弁護士コラム

2022.01.26

実行犯ではないのに処罰される?
~共謀共同正犯について~

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2021年9月24日、福岡地方裁判所にて、特定危険指定暴力団の工藤会のトップ2名に対し、死刑判決と無期懲役判決が言い渡されました。

判決の言い渡された2名は、いずれも自分が実行犯ではない殺人事件について、「共謀共同正犯」として処罰されています。
本日は、この一般の方にあまりなじみがない、「共謀共同正犯」についてご説明させていただきます。

2021年9月24日、福岡地方裁判所にて、特定危険指定暴力団の工藤会のトップ2名に対し、死刑判決と無期懲役判決が言い渡されました。

まず犯罪は大きく分けると、全て単独で行う「単独犯」と複数の人が犯罪に関与している「共犯」に分別されます。
そして、「共犯」には説明しますが、「共同正犯」「幇助(ほうじょ)」「教唆犯」(2つを併せて「従犯(じゅうはん)といいます。」)に区別されます。

共同正犯は、刑法60条に「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と規定されており、共同して犯罪を実行した場合には2人とも同じ責任を負うことになります。

幇助犯とは、共同正犯以外の行為で正犯の犯罪行為を容易にする行為を行ったこと指し、刑法62条1項で「正犯を幇助した者は、従犯とする」と規定されており、幇助犯も処罰の対象になります。

また、教唆犯とは、他人をそそのかして、犯罪を実行させる罪であり、刑法61条1項で「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」と規定されており、教唆犯も処罰の対象となります。

そもそも刑罰という重大な不利益を被る場面では、個人が自己の行為によって犯した結果についてのみ処罰されるべきであるという考え(これを「個人主義」といいます。)が採用されており、共同正犯は、個人主義の例外であり、共犯者が心理的物理的に影響を及ぼし合う関係になることで犯罪結果が生じやすくなるため共犯の場合には双方とも結果を負う形になります。

そして、共同正犯は上記刑法60条のとおり「共同して犯罪を実行した」と規定されており2人以上の人が共同して犯罪を行うことが予定されていますが、判例上、実行行為を行っていなくても、「2人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、かつ自己の行為を他人に補充するという意味で、緊密な相互利用相互補充関係があれば」共謀共同正犯として、結果についても責任を負うとされています。

これにより、集団詐欺等の犯罪集団などにおいても刑罰を科すことができるようになったのですが、共謀の事実が認定ができなければ共謀共同正犯を認定することができません。

今回の裁判でも、工藤会のトップ2人が共謀した事実に関する直接的な証拠が何ら存在しなかったため、間接的な事実を積み重ねて共謀の事実が認定されています。

本件については、被告人側から福岡高等裁判所へ控訴がされているため、控訴審においてどのような判決がなされるか、今後も注目していきたいと思います。

 

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2022.01.13

雪道をノーマルタイヤで走ると罰金?

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冬になるととても寒くなりますね。
私は司法試験に合格するまで東京に住んでおり、司法試験の合格後の司法修習で佐賀県に配属されて初めて九州に住むことになりました。
九州と言えば、ヤシの木がいっぱい生えてる南国のようなイメージでした。
実際に佐賀に12月に配属され、雪が降ってるのを目の当たりにした時は『イメージと全然違う』と愕然としたのが懐かしく思えます。

気温が低くなると注意しなければいけないのが、路面の凍結や雪道です。
路面の凍結等により、重大な事故が生じるだけでなく、渋滞を引き起こす等様々なトラブルが起きる危険性があります。

路面凍結や雪道でのトラブルが発生する多くの原因は、ノーマルタイヤで走行してしまうことです。
実際私も、山道で凍結しているところでノーマルタイヤスタック(タイヤが回転しなくなってしまうことです)している車を見かけ、友人数名と押して脱出したことがあります(その際にも、後ろがすごい渋滞になっており、運転手の方もとても迷惑をかけてしまって申し訳なさそうにしていました)。

雪道をノーマルタイヤで走ると罰金?雪道や凍結している道路をノーマルタイヤで走行してしまうと、単に他の人に迷惑をかけてしまうだけでなく反則金を支払わなければならないことになります。

道路交通法71条では、「車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。」と規定しており、同条第6号では「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」と規定しています。

そして現在、沖縄県を除く全ての都道府県において、積雪・凍結した路面で冬用タイヤを装着するなど「すべり止め」の措置をとるよう都道府県道路交通法施行細則または道路交通規則で義務づけられています。

この規定に違反した場合には、各都道府県のいずれでも、大型車は7,000円、普通車は6,000円、自動二輪車は6,000円、原動機付自転車は5,000円の反則金を支払う義務を負います。

このすべり止めの措置については、決して降雪地帯のみに限定されているものではなく、全ての地域で措置を講じることが求められます。「路面凍結注意」「冬用タイヤやチェーンを装着」などという標識などがある場合や、すでに天気予報で雪の予報が出ている場合等の場合には、冬用タイヤやチェーンを準備して、路面凍結や雪道でもトラブルが起きないように対処したいですね。

 

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2022.01.04

凧あげでトラブルに?

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新年明けましておめでとうございます新年あけましておめでとうございます。
2022年になりました。

私が、この菰田総合法律事務所に入所してから6年が経ちました。
6年前の時点で、那珂川オフィスは那珂川市唯一の法律事務所でした。

それから6年経ちましたが、相変わらず那珂川市唯一の法律事務所のままです。 それでも、初めてお会いする方に名刺を渡すと「那珂川に法律事務所があったんだね。」と言われることも少なくありません。

ひとえに私自身の営業力の乏しさが原因なのでしょうが、今年は那珂川オフィスや私自身のことをもっと知ってもらうためにも、このブログも飽きることなく更新していきたいと思います。

凧あげでトラブルに?今年の抱負もお伝えしたところで、新年一発目は新年らしい話題にしたいと思い、凧あげでのトラブルの事例をご紹介します。
小さい頃、お正月になると父や祖父と凧あげをして遊んだことを思い出します。
祖父が凧あげが上手で、長い糸をどんどん伸ばし凧がみるみる小さくなっていき、少し不安になってしまったことが懐かしいです。

凧あげでのトラブルというと、過去に、名古屋市で凧糸が架線にひっかかったことが原因で、車両所から名古屋駅に移動する予定であった新幹線の車両が動かせなくなり、別の車両を用意する等した結果発車時刻を18分遅れることになり、約400人に影響が出たということがありました(近くには凧も落ちていたようです。)。

凧糸が電線や架線にひっかかった状態で放置してしまうと、垂れた糸から感電するなど非常に危険な状態であるため、特に電車が通る架線にひっかかってしまうと、電車を動かすことができず、とても大きなトラブルになってしまう危険性もあります。

では、先程の事例のように、凧を架線にひっかけてしまった場合に、法的にどのような問題があるのでしょうか。
まず、わざと凧糸を架線にひっかけることをした場合、鉄道会社の業務を故意に妨害したことになるため、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性があります。

また、わざとでなくても架線の近くなどで凧あげをしており、誤ってひっかけてしまった場合であっても過失により鉄道会社に損害を与えたとして、不法行為に基づく損害賠償を支払わなければならない可能性も十分にありえます。

このようにお正月の楽しいイベントの1つである凧あげも大きなトラブルになってしまう可能性があるため、公園や運動場など周囲に遮るものがない広い場所で遊ぶように心がけたいですね。

 

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2021.12.22

カジノは違法じゃないの?~ギャンブルと賭博罪~

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近年、海外では一般的になっているIR(統合型リゾート)について、日本政府が着目し始め、2016年にはIR推進法が成立し、日本でもIRを実現するために、東京や大阪のみならず、九州では長崎(佐世保)が誘致に手を挙げているといった内容のニュースを目にするようになりました。

このIRの中には、カジノ施設が入ることが多く、日本で設置されるIRにおいてもカジノ施設が入ることが予定されています。
2021年の7月には、IR整備法のうち、日本国内でのカジノを解禁し、ギャンブル依存症対策などを定めた条項を7月19日に施工することが閣議決定されました。

この新たに施行させる条項には、事業者が国からの免許を受けた場合、カジノのゲームで金銭を賭けたとしても、刑法の賭博罪を適用しないことが明記されています。

カジノこのように、刑法の賭博罪を適用しないということがわざわざ明記されているということは、カジノでお金を賭けてゲームする行為、形式的には、刑法で禁止されている賭博罪に該当するということになります。

カジノのみならず、日本では、パチンコや競馬などのギャンブルが行われておりますが、パチンコや競馬をやっている人が賭博罪で逮捕されることはありません。
今回は、一見すると賭博罪に該当するようなギャンブルについて、なぜ賭博罪に該当しないのかについてご説明させていただきます。

まず、刑法のと賭博罪の規定をみると、刑法185条では、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定されています。

すなわち、一時の娯楽に供するものを賭けたにとどまる場合(お昼の代金をごちそうするために、あるチームが勝つか負けるかを賭ける場合などです。)を除くと、「賭博」に該当する行為を行った場合には、刑法185条違反となり、50万円以下の罰金等に処せられる可能性があることになります。

そして、「賭博」とは、『偶然の支配』による財物の得喪のことをいいます。
簡単に言うと、「結果がわからない事に金品を賭けて楽しむ事」をいいます。
この定義からすると、パチンコも賭博に該当するようにも思えます。

しかし、パチンコをされない方には、よくわからないと思いますが、パチンコの仕組みは、①お金を払ってお店からパチンコの玉を買う、②買った玉でパチンコ台で遊戯を行う、③出た玉と、財物的価値がない景品と交換するという仕組みになっています。
そして、パチンコ店では、お店を出たすぐ隣に「景品交換所」という上記③でもらった景品を現金で購入してくれる場所があります。 このように、パチンコ店では、財物性のない景品しかもらえないため、「賭博」には該当しないことになり、お店を出たら「たまたま」お店とは関係のない(ということになっています。)交換所の人が景品を現金を交換してくれたという仕組みになっています(これを通称「三店方式」といいます。
だいぶ脱法的な要素が強いですが、国も警察も黙認しているというのが現状でしょう。

競馬一方、競馬の場合には、馬券を購入し、購入した馬券が当選した場合には金銭が直接払い戻されるため、まさに「賭博」に該当します。
しかし、公的な団体(JRA)が運営しているということ、会場が地域発展の貢献につながるという理由で、国が認めた賭博(「公益賭博」といいます。)であるため、賭博罪の適用はありません(IRでのカジノ施設も国が認めたため賭博罪が適用されません。)

このように、パチンコや競馬等は、いくらやっても賭博罪として犯罪行為には該当しないものの、ギャンブル依存になってしまうと、破産など人生を壊してしまう危険性を有しています(上記IR整備法においても、ギャンブル依存対策として、国内客の入場は7日間で3回、28日間で10回と利用制限が設定されています。)

当事務所にもギャンブルで多額の借金を抱えてしまった方がご相談に来られることが少なくありません。
そういった方でも、破産が認められるケースや、個人再生手続により、元の生活に戻ることができる方がほとんどですのでギャンブルでの借金でお悩みの方はなるべく早くご相談ください。

 

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2021.12.15

宝くじ当たったのに換金しない?~消滅時効について~

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宝くじ当たったのに換金しない?~消滅時効について~今年もあと残すところ1カ月をきりました。
年末になるとクリスマスや、私の大好きな大みそかの格闘技イベントなどが予定されていますが、毎年年末になると年末ジャンボ宝くじが発売されます。

前後賞を合わせると10億円があたる夢のような宝くじですが、当選しても、換金しないまま放置しておくとどうなってしまうのでしょうか。

この点について、主に宝くじの販売などの規制することを内容とする当せん金付証票法という法律に規定されており、「当せん金付証票の当せん金品の債権は、これを行使することができる時から一年間行使しないときは、時効によつて消滅する。」とされています(同法12条)。

すなわち当選してから何もせずに1年間が経過してしまうと時効により換金することができなくなってしまうことになります。
せっかく当選した宝くじを換金しない人がいるのかと思ってしまいますが、年末ジャンボ宝くじを含め、年に5回あるジャンボ宝くじでは、毎年度100億円をこえる当選金が換金されずに時効になっているとのことでした(1億円以上の高額当選金も時効になっているようで、換金しないのであればぜひ自分に譲ってもらいたいと思ってしまいますね。)。

この当せん金付証票12条でも記載されている時効という制度ですが、権利を行使することができる人が一定期間権利を行使をしない場合には、権利が消滅するという消滅時効の制度が民法上採用されています。

令和2年4月1日に施行された改正民法により、消滅時効については原則として、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点といいます。)から5年または、権利を行使することができる時(客観的起算点といいます。)から10年のいずれか早い方とされました。

このように、債権を有していても一定期間権利を行使をしないと、消滅時効により消滅してしまうリスクがあるため、長期間放置している債権などがあれば、是非早急に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
特に、不法行為に基づく損害賠償請求権などは異なった時効期間となっているため、ご自身の債権の時効期間がお知りになられたいという方も是非ご相談ください。

また、消滅時効については、仮に時効期間が経過していたとしても、債務者が支払義務のあることを承認した場合には、消滅時効を主張することができなくなってしまうため、債務を消滅させたい人は、消滅時効の意思を表示(援用といいます。)する必要があります。

長期間支払っていない債務などがあり、ある日突然督促が来たという場合には、その債権が消滅時効にかかっている可能性もあるため、ご自身で対応する前に是非一度弁護士にご相談ください。

 

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2021.11.30

バイクはどこに止めればいいかは法律で決まっている??

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近年の働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大により、会社に出勤する機会も減りテレワークなどにより自宅でお仕事をされている方も増えてきていると思います。

また、会社に通勤している方であっても、それまで公共交通機関を使って通勤されていた方も通勤時の感染リスクを軽減するために自転車、自動車、バイクでの通勤にシフトされる方も多いと思います。

バイクでの移動をされる方も増え、車を止める駐車場、自転車を止める駐輪場だけでなく、バイク専用の駐車スペースが設定されている施設も増えてきています。

このようにバイク専用の駐車スペースが設定されている施設の場合には、その駐車スペースにバイクを停めていただければ、何ら問題はありません。

私は普段職場への通勤やちょっとした移動には車を使って移動しており、かつそもそもバイクの免許やバイクを持っていないため、このブログを書くまでよく考えてこなかったのですが、バイク専用の駐車スペースが無い場合には、駐車場に停めればいいのか、駐輪場に停めればいいのか非常に悩ましいと思います。

今回のブログを書くために改めて調べてみたのですが、まず駐車場に関して規定している法律があるか調べたところ、その名のとおり「駐車場法」という法律があります。

そして「駐車場法」2条(第1号及び第2号)では、駐車場の定義を「自動車の駐車のための施設であって一般公共の用に供されるものをいう。」と規定しており、駐車場は「自動車」を駐車すべきであると規定しています。

そうすると、一般的な感覚ではバイクは自動車ではないため、全てのバイクは駐車場に駐車できないとも思えます。

しかし、道路交通法では自動車の定義を規定しているのですが(具体的な定義の内容は省略します)原動機付自転車(すなわち排気量50cc以下のもの)以外のバイクは自動車に該当するとされています。

したがって、排気量が50ccを越えるバイクは駐車場に停めることができます。

なお、駐輪場についても「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」という法律が規定されており、その法律で自転車(「自転車等」といいます。)を「自転車又は原動機付自転車(道路交通法第二条第一項第十号に規定する原動機付自転車をいう。)」と規定しており、自転車及び原動機付自転車は駐輪場に止めることとされています。

このように、法律上では50cc以下のバイクは駐輪場、50ccを越えるバイクの場合には駐車場に停めると規定していますが、50ccを越えるバイクであっても、駐車場の広い駐車スペースにぽつんとバイクを停めることに抵抗があるという方もいらっしゃると思います。

したがって、ショッピングモール等の商業施設の場合には、駐車場の入口などにバイクを停める方法などが記載されている場合がありますので、そういった商業施設での停める場合や、どこに停めればいいかなと悩んだ場合には、駐車場の管理人やお店の人等にどこに停めればいいかを確認するということも無用なトラブルを避けるために有用かもしれません。

 

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2021.11.15

立候補にもお金が必要?~立候補のための供託金について

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2021年10月14日、衆議院が解散し、解散に伴う衆議院議員総選挙が10月19日に公示され、10月31日に投票が行われます。

立候補にもお金が必要?~立候補のための供託金について今回はコロナ禍での選挙となり、どういった点が争点になるのかについて定まっていないような気もしますが、一個人としては、子ども関連の政策に力を入れているところがポイントかな、などと考えています。

この総選挙は小選挙区制と比例代表制が併用されていますが、国会議員になるためには、政党の名簿に登録されて、当選する場合を除くと、小選挙区制において、立候補をする必要があります。

よく巷の会話などで「そんなに今の政治に不満があるのであれば、自分が立候補して政治家になればいいじゃないか」ということを聞かれたこともあるかもしれませんが、そんなに簡単に立候補をすることができるのか、今回は選挙の立候補についてご説明させていただきます。

まず、立候補するための権利のことを、被選挙権といいます。
この被選挙権については、認められる年齢が公職選挙法に定められており、衆議院議員の場合には、満25歳以上の人が被選挙権を有すると規定されています(10条1号)。

この他に、罪を犯して禁錮以上の刑に処せられた場合などには被選挙権が失権するのですが、失権事由がないかぎり、満25歳以上であれば立候補をすることは可能です。

しかし公職選挙法では、立候補の届出をする場合には、供託金を支払わなければならないと規定しており(92条)、衆議院(小選挙区)議員の場合には、300万円を供託金として支払う必要があります。
そして、この供託金ですが、一度届出をし、途中で立候補を取りやめても返金はされず、途中で辞めなくても投票数が少ないと、没収されてしまいます。

衆議院議員選挙では、有効投票総数の10分1(1割)の票を獲得できなければ、供託金が没収されることが公職選挙法93条に規定されています(前回、2017年に行われた総選挙の際には、174人分の約5億2000万円の供託金が没収されているようです。)。

 

すなわち、立候補したいと考える人は、この供託金300万円を準備する必要があり、300万円が用意できない人は立候補ができないということになります。

この供託金の制度については、憲法で保証された立候補する権利を不当に制限するものであるとして、訴訟を行われている方もいるようです。
これに対し、国としては、供託金を設定することで、立候補者の乱立することでの混乱や売名行為での立候補などを防ぐためと説明しているようです。

確かに自由に立候補ができてしまうと、さまざまな立候補者の選挙カーが町中を走り回るような事態も起きかねず、そういった印象で「この立候補者には投票しない」いう有権者も出てくることもあり得ます。 そのため、立候補に一定の制限を設ける必要性もあるのではないかなと思います。

他国では、例えば、一定の人数の推薦人の署名が必要であるなど、立候補にそのような制限を設定しているところもあるようです。 本国でも、供託金の撤廃や減額など、抜本的な制度の見直しが検討されるべきかと思います。

 

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2021.10.30

刑事事件での細かいトリビア

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複数の人が亡くなってしまった殺人事件での裁判では、一般の傍聴人の方だけではなく、報道機関も傍聴に訪れ、社会的にも非常に耳目を集める事件となります。

ニュースでは、裁判の模様が報道され、検察官が被告人に死刑を求める求刑を行ったことや判決で死刑判決が出されるのかがニュースなどで報じられることがよくあります。

その中でも、判決言い渡し期日にて、「裁判官が判決理由を先に述べ主文を後回しにしました!」等と記者が報じることがよくあります。
この判決理由を先に述べ、主文を後回しにする場合(単に「主文後回し」ということが多いです。)、被告人に死刑判決が出される可能性が非常に高くなるため、上記のニュースが速報で流れることが多いです。

今回は少しマニアックなトリビア的な内容になってしまいますが、この「主文後回し」の根拠やなぜそのような対応がなされるのか等についてご説明させていただきます。

刑事裁判の具体的な流れについては、別の機会にご説明させていただきますが、検察官の論告・求刑と弁護側の最終弁論及び被告人の最終意見陳述が終わると、刑事裁判の手続は終結し(「結審」と言います。)別の日に判決を宣告する日(「判決期日」といいます。)が指定され、判決言い渡し期日にて、裁判から判決が伝えられ刑事事件は終結となります。

そして、判決言い渡し期日では、判決、具体的には「被告人が有罪であるのか無罪であるのか、有罪である場合には、どのような刑罰(量刑)が科されるか」が言い渡されることになります。

そして判決は、判決の上記結論を述べている「主文」と判決種便に至った根拠(理由)を述べている「判決理由」の2つで構成されています。刑事訴訟法44条1項では、「裁判には理由を附しなければならない。」と規定されており、判決・決定・命令等の裁判には理由をつけれなければならないことが規定されているため、判決は「主文」と「判決理由」の2つで構成されることになります。

そして、判決の言い渡しの方法については、刑事訴訟法規則35条2項に、「判決の宣告をするには、主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない。」と規定されていますが、主文と理由のどちらを先に告げなければならないかについてまでは、規定されていないため、判決を言い渡す裁判官の裁量に委ねられています。
もっとも、裁判官が作成する判決書(一般の方は「はんけつしょ」と」読まれることが多いと思いますが、法律家の間では「はんけつがき」と読まれることが多いです。)では、①主文②判決理由の順で記載されているため、通常の刑事事件では、まず主文を告げ、その後に判決理由を告げることがほとんどです。

これに対し、死刑判決の場合には、人の生命を奪う刑罰を行う判決が出されるため、いきなり結論である主文を告げてしまうと被告人において動揺してしまい、判決理由をおちついて聞くことができなくなってしまう可能性があるこため、主文後回しになることが多いです。

また、上記のとおり死刑判決が予想される重大事件の場合には、報道機関も多く傍聴しており、先に主文を述べてしまうと判決理由を述べている間に多くの報道機関が、主文の内容を報じるために慌ただしく法廷から退席するため落ち着いて判決理由を述べることができないため、主文後回しの運用が取られるようになったということも言われています(上記の通り、今では主文後回し=死刑判決の可能性が高いということが知れ渡っているため、そこまでの効果は無いのかもしれません)。

いずれにせよ、判決言い渡し期日は、被告人に刑罰を科す非常に大事な場面であるため、裁判官としても被告人に自らの行った罪についてきちんと理解してもらうため、判決理由をきちんと聞いてもらうために、主文後回し等の措置が取られています。

余談にはなりますが、有罪判決と無罪判決の判決言い渡しでは、主文の読まれ方に違いがあります。
有罪判決の場合には「被告人『を』懲役●年に処する。」と言い渡されますが、無罪判決の場合には「被告人『は』無罪。」と言い渡されます。
「を」と「は」で有罪か無罪がわかることになり、この違いを知ったとき、決まり字が決まっている百人一首のようだなと思いました。

 

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2021.10.15

デジタル遺産に関するトラブル

皆さんは、デジタル遺産といった言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。

デジタル遺産に関するトラブル高齢化社会といわれる現代において、相続、すなわち、自身や家族が亡くなった際のことが、世間で注目されるようになってきたため、テレビのニュースなどでも報じられるようになり、デジタル遺産という言葉を耳にされた方もいらっしゃると思います。

 

デジタル遺産とは、一般的には、仮想通貨やFXのアカウントや電子口座、SNSのアカウント、スマートフォンのアカウントなど、デジタル形式で保管されている財産のことをいいます。

通常相続手続というと、預貯金や、不動産、投資をしている方等は投資用の口座などが相続財産というイメージがあると思います。

上記のようなネットワークを通じての財産を保有されている方も非常に増えているため、このようなデジタル遺産についても、生前にきちんと整理しないと、残されたご家族に多大な迷惑をかけてしまう可能性があります。
そこで、今回はデジタル遺産に関するトラブルやそのトラブルが起きないようにするための対処法についてご説明させていただきます。

まず、デジタル遺産に関するトラブルが起きる原因は、そのほとんどが、お亡くなりになった方のアカウントのパスワードが分からないことが原因で起きています。

実際にあったケースとしては、以下のようなトラブルがあったようです。

CASE.1
ご主人がお亡くなりになったことをご主人のお知り合いにお知らせしなければならないのに、ご主人が知人の連絡先をすべてスマートフォンにのみ登録しており、奥様は暗証番号を知らなかったため、葬儀に呼ぶべき方をお呼びすることができなかった。

CASE.2
夫はネットでの動画や音楽の定額購入サービスや有料サービス等に多数加入しており、奥様は、ご主人の生前にどのようなサービスに加入していたかも一切把握していなかったため、亡くなった後、携帯やパソコンのパスワードがわからず、サービスを提供する会社に連絡することができず、毎月多くの料金が引き落とされてしまった。

CASE.3
夫がFXや仮想通貨を持っていることを知らず、夫が亡くなってしばらくして、そのような暗号資産等をもっていることが分かった。
しかし夫が亡くなった時点では、ある程度価値を有していた暗号資産が夫の死後放置していた期間に暴落してしまった。相続税の算定の際には、被相続人が死亡した日の価額を基準に相続税を算定するため、他の財産と併せて、多くの相続税を支払わなくてはならないが、暗号資産が暴落してしまったため、その他の相続財産や、妻本人の財産から相続税を支払うことを余儀なくされた。

 

デジタル遺産に関するトラブルこのように、デジタル遺産に関し、親族がパスワード等の情報を知らないことにより残された親族に対し、非常に大きな迷惑をかけてしまうケースが非常に多く発生しています。

特に、CASE.3では、本来全財産を基準とすると相続税の申告及び納税が必要であるにもかかわらず、暗号資産の存在を知らずに相続税の申告は不要であると考えて、放置していた場合、本来の相続税のみならず、無申告加算税・重加算税・延滞税等多額の税金を支払うことにもなりかねません。

このように、残されたご遺族の方にご迷惑をおかけしないためにも、ご自身の終活を考えられている場合には、きちんとデジタル遺産に関する対策も行う必要があります。

具体的には配偶者やお子さん等身近な家族には、自分にはどういった財産があることや、どういったサービスを利用しているか、アカウントのID、パスワードなどを一覧にしたメモ等を準備し渡しておくなどし、残されたご家族において、どこに何があるのかということすらわからない状況をなくすことが有益であると思います。

デジタル遺産に関するトラブルもっとも、日本人の場合には、アメリカ等の諸外国と異なり、自身や親族が亡くなった後のことを生前に話すことを縁起が悪い等の理由により敬遠される方が非常に多いです。

 

しかし、デジタル遺産を含めたご自身の財産や債務などをきちんと整理しておかないと、ご自身が亡くなったことだけでもご遺族は悲しまれているのにさらにご迷惑をおかけしてしまうということは、ご本人も絶対に避けたいはずであるため、きちんと整理することが必要であると思います。

そこで、ご親族などに事前に情報をお伝えすることに抵抗がある場合には、遺言書を作成することをおすすめします。

遺言では、原則としてお持ちの財産についてはすべて列挙し、それを誰に相続させるかについて記載することになるため、遺言で全ての財産について記載しておけば、残されたご遺族において、どのような財産を有していたかについては遺言書を見ればすぐにわかることになります。

また、遺言には、上記財産の帰属先などの遺言の本旨として記載すべき事項以外にも、ご家族への今までの感謝の気持ちや、遺言書を作成するに至った思い等を記載することも可能です(これを「付言事項」といいます。)。

この付言事項において、どういったアカウントを有していたか、パスワードの等の個人情報の保管場所等について記載をしておくことにより、ご遺族に上記のようなトラブルが発生することを防ぐことができると思います。

当事務所は、遺言書の作成等相続事件を専門的に取り扱っておりますので(博多駅に隣接するKITTEマルイの5階にて「相続LOUNGE」も運営しております。)、デジタル遺産も含めた相続に関するお悩みについては、是非当事務所にご相談ください。

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2021.09.30

罪を犯しても刑務所に入らなくて済む?~実刑判決と刑務所の収監~

最近、仕事の忙しさもあって、このブログをさぼってしまっており、ふと思い出したように記事を書いています。
弁護士の後藤です。

2019年4月に東京の池袋で発生した、乗用車の暴走事故。
親子2人が死亡し、9人が負傷してしまったというとても凄惨な事故であり、被害者のご遺族の方のインタビューや会見、被告が公判で過失を争い、無罪を主張していたことなども相まって、世間でも非常に耳目を集める事件となっていました。

先日2021年9月2日にこの事件の第1審の判決が東京地方裁判所で出され、被告人にはブレーキとアクセルを踏み間違えた過失があると認定し、被告に対し、禁錮5年の実刑判決を言い渡しました。

判決後、被告人が第1審の判決を不服として、高等裁判所へ控訴するか否かが注目されていましたが、先日、被告人において、控訴をしない意向であることがニュースなどで報道されるようになりました。

被告人において、禁錮5年の判決に対し控訴をしない場合には、かかる判決が確定することになります。

そして、テレビニュースや新聞では、被告人が90歳と高齢であることから、判決が確定場合に、刑務所に入らない可能性があるのではないかということが盛んに論じられてきました。

私もこの事件があるまでは、刑務所に入らなくてもいいケースがあることは知っていましたが、具体的にどのような場合に刑務所に入らなくていいケースがあるのかについてはよく知らなかったため、今回の事件を機に少し調べてみることにしました。

まず、犯罪を犯したとしても、事件が検察官に送致されない場合や、検察官に送致されたとしても、示談などが成立して不起訴処分になった場合には、そもそも刑事裁判すら開かれないので、刑務所に入る(「収監」といいます。)ことはありません。

罪を犯しても刑務所に入らなくて済む?~実刑判決と刑務所の収監~次に、罪を犯し、検察官に起訴されたとしても、犯罪の内容が軽微である場合、前科等が無い場合や、監督する人がいて再犯の恐れがない場合等ケースは様々ですが、こういった諸般の事情を考慮し、判決において、懲役●年等の刑は言い渡されますが(いわゆる「有罪判決」といいます。)、判決確定後一定の期間(3年、5年などが一般的です)、犯罪を犯さなかった場合には刑務所に入らなくて済むという執行猶予判決が出される場合があります。

この執行猶予判決が出た場合にも、刑務所に入らずに済みます(どのような場合に執行猶予判決が認められるのか、どのような場合に執行猶予が取り消されるのかについては別の記載にご説明しようと思います。)。

そして、今回の事件のように、判決に執行猶予がつかなかった場合(「実刑判決」といいます。)には、判決が確定次第、原則として刑務所に収監されるのですが、実刑判決を受けたとしても、刑務所に入らなくて済む場合、すなわち刑の執行を止める制度については、刑事訴訟法に記載されており、具体的には2つの場合が規定されています。

まず、刑事訴訟法480条では、「懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって、その状態が回復するまで執行を停止する。」と規定されており、病気や認知症等が原因で、心神喪失状態になっている場合には、その状態が回復するまでは、刑の執行が停止されることになります。

次に、刑事訴訟法482条では「懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって執行を停止することができる。」と規定し、検察官の裁量で刑の執行が停止されるケースを規定しています(480条の末尾が「停止する」となっており、必ず停止することを記載しているので「必要的執行停止」、482条の末尾が「停止することができる。」と検察官の裁量に委ねられている記載になっているため、「裁量的執行停止」と呼ばれています。)。

そして、裁量的執行停止が認められるケースとして、

①刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞(おそれ)があるとき。
②年齢70年以上であるとき。
③受胎後150日以上であるとき。
④出産後60日を経過しないとき。
⑤刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずる虞(おそれ)があるとき。
⑥祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき。
⑦子又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき。
⑧その他重大な事由があるとき。

と、記載されています。

今回では、被告人の年齢が90歳であり、①の「年齢70年以上であるとき」に該当するため、収監されないのではないかと報道されています。

罪を犯しても刑務所に入らなくて済む?~実刑判決と刑務所の収監~しかし、結論からお伝えすると、70歳を超えているからといって必ず収監されないということはなく、むしろ70歳以上の高齢者であったとしても、実刑判決が出された場合、ほぼほぼ収監されることになります。

逆に70歳を越えた人が原則収監されないとした場合には、いくら罪を犯したとしても刑務所に収監されないと知った高齢者の方の犯罪が増えてしまったとしてもおかしくありません。
したがって、今回の被告人も90歳と非常に高齢ではあるものの、おそらくは判決確定後、刑務所に収監されることになる可能性が高いでしょう。

逆に、③や④の場合には、特に出産の直前直後には、刑務所で出産することは赤ちゃんにとって適切ではないため、刑の執行が停止され、病院へ行き、病院に入院して出産することは少なくありません。

ニュースやインターネットの記事では、高齢者は原則刑務所に収監されないかのような記載も見受けられますが、おそらく高齢者の犯罪は、価格の低い商品の万引き(窃盗)など、軽微な犯罪が比較的多く、そもそも不起訴処分となるケースや、起訴されたとしても執行猶予になるケースが比較的多いため、それを有罪であっても刑務所に収監されないと誤って認識している可能性があるのではないかと思っています。

このように、実刑判決が出されてしまうと、原則として刑務所へ入らなくてはならないため、起訴されないことや、執行猶予判決を得ることが非常に重要になり、それには早期に弁護士に依頼して、適切かつ迅速な対応が求められますので、ご自身や近しい方が罪を犯してしまった場合には、早めに弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

最後にはなりますが、この度の事故で、お怪我やお亡くなりになってしまった方や、その後親族の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。

 

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