保釈中の被告人にGPSの装着
皆さんも、刑事事件のニュースで、保釈という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
保釈とは、刑事事件において起訴された被告人が保釈金を支払うことで、勾留されている状態から釈放される制度で、刑事事件訴訟法に規定されています。
保釈により、逮捕、勾留されていた人も、釈放され日常生活に戻ることができますが、後日行われる刑事裁判(公判といいます。)に出廷しなかったり、逃走してしまった場合には、再び勾留されることになり、また、支払った保釈金も没収されてしまうことになります(他方、きちんと公判に出廷している場合には、保釈金は後日返金されることになります。)。
このように、保釈金を担保として逃亡することを防いでいた保釈制度ですが、皆さんもご記憶に新しいと思いますが、日産の元会長であるカルロス・ゴーンが保釈中に海外に逃亡してしまう事件が起きたように、保釈金のみでは、釈放された被告人の逃亡を防ぐことができない状態になりました。
そのような中、先日、国会で、改正刑事訴訟法の法案が衆参両議院で可決されました。
その改正の1つとして、裁判所が保釈許可時に海外逃亡を防ぐ必要があると判断すれば、被告にGPS端末の装着を命令できるようになりました。
そのうえで、空港や港湾施設の周辺といった「所在禁止区域」への立ち入りや、端末の損壊・取り外しを行った場合、端末が違反を検知して裁判所に通知し、身柄が確保されることになります。
このように被告人がGPSの装着をすることにより、逃亡の恐れはなくなることにはなりますが、他方で、被告人の位置情報が把握されることによりプライバシーなどの人権侵害が起こる可能性があります。
改正刑事訴訟法では、被告人のプライバシーに配慮するために、裁判所や検察官は、違反行為が行われない限りGPSによる位置情報を確認することはできないとされているようです。
アメリカの一部の州では、性犯罪等一定の犯罪を起こした人に対し、居住する場所を制限し、かつ、GPSの装着を義務付けるなど、再犯を防ぐために課しているところもあります。
犯罪をなくすという必要性と、犯罪を犯してしまった人の人権というどちらも重要な利益の衝突場面で、どういった方策が正解なのか非常に難しい問題です(よく司法試験の憲法の問題でも出題されることが多い分野です。)。 時代の変化に伴い、新しい制度や法律が制定されますが、人権を過度に侵害したものではないかという点は、法律家として常に意識していきたいと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
人の死に関与する罪について
先日、有名な歌舞伎役者の方とご両親が救急車で緊急搬送され、ご両親がお亡くなりになってしまうという大変ショッキングなニュースが報道されました。
正確な事実の多くは確定してはおりませんが、一部報道では、ご家族で心中するため薬物を服用したというようなことも報じられています。
まず、前提として、法律上自分自身で亡くなるという自殺をすることを禁ずる法律はありません。
このようなことから、そもそも自分自身でお亡くなりになるという行為は違法な行為なのかという議論が刑法学上存在するのですが、その点については、機会があればご説明させていただきます。
そのうえで、自殺関与に関する犯罪があります。
それは、自殺の決意を抱かせ、人を自殺させた場合に成立する自殺教唆罪と、自殺を決心している人に、自殺を容易にする援助を行うと自殺幇助罪があります。
先ほど話した自殺は違法か否かという点で、違法ではないという考え方を取った場合には、自殺をするか否かを決めれることができるのは本人だけであり、その意思決定などに関与することは違法であるため、処罰されるという理屈付けになります。
また、自殺関与に関する罪とは別に、同意殺人と嘱託殺人という犯罪もあります。
同意殺人罪とは、被害者が真摯な同意をしている場合に殺人を犯した場合に成立し、嘱託殺人は、被害者から積極的に殺人の依頼を受けそれに応じて殺人を犯した場合に成立する犯罪です。
自殺関与に関する罪との違いは、行為者が直接手を下したか否かの違いです(例えば、自殺を決意している人に毒薬を渡す行為は、自殺幇助罪ですが、本人の依頼を受けて毒薬を飲ませる行為は同意殺人や嘱託殺人となります。)。
お亡くなりになってしまうという選択肢以外の選択肢を考えられるように、誰かに相談したりすることで抱え込まないことが大事ではないかと思います。
当事務所にご相談に来られる方も、抱えている問題が原因で非常に悩まれており、そういった方の法律問題を解決することで少しでも気持ちを楽にすることが弁護士としての役目の1つではないかと考えています。
厚生労働省HP:電話相談窓口
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生成AIって本当に大丈夫????
皆さんは、ChatGPTはご存じでしょうか。
最近はニュースでも取り上げられることが多く、ご存じの方も多いと思いますが、人工知能(AI)が人間からの質問の回答を生成するコンピュータプログラムのことをいいます。
ChatGPTは文章を生成するAIですが、それ以外にも画像等を生成するAIもあり、こういった様々なコンテンツを生成する人工知能のことを生成AIといいます。
私も暇なときに、遊びがてら使っているのですが、例えば「○○(息子の名前)が野球選手として活躍する小説を書いて」などと文章を入れると、短いものですが息子が野球選手として成長する過程が書かれた文章が出てきて、とても感心しました。
先日、ChatGPTを作成した会社のCEOが岸田総理大臣と面会を行ったというニュースを目にしました。
他方で、イタリアではChatGPTの利用を一時停止するなどEU各国ではChatGPTの使用を制限する動きが進んでいるというニュースを目にしました。
この生成AIという新しい技術について、各国どういったスタンスで対応するのか対応が分かれているようです。
このように世界中で物議を醸している生成AIですが、使用することでどのようなトラブルや弊害が生じるのか検討してみました。
1.誤った情報の拡散
生成AIが生成する情報が正しいものであるとは限りません。
質問の仕方や条件の設定等により回答も異なったものが出される可能性があるため、誤った情報を鵜呑みにしてしまうことでトラブルが生じる可能性が考えられます。
おそらく今後、私のところにも、「ChatGPTではこのように回答が出たのですが!?」と質問してくる相談者も来る可能性があるのではないかと思います。
2.著作権侵害
すでに問題になっているニュースを見たのですが、イラストレーターが作成したイラストなどを画像生成AIが作者(著作権者)の許可なく無断で改変したイラストを作成するという事案があるようです。
このように、生成AIがインターネット上で学習する際に、膨大なデータから学習をするのですが、その際に、誰かに著作権があるものを著作権者に無断で取り込んでいるため、生成AIを使うことにより誰でも簡単に他の人の著作物をもとに改変するということが可能となってしまう恐れがあります。
3.違法行為の助長
ChatGPTでは、通常、違法な行為に関する質問(例えば「爆弾の作り方を教えてください)というような質問には答えられないような仕組みになっています。
しかし、これもニュースでやっていたのですが、特殊な質問の仕方をするなどをすることで、違法な行為でも回答することができるようになるとのことでした(このような行為を「脱獄」というようです。)。
このように生成AIを利用して犯罪行為を行うなど違法行為を行うために利用されてしまうという恐れもあると思います。
このように、生成AIについては、非常に便利で革新的な記述であり、上手に使うことができれば、個人、企業や社会全体を豊かにすることができると思いますが、技術の進歩に法整備やルール作りや使用する人のリテラシーなどが追いついていないため、使用する際には、不要なリスクを負わないよう慎重に使用していく必要があると感じました。
最後に、ChatGPTに「世界中であなたを使い続けることで起こりうる最悪の事態を教えてください。」と質問したところ
「人工知能が暴走し、制御不能になって大量の破壊行為を引き起こす可能性があります。
また、あなたの技術が不正使用され、個人情報や機密情報が洩れるため国家的な安全保障にも影響を与える可能性があります。
さらに、あなたの技術が武器や兵器として使用され、戦争などの問題につながる可能性もあります。」との回答が返ってきました。
なんだか映画のターミネーターのようなことが起きそうでとても怖い回答ですが、こんな最悪な事態がおきないよう、適切な運用ルールや規制が整い、みんなが便利に使うことができるようになることを祈ります。
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飛行機内での逮捕
最近ニュースで、海外で活動していた特殊詐欺グループの人が逮捕されたニュースをよく見ます。
ここでいきなり質問ですが、犯罪を犯した日本人が海外に逃げていた場合、日本の警察に逮捕される瞬間はどの時点になるでしょうか?
ニュースなどをよく聞いているとわかると思いますが、正解は、海外から日本に向けて飛んでいる飛行機が、日本の領空内に入った時点になります。
逮捕の要件などについては、刑事訴訟法に規定されているのですが、この刑事訴訟法は、日本国内でのみしか適用されないため、日本の警察は犯罪者を海外で逮捕することはできません。
そこで、国際指名手配されている犯罪者や、日本と犯罪人引渡し条約を締結している国が、犯人を確保し、身柄を警察に引き渡し、飛行機で日本の領空内に入った時点で、裁判所から発令された逮捕状を用いて、犯人を逮捕することになります。
少し話は変わりますが、逆に、海外の領空を飛んでいる日本の飛行機内で犯罪が起こった場合には、領空は海外ですが、「航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約」により、その飛行機が所属している国の法律が適用されることになるため、日本の法律(刑法)が適用されることになります。
上記の犯罪者を海外から日本へ運ぶのは、通常の乗客が乗る飛行機になります。
飛行機の機長が「日本の領空内に入りました」というアナウンスを行った場合には、逮捕をすぐに行うために知らせるアナウンスであるため、犯罪者が同じ飛行機に乗っているかもしれないという噂がありますが、私が学生時代に何回か海外に行った際に、必ずこのアナウンスがながれていたため、都市伝説である可能性が高いでしょう。
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ギックリ腰にご注意を!!
皆さんは、ギックリ腰になられたことはありますか?
私は、高校時代柔道をしていたことや、仕事がほとんどデスクワークのため、慢性的に腰が痛いです。
疲れなどがたまっているときに、変な姿勢になった際、グキッっとやられてしまうことがたまにあります。(運動しないと・・・)
厚生労働省の発表では、業務上の疾病(ケガや病気)で一番多いのが腰痛とされています。
業種では、建設業、製造業、運送業など重量物等を運ぶ仕事で多く見られています。
このようにギックリ腰などの腰痛については、重量物等を運ぶことが原因で発症することが多いのですが、法律上、持ち運びをすることができる、重量には制限があるのをご存じでしょうか。
労働基準法62条1項及び年少者労働基準規則7条により、満18未満の男女について、重量物を持ち運ぶ際の規制がされています。
内容についての詳細は省略しますが、18歳未満では、男性は20kg未満、女性は15kg未満とされています(断続作業と、継続作業とで制限の重量が異なります。)
また、労働基準法64条の3第1項、第2項及び女性労働基準規則第2条により、18歳以上の女性については、断続的作業の場合には30kg、継続作業の場合には20kgと重量が制限されています。
さらに、18歳以上の男性も、通達により、体重の約40%以下の重量物が限度とされています。
このように、人力で運ぶ重量には法律上の制限があり、使用者(企業)がこの決まりに反して重いものを持たせていた場合には、刑罰の対象などになる可能性だけでなく、安全配慮義務違反として損害賠償の対象にもなるため、注意が必要です(あくまでも人力で運ぶ場合の規制であり、フォークリフト等の機械を使用する場合には上記の規制の対象にはなりません。)。
今、この記事を作成している間も、少し腰が痛いですが、健康的な生活を送り、しっかり働くためにも自分の体も少し労わってあげないといけないなと思いました。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
動画の引用は著作権法違反??
皆さんは、YouTubeなどの動画配信サイトを見ていますか?
我が家では、もっぱら息子がYouTubeにはまっており、放っておくと、スマホでずっと見続けてしまうので、今は「ひらがななどのおけいこをしてから見ようね」と言って、時間を区切ってみています。
息子はテレビも見ますが、同じくらいYouTubeも見ており、息子の中での一番の有名人はHIKAKINさんだと思います。
最近はブログ等で、YouTube等の動画配信サイトでアップされている動画を引用しているサイトを見かけます。
サイトの中で、動画の再生ボタンを押すと、そのサイト上で、動画が再生されるという「埋め込み型」の引用がなされていることも多いです。
私自身、いい曲だなと思ったアーティストの他のおススメの曲を聞くために検索すると、MVをまとめているサイトの埋め込み動画にたどり着くことがあります。
その際、『他人の動画を引用する行為は著作権を侵害しないのかな』と気になったことがありました。
感覚として、他人の動画を引用することで自身のサイトの閲覧数を増やして収益を得ることができるので、『著作権者の同意が必要なのではないか』と思ったのです。
そこで少し調べてみたところ、過去に、動画の引用が著作権侵害であるとして、損害賠償等を請求した事件の裁判例が見つかりました。
この事件では、①動画を引用したことが著作権を侵害するか、②引用した動画自体が、著作権を侵害していた場合には、著作権を侵害を助長(法律上「幇助」といいます。)したことにならないかという2つの争点がありました。
①の争点について、裁判所は、動画の引用(リンクを貼る)という行為は、著作権者の著作権を侵害するものではないと判断しました。
理由については、簡単にいうと、動画のリンクを貼ったとしても、あくまで動画を配信しているのはリンク元(すなわち著作権者)であるため、著作権を侵害していないとしました。
次に、②の争点については、当該動画自体が著作権を侵害してしているかどうか判断しづらい動画を引用することは直ちに著作権侵害の幇助には該当しないとした上で、当該事件の事情として、著作権者から抗議を受けた時点(当該動画が著作権を侵害していると認識した時点)で直ちにリンクを削除していることから、不法行為は成立しないと判断しました。
このように、動画の引用については、著作権者自身が配信している動画のリンクを貼る行為は当然に適法であるということになります(経済産業省が発表している「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」においても、著作権を侵害しないことが明記されています。
つぎに、著作権者の承諾が得られているか不明な動画については、著作権者から指摘され、直ちに削除をした場合には、上記の裁判例では不法行為とはならないということになります。
もっとも、この裁判例を前提にすると、著作権を侵害している動画であることを知りながら引用した場合には、不法行為となる可能性が高くなります。
また、著作権者から指摘されても引用を続けた場合にも同様に不法行為となる可能性が高いです。
したがって、著作権者の承諾があるかどうか不明な動画については、後々訴訟などの紛争に巻き込まれるリスクがあるため、なるべくであれば引用しないほうがいいのではないかと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
カタカナ言葉と法律
先日、妻と話しているときに、妻から、「カタカナ言葉がよく会話にでてくるね」と言われました。
言われるまであまり意識していなかったのですが、小さいころからカタカナ言葉はよく覚えており、世界一名前の長い湖の名称なども小さいころに覚えてから今でもすぐに言えるので、無意識のうちにカタカナ言葉がかっこいいとおもって使っているのかもしれません(湖の名前は本当に長いので、興味のある方は調べてみてください)。
Google検索はこちら⇒「世界一名前の長い湖」
そんなカタカナ言葉ですが、法律の世界にもカタカナ言葉があります。
僕自身、きちんと意味を理解していない部分もあったので、この機会に意味を調べて皆さんにお知らせしたいと思います。
法律だけでなく、社会的規範、倫理、良識を守って運営することを意味します。
よく、「コンプライアンスを遵守して」と発言されている方がいらっしゃいますが、コンプライアンスの中に遵守という意味もあるので、この表現は、厳密にいうとトートロジー(「同御反復」という意味です。せっかくなんでカタカナ言葉使ってみました)となります。
これは、企業における債務(デッド)を株式(エクイティ)に交換(スワップ)することで、会社の財務を改善するという手法になります。
DESをするこで、債務が資本(株式)になるため過剰債務の状態が解消されることになります。
司法試験に合格する前に、ロースクールでこの言葉を聞いたときに、いつかこの言葉を使って仕事をする時が来るのかなと思って今したが、弁護士になって約10年、一度も使っていません。
なお、DESに似た言葉で、債務を劣後ローンとして借り換えるという「デッド・デッド・スワップ(DDS)」というものもあります。
日本語では「真偽不明」と訳されます。
民事訴訟において、争いになっている事実の存否について、裁判所としても過去に戻ることはできないので、その事実が存在したのか存在していなかったのかがわからない(判断できない)という状態になることがありそれを「ノンリケット」といいます。
このノンリケットの状態になった場合には、立証責任(その事実が存在するということを証拠に基づいて立証しなければいけない責任のことをいいます。)を追っている当事者が、不利益(その事実は証拠上認定することができないと扱われます)を被ることになります。
日常生活を送っていると、上記のような、カタカナ言葉がたくさんあると思いますが、あまり多用しすぎると、会話がストレス(これもカタカナ言葉ですね)になってしまうので、上手に使っていければと思います。
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タイムパラドックスと裁判
皆さんは、過去に戻ってみたいと思ったことはありますか?
私は、高校時代、大学時代や、司法試験合格後の司法修習生の1年間非常に楽しかったため、もう一度その楽しかった経験をしたいという気持ちや、財布を落としたり、酔いすぎてしまい終電でへんぴな終点で下りて野宿するところを探したりなどいやな出来事が起きないようにしたいなと思ったりします。
先日、オーストラリアの大学で行われた研究により、タイムトラベルで過去に行った人間は、自らの自由意思に従って行動することが可能なものの、パラドックスを起こすような行動は修正され、パラドックスが発生しない結果に落ち着くことが示されました。
タイムトラベルでのパラドックスとは、「親殺し(祖父殺し)のパラドックス」と呼ばれ、ある人物が、過去に行き、幼い自分の両親(祖父母)を殺害した場合、親を殺害した本人は生まれてこないことになり、「生まれてこない子どもに殺害された親」という背理の状態になってしまうというものです。
私自身、パラドックスについて関心があったのですが、パラドックスは生じないと聞いて少しがっかりしました。
刑事事件にしろ、民事事件にせよ、裁判では事実関係に争いがあるケースが多く(むしろほとんどがそうです。)、仮にタイムマシン等が開発され、みんなが過去に戻ることができるようになった場合には、事実関係に争いがなくなるため、弁護士の仕事や、裁判所の仕事がなくなってしまうのではないかと思います。
しかし、現時点で、過去に戻ることはできないため、裁判所において全ての事件で事実関係を確定することができないということも出てくることになります(防犯カメラ、ドライブレコーダー等があれば事実関係を確定することはできます)。
よくご相談者様や依頼者が誤解されている点なのですが、裁判所では、厳密に、その事実があったのかなかったのかという事実を探求する場ではなく、「ある事実を証拠上認定することができるか否か」を判断する場ということです。
上記のように過去に戻ることができない以上、ある事実があったのか否かについては証拠に基づいて判断することになり、証拠に基づいて、ある事実があったのか否かについて明確に確定することができる事案ももちろんありますが、証拠が十分ではない場合もあるためある事実があったのかなかったのかわからないという状況になることも多いです。
ある事実があったのかなかったのかわからないという状態になった場合には、裁判所は「その事実があったことは証拠上認定することができない」として、その事実を証明する責任を負っている当事者に対し、その事実を認定することができないため、請求は認められないと判断することになります。
証拠上認定できないので訴訟での勝ち目はあまりないということを、ご相談者様に説明する際に「私が嘘をついているということですか!?」などとおっしゃられることもまれにあったりするのですが、上記のような説明をしっかりしてご納得いただく作業があるため、その時には、いっそタイムマシンなどで過去に戻ることができたらいいのになと思ったりもします。
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スポーツと損害賠償
以前、サッカーと法律の関係について書いたブログの中で、サッカーと損害賠償の関係について、管理責任などが問題となって損害賠償が発生することがあるとご説明させていただきましたが、管理責任などが問題となって、発生する損害賠償事件はサッカーだけではなく、スポーツ全般で問題となります。 以前の記事はこちらから:サッカーと法律
そんな中、スポーツと損害賠償についての判決が最近出されたのでご紹介させていただきます。
事件は、石川県の県立高校の野球部で発生しました。
その高校の野球部の生徒が、川に落ちたホームランボールを拾うために、ガードレールを乗り越えて、岸辺にいったところ、足を滑らせて川に落ちてしまい、死亡してしまいました。
死亡してしまった生徒のご両親が、川に落ちたボールの回収をやめさせたりしていれば、事故は起きなかったとして、野球部の監督らに管理責任(注意義務違反)があると主張し、県に対し、慰謝料などの損害賠償を請求したのがこの事件です。
そして、金沢地方裁判所は、ガードレールを乗り越えてボールを回収しないように指導していなかったことを認め、そのような指導をし、注意義務を尽くしていれば事故を回避できたとして、監督らの注意義務違反を認め、かつ、注意義務違反と死亡という結果との間には因果関係が認められると判断しました。
他方で、監督らにおいて、ボールの回収を諦めた部員を叱責するなどしたことはなく、事故当時の状況について、危険を冒してまでボールを回収しなければならない状況ではなかったとして、ガードレールを乗り越えてボールを回収しようとした部員にも一定の落ち度(過失)があると判断し、損害額の3割の額を過失相殺として減額した金額を認定しました。
自分も、子どもが生まれ、もう少しで習い事等に通わせてみようと思っていますが、このような事例を見ても、安全面がしっかり確保されているところかどうかを判断するのは難しいと感じました。
スポーツの監督や指導をする側は、単にスポーツを教えればよいというわけではなく、競技する人や周りの人の安全も確保する必要があるということだと思います。
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チョコをあげたら犯罪に!?
2月に入るとバレンタインの季節になりますね。 小学生のころ、普段何にも意識していなかったクラスの女の子からチョコをもらい、あとで母親伝いで、その子がチョコをあげたのは、私と別のクラスの男子の2人だけであると聞いて急に意識してしまったというような淡い思い出があったような気がしています(何十年も前の話で美化されているかもしれません)。
1月の下旬から百貨店でもバレンタインフェアが開催されており、いろんなチョコが売っているのを見ると、自分でも欲しくなってしまいます(最近では、他の人にあげるという目的よりも自分へのご褒美として高いチョコレートを買うという方も多いそうです。)。
そんなバレンタインのチョコレートですが、チョコレートをあげることで犯罪になってしまう恐れがあるケースをご紹介します。
過去に実際にニュースになっていたのですが、とある市議会議員が、後援者の家を訪問し、自身の活動(近況)を報告する際に、約500円のチョコレートを配った行為が、公職選挙法が禁止する政治家の寄付行為に該当するのではないかと警察が議員に対し、事情確認を行ったという事件があったそうです。
公職選挙法は、選挙の中立性、公正性を確保するために、政治家の選挙区内での寄付行為を禁じており、違反した場合には罰則も設けられています。
寄付行為に該当する行為として、総務省がホームページであげている行為としては、地域の運動会やスポーツ大会への差し入れ、病気見舞い、入学祝、卒業祝い等が該当するとされています(あくまでも選挙区内の人このような行為をすることを禁じており、選挙区外への人などへの行為は禁じられていません)。
以前、大臣が有権者にうちわを配ったことでも問題となったように、選挙の中立性や公正性を確保することは非常に重要なので、こんなことでもというような行為も寄付行為に該当することになります。
公職選挙法では、有権者から政治家に対し、寄付行為を要求することも禁じています。
したがって、先ほどのニュースのように、意中の議員に対してチョコレートを要求する行為も禁じられた行為になる恐れがあると思うとなんだか切ないなと思ってしまいます。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。