タイムパラドックスと裁判
皆さんは、過去に戻ってみたいと思ったことはありますか?
私は、高校時代、大学時代や、司法試験合格後の司法修習生の1年間非常に楽しかったため、もう一度その楽しかった経験をしたいという気持ちや、財布を落としたり、酔いすぎてしまい終電でへんぴな終点で下りて野宿するところを探したりなどいやな出来事が起きないようにしたいなと思ったりします。
先日、オーストラリアの大学で行われた研究により、タイムトラベルで過去に行った人間は、自らの自由意思に従って行動することが可能なものの、パラドックスを起こすような行動は修正され、パラドックスが発生しない結果に落ち着くことが示されました。
タイムトラベルでのパラドックスとは、「親殺し(祖父殺し)のパラドックス」と呼ばれ、ある人物が、過去に行き、幼い自分の両親(祖父母)を殺害した場合、親を殺害した本人は生まれてこないことになり、「生まれてこない子どもに殺害された親」という背理の状態になってしまうというものです。
私自身、パラドックスについて関心があったのですが、パラドックスは生じないと聞いて少しがっかりしました。
刑事事件にしろ、民事事件にせよ、裁判では事実関係に争いがあるケースが多く(むしろほとんどがそうです。)、仮にタイムマシン等が開発され、みんなが過去に戻ることができるようになった場合には、事実関係に争いがなくなるため、弁護士の仕事や、裁判所の仕事がなくなってしまうのではないかと思います。
しかし、現時点で、過去に戻ることはできないため、裁判所において全ての事件で事実関係を確定することができないということも出てくることになります(防犯カメラ、ドライブレコーダー等があれば事実関係を確定することはできます)。
よくご相談者様や依頼者が誤解されている点なのですが、裁判所では、厳密に、その事実があったのかなかったのかという事実を探求する場ではなく、「ある事実を証拠上認定することができるか否か」を判断する場ということです。
上記のように過去に戻ることができない以上、ある事実があったのか否かについては証拠に基づいて判断することになり、証拠に基づいて、ある事実があったのか否かについて明確に確定することができる事案ももちろんありますが、証拠が十分ではない場合もあるためある事実があったのかなかったのかわからないという状況になることも多いです。
ある事実があったのかなかったのかわからないという状態になった場合には、裁判所は「その事実があったことは証拠上認定することができない」として、その事実を証明する責任を負っている当事者に対し、その事実を認定することができないため、請求は認められないと判断することになります。
証拠上認定できないので訴訟での勝ち目はあまりないということを、ご相談者様に説明する際に「私が嘘をついているということですか!?」などとおっしゃられることもまれにあったりするのですが、上記のような説明をしっかりしてご納得いただく作業があるため、その時には、いっそタイムマシンなどで過去に戻ることができたらいいのになと思ったりもします。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
スポーツと損害賠償
以前、サッカーと法律の関係について書いたブログの中で、サッカーと損害賠償の関係について、管理責任などが問題となって損害賠償が発生することがあるとご説明させていただきましたが、管理責任などが問題となって、発生する損害賠償事件はサッカーだけではなく、スポーツ全般で問題となります。 以前の記事はこちらから:サッカーと法律
そんな中、スポーツと損害賠償についての判決が最近出されたのでご紹介させていただきます。
事件は、石川県の県立高校の野球部で発生しました。
その高校の野球部の生徒が、川に落ちたホームランボールを拾うために、ガードレールを乗り越えて、岸辺にいったところ、足を滑らせて川に落ちてしまい、死亡してしまいました。
死亡してしまった生徒のご両親が、川に落ちたボールの回収をやめさせたりしていれば、事故は起きなかったとして、野球部の監督らに管理責任(注意義務違反)があると主張し、県に対し、慰謝料などの損害賠償を請求したのがこの事件です。
そして、金沢地方裁判所は、ガードレールを乗り越えてボールを回収しないように指導していなかったことを認め、そのような指導をし、注意義務を尽くしていれば事故を回避できたとして、監督らの注意義務違反を認め、かつ、注意義務違反と死亡という結果との間には因果関係が認められると判断しました。
他方で、監督らにおいて、ボールの回収を諦めた部員を叱責するなどしたことはなく、事故当時の状況について、危険を冒してまでボールを回収しなければならない状況ではなかったとして、ガードレールを乗り越えてボールを回収しようとした部員にも一定の落ち度(過失)があると判断し、損害額の3割の額を過失相殺として減額した金額を認定しました。
自分も、子どもが生まれ、もう少しで習い事等に通わせてみようと思っていますが、このような事例を見ても、安全面がしっかり確保されているところかどうかを判断するのは難しいと感じました。
スポーツの監督や指導をする側は、単にスポーツを教えればよいというわけではなく、競技する人や周りの人の安全も確保する必要があるということだと思います。
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チョコをあげたら犯罪に!?
2月に入るとバレンタインの季節になりますね。 小学生のころ、普段何にも意識していなかったクラスの女の子からチョコをもらい、あとで母親伝いで、その子がチョコをあげたのは、私と別のクラスの男子の2人だけであると聞いて急に意識してしまったというような淡い思い出があったような気がしています(何十年も前の話で美化されているかもしれません)。
1月の下旬から百貨店でもバレンタインフェアが開催されており、いろんなチョコが売っているのを見ると、自分でも欲しくなってしまいます(最近では、他の人にあげるという目的よりも自分へのご褒美として高いチョコレートを買うという方も多いそうです。)。
そんなバレンタインのチョコレートですが、チョコレートをあげることで犯罪になってしまう恐れがあるケースをご紹介します。
過去に実際にニュースになっていたのですが、とある市議会議員が、後援者の家を訪問し、自身の活動(近況)を報告する際に、約500円のチョコレートを配った行為が、公職選挙法が禁止する政治家の寄付行為に該当するのではないかと警察が議員に対し、事情確認を行ったという事件があったそうです。
公職選挙法は、選挙の中立性、公正性を確保するために、政治家の選挙区内での寄付行為を禁じており、違反した場合には罰則も設けられています。
寄付行為に該当する行為として、総務省がホームページであげている行為としては、地域の運動会やスポーツ大会への差し入れ、病気見舞い、入学祝、卒業祝い等が該当するとされています(あくまでも選挙区内の人このような行為をすることを禁じており、選挙区外への人などへの行為は禁じられていません)。
以前、大臣が有権者にうちわを配ったことでも問題となったように、選挙の中立性や公正性を確保することは非常に重要なので、こんなことでもというような行為も寄付行為に該当することになります。
公職選挙法では、有権者から政治家に対し、寄付行為を要求することも禁じています。
したがって、先ほどのニュースのように、意中の議員に対してチョコレートを要求する行為も禁じられた行為になる恐れがあると思うとなんだか切ないなと思ってしまいます。
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コンセントで勝手に充電をしたら犯罪??
今や、多くの人が持っているスマートフォンをはじめとする携帯電話ですが、便利な半面、充電が切れてしまうと使い物にならなくなってしまいます。
わたしも仕事柄スマートフォンを使うため、モバイルバッテリーを持っているのですが、肝心な時にモバイルバッテリーの充電が切れてしまい焦ったりしてしまいます。
先日、電車内の業務用コンセントで充電し続けた人が駅員から注意される動画が拡散されているというニュースを目にしました。
皆さんも外出先などでコンセントを見つけて充電するため使用する人も少なくないと思いますが、ケースによってはこの行為が犯罪になる可能性もあります。
刑法第235条は、
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
と記載されており、窃盗罪について規定されています。
そして、刑法第245条では「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」
と規定されており、電気も財物とみなされ、電気を盗む行為は電気窃盗として窃盗罪で処罰されることになります。
もっとも、窃盗罪として犯罪が成立するためには、「窃取」に該当する行為を行う必要があり、簡単にいうと、占有している人の意思に反して、物の占有を移す行為を行った場合は「窃取」にあたります。
したがって、カフェのテーブルなどに設置されているコンセントはあくまでもカフェの利用者のために使用することが許容されているものであるため、意思に反する占有移転とはならず、窃盗罪は成立しません。
これに対し、先ほどの電車の業務用のコンセントについては、乗客が利用することを前提としたものではないため(車両の清掃等に使用する目的であると考えるべきでしょう。)、窃盗罪が成立すると考えられます。
コンセントの無断使用については、すぐに逮捕される等事件化するケースは多くないと思いますが、再三禁止しているにもかかわらず使用を継続していた場合などは逮捕されるリスクもあると思います。
現に、コンビニエンスストアの店の外にあるコンセントに無断で炊飯器をつないで米を炊くなどの調理をしていた人が電気窃盗で逮捕されたことがあるそうです。
ちょっとコンセントを借りるだけという安易な気持ちで無断使用してしまいたくなる気持ちはわからなくはないですが、電気代も発生するものですし、みんなが使用してしまうと停電などのリスクもあります。
無断で使用するのではなく、使ってよいかをあらかじめ確認するなどして、マナーのある対応を心がけたいですね。
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激甚災害指定とは?
ここ数年、九州のみならず、全国で台風や線状降水帯等による大雨で、甚大な被害が出てしまう天災が多数発生しています。
ニュースを見ていると「100年に1度の・・・」という見出しを目にすることもあり、異常気象が起きることが日常的になってしまっているようでとても怖く感じています。
令和4年10月28日に、日本政府は九州や静岡県で発生した台風14号・15号の大雨災害について「激甚災害」に指定することを閣議で決定したと発表されました。
この激甚災害とは、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(激甚災害法)において定められた、地震・台風・豪雨などによる、著しく被災自治体への財政援助や被災者への助成がとくに必要となる大災害のことをいいます。
激甚災害には、地域などをくぎらずに災害そのものを指定する「激甚災害指定基準による指定(本激)」と、局地的豪雨などを市町村単位で指定する「局地激甚災害指定基準による指定(局激)」の2種類があります。
激甚災害に指定されると、地方公共団体の復旧事業における、国庫補助率の嵩上げ等が行われ、公共施設の復旧を助成することになります。
また、天災によって被害を受けた農林漁業者や、中小企業に対しても、中小企業信用保険法による災害関係保証や、特別の貸し付けがされたり、貸付金の償還期間が優遇される等の特別の財政助成措置が講じられることになります。
このように、激甚災害に指定されると、中小企業の皆さま等にも大きくかかわってくることになります。
先ほど述べた通り、異常気象が日常的に発生するようになっているため、企業としてもそういった異常気象によるリスクも考えて企業活動を行っていかなければならないのではないかと感じています。
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タクシーでのトラブルについて
新年明けましておめでとうございます。
昨年は、息子が仮面ライダーにドはまりして、変身ベルトを購入したり、遊園地へショーを見に行ったりと仮面ライダー一色の1年だった気がします(今1歳の娘がもう少ししたらプリキュアとかにはまりだしたら仮面ライダーとプリキュアに忙殺されるのかと思うと少し怖いです。)。
話は全然変わってしまいますが、皆さんは忘年会や新年会に行かれましたか?
そういった席ではお酒を飲まれる方多いため、会が終わり帰宅される際にはタクシーを利用される方が多いのではないでしょうか。
今回は、タクシーでのトラブルについてお話ししようと思います。
まず、SNSなどでよく話題になるのが、乗客が1万円札しか持っていない場合に運転手から文句を言われたり、コンビニで崩してくるように言われたというような釣銭トラブルがあります。
民法402条1項では、
「債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。」
と規定されています。
つまり、タクシーの料金を支払う場合(金銭債権の支払い)については、債務者(乗客)が、支払う通貨を任意に選択し支払うことができます。
例えば、乗客が支払う通貨を1万円と選択した場合には、有効な支払いとなるので、タクシー側は支払いを受ける必要があります。
したがって、法律の観点からは、乗客は1万円札で支払っても何ら問題はなくお釣りをタクシー側が準備しておく必要があると思います。
また、タクシー側が1万円札での支払いを拒否した場合には、法律上有効な弁済の提供がなされているため、お釣りが出せないなら乗客が1万円を渡せないとすることに問題はありません。
次に、お客がクレジットカードやキャッシュレス支払いを希望している場合に、タクシー側が拒否をすることができるかという問題ですが、あくま債務者(乗客)は金銭の支払いを行う義務を有しているので、クレジットカード等の利用については、債権者(タクシー側)が承諾して初めて有効になります。
したがって、タクシー側がクレジットカードやキャッシュレスを使えないと拒否した場合には、乗客は現金で代金を支払う義務を有していることになります。
タクシーは気軽に使える移動手段としてとても便利ですが、密室でのやり取りになるため、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
トラブルを避けるため、法律上の結論はさておき、スムーズに支払いができるよう準備はしておいた方がいいかなと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
ネットショッピングの配送トラブル
皆さんはネットショッピングを利用されていますか?
近年は11月末から「ブラックフライデー」と称して、どのオンラインモールでもセールを行っており、私の家族も例年セールだから、何か買わなくてはという焦りからか、ついつい買いすぎてしまいます。
先日、ニュースでこのブラックフライデーの期間中に、「注文した商品が届かない」「指定の日時に届いていない」「お店側から一方的にキャンセルされてしまう」などのトラブルが多発しているということが報じられました(このようなトラブルを「宅配クライシス」と呼ぶそうです。)。
コロナウイルスの影響でネットショッピングを利用する方が増えたところに、セールを行ったため利用者が非常に増えてしまったことが原因のようです。
ニュースでは、子どもの誕生日に間に合うようにプレゼントを注文したが、届かなかったというトラブルが紹介されていました。
ネットショッピングではなく、店頭に行き商品を購入し配送指定を行う場合、その時点で契約が成立します。
一般的には店側には指定した期日に商品を届ける義務(債務)を負うことになります。
したがって、指定した期日に商品を届けることができずに、顧客に損害が生じた場合には、お店には損害を賠償する義務が発生することになります。
一方ネットショッピングの場合、気を付けなければならないのが、購入者がサイトで購入のボタンを押した時点では契約は成立していないという点です。
契約が成立するためには、顧客がこの商品を欲しいという意思を表示し(法律上「申し込み」といいます。)これに対し、売主が応じた場合(「承諾」といいます。)に初めて契約が成立するのですが、通常のオンラインモールの利用規約を見ると、店側からの発注メールが送られた時点で契約が成立するとなっています。
すなわち、顧客の購入ボタンを押す行為は、単に「申し込み」を行っただけの状態であり、お店側が発注メールを送信して、はじめて承諾がなされ契約が成立するということになります。
したがって、上記のトラブルのように一方的にキャンセルされたというトラブルも、厳密には申し込みに対し承諾を行っていないというだけであるため、契約が成立していないことになり、顧客側は店側に何らの請求ができないことになってしまいます。
このように、ネットショッピングは、本当に手軽に商品を購入できるメリットがありますが、こうした配送のトラブルが生じてしまうリスクがあります。
どうしても必要な商品などが実際に店舗にいって直接購入するなど、ネットショッピングのみに依存することなく、うまく活用していく必要がありそうです。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
持ち帰りお断りは可能?
皆さんは、飲食店で食事をした際、食べ残した物を持ち帰ることはありますか?
私の家では、母や父が率先して持ち帰ることが多く、小さい頃は家でも食べることができると喜んだものですが、思春期のころは恥ずかしく思い、やめてほしかった記憶があります。
では、食べ残したものを持ち帰ることについて、お店が拒否した場合には認められるのでしょうか。
これについて、明確な判例や法律があるわけではないです。
例えば、飲食店での食事において売買契約であると捉え、注文の時点で料理の所有権がお客側に移っていると考えると、持ち帰りを認めなければならないということになりそうですが、あまりそのような考えは一般的ではないでしょう。
お店側が許可した場合に、持ち帰りが認められるのが一般的ではないでしょうか。
しかし、テイクアウトを行っている飲食店が持ち帰りを認めないということは、矛盾が生じる恐れがあるのではないかと思います。
こうしたお店で提供した飲食物の持ち帰りについて、法律で何か規制がされているかというと、食品の安全について規律した食品衛生法には何ら規制されていないため、あくまでもお店の自主ルールに任されていることになります。
とあるお店では、全て自己責任、すなわち持ち帰った食品で、万が一食中毒などが起こったとしても一切お客に対して店側が責任を追わないということを約束させたうえで、認めているというお店もあるようです。
しかし、お客との間で一切責任を負わないと約束したとしても、食中毒等が出てしまった場合には、食品衛生法上、お店は一切責任を負わないということにはならないということになるため、持ち帰りを認めるか否かはとても慎重になる必要があります。
お店の対応として何が正解というものはありませんが、食中毒のリスクが生じない食品についてはテイクアウトを認めるという選択か、リスクを防ぐため一律持ち帰りを禁じるというのもいいかもしれません。
そして、トラブルを防ぐためにも持ち帰りを認めているのか、禁じているのかについては、あらかじめお客さんにもわかるように掲示しておいた方がいいと思います。
少し話は変わりますが、通常の飲食店ではなくバイキング等の食べ放題のお店で料理を持ち帰ることは認められるのでしょうか。
これについては、食べ放題やバイキングはあくまでそのお店の中であれば好きなだけ食べてもよいというものであり、好きなだけ持ち帰ってよいという内容ではありません(それが認められるのであれば、大量の容器を持っていきいくらでも持ち帰ることができることになってしまい、皆がそれをしだしたらお店はつぶれてしまうでしょう。)。
したがって、バイキング等の食べ放題で店に無断で料理を持ち帰ってしまうことは、刑法235条の窃盗罪に該当する恐れがあるため、くれぐれも控えた方がいいでしょう。
食品ロスを防ぐためにも、食べ放題でもそうでなくても自分たちが食べきれることができる量を注文するよう心がけたいですね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
サッカーと法律
絶賛カタールワールドカップが盛り上がっています。
死のグループと言われたグループEに入った日本が、ドイツとスペインに勝ってグループステージを突破したことで、初のベスト8へと期待が高まっています。
日本対スペインは試合開始時間が午前4時でしたが、眠い中、妻と2人で見た甲斐がある試合でした。
決勝トーナメントは午前0時、もしくは午前4時から試合を開始するので、観戦するかどうか迷っているところです(このコラムも、決勝トーナメントのフランス対ポーランド戦を見ながら書いています。)。
法律事務所のコラムですので、今回もサッカーと法律にまつわるお話をしたいと思います。
まず、先ほどのワールドカップに関連する法律のご紹介です。
日本でもワールドカップに関する法律があります。 2002年の日韓ワールドカップが開催される際に、「平成十四年ワールドカップサッカー大会特別措置法」という法律が制定されました。
この法律は、日韓ワールドカップの円滑な準備を行うために制定された法律であり、お年玉年賀はがきの収益の一部などを大会運営のために寄付することができることなどが規定されている他、大会運営に従事する人や審判への報酬について所得税を課さないこと等が規定されています。
また、サッカーと関連する法律の分野としては、ケガや死亡事故と損害賠償の問題があります。
よくあるケースは、ゴールが固定されておらず、倒れたゴールの下敷きになってしまった場合の施設管理者の損害賠償責任や、熱中症で過酷な練習をさせた監督の賠償責任など、サッカーと直接関連する損害賠償というよりは、管理責任等が問題になることが多いです。
そもそも、サッカーは、殴りあったりなどというスポーツではないものの、選手同士が激しくぶつかり合うことが自然に起きるスポーツですので、試合中等にけがをした場合であっても、あくまでもプレーの範囲内のものであれば、損害賠償を請求することはできないケースが多いです。
もっともプレイ中であっても、例えば、ボールを持っていない選手に悪質な暴力を行ったなど、プレーの範囲内の行為であると言えないような悪質な行為を行った場合には、損害賠償や刑事責任が生じる可能性もあると考えられます。
このようなスポーツの場面での損害賠償については、さまざまスポーツで裁判になっており、機会があればご紹介させていただこうと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
物損事故で思わぬ賠償金
皆さんの多くが乗られている自動車は、技術の進歩で安全性が非常に高くなりました。
衝突を未然に防ぐ機能などが備わり、事故は減っているように感じられますが、相変わらず交通事故のご相談は絶えずあり、全国でも痛ましい交通事故のニュースはなくなることはありません。
交通事故は大きく分けると、以下のの2つ(もしくはその両方)にわかれます。
①人にケガをさせてしまった人身事故
②人にケガをさせずに相手の車やその他の物を壊してしまった物損事故
一般的なイメージですと、人にケガをさせてしまった人身事故の方が大きな賠償額になるという認識だと思います。
重篤な後遺障害が残ってしまった、お亡くなりになってしまった場合に、賠償額が高額になるというのは当然ですが、実は物損事故においても損害額が高額になってしまう可能性があります。
運送車両の積み荷の破損
運んでいる荷物が非常に高額、事故により中の荷物が破損をしてしまった場合、荷主から損害賠償を請求される可能性があります。
実際の裁判例では、荷主が運送会社に対し、積み荷の損害として4億円以上を請求し、2億円以上の賠償を求める判決が出されたこともありました。
店舗の破壊
高齢ドライバーの方がお店に突っ込むといったニュースを見られた方も多いと思います。
事故により店舗に迷惑をかけてしまい、商品の損害だけではなく、営業ができないことの損失なども賠償する必要があるため非常に高額な賠償金額が発生する可能性があります。
道路上の構築物の損壊
店舗や積み荷以外の高額な賠償がなされるケースとして、道路上の構築物を損壊してしまった場合があります。
道路上の構築物とは、例えば、ガードレールや照明柱、カーブミラー、電柱、信号機などがあります。
こういった構築物については、事故を起こした当事者に賠償義務が発生するため、こういった構築物も賠償する義務を負うことになります。
たとえば、ガードレールなどは2メートルで3万円程度が相場といわれておりますが、電柱や信号機、交通標識等は非常に高額となる場合があり、電光式の標識などは1,000万円以上の賠償が請求される可能性も十分あります。
このように、物損でも非常に高額な賠償義務を追う場合があります。
しかし、物損事故を起こしてしまったとしても「対物賠償保険」に入っておけば、こうした損害についても保険会社が負担してくれることが多いです。
ただし、無制限などにしておらず、保険金額の上限などを設定してしまっていた場合には、保険金額を越えた損害額については、自分で支払わなくてはいけません。
事故が起きないのが一番ですが、万が一に備え、きちんと保険には加入しておいたが方がいいですね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。