていただくことになります(これを一般的に「債務整理」といいます。)。そして,ご相談者さまから,債務の総額や,毎月の支払額,家庭の収支,所有している資産状況などをお伺いさせていただくことにより,ご相談者様の場合にはどの債務整理の方法が一番適切であるかを判断していくことになります。
また,債務整理を行っていくうえで,重要なのはご依頼様の生活状況等の見直しを行うことが必要です。ケースは様々ではありますが,借り入れの原因として過度の浪費やギャンブルなどが存在する場合には,仮に,今回債務整理が解決したとしても,再び同じように借金を増やしてしまうことになり,弁護士としてお手伝いさせていただいた意味がなくなってしまいます。
したがって,債務整理にてお手伝いさせていただく場合には,差し出がましくはなってしまいますが,客観的に見て生活状況を改善した方がよいと考えられる場合には,毎月の収支等についてもアドバイスさせていただくことがございます。このように,最適な債務整理の方法を模索しつつ,経済的な再建に向けて誠心誠意お手伝いさせていただきますので,是非お気軽にお問い合わせください。
借金問題のご相談を受けるにあたって
借金問題のご相談を受けるにあたって
<ご相談者様からのご質問>
借金を抱え,支払いも厳しくなってきているので,そろそろなんとかしないといけないと考えているのですが,何をどうすればいいかもわかりません。自分ではどうしようもできないので,弁護士さんに相談しようと思います。何を準備すればいいですか。
<弁護士からの回答>
当事務所に借金問題でお問合せいただく方の多くの皆様は,借金の不安から解放されたいという気持ちが強く,「なんとかしてください。」とだけお伝えされる場合が多いです。もっとも,ご相談者様が抱えている借金問題をきちんと解決するためには,ご相談者さまから様々な事情をお伺いすることにより,ご相談者様が現在置かれている状況を正確に把握することがなによりも重要です。
そこで今回は,借金問題をご相談いただく際にご準備いただきたい内容,お伝えしていただきたい内容についてご説明させていただきます。
借金問題について弁護士がお手伝いさせていただく際に,ご相談者さまからお伺いさせていただく事項としては,大きく分けると,①債務に関する事項と②債務者(ご相談者様)に関する事項の2つにわけることができます。
①債務に関する事項としては,債権者の種類及び数(消費者金融,銀行,債権回収会社,ヤミ金業者,個人(知人,親族),保証債務などがそれぞれ何社(何人)あるかということです。),債務総額,債権者ごとの債務額,借入時期,借入目的(生活費,事業費,遊興費,借金返済のための借入等),毎月の支払額(各債権者への支払額,毎月の支払額合計),これまでの返済状況(毎月送れずに返済していたか,滞納し始めている状況か,滞納して何年も経過している状況か。),債権者から督促状や裁判所から書面が届いてないか等を確認することになります。ご相談に来られる際には,できれば債権者種類及び数,債権総額,毎月の支払金額等を把握して弁護士にお伝えいただけると,今後の方針等をある程度把握することが可能になります。
次に,②債務者(ご依頼者様)に関する事項としては,職業(給与所得者,個人事業主,無職,生活保護受給者等),収入状況(総収入,手取り額,ボーナスの有無,個人事業主の方は確定申告書等があるとスムーズです。また,配偶者がいらっしゃる場合には配偶者の方の収入状況についても教えていただけると助かります。),資産状況(不動産の有無(住宅ローンの有無),預貯金額,自動車の有無・年式(カーローンの有無,リースの有無),生命保険などの解約返戻金の金額等)家族状況(結婚しているか,独身の場合には両親と同居しているか等に加え,今回,弁護士に債務整理について相談していることを伝えているか(借金を負っていることを伝えているか)などをお聞きすることになります。),支出状況(家賃や食費,光熱費などの各金額)に加え,これまで破産手続きや任意整理などを行ったことがあるか等を確認させていただきます。また,併せて,弁護士に相談にするまでに至った大まかな経緯(いつごろ借金が増え始めたのか,その原因など)をお伺いさせていただくことにあります。
上記のような内容をお伺いすることで,どのような手段により債務整理を行うべきかといった道筋をたてることができ,ご相談者様にアドバイスをすることができます。
したがって,弁護士にご相談いただく際は,上記の各事項について,可能か限りで差し支えないのでご検討していただければと考えております。
借金に苦しんでいる方へ
借金に苦しんでいる方へ
司法統計によると,自己破産の件数は,平成3年(1991年)にバブル経済が崩壊し,そこから増加し続け,平成15年(1998年)に年間の破産件数(法人破産も含みます。)は約25万件となっています。その後,破産の件数は減少し,平成26年からは,平均して年間約7万~8万件程度の件数となっております。もっとも,上記の件数は,破産のみの件数であり,個人再生,任意整理を行ったのみにならず,借金を抱えて返済に苦しんでいる人も含めると,借金問題を背負っている人は数多くいらっしゃいます。
借金の支払いに追われている状況では,貯金を増やすことができないばかりか借金の返済のために借り入れを行わざるを得なくなり,債務はどんどん膨らんでいく一方になり,まっとうな生活ができなくなってしまい,ご自身のみな らず,ご家族などにも多大な迷惑をかけてしまうことになってしまいます。
ひどい場合には,借金が原因で,離婚や失職等で家庭が崩壊してしまったり,さらには,借金を苦にして自殺をしてしまう方も残念ながら存在するのが現状です。そのようは最悪の事態を避けるためにも,早期に弁護士に相談し,借金問題を解決(一般的に「債務整理」といいます。)する必要があります。
ここで,借金を背負われている方の中には,ギャンブルや遊興費として使いこんでしまった方もいれば,仕事ができない若しくは収入が減ったことが原因で生活費として借り入れをしている方,亡くなった親が多額の借金を抱えており,その借金を背負ってしまった方など,借金を負ってしまった原因は人それぞれ様々です。
そして,上記のような借金を負ってしまった原因によっても,解決する方法は異なってきます。それだけでなく,借金の額,毎月の返済金額,仕事の内容,収入状況,支出状況,家族構成,健康状態,資産の有無等,借金を抱えられている方の様々な事情を正確に把握しなければ,どのような解決方法が適切であるかを判断することはできません。
このコラムでは,ご相談者様からのご質問に回答するといった形で借金問題に関するあらゆる法的問題につき弁護士としてアドバイスすることにより,借金を抱えて苦しんでおられる皆様のお力に少しでもなれればと思っております。
借金に苦しんでおられる方は,責任感や恥ずかしさなどから,家族や他の人に相談することができず,1人で悩み抱え込んでしまう方がとても多いです。そのような方は,是非一度このコラムをご一読いただき,どのように借金問題を解決していくべきかという大まかな内容を把握していただき,弁護士に借金問題をご相談いただくきっかけにしていただければと思います。
当事務所は福岡の那珂川に事務所が御座います。福岡市南区や春日市、大野城市、太宰府市の皆様からもよくご相談を頂いております。
まずは、初回無料相談をご利用頂ければと思います。
特別縁故者について①
特別縁故者について①
<ご相談者様からのご質問>
【ケース①】
10年以上内縁関係にあった夫が先日亡くなりました。席を入れていなかった理由は,夫には前妻との間の子がいたためそのお子さんに配慮してのことでした。夫の財産については一切受け取ることができないのでしょうか。
【ケース②】
10年以上内縁関係にあった夫が先日亡くなりました。夫には配偶者も子どももおりません。夫の両親等も既に亡くなっています。夫の財産については一切受け取ることができないのでしょうか。
<弁護士からの回答>
ケース①とケース②でご相談者様が置かれている状況についてはほとんど同じに思えますが,結論自体は異なります。今回は,内縁配偶者の相続と特別縁故者についてご説明させていただきます。
以前にもお話ししましたが,法定相続人である「配偶者」とは,法律上の配偶者のみであり,事実婚状態の内縁の妻は法定相続人にはなりません。もっとも,内縁の妻に関しては,単に婚姻届が提出されていないだけで,その実質は法律上の配偶者と同じであることから,法律上の配偶者と同様の保護が図られています。具体的には,内縁関係を解消する際には財産分与の請求だけでなく,相手方に帰責事由が存在する場合には,内縁関係解消を原因とする慰謝料請求を行うことも可能です。
しかし,内縁状態の場合,配偶者が死亡してしまうとすべて相続の手続により進んでしまうため,パートナーの死後に財産分与の規定を準用などして財産を得ることもできません(最高裁判所平成12年3月10日決定)。したがって,ケース①の場合には,ご相談者様のパートナーを被相続人とする相続における相続人は,お子さんになられるので,ご相談者様は財産を一切得ることができません(財産を得るためには,パートナーに遺言を作成してもらう必要があります。)。
では,ケース②の場合にはどうでしょうか。ケース①と異なり,ご相談者様のパートナーの方には法定相続人がいらっしゃいません。別の機会に詳しくご説明させていただきますが,相続人が存在しないと最終的に判断された場合には,被相続人が有していた財産は国庫(国の財産)に帰属することになります。しかし,死亡した人に相続人が存在しない場合等であっても,「被相続人と生計を同じくしていた者」,「被相続人の療養看護に努めた者」,など「被相続人と特別の縁故があった者」(特別縁故者といいます。)がいる場合には,その者からの請求により,家庭裁判所が相当と認めるときには,相続財産の全部又は一部を取得することができます(民法958条の3第1項)。したがって,ご相談者様の場合にも,相続人ではないものの,特別縁故者に該当する場合には財産を取得することができます。
次回は,特別縁故者の要件や,家庭裁判所への申立て方法等についてご説明させていただきます。
法定相続分について⑤
法定相続分について⑤
<ご相談者様からのご質問>
今では非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じなのですね。私は以前(平成15年頃)父の相続の際,遺産分割の審判を行ったのですが,その際は,非嫡出子として,他の兄弟よりも低い相続分しかもらえませんでした。その審判はとうの昔に確定してしまっているのですが,今からどうにかすることはできませんか。
<弁護士からの回答>
前回は,非嫡出子と嫡出子との間で相続分を区別している規定が憲法違反であるとした平成25年9月4日の最高裁判所の決定についてご紹介させていただきましたが,上記最高裁判所の決定は,当該決定が出された以前の相続に関しては影響を及ぼすのでしょうか。今回は,上記最高裁判所の決定の効力が及び範囲についてご説明させていただきます。
上記最高裁判所の決定は,平成25年9月4日に出されていることから,平成25年9月4日以降に発生した相続に関しては,全ての相続に関し非嫡出子であっても嫡出子と同じ法定相続分を取得することになります。
また,上記最高裁判所の決定は,平成13年7月に被相続人が死亡し,相続が開始された事件であったため,平成13年7月時点における,民法900条4号但書のうち非嫡出子と嫡出子の相続分に関する規定(「本件規定」といいます。)の有効性について判断しており,「本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。」としています。この判事からすると,平成13年7月以降に発生した相続すべてについて効力を及ぼすように思えます。
しかし,上記最高裁決定は,平成13年7月から平成25年9月までの間に発生した相続において,本件規定が有効であることを前提として解決した遺産分割の事件が多数存在することから,過去に解決した事件についてまで効力が及ぶとすると,法的な安定性を害することから,本決定の違憲判断は平成13年7月から本決定までの間に開始された他の相続について,本件規定を前提としてされた遺産分割の審判,その他の裁判,遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないとしています。
したがって,最高裁判所の決定を素直に読むと,平成13年7月1日以降に開始した相続について,「確定的なものとなっ」ていない場合には,非嫡出子と嫡出子は同じ法定相続分を有することになり,審判などで「確定的なものとなっ」ている場合には,もはや非嫡出子の相続分を争えないことになります。そうすると,ご相談者様の事例においても,すでに審判が確定している以上,残念ながら成立した遺産分割の効力を改めて争うことはできません。
なお,平成13年7月1日よりも前に発生した相続(確定的な法律関係が存在しないことを前提としています。)について,本件最高裁決定の効力が及ぶかについて,本件決定は直接判断をしているわけではありませんが,本件決定が,「その相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。」と判断していることに加え,平成12年6月30日に発生した相続を対象として,本件規定を合憲であると判断したものがあるため(最高裁判所平成21年9月30日決定),少なくとも平成12年6月以前に発生した相続については,本件決定の効力は及ばないと判断される可能性が高いといえます。
ご自身が婚外子である場合,上記のとおり以前に発生した相続であっても,嫡出子と同じ相続分をご主張できる場合は十分にございますので,遺産分割等を進める前に是非一度弁護士にご相談ください。
法定相続分について④
法定相続分について④
<ご相談者さまからのご質問>
先日(平成28年12月),父が亡くなりました。父と母との間の子供は私だけだと思っていました。しかし,相続手続きのために戸籍を取り寄せていたら,父に母以外の女性との間に子どもがおり,父が認知をしていたことがわかりました。母も私も今回はじめて知りとてもショックなのですが,この場合,父の財産はどのように分けられることになるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
なかなかドラマチックな展開になっていますね・・・普通に生活している方が戸籍を見る機会は,ご自身が結婚や離婚をするときや相続のときしかないのが通常ですので,相続をきっかけにそれまで知らなかった事実が明らかになるケースも少なくありません(現に,上記と同じようなご相談をいただいたこともございます。)今回は,嫡出子と非嫡出子の法定相続分についてご説明させていただきます。
法律上の夫婦(婚姻関係にある男女)から生まれた子どものことを嫡出子といいます(なお,嫡出子には「推定される嫡出子」と「推定されない嫡出子」の2種類がありますが,その説明に関しては別の機会にさせていただきます。)。そして,法律上の婚姻関係のない男女の間に生まれた子どものことを非嫡出子といいます。したがって,ご相談者様の事例の場合には,ご相談者様が嫡出子となり,今回の戸籍の調査で判明したお父様とお母様ではない女性との間の子が非嫡出子となります(非嫡出子は婚外子とも呼ばれています。)。
従前,民法では,嫡出子と非嫡出子との間で相続分について区別をしていました。配偶者以外の相続人が複数人存在する場合(子が2人,兄弟が3人いる場合などです。)に関して規定している民法900条4項の但書では,「嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の二分の一とし」と規定されており,非嫡出子は嫡出子の2分の1の相続分しか有しないとされていました。
しかし,この規定に関しては,非嫡出子が嫡出子と同じ子であるにもかかわらず,父母が婚姻関係にあるかないかという子自身の意思により選択することができない事情により,相続において大きな不利益を被るのは不平等ではないかとの批判が多くありました。
そして,平成25年9月4日,最高裁判所において,民法第900条4号但書の規定のうち非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分は,法の下の平等に反し違憲(憲法違反)であると判示しました(最大決平成25年9月4日)。また,平成25年12月5日に,民法の一部を改正する法律が成立し,民法900条4号但書の規定のうち,非嫡出子と嫡出子との間の相続分に関する部分は削除されました。
したがって,上記最高裁決定が出された平成25年9月4日以降に発生した相続は全て,非嫡出子であっても嫡出子と同じ法定相続分となるため,ご相談者様の事例でも,法定相続分は配偶者であるご相談者様のお母さまが2分の1,ご相談者様の別のお子さん(婚外子)がそれぞれ4分の1(2分の1×2分の1)ずつとなります。
次回では,上記最高裁決定の効力の及ぶ範囲についてご説明させていただきます。
法定相続分について③
法定相続分について③
<ご相談者様からのご質問>
先日父が亡くなりました。家族は母と子が私含めて3人いましたが,私の弟2人(A,B)は,父が死ぬ前に亡くなっており,Aには子どもが2人(C,D)Bには子どもが1人(E)おります。Bは,子どもが生まれてすぐに奥さんと一緒に交通事故で亡くなっており身寄りが他にいなかったため,私の父が養子縁組をして育てていました。この場合,父の財産については誰がどれだけ相続することになるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
ご相談者様の事例では,代襲相続が発生していることに加え,代襲相続人の1人が被相続人と養子縁組を行っていることが相続分の判断を複雑にしています。そこで今回は,代襲相続人の相続分と相続人の資格が重複した場合の取り扱いについてご説明させていただきます。
まず,被相続人(ご相談者様の父)の配偶者は当然相続人となります。また,子であるご相談者様も相続人になることに争いの余地はありません。さらに,ご相談者様の弟2人(A,B)は被相続人が死亡する前に亡くなっているため,A,Bのそれぞれの子ども(C,D,E)は代襲相続人に該当します。そして,代襲相続人の相続分は「その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。」(民法901条1項本文)と規定されており,かつ,代襲相続人が複数の場合には,その著経緯存続が受けるべきであった相続分を法定相続分に従って分配します(民法901条1項但書,900条)。
また,Bの子どもEは,被相続人と養子縁組を行っており,Eは代襲相続人であるとともに,子でもあるということになり,相続人の資格が重複していることなりなりますが,相続人の資格が重複している場合であっても,各資格に基づく相続分を合算して取得することができます。
以上をもとに,本件の各人の相続分についてみると,配偶者(ご相談者様のお母さま)は2分の1の相続分を有することになります。そして,子は,養子縁組をしたEを含めると4人となるので,まず,子の相続分としては,2分の1×4分の1で8分の1となります。したがって,ご相談者様は8分の1の相続分を有します。そして,Aの子ども(C,D)は代襲相続人として,Aの相続分(8分の1)を法定相続分にしたがい,それぞれ取得することになるため,C,Dの相続分はそれぞれ8分1×2分の1の16分の1となります。
最後に,Eは養子縁組による子としての相続分8分の1に加え,Bの代襲相続人としての相続分を合算した4分の1(8分の2)が相続分ということになります。
ご相談者さまの事例だけでなく,被相続人のお子さんの人数が多い場合や,被相続人の方が大往生され高齢でお亡くなりになられた場合,養子縁組や相続放棄等が絡んでくると,相続人が誰であるか,誰がどれだけの相続分を有しているかの判断が非常に複雑になってきます。当事務所では,遺産分割協議の代理人としてお手伝いさせていただく前提として,戸籍収集サポート(戸籍を収取し,相続関係図を作成)や,相続サポート(戸籍収集サポートに加え,財産関係の調査,遺産分割協議書の作成)等も取り扱っておりますので,是非お気軽にお問合せください。