激甚災害指定とは?
ここ数年、九州のみならず、全国で台風や線状降水帯等による大雨で、甚大な被害が出てしまう天災が多数発生しています。
ニュースを見ていると「100年に1度の・・・」という見出しを目にすることもあり、異常気象が起きることが日常的になってしまっているようでとても怖く感じています。
令和4年10月28日に、日本政府は九州や静岡県で発生した台風14号・15号の大雨災害について「激甚災害」に指定することを閣議で決定したと発表されました。
この激甚災害とは、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(激甚災害法)において定められた、地震・台風・豪雨などによる、著しく被災自治体への財政援助や被災者への助成がとくに必要となる大災害のことをいいます。
激甚災害には、地域などをくぎらずに災害そのものを指定する「激甚災害指定基準による指定(本激)」と、局地的豪雨などを市町村単位で指定する「局地激甚災害指定基準による指定(局激)」の2種類があります。
激甚災害に指定されると、地方公共団体の復旧事業における、国庫補助率の嵩上げ等が行われ、公共施設の復旧を助成することになります。
また、天災によって被害を受けた農林漁業者や、中小企業に対しても、中小企業信用保険法による災害関係保証や、特別の貸し付けがされたり、貸付金の償還期間が優遇される等の特別の財政助成措置が講じられることになります。
このように、激甚災害に指定されると、中小企業の皆さま等にも大きくかかわってくることになります。
先ほど述べた通り、異常気象が日常的に発生するようになっているため、企業としてもそういった異常気象によるリスクも考えて企業活動を行っていかなければならないのではないかと感じています。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
タクシーでのトラブルについて
新年明けましておめでとうございます。
昨年は、息子が仮面ライダーにドはまりして、変身ベルトを購入したり、遊園地へショーを見に行ったりと仮面ライダー一色の1年だった気がします(今1歳の娘がもう少ししたらプリキュアとかにはまりだしたら仮面ライダーとプリキュアに忙殺されるのかと思うと少し怖いです。)。
話は全然変わってしまいますが、皆さんは忘年会や新年会に行かれましたか?
そういった席ではお酒を飲まれる方多いため、会が終わり帰宅される際にはタクシーを利用される方が多いのではないでしょうか。
今回は、タクシーでのトラブルについてお話ししようと思います。
まず、SNSなどでよく話題になるのが、乗客が1万円札しか持っていない場合に運転手から文句を言われたり、コンビニで崩してくるように言われたというような釣銭トラブルがあります。
民法402条1項では、
「債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。」
と規定されています。
つまり、タクシーの料金を支払う場合(金銭債権の支払い)については、債務者(乗客)が、支払う通貨を任意に選択し支払うことができます。
例えば、乗客が支払う通貨を1万円と選択した場合には、有効な支払いとなるので、タクシー側は支払いを受ける必要があります。
したがって、法律の観点からは、乗客は1万円札で支払っても何ら問題はなくお釣りをタクシー側が準備しておく必要があると思います。
また、タクシー側が1万円札での支払いを拒否した場合には、法律上有効な弁済の提供がなされているため、お釣りが出せないなら乗客が1万円を渡せないとすることに問題はありません。
次に、お客がクレジットカードやキャッシュレス支払いを希望している場合に、タクシー側が拒否をすることができるかという問題ですが、あくま債務者(乗客)は金銭の支払いを行う義務を有しているので、クレジットカード等の利用については、債権者(タクシー側)が承諾して初めて有効になります。
したがって、タクシー側がクレジットカードやキャッシュレスを使えないと拒否した場合には、乗客は現金で代金を支払う義務を有していることになります。
タクシーは気軽に使える移動手段としてとても便利ですが、密室でのやり取りになるため、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
トラブルを避けるため、法律上の結論はさておき、スムーズに支払いができるよう準備はしておいた方がいいかなと思います。
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ネットショッピングの配送トラブル
皆さんはネットショッピングを利用されていますか?
近年は11月末から「ブラックフライデー」と称して、どのオンラインモールでもセールを行っており、私の家族も例年セールだから、何か買わなくてはという焦りからか、ついつい買いすぎてしまいます。
先日、ニュースでこのブラックフライデーの期間中に、「注文した商品が届かない」「指定の日時に届いていない」「お店側から一方的にキャンセルされてしまう」などのトラブルが多発しているということが報じられました(このようなトラブルを「宅配クライシス」と呼ぶそうです。)。
コロナウイルスの影響でネットショッピングを利用する方が増えたところに、セールを行ったため利用者が非常に増えてしまったことが原因のようです。
ニュースでは、子どもの誕生日に間に合うようにプレゼントを注文したが、届かなかったというトラブルが紹介されていました。
ネットショッピングではなく、店頭に行き商品を購入し配送指定を行う場合、その時点で契約が成立します。
一般的には店側には指定した期日に商品を届ける義務(債務)を負うことになります。
したがって、指定した期日に商品を届けることができずに、顧客に損害が生じた場合には、お店には損害を賠償する義務が発生することになります。
一方ネットショッピングの場合、気を付けなければならないのが、購入者がサイトで購入のボタンを押した時点では契約は成立していないという点です。
契約が成立するためには、顧客がこの商品を欲しいという意思を表示し(法律上「申し込み」といいます。)これに対し、売主が応じた場合(「承諾」といいます。)に初めて契約が成立するのですが、通常のオンラインモールの利用規約を見ると、店側からの発注メールが送られた時点で契約が成立するとなっています。
すなわち、顧客の購入ボタンを押す行為は、単に「申し込み」を行っただけの状態であり、お店側が発注メールを送信して、はじめて承諾がなされ契約が成立するということになります。
したがって、上記のトラブルのように一方的にキャンセルされたというトラブルも、厳密には申し込みに対し承諾を行っていないというだけであるため、契約が成立していないことになり、顧客側は店側に何らの請求ができないことになってしまいます。
このように、ネットショッピングは、本当に手軽に商品を購入できるメリットがありますが、こうした配送のトラブルが生じてしまうリスクがあります。
どうしても必要な商品などが実際に店舗にいって直接購入するなど、ネットショッピングのみに依存することなく、うまく活用していく必要がありそうです。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
持ち帰りお断りは可能?
皆さんは、飲食店で食事をした際、食べ残した物を持ち帰ることはありますか?
私の家では、母や父が率先して持ち帰ることが多く、小さい頃は家でも食べることができると喜んだものですが、思春期のころは恥ずかしく思い、やめてほしかった記憶があります。
では、食べ残したものを持ち帰ることについて、お店が拒否した場合には認められるのでしょうか。
これについて、明確な判例や法律があるわけではないです。
例えば、飲食店での食事において売買契約であると捉え、注文の時点で料理の所有権がお客側に移っていると考えると、持ち帰りを認めなければならないということになりそうですが、あまりそのような考えは一般的ではないでしょう。
お店側が許可した場合に、持ち帰りが認められるのが一般的ではないでしょうか。
しかし、テイクアウトを行っている飲食店が持ち帰りを認めないということは、矛盾が生じる恐れがあるのではないかと思います。
こうしたお店で提供した飲食物の持ち帰りについて、法律で何か規制がされているかというと、食品の安全について規律した食品衛生法には何ら規制されていないため、あくまでもお店の自主ルールに任されていることになります。
とあるお店では、全て自己責任、すなわち持ち帰った食品で、万が一食中毒などが起こったとしても一切お客に対して店側が責任を追わないということを約束させたうえで、認めているというお店もあるようです。
しかし、お客との間で一切責任を負わないと約束したとしても、食中毒等が出てしまった場合には、食品衛生法上、お店は一切責任を負わないということにはならないということになるため、持ち帰りを認めるか否かはとても慎重になる必要があります。
お店の対応として何が正解というものはありませんが、食中毒のリスクが生じない食品についてはテイクアウトを認めるという選択か、リスクを防ぐため一律持ち帰りを禁じるというのもいいかもしれません。
そして、トラブルを防ぐためにも持ち帰りを認めているのか、禁じているのかについては、あらかじめお客さんにもわかるように掲示しておいた方がいいと思います。
少し話は変わりますが、通常の飲食店ではなくバイキング等の食べ放題のお店で料理を持ち帰ることは認められるのでしょうか。
これについては、食べ放題やバイキングはあくまでそのお店の中であれば好きなだけ食べてもよいというものであり、好きなだけ持ち帰ってよいという内容ではありません(それが認められるのであれば、大量の容器を持っていきいくらでも持ち帰ることができることになってしまい、皆がそれをしだしたらお店はつぶれてしまうでしょう。)。
したがって、バイキング等の食べ放題で店に無断で料理を持ち帰ってしまうことは、刑法235条の窃盗罪に該当する恐れがあるため、くれぐれも控えた方がいいでしょう。
食品ロスを防ぐためにも、食べ放題でもそうでなくても自分たちが食べきれることができる量を注文するよう心がけたいですね。
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サッカーと法律
絶賛カタールワールドカップが盛り上がっています。
死のグループと言われたグループEに入った日本が、ドイツとスペインに勝ってグループステージを突破したことで、初のベスト8へと期待が高まっています。
日本対スペインは試合開始時間が午前4時でしたが、眠い中、妻と2人で見た甲斐がある試合でした。
決勝トーナメントは午前0時、もしくは午前4時から試合を開始するので、観戦するかどうか迷っているところです(このコラムも、決勝トーナメントのフランス対ポーランド戦を見ながら書いています。)。
法律事務所のコラムですので、今回もサッカーと法律にまつわるお話をしたいと思います。
まず、先ほどのワールドカップに関連する法律のご紹介です。
日本でもワールドカップに関する法律があります。 2002年の日韓ワールドカップが開催される際に、「平成十四年ワールドカップサッカー大会特別措置法」という法律が制定されました。
この法律は、日韓ワールドカップの円滑な準備を行うために制定された法律であり、お年玉年賀はがきの収益の一部などを大会運営のために寄付することができることなどが規定されている他、大会運営に従事する人や審判への報酬について所得税を課さないこと等が規定されています。
また、サッカーと関連する法律の分野としては、ケガや死亡事故と損害賠償の問題があります。
よくあるケースは、ゴールが固定されておらず、倒れたゴールの下敷きになってしまった場合の施設管理者の損害賠償責任や、熱中症で過酷な練習をさせた監督の賠償責任など、サッカーと直接関連する損害賠償というよりは、管理責任等が問題になることが多いです。
そもそも、サッカーは、殴りあったりなどというスポーツではないものの、選手同士が激しくぶつかり合うことが自然に起きるスポーツですので、試合中等にけがをした場合であっても、あくまでもプレーの範囲内のものであれば、損害賠償を請求することはできないケースが多いです。
もっともプレイ中であっても、例えば、ボールを持っていない選手に悪質な暴力を行ったなど、プレーの範囲内の行為であると言えないような悪質な行為を行った場合には、損害賠償や刑事責任が生じる可能性もあると考えられます。
このようなスポーツの場面での損害賠償については、さまざまスポーツで裁判になっており、機会があればご紹介させていただこうと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
物損事故で思わぬ賠償金
皆さんの多くが乗られている自動車は、技術の進歩で安全性が非常に高くなりました。
衝突を未然に防ぐ機能などが備わり、事故は減っているように感じられますが、相変わらず交通事故のご相談は絶えずあり、全国でも痛ましい交通事故のニュースはなくなることはありません。
交通事故は大きく分けると、以下のの2つ(もしくはその両方)にわかれます。
①人にケガをさせてしまった人身事故
②人にケガをさせずに相手の車やその他の物を壊してしまった物損事故
一般的なイメージですと、人にケガをさせてしまった人身事故の方が大きな賠償額になるという認識だと思います。
重篤な後遺障害が残ってしまった、お亡くなりになってしまった場合に、賠償額が高額になるというのは当然ですが、実は物損事故においても損害額が高額になってしまう可能性があります。
運送車両の積み荷の破損
運んでいる荷物が非常に高額、事故により中の荷物が破損をしてしまった場合、荷主から損害賠償を請求される可能性があります。
実際の裁判例では、荷主が運送会社に対し、積み荷の損害として4億円以上を請求し、2億円以上の賠償を求める判決が出されたこともありました。
店舗の破壊
高齢ドライバーの方がお店に突っ込むといったニュースを見られた方も多いと思います。
事故により店舗に迷惑をかけてしまい、商品の損害だけではなく、営業ができないことの損失なども賠償する必要があるため非常に高額な賠償金額が発生する可能性があります。
道路上の構築物の損壊
店舗や積み荷以外の高額な賠償がなされるケースとして、道路上の構築物を損壊してしまった場合があります。
道路上の構築物とは、例えば、ガードレールや照明柱、カーブミラー、電柱、信号機などがあります。
こういった構築物については、事故を起こした当事者に賠償義務が発生するため、こういった構築物も賠償する義務を負うことになります。
たとえば、ガードレールなどは2メートルで3万円程度が相場といわれておりますが、電柱や信号機、交通標識等は非常に高額となる場合があり、電光式の標識などは1,000万円以上の賠償が請求される可能性も十分あります。
このように、物損でも非常に高額な賠償義務を追う場合があります。
しかし、物損事故を起こしてしまったとしても「対物賠償保険」に入っておけば、こうした損害についても保険会社が負担してくれることが多いです。
ただし、無制限などにしておらず、保険金額の上限などを設定してしまっていた場合には、保険金額を越えた損害額については、自分で支払わなくてはいけません。
事故が起きないのが一番ですが、万が一に備え、きちんと保険には加入しておいたが方がいいですね。
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投げ銭、スパチャが犯罪に??
皆さんはYouTubeやTikTok等の動画配信サービスは利用されていますか?
私は、YouTubeで格闘技の映像やミュージックビデオ等をよく見るのですが、スマートフォンで見ていると、息子に取られてしまいます。
息子は今、仮面ライダーにドはまりしているので、おすすめ動画に頻繁に仮面ライダーの動画が上がってきます。
ご存じの方も多い方思いますが、動画の配信者に対し、視聴者が任意の金額を設定して投げ銭を送ることができるサービスがあります。
いわゆるスパチャ(スーパーチャット)などの投げ銭機能です。
動画の配信者としては、再生回数などに応じた収入に加えて、直接金銭を得ることができ、他方、視聴者としては、推している配信者へ直接支援をすることができ(多くの配信者が、投げ銭がされた際、投げ銭をした人へ感謝の言葉を述べているものが多く、そういった点でもファンが配信者を身近に感じることができ、投げ銭が多く利用される理由かもしれません。)、双方にとっていい制度であると思います。
しかし、そんな投げ銭、スパチャを受けることが犯罪になってしまう恐れがあるのです。
軽犯罪法1条第22号により、「こじきをし、又はこじきをさせた者」は拘留又は過料に処せられることになります。
この軽犯罪法上の「こじき」とは「不特定の他人の同情に訴えて、自分や扶養する家族の生活のため、無償またはほとんど無償に近い対価を提供して、必要な金銭や品物を求める行為で反復継続されるもの」をいいます。
例えば、動画を配信し、「生活が苦しい」「食うものにも困っているのでみんなからの投げ銭が欲しい」「こんな生活をかわいそうだと思ったらスパチャしてほしい」などと発言し、投げ銭等を集め続けていた場合には、軽犯罪法違反という犯罪で処罰される可能性があるということです。(実際に物乞いをする様子を動画配信した人が書類送検された事例もあるようです。)
もっとも、上記の軽犯罪法に反する行為になってしまうのは、「同情に訴えて」「生活のため」「無償で」という要件があります。
単に欲しいものを伝える行為(ほしいものリストをアップする行為)は同情に訴えるものではなく要件を満たしません。
また、一定の活動のための支援やお布施等は「生活のため」という要件を満しませんし、大道芸人や路上パフォーマンスのおひねりや、クラウドファンディング等や、対価の提供があるため、これも軽犯罪法の要件を満たすことはありません。
したがって、多くの投げ銭は軽犯罪法に抵触することはないと思います。
そもそも、憲法上、国民には勤労の義務が定められており、働くことができる人は働くことが求められており、物乞い行為が許されてしまうと、働かず物乞いを行う人が増えてしまうため、軽犯罪法で禁止されています。
有名なYouTuber等が多くの投げ銭をもらっていたりすると、単純に「いいなぁ」と思ってしまいますが、YouTuberの方もそれだけ多くの投げ銭をもらうためにいろいろなコンテンツを考え、配信しているのを見ると、何もせずに楽して儲けるみたいなことはできないのだなと思い、自分はこつこつ仕事を頑張ろうと思いました。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
キャンプや釣りが原因で銃刀法違反に?
コロナウイルスの感染が続く中で、なかなか外に出て遊ぶ機会を多く作れないとは思いますが、コロナが収束したらキャンプや釣りに行きたいという方は多いのではないでしょうか。
最近では、ソロキャンプといって1人でキャンプをする方も増えてきているようですね。
私は、いままでキャンプをした経験があまりなく、キャンプとは縁遠い存在でした。
最近、同じマンションで仲良くしている家族が、テントなどキャンプセット一式を購入されキャンプをするようになりました。
「一緒にどうですか」と誘われており、まずは一式レンタルできるところで、お試しキャンプでもしようと思っています。
そんなキャンプにまつわるニュースをご紹介いたします。
東京都内では、令和3年の1年間で銃刀法(正式には、「銃砲刀剣類所持等取締法」といいます。)違反の罪のうち、刃物を携帯したという容疑で警察に摘発された人が1,041人おり、そのうちの約8割にあたる863人もの人が、キャンプや釣りなどで刃物を車内やバッグ内に置き忘れていたケースであったと報じるニュースがありました。
銃刀法では、業務その他正当な理由による場合を除いては、刃体の長さが6センチメートルを越える刃物を携帯することを禁じています。
そして「携帯」とは、簡単にいうと刃物を直ちに使用することが出来る状態で、自分の身辺においている状態が一定程度継続している状態のことをいい、車の中に保管している場合や、カバンの中に入れている状態も「携帯」に含まれます。
そして「正当な理由」とは、携帯することが社会通念上相当と認められる場合をいい、具体的には店で購入して家に持ち帰る途中、キャンプや釣りなどで使うために持ち運んでいた場合(アウトドアの行きかえり)などが該当すると言われています。
しかし、キャンプが終わって何日も車内に置いたままにしている状態や、普段持ち運ぶカバンの中に入れっぱなしにしている状態は「正当な理由」なく携帯していることになってしまい、銃刀法違反となってしまいます(いつかのキャンプに使うために常においているということは認められません。基本的にはキャンプのその日のみ正当な理由として認められるということになります)。
銃刀法がここまで携帯を厳しく取り締まるのは、刃物などを携帯している状態を防ぐことで、犯罪に巻き込まれる危険性を防ぐためであり、ただ忘れただけという言い訳は通用しません。
楽しいキャンプの思い出が台無しにならないようにするためにも、キャンプなどに行って帰宅したあとは、必ずナイフなどは家に持ち帰り、家で保管するようにしてください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
音楽教室の楽曲使用について
皆さんや皆さんのお子さんは、ピアノ教室や音楽教室に通われたことはありますか?
はずかしながら、私は小学校のころエレクトーン教室に通っていましたが、全然上達せず(楽譜もスムーズには読めません)いやいや通っていました。
妻は、高校までピアノを本格的にやっており、自分の子どもにもピアノを教えたいと話しているのですが、自分で弾くのと教えるのでは、どうやら勝手が違うようで、子どももすぐに飽きてしまい、しっかり教えることはできていないみたいです。
そんな、音楽教室について、先日(令和4年10月24日)、最高裁判所で判決が出されました。
この事件は、楽曲の著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)が、平成29年に音楽教室を相手に楽曲の使用料を請求する方針を示したことに対し、多数の音楽教室の運営会社が、使用料を支払う義務がないと主張して訴えを起こしたものです。
著作権法38条1項では、①営利を目的としていない、②聴衆または観衆から入場料等の料金を徴収しない、③演奏者等に報酬が支払われないという3つの条件を全て満たさない限り、著作権がある楽曲を公で演奏する場合には、著作権者の許可、すなわち楽曲の使用料の支払がなければ演奏することができないとされております。
そして、今回の裁判では、音楽教室での演奏が営利を目的とした演奏であるか否かが争点となりました。
この裁判の第2審では、まず、音楽教室の先生の演奏は営利を目的としたものであるため、演奏する場合には楽曲の使用料を支払う必要があると判断しましたが、音楽教室に通う生徒が演奏する場合には、営利目的には当たらないため、楽曲使用料は不要であると判断しました。
そして、最高裁判所は、生徒の演奏について判断を行いました。
最高裁は、生徒の演奏の目的は「教師から指導を受けて技術を向上することで、課題曲の演奏もそのための手段にすぎない」とした上で、教師や教室の関与についても「教師によって伴奏や録音物の再生が行われたとしても生徒の演奏を補助するものにとどまる。
教師は課題曲を選んで指示や指導をするが、生徒が目的を達成できるよう助けているだけだ」として、演奏は生徒の自主的なものであり、音楽教室が生徒に演奏させているわけではない(営利目的はない)として、生徒の演奏について音楽教室から使用料をとることはできないと結論づけました。
これまで、楽曲の著作権使用料をめぐっては、カラオケやライブバーなどについても裁判で争われてきましたが、使用料の徴収を否定した最高裁判決は初めてになります。
この最高裁判決により、音楽教室では、先生の演奏のみに楽曲使用料が発生することになりました。
なお、楽曲使用料が発生するは、上記のとおり著作権の保護がある楽曲だけですので、クラシックの楽曲や古い楽曲など著作権が消滅した楽曲を演奏する場合には使用料は発生しません。
楽曲の使用については、一般の人は安易に無許可で使用してしまい、後々でトラブルに巻き込まれることも少なくありません。
楽曲使用について不安があれば、是非一度、弁護士法人菰田総合法律事務所那珂川オフィスにご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
マッチングアプリでの法的トラブル
だいぶ前になりますが、婚活という言葉を耳にするようになり、その後、街コンや婚活パーティーなど結婚相手を探す手段がいろいろ増えてきました。
そして、近年ではマッチングアプリの市場拡大により、トラブルも増えているようです。
マッチングアプリは、一切素性がわからない人と会うことで、様々なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
例えば、本当は既婚者であるにもかかわらず独身であると偽った人と交際を続け、配偶者からある日慰謝料請求がされるというケースは少なくありません。
配偶者のある人と性行為等を行った場合、その行為は不貞行為と言われ、民法709条、710条に基づき、損害賠償を支払う義務を追うことになります(この場合の損害は、精神的損害(苦痛)すなわち慰謝料ということになります。)。
もっとも、いかなる場合にも慰謝料を払わなければならないわけではありません。
すなわち、民法709条の損害賠償請求権が認めらえる要件として、加害行為を故意または過失により行うことが必要になります。
配偶者のある人と性行為を行ったという場合には「配偶者であることを知りながら(故意)」もしくは「配偶者であると気づくべきであったにもかかわらず」性行為を行うことが必要になります。
例えば、相手に「独身である」と嘘をつかれており、かつ既婚者であると疑うべき状況がない場合には慰謝料を支払う義務はありません。
なお、交際当初は独身であると信じ交際に至ったとしても、既婚者であると知った後に性行為を行った場合には、知った後の行為については不貞行為に該当するため慰謝料を支払う義務を負うことになります。
したがって、既婚者であると知った後については、直ちに交際を解消し二度とかかわらないほうがいいでしょう。
既婚者の決まり文句として「妻とは別れるつもりだ」とか「もう離婚しているのと同じ」などと言って関係の継続を迫る人は少なくありません。
しかし、そのような言葉を信じたとしても基本的に慰謝料を払わなければならないことには変わりありませんので、きっぱり関係を絶った方がいいでしょう。
その際、弁護士としてアドバイスするのであれば、関係を断つ前にきちんと「独身であると言われたので交際したこと(既婚者であるとわかっていれば交際していなかったこと)」「既婚者とわかった以上交際を継続することはできないこと」をメールやLINEなどできちんと伝えておいた方がよいでしょう。
これにより、万が一慰謝料請求がされた場合にも、既婚者であると知らなかったことを客観的に基礎づける証拠を確保できるため、裁判などの不要な争いを避けることができる可能性が高まると思います。
マッチングアプリという婚活に便利なものが生まれてくることにより、新たな法的トラブルも増えてくると思います。
こういったトラブルは、「まさか自分が巻き込まれるとは」と思ってもみないことが突然起きるものです。
もし巻き込まれてしまった場合には、直ちに弁護士に相談することをお勧めします。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。