借金問題のご相談を受けるにあたって
借金問題のご相談を受けるにあたって
<ご相談者様からのご質問>
借金を抱え,支払いも厳しくなってきているので,そろそろなんとかしないといけないと考えているのですが,何をどうすればいいかもわかりません。自分ではどうしようもできないので,弁護士さんに相談しようと思います。何を準備すればいいですか。
<弁護士からの回答>
当事務所に借金問題でお問合せいただく方の多くの皆様は,借金の不安から解放されたいという気持ちが強く,「なんとかしてください。」とだけお伝えされる場合が多いです。もっとも,ご相談者様が抱えている借金問題をきちんと解決するためには,ご相談者さまから様々な事情をお伺いすることにより,ご相談者様が現在置かれている状況を正確に把握することがなによりも重要です。
そこで今回は,借金問題をご相談いただく際にご準備いただきたい内容,お伝えしていただきたい内容についてご説明させていただきます。
借金問題について弁護士がお手伝いさせていただく際に,ご相談者さまからお伺いさせていただく事項としては,大きく分けると,①債務に関する事項と②債務者(ご相談者様)に関する事項の2つにわけることができます。
①債務に関する事項としては,債権者の種類及び数(消費者金融,銀行,債権回収会社,ヤミ金業者,個人(知人,親族),保証債務などがそれぞれ何社(何人)あるかということです。),債務総額,債権者ごとの債務額,借入時期,借入目的(生活費,事業費,遊興費,借金返済のための借入等),毎月の支払額(各債権者への支払額,毎月の支払額合計),これまでの返済状況(毎月送れずに返済していたか,滞納し始めている状況か,滞納して何年も経過している状況か。),債権者から督促状や裁判所から書面が届いてないか等を確認することになります。ご相談に来られる際には,できれば債権者種類及び数,債権総額,毎月の支払金額等を把握して弁護士にお伝えいただけると,今後の方針等をある程度把握することが可能になります。
次に,②債務者(ご依頼者様)に関する事項としては,職業(給与所得者,個人事業主,無職,生活保護受給者等),収入状況(総収入,手取り額,ボーナスの有無,個人事業主の方は確定申告書等があるとスムーズです。また,配偶者がいらっしゃる場合には配偶者の方の収入状況についても教えていただけると助かります。),資産状況(不動産の有無(住宅ローンの有無),預貯金額,自動車の有無・年式(カーローンの有無,リースの有無),生命保険などの解約返戻金の金額等)家族状況(結婚しているか,独身の場合には両親と同居しているか等に加え,今回,弁護士に債務整理について相談していることを伝えているか(借金を負っていることを伝えているか)などをお聞きすることになります。),支出状況(家賃や食費,光熱費などの各金額)に加え,これまで破産手続きや任意整理などを行ったことがあるか等を確認させていただきます。また,併せて,弁護士に相談にするまでに至った大まかな経緯(いつごろ借金が増え始めたのか,その原因など)をお伺いさせていただくことにあります。
上記のような内容をお伺いすることで,どのような手段により債務整理を行うべきかといった道筋をたてることができ,ご相談者様にアドバイスをすることができます。
したがって,弁護士にご相談いただく際は,上記の各事項について,可能か限りで差し支えないのでご検討していただければと考えております。
借金に苦しんでいる方へ
借金に苦しんでいる方へ
司法統計によると,自己破産の件数は,平成3年(1991年)にバブル経済が崩壊し,そこから増加し続け,平成15年(1998年)に年間の破産件数(法人破産も含みます。)は約25万件となっています。その後,破産の件数は減少し,平成26年からは,平均して年間約7万~8万件程度の件数となっております。もっとも,上記の件数は,破産のみの件数であり,個人再生,任意整理を行ったのみにならず,借金を抱えて返済に苦しんでいる人も含めると,借金問題を背負っている人は数多くいらっしゃいます。
借金の支払いに追われている状況では,貯金を増やすことができないばかりか借金の返済のために借り入れを行わざるを得なくなり,債務はどんどん膨らんでいく一方になり,まっとうな生活ができなくなってしまい,ご自身のみな らず,ご家族などにも多大な迷惑をかけてしまうことになってしまいます。
ひどい場合には,借金が原因で,離婚や失職等で家庭が崩壊してしまったり,さらには,借金を苦にして自殺をしてしまう方も残念ながら存在するのが現状です。そのようは最悪の事態を避けるためにも,早期に弁護士に相談し,借金問題を解決(一般的に「債務整理」といいます。)する必要があります。
ここで,借金を背負われている方の中には,ギャンブルや遊興費として使いこんでしまった方もいれば,仕事ができない若しくは収入が減ったことが原因で生活費として借り入れをしている方,亡くなった親が多額の借金を抱えており,その借金を背負ってしまった方など,借金を負ってしまった原因は人それぞれ様々です。
そして,上記のような借金を負ってしまった原因によっても,解決する方法は異なってきます。それだけでなく,借金の額,毎月の返済金額,仕事の内容,収入状況,支出状況,家族構成,健康状態,資産の有無等,借金を抱えられている方の様々な事情を正確に把握しなければ,どのような解決方法が適切であるかを判断することはできません。
このコラムでは,ご相談者様からのご質問に回答するといった形で借金問題に関するあらゆる法的問題につき弁護士としてアドバイスすることにより,借金を抱えて苦しんでおられる皆様のお力に少しでもなれればと思っております。
借金に苦しんでおられる方は,責任感や恥ずかしさなどから,家族や他の人に相談することができず,1人で悩み抱え込んでしまう方がとても多いです。そのような方は,是非一度このコラムをご一読いただき,どのように借金問題を解決していくべきかという大まかな内容を把握していただき,弁護士に借金問題をご相談いただくきっかけにしていただければと思います。
当事務所は福岡の那珂川に事務所が御座います。福岡市南区や春日市、大野城市、太宰府市の皆様からもよくご相談を頂いております。
まずは、初回無料相談をご利用頂ければと思います。
特別縁故者について①
特別縁故者について①
<ご相談者様からのご質問>
【ケース①】
10年以上内縁関係にあった夫が先日亡くなりました。席を入れていなかった理由は,夫には前妻との間の子がいたためそのお子さんに配慮してのことでした。夫の財産については一切受け取ることができないのでしょうか。
【ケース②】
10年以上内縁関係にあった夫が先日亡くなりました。夫には配偶者も子どももおりません。夫の両親等も既に亡くなっています。夫の財産については一切受け取ることができないのでしょうか。
<弁護士からの回答>
ケース①とケース②でご相談者様が置かれている状況についてはほとんど同じに思えますが,結論自体は異なります。今回は,内縁配偶者の相続と特別縁故者についてご説明させていただきます。
以前にもお話ししましたが,法定相続人である「配偶者」とは,法律上の配偶者のみであり,事実婚状態の内縁の妻は法定相続人にはなりません。もっとも,内縁の妻に関しては,単に婚姻届が提出されていないだけで,その実質は法律上の配偶者と同じであることから,法律上の配偶者と同様の保護が図られています。具体的には,内縁関係を解消する際には財産分与の請求だけでなく,相手方に帰責事由が存在する場合には,内縁関係解消を原因とする慰謝料請求を行うことも可能です。
しかし,内縁状態の場合,配偶者が死亡してしまうとすべて相続の手続により進んでしまうため,パートナーの死後に財産分与の規定を準用などして財産を得ることもできません(最高裁判所平成12年3月10日決定)。したがって,ケース①の場合には,ご相談者様のパートナーを被相続人とする相続における相続人は,お子さんになられるので,ご相談者様は財産を一切得ることができません(財産を得るためには,パートナーに遺言を作成してもらう必要があります。)。
では,ケース②の場合にはどうでしょうか。ケース①と異なり,ご相談者様のパートナーの方には法定相続人がいらっしゃいません。別の機会に詳しくご説明させていただきますが,相続人が存在しないと最終的に判断された場合には,被相続人が有していた財産は国庫(国の財産)に帰属することになります。しかし,死亡した人に相続人が存在しない場合等であっても,「被相続人と生計を同じくしていた者」,「被相続人の療養看護に努めた者」,など「被相続人と特別の縁故があった者」(特別縁故者といいます。)がいる場合には,その者からの請求により,家庭裁判所が相当と認めるときには,相続財産の全部又は一部を取得することができます(民法958条の3第1項)。したがって,ご相談者様の場合にも,相続人ではないものの,特別縁故者に該当する場合には財産を取得することができます。
次回は,特別縁故者の要件や,家庭裁判所への申立て方法等についてご説明させていただきます。
法定相続分について⑤
法定相続分について⑤
<ご相談者様からのご質問>
今では非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じなのですね。私は以前(平成15年頃)父の相続の際,遺産分割の審判を行ったのですが,その際は,非嫡出子として,他の兄弟よりも低い相続分しかもらえませんでした。その審判はとうの昔に確定してしまっているのですが,今からどうにかすることはできませんか。
<弁護士からの回答>
前回は,非嫡出子と嫡出子との間で相続分を区別している規定が憲法違反であるとした平成25年9月4日の最高裁判所の決定についてご紹介させていただきましたが,上記最高裁判所の決定は,当該決定が出された以前の相続に関しては影響を及ぼすのでしょうか。今回は,上記最高裁判所の決定の効力が及び範囲についてご説明させていただきます。
上記最高裁判所の決定は,平成25年9月4日に出されていることから,平成25年9月4日以降に発生した相続に関しては,全ての相続に関し非嫡出子であっても嫡出子と同じ法定相続分を取得することになります。
また,上記最高裁判所の決定は,平成13年7月に被相続人が死亡し,相続が開始された事件であったため,平成13年7月時点における,民法900条4号但書のうち非嫡出子と嫡出子の相続分に関する規定(「本件規定」といいます。)の有効性について判断しており,「本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。」としています。この判事からすると,平成13年7月以降に発生した相続すべてについて効力を及ぼすように思えます。
しかし,上記最高裁決定は,平成13年7月から平成25年9月までの間に発生した相続において,本件規定が有効であることを前提として解決した遺産分割の事件が多数存在することから,過去に解決した事件についてまで効力が及ぶとすると,法的な安定性を害することから,本決定の違憲判断は平成13年7月から本決定までの間に開始された他の相続について,本件規定を前提としてされた遺産分割の審判,その他の裁判,遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないとしています。
したがって,最高裁判所の決定を素直に読むと,平成13年7月1日以降に開始した相続について,「確定的なものとなっ」ていない場合には,非嫡出子と嫡出子は同じ法定相続分を有することになり,審判などで「確定的なものとなっ」ている場合には,もはや非嫡出子の相続分を争えないことになります。そうすると,ご相談者様の事例においても,すでに審判が確定している以上,残念ながら成立した遺産分割の効力を改めて争うことはできません。
なお,平成13年7月1日よりも前に発生した相続(確定的な法律関係が存在しないことを前提としています。)について,本件最高裁決定の効力が及ぶかについて,本件決定は直接判断をしているわけではありませんが,本件決定が,「その相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。」と判断していることに加え,平成12年6月30日に発生した相続を対象として,本件規定を合憲であると判断したものがあるため(最高裁判所平成21年9月30日決定),少なくとも平成12年6月以前に発生した相続については,本件決定の効力は及ばないと判断される可能性が高いといえます。
ご自身が婚外子である場合,上記のとおり以前に発生した相続であっても,嫡出子と同じ相続分をご主張できる場合は十分にございますので,遺産分割等を進める前に是非一度弁護士にご相談ください。
法定相続分について④
法定相続分について④
<ご相談者さまからのご質問>
先日(平成28年12月),父が亡くなりました。父と母との間の子供は私だけだと思っていました。しかし,相続手続きのために戸籍を取り寄せていたら,父に母以外の女性との間に子どもがおり,父が認知をしていたことがわかりました。母も私も今回はじめて知りとてもショックなのですが,この場合,父の財産はどのように分けられることになるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
なかなかドラマチックな展開になっていますね・・・普通に生活している方が戸籍を見る機会は,ご自身が結婚や離婚をするときや相続のときしかないのが通常ですので,相続をきっかけにそれまで知らなかった事実が明らかになるケースも少なくありません(現に,上記と同じようなご相談をいただいたこともございます。)今回は,嫡出子と非嫡出子の法定相続分についてご説明させていただきます。
法律上の夫婦(婚姻関係にある男女)から生まれた子どものことを嫡出子といいます(なお,嫡出子には「推定される嫡出子」と「推定されない嫡出子」の2種類がありますが,その説明に関しては別の機会にさせていただきます。)。そして,法律上の婚姻関係のない男女の間に生まれた子どものことを非嫡出子といいます。したがって,ご相談者様の事例の場合には,ご相談者様が嫡出子となり,今回の戸籍の調査で判明したお父様とお母様ではない女性との間の子が非嫡出子となります(非嫡出子は婚外子とも呼ばれています。)。
従前,民法では,嫡出子と非嫡出子との間で相続分について区別をしていました。配偶者以外の相続人が複数人存在する場合(子が2人,兄弟が3人いる場合などです。)に関して規定している民法900条4項の但書では,「嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の二分の一とし」と規定されており,非嫡出子は嫡出子の2分の1の相続分しか有しないとされていました。
しかし,この規定に関しては,非嫡出子が嫡出子と同じ子であるにもかかわらず,父母が婚姻関係にあるかないかという子自身の意思により選択することができない事情により,相続において大きな不利益を被るのは不平等ではないかとの批判が多くありました。
そして,平成25年9月4日,最高裁判所において,民法第900条4号但書の規定のうち非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分は,法の下の平等に反し違憲(憲法違反)であると判示しました(最大決平成25年9月4日)。また,平成25年12月5日に,民法の一部を改正する法律が成立し,民法900条4号但書の規定のうち,非嫡出子と嫡出子との間の相続分に関する部分は削除されました。
したがって,上記最高裁決定が出された平成25年9月4日以降に発生した相続は全て,非嫡出子であっても嫡出子と同じ法定相続分となるため,ご相談者様の事例でも,法定相続分は配偶者であるご相談者様のお母さまが2分の1,ご相談者様の別のお子さん(婚外子)がそれぞれ4分の1(2分の1×2分の1)ずつとなります。
次回では,上記最高裁決定の効力の及ぶ範囲についてご説明させていただきます。
法定相続分について③
法定相続分について③
<ご相談者様からのご質問>
先日父が亡くなりました。家族は母と子が私含めて3人いましたが,私の弟2人(A,B)は,父が死ぬ前に亡くなっており,Aには子どもが2人(C,D)Bには子どもが1人(E)おります。Bは,子どもが生まれてすぐに奥さんと一緒に交通事故で亡くなっており身寄りが他にいなかったため,私の父が養子縁組をして育てていました。この場合,父の財産については誰がどれだけ相続することになるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
ご相談者様の事例では,代襲相続が発生していることに加え,代襲相続人の1人が被相続人と養子縁組を行っていることが相続分の判断を複雑にしています。そこで今回は,代襲相続人の相続分と相続人の資格が重複した場合の取り扱いについてご説明させていただきます。
まず,被相続人(ご相談者様の父)の配偶者は当然相続人となります。また,子であるご相談者様も相続人になることに争いの余地はありません。さらに,ご相談者様の弟2人(A,B)は被相続人が死亡する前に亡くなっているため,A,Bのそれぞれの子ども(C,D,E)は代襲相続人に該当します。そして,代襲相続人の相続分は「その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。」(民法901条1項本文)と規定されており,かつ,代襲相続人が複数の場合には,その著経緯存続が受けるべきであった相続分を法定相続分に従って分配します(民法901条1項但書,900条)。
また,Bの子どもEは,被相続人と養子縁組を行っており,Eは代襲相続人であるとともに,子でもあるということになり,相続人の資格が重複していることなりなりますが,相続人の資格が重複している場合であっても,各資格に基づく相続分を合算して取得することができます。
以上をもとに,本件の各人の相続分についてみると,配偶者(ご相談者様のお母さま)は2分の1の相続分を有することになります。そして,子は,養子縁組をしたEを含めると4人となるので,まず,子の相続分としては,2分の1×4分の1で8分の1となります。したがって,ご相談者様は8分の1の相続分を有します。そして,Aの子ども(C,D)は代襲相続人として,Aの相続分(8分の1)を法定相続分にしたがい,それぞれ取得することになるため,C,Dの相続分はそれぞれ8分1×2分の1の16分の1となります。
最後に,Eは養子縁組による子としての相続分8分の1に加え,Bの代襲相続人としての相続分を合算した4分の1(8分の2)が相続分ということになります。
ご相談者さまの事例だけでなく,被相続人のお子さんの人数が多い場合や,被相続人の方が大往生され高齢でお亡くなりになられた場合,養子縁組や相続放棄等が絡んでくると,相続人が誰であるか,誰がどれだけの相続分を有しているかの判断が非常に複雑になってきます。当事務所では,遺産分割協議の代理人としてお手伝いさせていただく前提として,戸籍収集サポート(戸籍を収取し,相続関係図を作成)や,相続サポート(戸籍収集サポートに加え,財産関係の調査,遺産分割協議書の作成)等も取り扱っておりますので,是非お気軽にお問合せください。
法定相続分について②
法定相続分について②
<ご相談者様からのご質問>
先日,兄がなくなりました。兄は,結婚もしておらず,子どももおりません。両親も祖父母も亡くなっていますが,母は父と再婚する前に別の男性と結婚しており,その人との間にも子どもがいます。私と兄は,母が父と再婚した後に生まれたのですが,この場合,兄の財産はどのように分ければいいのでしょうか。腹違いの兄弟とはこれまで一度も関わったことがないので,話し合いをどうやって進めて行けばいいか不安です。
<弁護士からの回答>
相続手続きの際には,被相続人がお亡くなりになられていたときの状況次第で,これまで全く関わりのなかった親族と話し合いを行わなければならないことが少なくありません。前回は,配偶者との他の法定相続人との間の相続分についてご説明させていただきましたが,今回は,配偶者以外の相続人が複数にいる場合についてご説明させていただきます。
配偶者以外の相続人(子,直系尊属,又は兄弟姉妹)が複数人存在する場合についての相続分については,民法900条4号に「各自の相続分は,相等しいものとする。」と規定されています(900条4号本文)。つまり,配偶者以外の相続人が複数人存在する場合には,相続分についてその人数で等分することになります。例えば,相続人が配偶者と子ども3人の場合には,民法900条1号により配偶者が2分の1,子が残りの2分の1となり,子が3人いるため,2分の1を3等分,すなわち,子1人あたりの相続分は2分の1×3分の1で6分の1となります。
ご相談者様のお兄様を被相続人とする相続に関する相続人は,配偶者も子どもおらず,直系尊属もすでにいないことから,兄弟姉妹が相続人ということになります。
そして,兄弟姉妹はご相談者さまとお兄様の他に,父親が異なる兄弟姉妹(異父兄弟)の3人であるため,相続分はそれぞれ3分の1ずつになるように思えます。
しかし,民法900条4号但書では,「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と規定されており,半血の兄弟姉妹(異父兄弟,異母兄弟)は全血の兄弟姉妹の相続分の2分の1が相続分であるとされています。したがって,ご相談者様の事例の場合には,ご相談者様とお兄様が5分の2ずつ,腹違いの兄弟は5分の1の相続分を有することになります。
ご相談者様の事例に関わらず,相続手続きの際にこれまで関わってこなかった親族の方と相続に関する話し合いを行うことは感情的な対立を生ずる危険もあり容易ではありません。
今回の事例のように,腹違いの兄弟の場合の相続分の区別については,一般の方ではご存じない方もいらっしゃると思いますので,当事者同士での話し合いではトラブルが生じてしまう可能性を否定できませんので,早めに弁護士にご相談いただくのがよいと思います。
婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論~
婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論~
<ご相談者様からのご質問>
よく,性格の不一致が原因で離婚するなんてことを聞くのですが,性格の不一致という法定離婚原因はありませんよね。性格の不一致が原因で離婚できるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
前回は,法定離婚原因の1つである「婚姻を継続しがたい重大な事由」について,総論的な内容をお話しさせていただきました。今回から数回にかけて,「婚姻を継続しがたい重大な事由」になりうる具体的な事情についてご説明させていただきます。
1 性格の不一致
日本での離婚原因(離婚に関する紛争に至った原因(理由)のことを意味し,法定離婚原因とはことなります。)の約半数をしめるのが,この性格の不一致というもので,ワイドショーなどでも,芸能人夫婦が性格の不一致により離婚等と報道されることもあり,身近な言葉として認識されているのではないかと思います。
しかし,単に性格の不一致ということだけで,「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するということはほとんどありません。夫婦とはいえ,生まれも育ちもことなる他人同士である以上性格や価値観が異なるのは当然であり,一度夫婦になった以上,単に性格や価値観が違うということのみでは離婚は難しくなります(ワイドショーで報じられている離婚については,協議離婚(当事者の合意)により離婚が成立している場合であるのがほとんどなので,性格の不一致が原因で離婚ができるとの誤解を生んでしまっているのかもしれません。)。性格の不一致については,あくまでも離婚を巡る問題に至ったきっかけ(入り口)に過ぎず,その後の夫婦関係が悪化し,修復不可能になっていることを主張,立証しなければ,離婚は認められることはないでしょう。その意味で,性格の不一致はそれ単体で主張することは少なく,後述する,別居期間に関する主張を合わせて主張を行うのが一般的です。
2 長期間の別居
以前にもお伝えした通り,夫婦関係すなわち,夫婦の共同生活関係が破綻し,その修復が困難な場合に「婚姻を継続しがたい重大な事由」が存在すると認められることになります。そして,夫婦が別居している場合には,共同生活関係がなく,その状態が長期間にわたって継続している場合には,もはや,共同生活関係を修復することは困難であると判断されることになります。したがって,裁判所において上記要件を判断する際には,夫婦の別居という事実の有無及び別居期間がどの程度存在するのかという点は非常に重要な考慮要素となります。
どのくらい,別居期間が長期になれば,婚姻関係が破綻していると認められるかについては,一律の基準があるわけではありませんが,以前は,5年程度別居期間が必要であると考えられておりましたが,最近では,2~3年程度で離婚を認める裁判例も存在している状況です。もっとも,上記裁判例においても単に別居期間のみを根拠に離婚を認めたわけではなく,以前お伝えしたように,それ以外の諸般の事情を考慮して判断しているため,離婚訴訟においても,単に別居期間が長期であることのみを主張するのではなく,別居に至った経緯や,別居期間中の経緯(復縁の申出がなされたかいなか等)を詳細に主張する必要があります。
婚姻を継続しがたい重大な事由について~総論~
婚姻を継続しがたい重大な事由について~総論~
<ご相談者様からのご質問>
夫が離婚に反対している場合には,離婚原因がないと離婚することができないのですね。夫には不貞行為もありませんし,悪意の遺棄や,精神疾患もありません。離婚原因の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する事情があるのでしょうか。私は,夫とはこれ以上一緒にやっていく意思は全くないのですが,これは,「婚姻を継続し難い重大な事由」にはならないのでしょうか
<弁護士からの回答>
民法上の法定離婚原因については,民法770条1項1号から4号において個別の離婚原因を記載しつつ,770条1項5号にて,「婚姻を継続し難い重大な事由」として,包括的な離婚原因を定めています。不貞行為などの大きな離婚原因がない場合には,この「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在するとして離婚を求めていくことになります。裁判でも頻繁に争点になることが多い離婚原因ですので,どのような場合に「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかを理解して離婚に望むことはとても重要です。今回から数回にかけて,どういった場合に婚姻を継続し難い重大な事由に該当するのかをご説明させていただきます。今回は総論的な部分のお話をさせていただきます。
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは,一般的には,婚姻関係(共同生活)が破綻し,その修復が不可能もしくは著しく困難な状況をいいます。どのような場合に婚姻関係が破綻しているのかについては,形式的に定められているわけではなく,夫婦の同居期間,同居期間中の夫婦関係,子どもの有無,別居に至った理由,別居期間,別居中のやりとり,婚姻関係に対する当事者の意思等諸般の事情を総合的に考慮して判断することになります。
ご相談者様がおっしゃられるように,当事者が再び夫婦関係を築く意思がないということは,婚姻関係が破綻していることを基礎づける事情にはなりますが,それだけで,離婚が認められることにはなりません(もし,それだけで離婚が認められるとなると,離婚したいと強く思うだけで,すべての事案で離婚が認められてしまうことになってしまいます。)。
法定離婚原因とは,以前もお話ししたように,裁判において相手方 が離婚に反対していたとしても,強制的に離婚を成立させるものであり,夫婦一方の意思に反してでも離婚を認めるべき事由であることが必要になります。したがって,「婚姻を継続し難い重大な事由」についても,民法770条1項1号から4号までに規定されている離婚原因と同程度の事情であることが必要になります(そもそも770条1項1号から4号については,それぞれが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する事由であるとされています。)。
次回からは,「婚姻を継続し難い重大な事由」になりうる具体的な事情についてご説明させていただきます。
不貞行為に関する証拠
不貞行為に関する証拠
<ご相談者さまからのご質問>
最近,夫の様子がおかしく他に女性がいるのではないかと考えております。もし,他の女性がいたら離婚したいと考えているのですが,どういった証拠があれば夫が不貞行為をしていると裁判でも認めてもらえるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
客観的な証拠や有力な証拠がない場合,相手方配偶者は,本当は不貞行為をしている場合であっても,不貞をしていないとして離婚や損害賠償を回避しようとすることも少なくありません。今回は,不貞行為に関する証拠についてご説明させていただきます。
前回ご説明させていただいたように,不貞行為にあたるためには,相手方配偶者が,他の異性と性的関係(性交及び性交類似行為)があることが必要になりますので,証拠についても,性的関係があったことを立証することができる証拠が必要になります。では,どういったものが,不貞行為を立証するための証拠になるのかを具体的にご説明いたします。
1 メール(LINE)でのやり取り
最近では,スマートフォン等の普及に伴い,メールやLINEでのやり取りがきっかけで,配偶者の不貞行為が発覚することも少なくありません。もっとも,配偶者が異性とメールやLINEのやり取りをしているだけでは,直ちに不貞行為を立証することにはつながりません。メールやLINEでのやり取りの内容が,不貞行為を確認できる内容,もしくは推認することができる内容である必要があります。単に,親密なやり取りであることが窺える程度の内容のである場合には,親密であったことは直接立証することができるものの,それを越えて不貞行為があったとまで推認することには無理があるでしょう。したがって,仮に,LINE等のやり取りを入手した場合には,そのやり取りで不貞行為を立証することができる内容であるかについては,一度弁護士に相談した方がいいでしょう。
2 写真や動画について
配偶者と異性がホテルや互いの家に入っていく写真や動画,2人で旅行に行っている際の写真や動画については,非常に有力な証拠になりえます。もっとも,ホテルや家に入っていく際には,ホテルの場合にはどういったホテルにはいっていったのか(ラブホテルは通常性行為などを行うことを想定しているホテルであるため,ラブホテルに入ったとなるとより有力になります。)ということや,家やホテルに滞在した時間(あまりにも短い場合だと不利になってしまいます。)が非常に重要になりうるため,より確実な証拠を得ようとするのであれば,何時に入り何時に退出したかについてもきちんと証拠に収めておくようにした方がよいでしょう。また,ごくまれにではありますが,配偶者と異性が,ベッドなどで服を着ていない状態で撮影された写真や,性交渉そのものを撮影した記録などが保管されているケースもあり,最近では,インターネットクラウドサービスにより,本人の予期していないところで,そういった写真がバックアップとして夫婦共通のPCに保存されているといったケースもあるそうです。
3 興信所などの調査報告書
上記のような証拠の収集に関しては,不貞行為については,相手にバレないようにこそこそ隠れて行うものであるため,ご自身で収集するのはとても難しい場合が多いです。興信所などに依頼を行うと,不貞行為に関する証拠をしっかり集めてもらえるという点では非常にメリットがあるのではないかと思います。もっとも,興信所等に依頼すると,調査費用等が発生してしまうところがネックになってくるため,確実に慰謝料などを回収できるのかという側面からも検討が必要です。
4 その他
上記以外で,一般的に不貞の証拠になりうるものとしては,例えば,不貞相手からのプレゼント,クレジットカードの明細,相手と宿泊したホテルの領収書等が考えられますが,上記①~③の証拠に比べて証明力の点では弱くなってしまいますが,何も資料がない場合よりはよいと思うので,手持ちの証拠で立証することができるのかについては一度資料をご持参いただいた上で,弁護士にご相談いただいた方がよいでしょう。